『つくしんぼ通信〜彼女はキキーモラ〜』(後編2)  
 
 東方では、「据え膳食わぬは男の恥」なんて格言があるらしい。  
 ケイン隊長にそんな言葉を聞いたことがあるジェイムズだったが、まさか自分がその格言が適用されるべきシチュエーションに陥るとは、夢にも思っていなかった。  
 
 (あぁ……なんか、気持ちいいな)  
 身体の上に何か暖かくて柔らかいものが乗っているような、安らかな感触。まるで、ラルフ婆さんの家にいる猫達を大きくしたような……って、アレ?  
 不審に思い目を開けたジェイムズの上には、ひとりの少女が覆いかぶさっていた。  
 「!」  
 窓から差し込む月明かりが照らす薄暗い部屋の中、それでも妖精眼持ちのジェイクには、彼女──ピュティアの顔の赤さまではっきりと確認できた。  
 「うぉっ!? ぴゅ、ピュティア……な、なんで?」  
 この状況下で何とも間抜けな質問をジェイムズが投げるが、彼女はジェイムズの上に覆いかぶさったまま答えない。  
 よく見れば、ピュティアは日中の普段着にしているエプロンドレスでも、寝間着代わりの簡素な木綿のワンピースでもなく、白いシミーズ一枚しか身にまとっていないようだ。  
 十六夜の月光の下でさえ、薄衣越しに少女のやや小ぶりだが形の良い乳房や、ツンと尖ったその先端部をハッキリ確認できる己れの常識外の視力を、ジェイムズは初めて恨んだ。  
 掛け布団をはがされて密着するパジャマから、ピュティアの体温が伝わってくる。  
 「ご主人さま……」  
 うるんだ目で少女がジェイムズに何かを訴えかけている。  
 いくらソチラ方面は奥手とは言え、ジェイムズも健全な若い男だ。彼女が何を言いたいのかは見当がつく。  
 (えっと……まさかとは思うけど、もしかしてこの娘……俺のことを?)  
 傍から見ていれば「まさか」も「もしかして」もない。少女が少年に好意を抱いている(そしてその逆も然り)ことなぞバレバレなのだが、いまひとつ自分に対する評価が低めのジェイムズは、ことココに及んでも、彼女の気持ちを確信できないようだ。  
 無論、嫌われているとまでは思っていない。ふたりの関係は、表向きは、「家主と居候」「主と女中」といった言葉でくくれるのだろうが、半年以上一緒に暮らしてきた現在では、むしろ「家族」という言葉の方がしっくりくる。  
 しかし、今、彼の顔を至近距離から覗き込むピュティアの顔には、初めて会った頃の遠慮勝ちな恥じらいとも、彼女が作った食事をジェイムズが食べているときのうれしそうな様子とも、まるで異なる表情が浮かんでいる。  
 「お慕いしております、ご主人さま……」  
 熱っぽくて力強く、脇目もふらない一途な思いが、ピュティアの瞳からは感じられた。  
 
 * * *   
 
 辺境警備隊所属の少年隊員ジェイムズが、彼の家でメイドさんをやってる家付き妖精(キキーモラ)の少女に逆夜這いされるに至る経緯は、その日の午後、彼が隊長との"真剣勝負"に僅差で負け、それなのになぜか王都の戦士団へと推薦を受けた直後にまで遡る。  
 
 部外者ながら、隊長の妻であるゲルダ(ちなみに彼女には警備隊の特別魔法顧問という肩書が付いている)の肝入りで、彼らの勝負をこっそり観戦していたピュティアは、ふたり(特に自らの主)が、たいしたケガもせずに決着がついたコトにホッとしていた。  
 ジェイムズが負けたことは残念と言えば残念だが、それでもケイン隊長も彼のことを認めてくれたようで、めでたしめでたし……とピュティアは思っていたのだが。  
 彼女を自宅に招いたゲルダが、告げたのだ。「このままでは、貴方達は離ればなれになる」と。  
 
