珠泯(スミン)の父親は警官だった。  
幼いスミンの記憶にあるのは、子供を食い潰す麻薬組織に敢然と立ち向かう父の姿。  
優しくて頼りになる自慢の父だった。  
追っていた麻薬組織に捕まり、その死体が海に浮かぶまでは。  
 
スクールを卒業した後、スミンもまた麻薬捜査官を志す。  
名前をありふれた知賢(ジヒョン)と偽り、血の滲むような訓練を積んで。  
有能で見目麗しい彼女には次々と任務が与えられた。  
その中には性行為を要するものも当然あり、『ジヒョン』の純潔は訓練員によって無機質に散らされた。  
それでも彼女は父の誇りを追う。  
 
今回のターゲットは麻薬の密輸組織だ。  
表向きは法人の有する海洋調査船だが、それが東南アジアからの薬の密輸手段になっているという。  
ジヒョンに課せられたのは、その船へ新米乗組員として潜入し、搭載されている全種類の麻薬のサンプルを持ち帰ること。  
ジヒョンにとって、さほど難しい仕事ではない、はずだった。  
 
 
※  
 
「……こいつが新入りか?」  
作業着に身を包んだ色黒の男が、訝しげに目を細める。  
その周りにいる男達も同じくだ。  
 
だが疑問が浮かぶのも当然の事だった。  
彼らがいる場所は、巨大な船の艦橋内部。  
何週間もかけて洋上を漂い、場合によっては潜水しての調査を行う調査船だ。  
当然その過程での作業は体力勝負になる。  
大の男でも音を上げるというのに、その志願者がよりにもよって“女”とは。  
 
「李 知賢(イ ジヒョン)です、よろしく」  
女は腰に手を当て、男に囲まれる状況下にありながら全く臆さず名乗りを上げた。  
気が強いのは間違いないだろう。  
身体つきも悪くない。  
背丈こそ小さいが、肩幅は女にしてはしっかりしており、ほどよく日に焼けてもいる。  
ショートに切り揃え、前髪が自然に目元を覆うさまは、男性アイドルと言っても通るほどだ。  
それは可憐というよりは精悍と表すべき容姿といえた。  
 
しかし、それでも男達に違和感を植えつけるのは、その豊かな乳房だ。  
作業着として支給されたタンクトップが、唯一女性らしい胸の膨らみに押し上げられている。  
それは女日照りの乗組員達にとって、極めて異質なものと映った。  
女だ。この目の前にいる精悍なチビは、紛れもなく『割れ目』を持つメスなのだ。  
 
男の1人が口元を緩め、ジヒョンの背後から肩を抱く。  
「なるほどなるほど。まとにかく、今後とも色々ヨロシクなぁ、お嬢ちゃん?」  
そうジヒョンにいやらしく囁きかけた瞬間、その手首はジヒョンに掴まれた。  
そして密着したまま、腰を切る動きで男を投げる。  
男は何とか受身を取るが、よろよろと立ち上がったその隙に、胸倉を掴まれたまま壁に押し付けられる。  
「こう見えても荒事は得意なの。覚えておいて?」  
鋭い目線を向けるジヒョンに、男はただ頷く。  
他の男達も、その一連の動作を見ては苦笑するしかなかった。  
 
 
ジヒョンは船の乗組員として十分な働きをした。  
船内の清掃など雑用は勿論、鎖を引いたり木箱を運んだりといった力仕事も。  
拒む仕事といえば、酒が入るたびに繰り返される夜の誘いぐらいのものだ。  
 
ジヒョンは男達から異様なほどの執心を受けた。  
男勝りとはいえ、やはり男所帯に1人だけの女というものは特別だ。  
海が荒れて船体維持に奔走し、疲れ果てたジヒョンがソファに寄りかかっている時などは、  
必ず数人の男が汗まみれのジヒョンに纏わりつき、そそる匂いだ、などとのたまいながら腋や膝裏などを嗅ぎまわる。  
シャワーを使った時、脱衣所から脱いだばかりのシャツやショーツが消えている事も何度かあった。  
「……下衆め!」  
誇り高いジヒョンはそのたび怒りに打ち震えながら、任務の為に耐え続ける。  
そしてある夜、ついに機会は訪れた。  
 
