Ice Spirit  
後編 山小屋の夜  
 
 
 ケルブは右腕を持ち上げた。  
 手の平でセッシの頬を撫でる。人間と違う青色の肌。色は違うものの、手触りは人間と  
変わらない。柔らかくきめ細やかな肌だった。やはり冷たさは感じない。  
 
「暖かい……」  
 
 小さく笑いながら、セッシが呟いた。  
 ケルブは両手をセッシの身体に回し、その身体を抱き寄せる。セッシも抵抗せずに、ケ  
ルブの抱擁に身を任せていた。誰かを抱きしめるという安心感。胸の奥から熱が湧き上  
がってくる。セッシも満足そうに力を抜いていた。  
 
「ん?」  
 
 目の前にセッシの耳がある。細長く尖った三角耳。精霊や妖精などに多い形らしい。  
 ケルブは青い三角耳に舌先を触れさせた。  
 
「ひゃ……」  
 
 セッシの喉から聞こえた、可愛らしい声。  
 普段の淡泊な声からは想像もできない声音だった。きつく目を閉じ、身体を竦めている。  
もしかしたら耳はケルブが考える以上に敏感な部分かもしれない。  
 セッシの三角耳に唇と舌を這わせる。  
 
「あっ、ふぁっ……」  
 
 悩ましげな声とともに、セッシが身体を縮めていた。  
 しかし、ケルブは構わず、耳を攻める。三角形の耳の縁に優しく舌を這わせ、軽く甘噛  
みをする。元々耳は敏感な部分と聞いたことはあった。氷精霊もそれは同じなのだろう。  
三角形の尖り耳を、味わうように舌と唇で愛撫していく。  
 
「んっ……はぁ。これは、頭が溶ける……」  
 
 ケルブはセッシの耳から一度口を放した。  
 
「力が入らない……」  
 
 苦笑いを見せるセッシ。耳攻めだけで力が抜けてしまったようだ。声や手が震えている  
のが解る。本人が思っている以上に敏感だったのだろう。  
 
「なら、やめるかい?」  
「続けて――」  
 
 セッシの言葉に、ケルブは再び耳に舌を這わせた。  
 乱れた息が耳に届いている。  
 同時に右手を胸元に移した。上着を押し上げる膨らみ。それなりに大きい部類に入るだ  
ろう。白い上着越しに手の平で曲線をなぞる。縁をなぞるように丁寧に。絹のような滑らか  
な布の手触りと、丸い乳房の弾力。指の動きに微かに形を変えていた。  
 
「んっ……」  
 
 セッシが唾を呑み込む音が聞こえる。  
 ケルブは尖った耳を甘噛みしながら、手を動かしていた。きれいな形の胸を撫で、指を  
曲げてその形を変えていく。手の動きに合わせ、セッシは悩ましげに背筋を逸らしていた。  
さらなる愛撫を求めるように。  
 焚き火の爆ぜる音が聞こえる。  
 
「ふは……」  
 
 緩慢だが確実に、快感がセッシの身体に染み込んでいた。  
 ケルブは耳から口を放す。  
 がたがたと耳を叩く音。吹き抜ける風が山小屋の壁やドアを揺らしていた。隙間から流  
れ込む空気が、時折笛のような音を奏でている。風はしばらく吹き続くだろう。もしかした  
ら吹雪の時のように不意に止まるかもしれない。  
 
「いやらしい顔ね……」  
 
 水色の瞳に微かな熱を灯しながら、セッシが笑った。仕組みは不明だが、頬が赤く染ま  
っている。目元に薄く涙が浮かんでいた。  
 
「それはお互いさまだろう?」  
 
 ケルブは口端を上げた。  
 右手を動かし、再びセッシの胸を手で撫で始める。丸く柔らかな乳房。指を押し込むと、  
押し返してくる。セッシは抵抗することもなくケルブの動きを受け入れていた。  
 
「んっ、はっ……」  
 
 指の動きに合わせて、セッシが身体を捻っている。  
 ケルブは左手をセッシの脇に差し込んだ。人差し指で脇から上着の縁まで、優しく触れ  
る。何度も指を往復させながら。力を入れず、指先で輪郭をなぞるように。  
 