 驚いたピュティアだが、よく考えると、確かにジェイムズが王都に行き、そのまま戦士団の正隊員になれば、今の家から離れざるを得なくなる。  
 では、彼女も彼について行けばいいのかと言えば……。  
 「無理ね。貴女もわかっているでしょう?」  
 そう。キキーモラである彼女は、(暖炉のある)家を離れて長くは暮らしていけない。そもそも、彼女がこの村に来た時行き倒れていたのは、空腹のせいもあるが、生活の拠点となる"家"を喪って衰弱していたことも原因なのだから。  
 ここから王都までは、馬車に乗って極力急いだとしても優に半月はかかる。対して、家を離れたピュティアの体調は10日ともつまい。  
 仮に無理して王都に辿り着いたからと言って、ジェイムズが即座に暖炉のある家を購入できるかは、はなはなだ疑問だ。  
 「──しかた、ないです。私はこちらのお家で、ジェイムズ様のお帰りを待ちます」  
 「けど、それも今のままでは無理よ」  
 キキーモラはあくまで「人の住む家に付く妖精」なのだ。空き家では意味がない。  
 「次善の策としては、ジェイムズくんが王都にいる間、お家を貸しに出して、誰かに住んでもらうことかしら。ちょうどスコットさん家の次男が独立したがってるし」  
 「それは……」  
 嫌だった。  
 キキーモラは、人の家に住ませてもらう代わりに、その家の家事を手伝うことを存在意義とする妖精だ。言い換えれば、快適な住処さえ保証されれれば、その家の住人がよほど非道な存在でもない限り、働くことは厭わない。  
 けれど、ピュティアは知ってしまった──家に住む返礼として働くのではなく、特定個人のため、その人の笑顔のために尽くすこと、頑張ることの喜びを。  
 今の彼女は、ジェイムズ以外を主と仰ぐことなど考えられなかった。  
 
 「ゲルダさん、なんとかならないでしょうか?」  
 物知りな年長の女性に、ピュティアは助けを求める。  
 「うーーん……そうなると、ここは、ちょっと裏技を使うしかないわね」  
 腕を組んで思案するフリをした(内心では、しめしめとほくそ笑んでいる)ゲルダの言葉に、純真な家付き妖精の少女は、たちまち跳びつく。  
 「教えてください! 私にできるコトなら、何でもします!!」  
 「(なんでも、ね♪)そう。ならば教えてあげる。でも、あらかじめ言っておくけど、並ならぬ心構えが必要よ」  
 「はい、覚悟はできています」  
 神妙に頷くピュティアに、元雪妖精の女性は、「結魂」と呼ばれる、ある儀式に関する知識を伝授するのだった。  
 
 * * *  
 
 「駄目だよ、ピュティア。もっと自分を大切にしないと」  
 頬が触れ合うほどの至近距離で顔を合わせつつ、ジェイムズは彼女を押しとどめる。  
 おそらく、もっとも親しい「家族」とも言える自分が村からいなくなることに、彼女は不安になって情緒不安定になっているのだろう。  
 「君には俺なんかより、もっといい男性(ひと)が……」  
 そう口にしながらも、胸の奥がキリキリ痛むのを、ジェイムズは感じていた。  
 種族が違うのだから、家族なのだから、と見ないフリをしてきた自分の感情と、今彼は初めてまともに向き合っているのだ。  
 言うまでもなく、少女のことは憎からず──いや、誰よりも愛しく思っている。  
 しかし、彼は田舎に住むただの人間の兵士だ。無学で、地位も財産もなく、身寄りもない。  
 そんな男が、この先、人の何倍も生きるであろう美しい妖精の少女を、己のちっぽけな欲望のために縛り付けてよいはずがない。  
 そう思ったからこそ、これまで男女の仲になることを避けてきたのだ。  
 
 けれど……。  
 「──どうして、そんなことを言うんですか? 私は、ご主人さまが、ジェイムズさんが好きなんですよ?」  
 いつになく、彼女は強情だった。  
 「だから、それは……」  
 「勘違いでも気の迷いでも感傷でもありません!!」  
 彼の胸にすがりついてジェイムズを離そうとしないピュティア。めったに見せない激情のせいか、彼女の顔も体も少なからず火照っているように見えた。  
 やむをえないろ。こうなったら、心を鬼にして無理やり引き剥がすか──そう決意して少女の体を押しのけようとしたとき、一滴の雫がジェイムズの顔に落ちた。  
 
 「? ……あ」  
 それが涙だと理解するまでに数瞬を要した。その間にも、小さな水滴がぽとり、ぽとりとジェイムズの顔にしたたり落ちる。  
 「いやです……もう私、独りは……うぅ……」  
 「ピュティ、ア?」  
 必死に嗚咽をこらえて、彼女は言葉を続けてくる。  
 「わ、私……ジェイムズさん……のこと、大好きです。離れたくない。あなたでないとダメなんです! だから、お願い、私のこと……受け入れて……」  
 控えめな少女の悲痛な叫びは、まぎれもなくそれが彼女の真情であることを物語っていた。  
 妖精少女に何と言ってやればいいのか思いつかず、ジェイムズはただ呆然とピュティアの泣き顔を見上げて沈黙してしまっていた。  
 「うぅ……ひっく……うぇぇん……」  
 薄い闇の中、ピュティアはひとりですすり泣いている。  
 