 
その日はある島の港から積荷を受け取る仕事が主だった。  
重い木箱のラベルには、食料や酒類のほか、調査に要する資材入りと印字されているものが複数ある。  
ジヒョンはすぐにそれこそが麻薬だと当たりをつけた。  
わずかとはいえ調査作業に従事し、現時点で消耗品が全く不足していない事を知っている。  
念の為大目に用意しておくにしても、箱をいくつも積み上げるほど……というのは過剰に思えた。  
さらにその箱が、普段自分の立ち入りを禁じられている倉庫に運ばれるのを知った時、疑惑は確信に変わる。  
カードキーと、パネル上でのパスワード入力。  
厚い鉄の扉で幾重にも守られたその倉庫は、たかが消耗品を収納しておくには厳重に過ぎるからだ。  
 
「皆、今日は本当にお疲れ様。さ、呑んで呑んで」  
その日の夜、酒の席でジヒョンは積極的に酌をして回る。  
言うまでもなく、全員を酔わせるためだ。  
普段は澄まし顔で手酌ばかりしているジヒョンには珍しい事だったが、  
補給直後で新鮮な肉や果物の並ぶ食卓を前にしては、多少浮かれても不自然ではない。  
寝食を共にするようになって3週間、ようやくジヒョンも打ち解けたか。  
せいぜい思うのはそれぐらいのものだろう。  
事実、ジヒョンも今日ばかりは胸を揉まれたり、腿を撫でられても拒絶しなかった。  
ゆえに全員が気持ちよく酔い潰れ、無防備な船内が完成する。  
酌をしていたジヒョンを除いては。  
「……頂いてくわよ、犯罪者の親玉予備軍さん。」  
ジヒョンは船長の胸元から難なくカードキーを抜き取り、悠々と部屋を後にした。  
 
厳重なセキュリティを抜けた先の倉庫で、ジヒョンの鼻をつくのは埃の匂い。  
換気が申し訳程度にしか為されず、秘匿され続けた空間。  
ジヒョンは顔を顰めながらも、その中を探り始める。  
「……ビンゴ」  
電池、とラベリングされた箱を開封し、中からビニール入りの白い粉を発見した時、  
ジヒョンは笑みを浮かべた。  
その袋の一つをポケットから取り出した薄紙で丁寧に包むと、ジヒョンはそれを口の中に放り込む。  
「ンっ……グ!!」  
固く目を瞑って苦しげに飲み下し、安堵の溜息を吐くジヒョン。  
気分は悪いが、これで突然の身体捜査をされてもサンプルを発見される事はない。  
最初に袋を包んだのは胃液で溶ける事のない特殊な合成繊維で、胃の中に物を溜め込む事が可能になる。  
無論いずれは腸から排泄されるため、全てのサンプルを回収した暁には速やかに本部へ連絡し、救援を呼ぶ必要がある。  
「早く終わらせないと……」  
ジヒョンは確認するように呟き、すぐに次の箱を降ろしにかかる。  
しかし、そのジヒョンを突如光の輪が覆った。  
 
「新入り、そこで何をしてるッッ!!」  
ジヒョンが目を細めながら振り返ると、1人の男がライトを手にして立っていた。  
先ほどまで、執拗にジヒョンの胸を揉みしだいていた男だ。  
「今日はやたら乗りが良かったから、そろそろヤラせてくれんのかと追いかけてみりゃあ、  
 とんでもねぇモン見つけちまった。  
 ……一体ここで何をしてるんだ、えぇ?」  
男は弱みを握ったと言わんばかりに口元を緩ませ、一歩ずつジヒョンに近づく。  
ライトで照らされるジヒョンの額に汗が浮かんだ。  
 
「今日運んだ荷物が何なのか、気になって。それだけよ」  
努めて冷静を装うジヒョンだが、背後にある口の開いた箱は隠しようもない。  
男の濁った瞳が、じっとりとその箱に注がれる。  
「船長のカードキーを盗み出してまでか?」  
「よ、酔ってちょっと大胆になっちゃって。悪かった、すぐに返すわ」  
いつもの強気な態度はなく、焦りを浮かべるジヒョン。  
男は笑みを深めた。  
「もう終わりだなぁおめぇも。だがどうだ、俺に一発だけやらせねぇか。  
 そうすりゃ黙っててやってもいい」  
ジヒョンに息もかかりそうなほど接近しながら、男が提案する。  
いや、提案ではなく脅しだ。  
男の中には今、肉欲が渦巻いている。ジヒョンを好きに嬲れるチャンスだ、と。  
本当にそれで見逃して貰えるならジヒョンにも譲歩の余地はある。  
だがこういった下衆は、願望を満たして冷静になった後、簡単に約束を反故にする事をジヒョンはよく知っていた。  
ここで口止めするしかない。  
 
