「くそっ!あの弱小三流プロダクションめが!」  
オフィスに響く怒鳴り声。  
ここは大手芸能プロダクション・961プロの一室である。  
部屋の主――黒井プロデューサーは怒りに唇をゆがめ、握りこぶしを机に叩きつけた。  
「765プロ――あの弱小ユニットの女どもめ!またしても俺の仕掛けをラッキー回避しおって!」  
 
黒井の怒る理由。それは765プロダクションと言う新進の芸能事務所であった。  
現在、そこに所属する12人のアイドルが急速に人気が上がり、芸能界を席援しつつあった。  
黒井は765プロに対し様々な妨害工作を行ってきた――が、それはことごとく裏目に出てしまった。  
いまや765プロは961プロを隅に追いやりつつあった。  
 
「――荒ぶっているな、黒井よ」  
部屋にいたもう一つの人影が声を放つ。  
「相当に追い詰められているようだな。この私に……メッツァーハインケルに助力を仰ぐほどに、か……」  
美しい男だった。息を呑むほどに端正な顔立ち。だがその目は冷え冷えとして、不吉な輝きを放っている。  
メッツァーハインケル。その経歴・素性の一切が謎に包まれた男。  
彼は不可思議な魔術をあやつり、警察をも恐れることなく、これまでに様々な犯罪行為を行ってきたのである。  
「わしが怒り心頭なのは見れば分かるだろ!で、どうなんだメッツァー?引き受けてくれるのか?  
貴様の力を持ってすれば、765プロの女どもを陵辱するなどたやすいことだろう。報酬ははずむぞ!」  
「――いいだろう、引き受けよう。  
この世界の貨幣など要らん。が、765プロとやらの乙女たちには興味があったのでな」  
メッツァーは机に寄り、そこに置かれた12枚の写真――765プロのアイドルたちの姿を眺めわたした。  
「……強く清冽なるエナジーの波動が、過去と未来との位相を照らし出す……  
そう、それは乙女たちが胸に秘召し魂の輝き……  
アイドルたちはいずれ劣らぬ強大なエナジーをその胸に秘めている。  
彼女たちを闇に堕とし、そのエナジーを我が物にできれば、異世界ロアの征服もたやすいこと……」  
そして闇の気配は外に消えた。  
 
 
「おい親父!さっき出て行った男はなんなんだよ?アンタまたロクでもない事を企んでるんじゃないだろうな?」  
メッツァーハインケルと入れ替わりに入ってきた三人の若者たちは、黒井の姿を見るや激しい口調で詰め寄った。  
ジュピター――961プロの看板たる三人組アイドルユニットだ。彼らは黒いが765プロに仕掛ける卑劣な工作を  
快く思っていないようだった。  
「貴様ら、誰に向かってそんな口をきいている?貴様らは黙って俺に従っていればいいんだ。  
安心しろ。メッツァー様にかかれば、三流プダクションの女どももすぐに病院送りよ」  
「病院送りだと?――そんな汚ねえ真似をしなくても、俺たちは実力で勝つって言ってんだろうが!」  
「安心しろ。病院といっても産婦人科だからなフハハハ……」  
オフィス内に黒井の哄笑が響き渡る。既に勝利を確信した彼は自信満々だった。  
 
春香たちアイドルの下に、かつてない貞操の危機が襲いつつあった……  
 
 

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