 どれだけそうしていただろうか。ジェイムズは、そっと手を伸ばして、ようやく泣き続けるピュティアの頬に触れた。  
 「悪かった、ピュティア。すまん……君の気持ちに気づいてやれなくて」  
 そのまま少女のか細い体をギュッと抱きしめる。  
 「──ふぇ?」  
 「正直に言えば、俺だってお前と離れたくなんてないさ」  
 「(グスンッ)ほんとう?」  
 あどけない幼子のような問いかけに、苦笑しつつ言葉を返す。  
 「ああ、本当だ。お前がそう思ってるなら……恋人にでも何でもなってやる。だから、ピュティア……お前はどうしたい?」  
 ジェイムズが尋ねると、彼女はジェイムズの体を抱き返して涙声で答えた。  
 「うぅうぅぅぅ……ご主人さま、ジェイムズさぁん……!」  
 ふたりはかたく抱き合って、お互いの身体の温かみを確かめ合っていた。  
 
 「じゃ、じゃあ、あの……不束者ですが、よろしくお願いしますです」  
 しばしの抱擁ののち、気恥ずかしさを堪えつつ、ふたりは、「初めての夜」を切り直すことにした。  
 すでに、妖精少女の口から、今夜の「契り」の意味は、少年兵に説明されている。  
 「結婚」──結婚と似て非なるそれは、文字通り被術者ふたりの魂を繋ぎ、不可分のものとする儀式だ。  
 この儀式を執り行ったふたりには、魂レベルでの深い繋がりが出来、結婚式の誓いの言葉よろしく「死がふたりを分かつまで」、いや肉体的な死さえ超えて、共にあり続けるのだ。  
 
 「あ、ああ。こちらこそ、よろしく」  
 互いに深々と頭を下げたのち、ベッドに、今度は少女が下になる形で横たわる。  
 緊張による震えを隠したジェイムズの手が、シミーズに包まれたピュティアの身体に伸び、ゆっくりとその胸に触れる。  
 「あン……!」  
 あまり大きくはないが華奢な体つきとの対比でそれなりの大きさに見える乳房を触られ、ピュティアは可愛い声をあげた。  
 興奮する気持ちを抑え、優しく丹念に揉み始める。  
 「んんっ……あ、あぁ……」  
 彼女がその刺激に慣れてきた頃合で夜着を脱がせ、一糸まとわぬ生まれたままの姿にする。  
 「は、恥ずかしい、ので、あままりまじまじ見ないでくださいぃ」  
 「あ……ごめん。つい」  
 そう言いつつ、ジェイムズはピュティアの乳房にそっと舌を這わせた。  
 「ひゃん……!」  
 生暖かい彼の舌の感触に少女の体がびくりと震える。  
 他人に愛撫され、のみならず舐められるなんて無論初めての体験だったが、ピュティアに嫌悪感はなかった。むしろ、身体の芯が熱くなってくる。  
 言葉を飾らずにソレを呼ぶとすれば、それは「欲情」と名付けられるべき感情だった。  
 どうやら彼女の体は自分が思っていた以上に敏感らしく、ジェイムズが白い肌を舐めたり乳首を吸ったりするたび、ピュティアは声を漏らして体をよじった。  
 
 「ピュティア、気持ちいいか?」  
 「はぅぅ、き、聞かないでください……」  
 熱い吐息を漏らしながら、恥ずかしげに視線を逸らす彼女の様子を見れば、いちいち聞かずとも、ピュティアが感じているのは明白だった。  
 その確信を得て、ジェイムズの両掌の動きが速くなる。  
 「きゃっ……も、もう、ジェイムズさんのいぢわるぅ!」  
 色っぽく喘ぐピュティアの様子に、ジェイムズの中の想いと欲望が一層加熱する。  
 
 程なく、彼の手が、すでにしとどに濡れた彼女の下肢の間へと伸びた。  
 ピュティアは真っ赤になって顔を伏せつつも抵抗はしなかった。彼の手によって、少女の両脚が開かれ、誰にも見せたことのない秘蜜の場所が露わになる。  
 「ピュティアのここ、綺麗だよ」  
 食い入るようにサーモンピンクの翳りを凝視しながら、ジェイムズは感嘆の声を漏らす。  
 「…………っぁ」  
 クチュリと指で濡れた秘所に触れ、ゆっくりそこを弄り始める。  
 「あ……ああっ、あぁあっ……!」  
 割れ目に沿うように指を走らせると、ピュティアは愛らしい悲鳴を漏らした。秘裂の上、ねっとりした幕に包まれた敏感な豆を、軽く突ついてやるだけで、少女の体が軽く跳ね、息を詰まらせて受けた刺激の強烈さを訴えてきた。  
 「はぁっ……あ、あぁっ!!」  
 できるだけ優しくしてやりたいのだが、なにぶんジェイムズ自身も初めての経験だけに、どうすれば彼女が気持ちよくなれるか試行錯誤するしかない。  
 とは言え、眼前で乱れる愛しい少女の痴態を見ていると、少年の方もだんだん理性の歯止めがきかなくなっていく。。  
 「ピュティア、可愛いよ……ピュティア!」  
 「あぁっ! うれし、です、ジェイム……んんっ !?」  
 嬌声をあげる少女の唇をジェイムズは、自らの口で塞ぎ、貪る。勢いに任せて舌をピュティアの口内に侵入させると、彼女はわずかに驚いた表情を浮かべたものの、顎の力を抜き、受け入れてくれた。  
 「んんっ……」  
 やがて、ジェイムズの舌に触発されたのか、ピュティアの方もおずおずと舌を伸ばして、彼のそれに絡めてくる。  
 「んん……じゅる……はむっ……」  
 ピュティアの唾液。それはあったかくて甘くて、ジェイムズには至上の美酒に思えた。  
 左手では少女の乳房を、右手で秘所を愛撫しつつ、口を繋げてピュティアと唾液を交換し合う。  
 言うまでもなく、既にジェイムズの股間の"きかん棒"は、かつてないほどギンギンに張りつめ、反り返っていた。  
 