「うあああぁあっ!!」  
ジヒョンは覚悟を決めて男に掴みかかった。  
男の襟首を掴み、抵抗する相手の重心移動を読んで床に引き倒す。  
そして開いた相手の股へ膝蹴りを叩き込んだ。  
「ぐぁあおおおぉっ!!?」  
ジヒョンより遥かに大柄とはいえ、最大の急所を強打されては男も無抵抗になる。  
ジヒョンは男に馬乗りになって脚で相手の腕を押さえ込み、首に掛けたタオルを男の首に巻きつけた。  
「がごひゅッ……」  
男の喉から呼吸の断ち切られた妙な音がする。  
「う、ぐぅううッ……!!」  
ジヒョンはそのまま狂ったように暴れる男の首を絞め続けた。  
何度も跳ね飛ばされそうになるのを、圧し掛かる体勢の有利さで制し続ける。  
やがて男の抵抗が弱まりはじめた頃、ジヒョンは安堵しはじめる。  
男の御し方にも慣れ始め、じわじわと場所が移動している他は何の問題もない。  
……しかし、彼女は気付けなかった。  
男がただ無闇に暴れている訳ではなく、ある場所を明確な目的地としている事に。  
それに気付いたのは最後の瞬間。  
男が壁際に置かれた箱を渾身の力で蹴り飛ばし、壁に隠されたスイッチを押した瞬間だった。  
 
「しまっ……!!」  
ジヒョンの悪寒が命じる通り、船内に警報が鳴り渡る。  
ジヒョンはまだ息のある男を睨み付けた後、すぐに身を起こして逃げ出した。  
しかし所詮は密閉された船内。  
三つ目の隔壁を通りぬけた所で閉じ込められ、銃を構えた数人に取り囲まれる。  
「くっ!」  
「終わりだ小娘。両手を挙げて壁に手をつけ」  
男の1人にそう命じられると、ジヒョンは口惜しげに唇を噛んだまま従うしかない。  
小麦色の細身は数人の手で壁に叩きつけられ、後ろ手に荒々しく拘束された。  
 
※  
 
「……長い小便だな」  
小便器で隣り合った男を見て、別の1人が声をかける。  
男は嬉しげに笑った。  
「ああ。久しぶりに女ァ抱いた後の小便は、昔から長ぇんだ」  
男のその言葉を聞き、問うた男も下卑た笑みを浮かべる。  
 
「確かに、ありゃあ良かったなぁ。  
 俺は最初の頃にマングリ返しで犯ったんだが、まだ唾で濡らした程度にしかこなれてなくてよ。  
 挿れるたんびにキツい眼の目元がひくっひくってなってな。  
 あぁまだ痛ぇんだなぁなんて同情しながら、奥を突きまくってやったさ」  
 
「へっ、ド鬼畜だねぇお前は。そんなだから嫁にも娘にも逃げられンだよ。  
 俺ん時は逆でよ、もう粗方の奴がヤり終わった後で、中がドロドロになってやがった。  
 アレは黒髪のキレーなタイプだからよ、バックでやりまくったよ。  
 普段はチチ以外は男みてぇな奴だと思ってたが、中々どうしてやらしい腰つきしてやがんなぁ。  
 アナルもぴっちり閉じててよ、両の親指でグリグリ蕾こね回しながら突くと、  
 『やめてください』なんざ絶対に言わねぇが、膣の締めが違うから感じてんのが解るんだよな。  
 バックで突いてた俺は知らねぇが、前から見てた奴によるとツリ目が何度も飽和したみたいに垂れてたらしいしよ」  
 
「何だ、自慢か?……まぁともかく、あんなイイ女と何発か出来てスッキリしたな。  
 どっちみち近いうちに数人で押さえ込んで犯るつもりだったから、手間が省けたぜ。  
 ……にしても、ありゃただの女じゃありえねぇわな。  
 少なくとも膣は、誰かしらから専門的に訓練されてたように思うぜ。  
 かといって娼婦にしちゃあ雰囲気がパリッとしすぎてやがるしな」  
 