「ふふっ……くすぐったい……」  
 
 目を閉じて囁くセッシ。  
 下着の類は付けていないようだった。上着が下着の機能も備えているのかもしれない。  
起った乳首が、生地を押し上げている。  
 
 人差し指で生地越しに胸の突起を弄りながら、  
 
「気持ちいい?」  
「身体が熱い……」  
 
 何かを堪えるように自分の指を噛みながら、セッシは答えた。  
 ケルブは息を呑み込む。熱い。意識が焼けるような熱気だった。寒い小屋。しかし、身  
体から湧き上がる灼熱が、冷気を押し退けている。  
 
「こっちを……」  
 
 セッシの手がケルブの手を掴み、自分の太股に移した。  
 進められるままに、ケルブは右手でセッシの足を撫でる。青い皮膚と、引き締まった筋  
肉。氷精霊というのに冷たさは感じない。生き物のような暖かさもないが。  
 心持ちマッサージするように、太股から膝、脛まで何度も手を往復させる。  
 左手は肩や背中、脇腹を撫でる。  
 
「すごいわね。身体が溶けそう」  
 
 セッシが天井を見上げた。ケルブの作り出した魔術の光明が浮かんでいる。その下の  
囲炉裏では炎が躍っていた。多めに薪をくべたので、火の勢いは強い。  
 太股を撫でる手を、足の付け根まで移す。  
 
「こういう衣装は、氷精霊特有のものなのか?」  
 
 袖の無い白い上衣、横に深いスリットの入った紺色のスカート。金色の帯の装飾具。氷  
精霊なので寒さはどうにでもなるのだろう。ただ、かなり扇情的でもあった。  
 
「それなりに由緒正しい服装なのよ」  
 
 両腕を持ち上げるセッシ。  
 ケルブは太股から手を放し、両手でセッシを抱きしめた。お互いの身体に腕を回し、抱  
きしめる。今までの灼熱とは違う、じんわりと心を温める熱。  
 無言のまま、唇を重ねる。  
 優しく唇を会わせ、お互いの舌を絡める。二匹の蛇が交わるように、濡れた音を立てな  
がら、濃厚な口付けが続けられた。舌を絡めながら、唾液を交換するように  
 一分ほどだろう。  
 ケルブとセッシは口を放した。  
 
「そろそろいいかしら?」  
 
 荒い呼吸を繰り返しながら、セッシはケルブの腰の上に跨った。両膝を床に付き、腰を  
持ち上げている。スリットからスカートをめくると、秘部を覆う白い布が見えた。  
 
 三角形の白いショーツ。  
 まるでお漏らしでもしたかのように濡ていた。  
 
「ああ」  
 
 ケルブもズボンの前を開け、自分のものを取り出す。息苦しいまでに、身体の奥が熱を  
持っている。破裂しそうなほどに大きくそそり立っていた。  
 セッシは自分の唇を舐め、ショーツを横にずらした。  
 きれいな青い縦筋。その上には、紺色の毛が微かに生えていた。粘性を帯びた液体が、  
静かにセッシの奥からしたたり落ちている。  
 ケルブは両手でセッシの腰を押さえた。  
 ショーツを横にずらしたまま、セッシが腰を下ろしていく。ケルブのものが青い秘裂に呑  
み込まれていった。濡れた肉を掻き分けていくような感触に、背筋が粟立つ。  
 
「う……」  
「んっ、くぁ……」  
 
 セッシの喉からこぼれる甘い声。  
 背骨を駆け抜ける電流に、ケルブは肩を震わせる。神経を焼くような灼熱と、意識を凍  
らせるような極寒。それらが快感となって脳裏に弾けていた。  
 セッシが腰を落とし、ケルブのものを全て呑み込む。  
 
「熱い……」  
 
 擦れた声で、セッシが呟いた。陶酔するように目蓋を半分下ろしている。  
 両足を伸ばして座ったケルブの上に、セッシが跨っていた。いわゆる対面座位の姿勢  
だった。溶けたような水色の瞳で、セッシが見つめてくる。  
 セッシの太股を触りながら、ケルブは笑った。  
 
「まさか、このまま食べられるんじゃ?」  
「そんな事はしないよ」  
 
 優しく微笑み、二人はお互いの指を絡ませ、唇を重ねた。舌を絡ませながら、相手の咥  
内を味わうような口付けを続ける。  
 数秒ほどして、どちらとなく唇を放す。  
 
「動くわ」  
 
 一言告げてから、セッシは身体を上下に動かし始めた。対面座位の体勢なので、あまり  
激しくは動けない。それでも十分のようだった。  
 
「んっ、あっ……!」  
 
 ケルブのものを咥えたまま、溢れる快感を味わう。  
 口元から流れる一筋の涎。身体の上下運動にあわせて紺色の髪の毛が跳ね、乳房が  
上下に揺れていた。目の前で起こる氷精霊の痴態。  
 