 ──この子の膣内(なか)に入りたい。ピュティアとひとつになりたい!!  
 
 自らの中にこれほどあからさまな欲望が眠っていたとは驚きだが、これも相手が愛しい少女だからこそだろう。  
 
 「ピュティア……その、入れて、いいか?」  
 ジェイムズのあけすけな質問に、ピュティアは刹那怯えにも似た怯みをみせたが、一瞬目を閉じ、次に開いた瞬間には、確かな覚悟の色を浮かべていた。  
 「はい、ジェイムズさん。私を抱いてください」  
 「そうか……ありがとう」  
 少女の上にのしかかり、極限まで膨張した分身をピュティアの陰部にあてがう。先端を軽く触れさせただけで、ピュティアの襞がヌチュリと吸いついてきてジェイムズを喘がせた。  
 その感触が、ついに彼の最後の躊躇いを弾き飛ばし、思った以上の勢いで、ジェイムズり分身がピュティアの秘裂へと突き込まれる。  
 「ひぐっ! 痛ッ……うう゛ぅ゙!」  
 痛みを懸命に堪える少女の声が、僅かにジェイムズの理性を呼び戻す。  
 「ごめんな、優しくしてやれなくて」  
 「い、いぇ……いいんです。はじめて…は、痛いって……ゲルダさんにも、聞いてましたから」  
 涙を堪えながら、苦痛の色を押し殺して微笑おうとするピュティアの様子に、後悔の念が湧いてくるが、ジェイムズはあえてそれを無視して、下半身をゆっくりゆっくりと動かすよう努力する。  
 (痛いだけの初体験なんて、後味悪過ぎるだろ)  
 "息子"にキツく絡みつく肉襞の感触に、気を抜けばピストン運動を加速させたくなるが、全身全霊の克己心をもって、ジェイムズはその衝動を抑えた。  
 「あ、あ、あ…………ふぁ……ぅぅ……なんか、ヘンな感じです………」  
 涙ぐましい程の努力が功を奏したのか、徐々にピュティアの痛みは和らぎ、別の感触が体内から湧いてきたようだ。  
 苦痛一色だった喘ぎからも、痛み6に快感4といった具合に艶めいた色が混じり始める。  
 そのことを確認した途端、ついにジェイムズの腰が、持ち主の欲望に忠実に、大きく動き始める。  
 「あぁ、ピュティア……ピュティアぁ!」  
 「ジェイムズさん……私、わたしィ……ひんッ!」  
 互いの名前を呼び合いながら、るひたすら腰を振り立てる。血と愛液に濡れた結合部はジュブジュブと湿った音を立てて続ける。  
 いつしか、少女の脚は少年の腰に絡み付き、膣は肉棒を締め上げる。  
 突き込まれた少年の分身は、少女の胎内の奥深く、子宮の入り口にまで届き、彼女を狂わせる。  
 「ピュ、ティ……俺、そろそろ……」  
 限界を迎えつつある彼の逸物が、僅かに膨れ上がる。  
 「いい、です、よ……その、まま……はああぁぁあんっ !!」  
 本人から膣内出しの許可を得たことで、ジェイムズの中で何かが弾け、いまだかつてない程の濃さと量の精が噴き出してくる。  
 「くぅぅっ……ぴゅてぃあっ」  
 それは怒涛の奔流となってピュティアの胎内に注がれた。  
 「んっ、あッ……ジェイムズさんっっっ!!  
 ああ、出てるなぁ………と、他人事のように思いながら、ジェイムズは、初めての倦怠感に身を任せて、そのまま愛しい少女の上に崩れ落ち、意識をうしなった。  
 
-つづく-  
 
 

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