「ま、十中八九どっかの組織の回し者だろ。いずれにせよ、今船長達が吐かせてる最中だ。  
 マス掻きついでに様子でも見てみようぜ」  
 
男達はそう語りながら階段を降り、パイプやバルブの並ぶ場所に降りる。  
騒音の鳴り止まないその場所の最奥……『尋問中』という紙の貼られた部屋の中から、  
トーンの高い叫び声が響いていた。  
それは艶やかな異性の声。この船に2人として居ない、女の発する声だ。  
 
「んぶぁあああっ!!げぇほっ、えぼえごっ、んごぉぉろおおええええっほ゛!!!!」  
 
男達が扉を開けた瞬間、ジヒョンの苦しげな声に迎えられた。  
空気を求める声と、咳き込む音、そしてうがいをするかのような喉からの水音。  
「水責めか」  
男が問うと、入り口近くの1人が頷く。  
ジヒョンは縄で後ろ手に縛られ、胡坐を掻く姿勢で足首を結ばれる、いわゆる『胡坐縛り』を受けていた。  
ただでさえ横に転がるしか出来ない縛りで、さらに両肩を押さえ込まれ、完全に身動きを封じられている。  
 
取り押さえられた際に着ていたタンクトップはそのままだが、それは首元から胸にかけて薄い赤に染まっていた。  
血ではない。もっと薄く鮮やかな、食紅の汁のようなもの。  
それはジヒョンの脚の間に設置された木桶に光を反射しながら揺れており、  
かなりの直径をもつ浣腸器で吸い上げられては、ジヒョンの鼻の穴へと注入されていく。  
その鼻の穴自体もフック付きの器具で豚のように吊り上げられ、精悍な美貌を惨めに歪まされている有様だ。  
 
「ぶあっ、うううえほっ、んんげぇぇぇええ゛ぼおおっ!!!  
 げほっ、えほっぐごごごぼっっ!!!!!!」  
 
薄紅色の水をその水を鼻の穴から注がれた瞬間、ジヒョンの眉が顰められた。  
目袋も深く閉じられた瞳から数滴の涙が零れる。  
水を注がれる方とは別の鼻の穴から、鼻水のような粘液がどろりと垂れ落ちる。  
縦長に限界近くまで開かれた口からは、悲鳴と共にVの字に折れた舌が突き出され、  
やがて喉奥からその舌の上を伝うようにして大量の唾液があふれ出す。  
それら赤い水、鼻水、涎、唾はジヒョンの容のいい顎から渾然一体となって伝い落ち、洗面器に戻る。  
わずかに粘り気を増したそれを浣腸器が吸い上げ、ジヒョンの鼻へと注入する。  
その繰り返しだ。  
 
「おい、そりゃ何だ?ちと赤い上に、ただの水でアレほどには唾液をぶち撒かんだろう」  
男が聞くと、浣腸器で水を吸い上げる男が顔を上げぬまま答える。  
「四川で造られる、数種の“醤”を溶かした水だ。匙一杯で辛いスープが作れるほどのな」  
男の言葉も終わらぬうちに、ジヒョンが再び咳き込み始める。  
ゲボゲボと喉奥を鳴らしながら、薄く目を開く。  
だが驚いた事には、その薄っすらと開いた瞳の奥では、なお責める男を睨みつけていた。  
何度も泣き腫らし、すでにウサギのように赤らんでいる瞳で。  
 
「いい加減に吐け。鼻と喉の奥が焼け爛れるように痛むだろう」  
 
男が浣腸器を水に浸しながら問うが、ジヒョンは屈しない。  
「はぁっ……こんな、こと、いくら……やっても……!!」  
男は溜息をつきながら浣腸器を持ち上げると、太さのある嘴管をジヒョンの鼻腔深くにねじ入れた。  
「あ゛…………!!」  
ジヒョンは鼻の奥に勢いよく液を浴び、精悍な顔を歪めながら大量の涎を吐き散らして悶え苦しむ。  
それが延々と続けられた。  
 
