仕事で疲れた体に鞭打ちながら自転車を漕ぎ無心で家へと向かう。川と高速道路が並行
に並ぶ道をずっと真っ直ぐ進んでいると、部活帰りだか遊び帰りだかわからない女子中学
生の集団といくつかすれ違う。現在時刻18時20分。つい二ヶ月前ならばこのあたりはす
でに真っ暗になってしまい、女子中学生とすれ違うことなど稀だったが、ここ最近は日も
長くなり、警戒心が薄れているのか、彼女らの帰りも遅くなっているようだ。高校生の妹
がいる自分としては、不審者・変質者への警戒心まで薄れてほしくはないなとつい思って
しまう。
特に家に帰ってまでやるべき用事もないので、ゆっくり自転車を流していると、前方の
方に先ほどの女子中学生の集団と同じセーラー服を来た女の子が携帯電話を耳にあて、ぶ
らぶらと俺と同じ方角に向けて歩いていた。先ほどの女子中学生がスカートの下に学校の
ジャージを履き、一度も染めたことのない黒髪をショートカットにし、これぞ田舎の女子
中学生の見本だとするならば、こちらに背中を向け顔はわからないが、前方を歩く少女は
深夜のニュース番組でニュースキャスターが思わず顔を顰めそうなまさに不良の典型とで
もいうべき少女だ。肩まで伸びた明るい髪は傷んで硬そうで、紺色のセーラー服は擦り切
れててかてかと光っている。スクールバッグはキラキラした装飾用のシールか何かでデコ
レーションされ、キーホルダーやら髪留めでごたごたしている。
俺が中学生だったのはもう十年は前で、その頃のクラスの派手な女子集団とは、持って
るものやカッコいいとされてるものが少し違うようだ。十年も経てば当たり前か。しか
し、依然として変わらないのはスカートの短さだ。俺の前を行く女子中学生のスカート
は思いっきり短い。それはもう太腿丸出し。尻の肉が見えそうになるくらい短い。普段
ならば目の保養と思い一瞬だけ若い娘の生足を堪能し、すぐに我に返り呆れて目を離す
のだが、今日はどうしてだか目の離せない自分がいる。前を行く女子中学生はなんという
か、とても肉感的だからだろうか。うちのスレンダーな妹とは違い全体的にがっしりとし
ている。身長も高いほうだろう。だからか知らないが、制服さえ着ていなければ大人の女
と変わらない体つきをしている。
明らかにエロおっさんモードの目つきになっているはずだが特に俺を咎めるような歩行
者は周りにいない。女子中学生に気づかれないように、ゆっくりとゆっくりと自転車を漕
ぐ。あわよくばパンチラでも拝めないものか。エロの神様に祈っていると、実にあっさり
と、エロの神様は俺に向けて微笑んだ。高速道路と建物の間をひゅっと風が吹きぬけ、俺
の頬を風が撫でていく。短いプリーツスカートが風に揺れ、捲れ上がった。それがパンチ
ラであれば、小さくガッツポーズをしていたことだろう。が、現実は予想以上だった。ス
カートが捲りあがり、露わになったのは、女子中学生の桃尻。大きめで柔らかそうな白い
尻だった。しかも風がまだ吹き続け、女子中学生も電話に夢中なものだから、薄暗くなり
始めた景色の中で女子中学生の白い尻がいつまでも晒されている状態だ。
どうしてパンツ穿いてないんだ。女子中学生のくせに痴女なのか。混乱し唖然としてい
る俺と同様に近くで犬の散歩をしていた中年のおっさんも口までぽっかりと開けて目を点
にしていた。そのおっさんと目が合い、お互い気まずくなって、おっさんから目を逸らす
と、ペダルを力強く漕ぎ、女子中学生を追い抜いた。女子中学生の顔を確認しようとちら
りと思ったが、振り返らずにそのまま速いペースで自転車を漕ぎ、家へと帰る。息を切ら
しながら家に入ると丁度二階から下りて来た妹とばったり出くわした。
「お兄ちゃん、お帰り。いつもより早いね。見たいテレビでもあるの?」
妹の全身にざっと目を走らせる。
すでに女の子の間で流行っているらしいパステルカラーのもこもこした部屋着姿だった。
「ただいま。茜。一つだけ聞いてくれ」
「なに?」
俺の声があまりにも真剣だったからか、妹は怯えたような表情をする。
「パンツはちゃんと穿け。あとスカートは膝上五センチがベストだ」
「意味わかんない。っていうか一つ聞いてくれじゃなくて、二つになっちゃってるよ?」
妹の茜は肩を竦め、俺に早く着替えておいでよと言って、リビングへと消えた。
小さく溜息をつき首を横に振る。瞼に焼きついたあの女子中学生の撫でまわしたくなる
ような尻の映像を振り払うように。