 ケルブの快感も絶頂に向かって駆け上がっていく。  
 
「あっ、気持ちいい……」  
「なら、もっと」  
 
 小さく呟き、ケルブは空いた左手をセッシの胸に添えた。丸い膨らみを何度か撫でてか  
ら、上着の生地を押し上げる突起を指で摘んだ。  
 
「あっ」  
 
 セッシの動きが止まる。  
 ケルブのものを包むセッシの肉が引きつった。  
 さらに右手で身体を抱き寄せる。目の前に来たセッシの尖った耳に、ケルブは優しく噛  
み付いた。三角形の細長い耳。唇で耳全体を咥えるように包む込み、形をなぞるように  
舌を動かしていく。唾液を潤滑液として。  
 
「あっ。耳は……だ……」  
 
 微かに唇が動いた。  
 意図しない方向からの快感が、セッシの意識を焼く。既に高められた身体だ。そこから  
絶頂に達するのは容易だった。膝から力が抜け腰が落ち、ケルブのものがセッシの一番  
奥を突き上げる。  
 
「ふあ……っ……!」  
 
 セッシの喉から漏れる、甘い悲鳴。目を瞑り口をきつく閉じ、手足を強張らせながら。爆  
発する衝撃に耐えるように、ケルブへと抱きついていた。  
 同時に、ケルブはセッシの奥へと精を解き放つ。脊髄から脳まで突き抜ける衝撃のよう  
な快感だった。心臓の音が体内に響いている。  
 お互いに抱き合ったままの絶頂。  
 ふと顔を上げ、セッシが訊いてくる。  
 
「どうかしら。身体は温かくなった?」  
「だいぶね。暑いくらいだよ」  
「なら、もう少し続けてみる?」  
 
 からかうような口調に。  
 
「お言葉に甘えて」  
 
 ケルブはセッシの唇に自分の唇を合わせた。  
 
 
 
エピローグ 下山  
 
 
 冷たい風が吹き抜ける山肌。空は快晴だった。  
 降り積もった雪の表面から、青白い結晶が大量に生えている。氷がそのまま生えている  
ような光景だった。氷結晶石。物体を極低温まで急冷却する魔力の結晶。内部の冷気を  
取り出さなければ、大きな氷にも見える。  
 
「これだけあれば、大丈夫だ」  
 
 持ってきた布袋に氷結晶石を詰め、ケルブは口紐を縛った。平地の気温に晒しても溶  
けたりはしないので持ち運びは楽である。生き物が素手で触ると、火傷のような症状を起  
こすので取り扱いには注意が必要だ。  
 
「それだけでいいのかしら?」  
 
 サンダルのような靴のまま立っているセッシ。靴下などは穿かず裸足である。  
 雪の上には薄い足跡が残っていた。人の体重で雪の上を歩けば足が沈む。人間ならば  
ケルブのように雪靴が必要だが、セッシはそれもいらないらしい。  
 強風に髪の毛が激しく翻っている。  
 
「大量に使うわけじゃないし」  
 
 捲れるスカートから目を逸らしながら、ケルブは袋をリュックに収めた。  
 ケルブの視線に気付き、スカートを押さえるセッシ。水色の瞳を下に向け、雪の上に落  
ちている氷結晶石の一欠片を摘む。ケルブが取った時に落ちたもの。生物が直接触れ  
るのは危険なのだが、精霊なので大丈夫なようだ。  
 
「大量に持って行かれても困るけどね」  
 
 呟いてから、氷結晶石を口に入れた。  
 砂糖菓子のような乾いた音とともに噛み砕き、呑み込む。  
 ケルブは何も言わず、それを見つめた。焼けた炭をそのまま食べるような非常識。氷精  
霊なので身体機構が人間とは根本的に違うのだろう。  
 吐息してから、リュックを背負う。  
 
「帰るのね」  
「目的のものは見つかったし。山にはあまり長居しない方がいい」  
 
 ケルブは青い空を見上げた。平地よりも高く澄み切った青空。雲ひとつない快晴だが、  
いつ天気が変わるか解らない。  
 
「それもそうね」  
 
 セッシは小さく笑った。  
 
「それじゃ、またどこかで会いましょう」  
 

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