「……しぶとい女だ」  
 
責め手の男が浣腸器を投げ出し、くたびれたように近くの毛布に横になる。  
責めを受け続けた側のジヒョンは、天を仰いだままぐるりと白目を剥き、  
大きく開いた口からなお涎を溢しながら、短い呼吸を繰り返していた。  
明らかに限界と思える状態だ。  
にもかかわらず、その悲惨な顔を覗きこむ男達は性欲に滾っていた。  
 
「エロい顔しやがって。グズグズに泣き崩れた女の顔ってなぁ、そそるもんだな」  
男の1人が堪らずといった様子で逸物を取り出し、開かれたジヒョンの唇に近づける。  
ジヒョンと倉庫内でやりあった男だ。  
しかしそれを1人が制した。  
「待て。いくらボロボロとはいえ、この女ならお前の物を噛み千切りかねんぞ。  
 やるなら道具を使った方がいい」  
そう言ってビニール袋からある物を取り出した。  
リングギャグと呼ばれる口枷の一つで、口に噛ませる部分に逸物を通せるほどの穴が空いているものだ。  
 
「お、ありがとよ。確かにこれがありゃあ安全だ。  
 ヤクだけじゃなく、こういう如何わしいモンも運んでるお陰で色々と楽しめるぜ」  
男はジヒョンの口に枷を嵌めこみ、いよいよ逸物をその円の中に差し入れた。  
それはギャグで開かされた口の中を難なく進み、ジヒョンの喉奥を突く。  
「おごぉっ!?」  
喉奥への衝撃で目を覚ましたジヒョンは、すぐに口内に逸物を入れられている現状に気付く。  
しかし歯を立てようにも、ギャグの輪が邪魔をして口が閉じられない。  
 
「へへ、お目覚めかい。俺もちょうど今日、動けるようになったとこだ。  
 何せあとちょっとで、お前にタオルで絞め殺される所だったからな。  
 怖かったぜぇ、息が出来ない恐怖ってのはよ。お前も知らなきゃいけねぇよなあ」  
男は勃起しきった逸物を浅く引き、すぐに喉奥深くに押し込む。  
「ごぉぉぉえおえ゛お゛っ!!!!!」  
ジヒョンの喉奥から濁りきった声が発せられた。そのさらに奥から水の跳ねるような音もする。  
「ガっ…………ぶ、ふッ…………!!!」  
ジヒョンは苦しげにしながら、しかし男を射殺しそうな目つきで睨み上げた。  
男がぞくりと震え上がる。  
「さて、じゃあいくぜ」  
睨まれながらも一方的に有利な男は、至福の笑みを湛えながらジヒョンの側頭部を掴んだ。  
 
散々に鼻から水を入れられているジヒョンのイラマチオは、それは凄まじいものとなった。  
 
「う゛ん゛んぅむお゛ええ゛!!!  
 お゛う゛んんん゛、っうむ゛ぐぉおおお゛お゛えお゛!!!!!」  
 
喉奥深くで逸物を留められ、ジヒョンは幾度も頬を膨らませながら苦悶の声を上げる。  
それは全てが濁音と言ってもいい声ならぬ声で、彼女の苦悶がどれほどのものかを解り易く伝えた。  
しかしその状況になってなお、ジヒョンは強い目の光を失わない。  
涙に塗れる瞳を見開き、男を睨み上げている。  
その彼女らしさこそが、咥えさせる男にとって何よりのスパイスとなるようだった。  
 
「あああ最高だ、喉奥が熱い。人肌にあったけぇんじゃねえ、辛し水で焼けるように熱くなってやがる。  
 一番奥の方まで、変にねっとりしたローションみてぇな痰も絡みついてくるしよ、止められねぇよ!!」  
男は興奮気味に叫び、ジヒョンの頭を掴んで腰を前後させる。  
「う゛ぉっ、おおおぇお゛え゛え゛っ!!!!!」  
当然にジヒョンの苦悶の声が上がる。  
男はそこで一旦、逸物をリングギャグから引き抜いた。  
 
