突然耳元で野太い声が響いた。
「メェリィィィ〜クリスマァァスッ!」
ああ、そうだ。イブだからってデリバリーピザを食べてコタツで眠ってしまっていたのか…と、
何が自分を覚醒させたのか気付かぬままに身を起しかける。
ああんもう、まだ化粧も落としてないし〜こんな寝顔をサンタに見られるなんて…え?サンタ!?
「それじゃ、確かに届けたよ〜」
背中越しにそう伝えると、サンタらしき人物はベランダから闇に消えていった。
恰好は紛れもなくサンタなのだが背負う袋が不気味に蠢いているのが目に焼き付く。
―――ちょっと!え?泥棒?なんぞこれ?
寝ぼけていた頭が一気に覚醒し、ガバッと起き上がる。
と、テーブルのミカンを押し包みクリスマスケーキ状の物体が天板の上に鎮座していた。
赤と緑と金にデコレーションされてはいるが、明らかに食用ではないのが分かる。
しかも、でかい。
天板に収まりきれずにいる姿は、プッチンプリンよろしくフルフルと震えて崩れてきそうだ。
その身から四方に触手を巡らせた姿は、まるで木の切り株というか頭の平べったい蛸。
しかしながらケーキのつもりなのか、ご丁寧に"Merry X'mas"と頭に書いてある。
座ったまま思いっきり上体をのけ反らし肘で後ずさりしていると、唐突に頭の中に声が響いた。
(まぁそんなに怖がらないでさぁ、まったりいこうよ)
「×△○…あわわっ?ふじこっ!」
(僕らは触手フェチな紳士・淑女へのプレゼント。君は選ばれたのさっ)
その時出し抜けに、隣の部屋の住人らしき悲鳴が聞こえてくる。
「うわぁぁ… ス、スライム??って嘘だろおお?!」
(おや珍しいね。お隣さんも君と同じ人種のようだよ。この聖なる夜、
男性にはスライムっ娘、女性には僕のような紳士な触手が訪れているんだよね)
「ま、ま、まって!そりゃ願ってもないこと…いやいやいや、こういうシチュは夢見たことあるけど
ん?夢なの?って、それでも心の準備がああ〜」
聞く耳をもたぬとばかりに、じたばたと足掻く手足を絡め取り、ブラのホックをはずしながら
ねっとりと脳髄をねぶるように囁きかける触手。
(25日の零時まで時間はたっぷりあることだしね、いっぱい鳴かせてあげるよ…メリークリスマスさっ)