痙攣する勃起しきった肉棒が口内から姿を現す。  
それには夥しい量の粘液が膜状に絡み付いており、逸物が完全に抜けるのに併せてカーテンのように垂れ拡がった。  
「おお、すげぇ……っ!!」  
その異様な光景を目の当たりにした者は、口々にそう漏らす。  
「こ……ころ、げす、やおう……!!!」  
何とか空気を吸ったジヒョンの口から、すかさず言葉が吐き出された。  
口枷に阻まれて明瞭ではないが、悪態に違いないだろう。  
男はそれを愉しげに聞きながら、小休止するようにしばし逸物を空気に晒し、  
その後に再度ジヒョンの口内へと戻しに掛かる。  
「げおぉっ!!!?」  
ようやく解放されるのかと安堵していた美貌に絶望の色が浮かんだ。  
男はその苦悶に酔いながら、いよいよ軽快に喉奥の柔な部分へと打ち込み始める。  
 
「どうだ、美味しいだろうジヒョン?きっちり喉の奥で味わってくれてるか?  
 お前が初めて俺の前に現れてから3週間……ずっと溜め込んで濃縮した、俺の愛の味だぞ。  
 ずっとお前を愛してた……俺は、何度拒まれてもお前に本気の告白をしたよな。  
 お前がシャワーを浴びるのに脱ぎ捨てた下着を拾って、お前のナマの肉体を何度も妄想してた。  
 お前の裸を、貫いた時に上げる声を、絶頂の時の顔を何十回何百回妄想してたんだ!  
 こんな風に純粋な俺そのものの味を味わわせてやりたかった……声を上げさせたかった!!!」  
 
男は気狂いのような台詞を叫びながら、ジヒョンの喉奥を容赦なく責め立てる。  
身動きの取れないジヒョンは為す術もなくそれを受け入れるしかなかった。  
ごえっごえっという呻きの声が部屋に響き続ける。  
やがて小さなせせらぎの音と共に、胡坐を掻いたヒジョンの割れ目から小水が迸りもする。  
「おい見ろよ、コイツついに小便まで漏らしやがったぜ!!」  
その恥辱の指摘がジヒョンの頭の中で意味を為したころ、最悪の事態が訪れる。  
 
「おごぇっ……えごっ、んも゛ぉぉおお゛お゛う゛えええ゛え゛え゛っ!!!!!!!」  
 
嘔吐だ。  
何十という回数、水責めでふやけた喉奥を掻き回され、とうとうジヒョンの喉が限界を迎えたのだ。  
「うわっ、きったねぇ!」  
「後片付けはお前がやれよ!!」  
様々な野次が飛び交う中、ジヒョンはリングギャグの形に沿うようにして胃の中の物をぶちまける。  
そう。胃の中にあるもの、全てを。  
 
「…………あ?」  
 
それまで笑っていた男達が真顔に戻り、ジヒョンの喉奥から最後に吐き出された物を凝視する。  
ビニールに包まれた白い粉。自分達の犯罪の決定的な証拠。  
「おい、どういうコトだこりゃあ……?」  
初めに水責めを課していた男が、ビニール袋をジヒョンの目の前に摘み上げて凄む。  
これまで常に強気でいたジヒョンの瞳も、流石に怖れの色を含んだ。  
 
「どうやら、お前は思っていた以上に危険な女らしい。  
 他にどんなものを隠し持ってんのか、体中を徹底的に探るしかなさそうだな!!」  
男はそう告げ、袋の中の道具を残らず床にばら撒いた。  
 
※  
 
 
ジヒョンは今、首後ろで2本の竹を×の字に組み合わされ、  
そのそれぞれに手足の関節を二箇所ずつ結び合わされる格好を取らされていた。  
腋を晒し、大股を開く惨めな格好だ。  
その状況下、彼女の尻穴には大きな真珠をいくつも連ねたような責め具が挿入されていた。  
責め自体は単調なものだ。  
ジヒョンの股の間に座った男が、責め具の持ち手を浅く握り、ゆるっゆるっと抜き差しするのみ。  
「んーっ……!!んあっ、あう、……んっっ…………!!!」  
しかしジヒョンはその責めに対し、時に唇を引き結び、時にあの字に開くという、明らかに感じ入る反応を見せていた。  
 
「どうした、随分と感じているように見えるが?こちらはただ排泄の孔を穿っているだけだがな。  
 そのような変態じみたマゾヒシズムを見せるサービス精神があるなら、  
 早く腹の中に隠しているものを排泄したまえ。こちらはそのために刺激してやっているのだ」  
 
研究者然とした男が、淡々とした口調でジヒョンに告げる。  
言葉こそ事務的だが、その顔は陰湿な笑みで満たされていた。  
彼は言葉を発する間にも、抜き差しする責め具へボトル容器に入った粘液を注いでいる。  
それが興奮剤や精力剤の類である事は問うまでもない。  
 
この淫靡な尻穴嬲りは、公衆の面前でもう小一時間以上も続けられていた。  
「んっ……あ、ああっ…………!!」  
薬を塗りたくられた淫具で、排泄の穴の中をいやらしく捏ねくり回される。  
裸のまま大股開きを晒すだけでも耐えがたい羞恥だというのに、さらに尻穴へ器具が出入りする所まで、  
何十という男に見られているのだ。  
 
薬の効果もかなり高いらしい。  
小一時間ばかり尻穴の中へ塗りたくられ、秘部が濡れているのがジヒョン自身にも解る。  
男達には、秘裂からとろとろと愛液が溢れ出し、内股までを濡れ光らせている様までが丸見えだろう。  
意地の悪い事に、男達は誰一人としてそれを指摘しない。  
何もかも見えているにもかかわらず、ただジヒョンを好奇の視線で見下ろすばかり。  
それはジヒョンにとって、罵られる以上に心に刺さる行為だった。  
 
「……ふむ、やはりこんな細い棒では掻き出せんか」  
研究員風の男はそう呟いて、ジヒョンの尻穴から棒を抜き出す。  
長きにわたって尻穴に出し入れされていた棒だ。  
当然の事ながら、その先端には直視しがたい穢れが纏いついている。  
「へっへ、しっかり付いてやがるぜ。ジヒョンちゃんが最後にトイレ行ったのは、今日の朝だもんな!  
 みーんな知ってるぜ、『ジヒョンがトイレ行った時間』はよ。何せ皆のアイドルだからなぁ!!」  
下卑た叫びと笑いが起きる。  
その中心で耳まで赤らめながら、ジヒョンは恥辱に打ち震えた。  
だがその恥辱は、まだ平穏な部類でしかないのだ……と、ジヒョンはこの後に嫌というほど思い知る。  
 
「あえ……あうう、あ…………っは、ああっ…………!!」  
 
ジヒョンの顔は恐怖に引き攣っていた。  
格好は先ほどと変わらない。だがその腹は妊娠初期のように膨らみ、浣腸液によって絶えず音を立てている。  
またその尻穴には限界まで膨らませたバルーンとゴムの貞操帯が嵌められており、  
どう足掻こうとも排泄が叶わない状況にあった。  
それだけでも充分につらい状況ながら、さらにジヒョンはそれ以上に精神を削り取られる仕打ちを受けてもいた。  
 
彼女の足元には一面ぬめった異臭を放つ液体が撒かれている。  
色と感触からして、ガソリンと考えて間違いなかった。  
その上で、ジヒョンは口に燃え盛る蝋燭を咥えさせられているのだ。  
浣腸のつらさに耐えられなくなり、口から蝋燭を落とせば一気に身体が炎に包まれる。  
その極限状態で、ジヒョンは濃厚な恐怖に煽られていた。  
浣腸のつらさ、死の恐怖。それが一瞬の休みもなく襲い来る。冷や汗が体中を多い、緊張で吐き気がする。  
 
その様子を、部屋の外から男達が監視していた。  
彼らは、床に撒いた液体がガソリンではない事を知っている。  
密輸した本人だからこそ解る、ガソリンそっくりに作り上げた紛い物だ。  
元々は詐欺目的で造られた精巧なものゆえ、第三者には実際に燃やしてみないと判別できない。  
ゆえに当然、ジヒョンにそれを知る術が無いことも知っている。  
彼女の中で、自分達が容易にジヒョンを殺しうる下衆な人間だと認識されている事も。  
だからこそ追い詰める。  
死の恐怖で衰弱させ、公衆の面前での限界を超えた品のない排泄で心を痛めつける。  
それを繰り返して隷属させ、あわよくば情報も引きずり出すつもりだ。  
 
「あ゛……ああああ゛…………!!!!」  
 
極限の恐怖で目を泳がせ、短い息を繰り返すジヒョン。  
その姿をモニター越しに眺めながら、男達はさらなる責めを話し合う。  
いつまでも、いつまでも……。  
 
 
 
                        終  
 
 

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