大蔵卿ビーンシュトゥック氏の娘であるクローデッドは、  
“王国”騎士団一等騎士官ヴィルジールの妻となり、  
世の羨望を一身に集めた。  
王国騎士団とは、“王国”においては近衛兵団に次いで格式が高く、  
その一等騎士官ともなれば、  
現代で言うところの大佐・中佐に相当する上級職である。  
もっとも、この“王国”というのは、いまだ、封建体制下にあり、  
また、常備兵制は導入されていないため、  
単純に比較することは不可能且つ無意味であるのだが、  
おおよそのイメージとして、そのように表すのが分かりやすかろう。  
さて、一般的な上級職者ともなると、  
その階位相応に年季も積んでいるのであるが、  
ヴィルジールという男は、中等の中では最上に位置する程度の実力と、  
巧みな渡世術、そして、類稀な美貌を以て、  
弱冠三十一歳にして、一等騎士官の職を射止めたのである。  
彼はさらに、大蔵卿の令嬢で、美女としても名高い、  
クローデッドの心をも射抜き、妻として迎えた。  
彼の僚友達は、彼の射撃の腕前が案山子すら撃ち抜けない程度であるにも関わらず、  
斯くのごとき、赫奕たる大戦果を挙げたことについて、  
当然のように妬みもしたが、それすら通り越し、  
好誼を作るべく、歯の浮くような賛辞を送る者も多かった。  
ともかく、“王国”の誰もが認め羨む、  
美男美女のセレブリティ夫婦が成立したのである。  
 
――――――――――  
 
ヴィルジールの妻となったクローデッドは、  
日々を退屈に責め苛まれていた。  
一等騎士官であるヴィルジールの収入は、決して低いものではなく、  
また、実家である大蔵卿家からの仕送りもあり、  
財貨は金庫などというちゃちなものには収まらず、  
地下の牢獄を改造した倉庫に、見た者が唸るほどに積まれていた。  
ヴィルジールは、経済観念については、寛容というより放蕩に近い男で、  
しかも、資産の安定した供給が約束されていることから、  
クローデッドが、その財産を自由に使うことを認めていた。  
クローデッドはこのため、行商人から珍奇な品物を買い漁った。  
宝石、貴金属はいわずもがな。  
珍獣、怪魚、異国の花樹、美酒、秘薬等々、  
買える物のことごとくを、即決で買った。  
彼女の屋敷に入って、手に入らないものなど、  
ほぼ、存在しなかったと言ってよい。  
ここに、彼女の退屈の一因があった。  
そして、もう一つの要因が、ヴィルジールの不在である。  
貴族に近しい位置に登り詰めたヴィルジールであったが、  
その本分はあくまで武官である。  
そのため、短いときで半月、  
長くなれば半年に亘って屋敷を空けることになった。  
ヴィルジールは、そのためもあって、  
クローデッドに、財産の自由な運用を許したのである。  
ただし、男性関係については、極めて厳格に禁止した。  
 
もともと、さしたる才覚のないヴィルジールが、  
ここまで登り詰めてこられたのは、  
先にも述べたように、巧妙な渡世術と類稀な容姿によるものである。  
万一にも、妻が不貞を働いたなどと世に知れれば、彼の名にも傷がつく。  
それは即ち、渡世術と美貌という二刀のうちの前者が、  
刃毀れを生じるということと同義なのである。  
ヴィルジールは放漫な男であったが、  
その一方で臆病なまでに過信とは無縁であり、  
自らの秘刀を傷めることを、殊更に恐れた。  
そのため、クローデッドの周囲、  
即ち屋敷に仕える者を全て女ばかりにし、  
屋敷に男が入ることを禁じた。  
もし、クローデッドや間男(屋敷に入った時点では、そうとは限らないのだが)に  
言いくるめられ、男性をクローデッドに会わせた者、  
そのことを黙っていた者は、惨たらしく殺し、  
それを密告した者には、思うがままの褒美をとらせると宣言した。  
このためクローデッドは、夫が屋敷にない間、  
虚しく、自身を慰めることしかできなかった。  
 
――――――――――  
 
そんな生活が二年ほど続いたある日のことである。  
ヴィルジールは、遠征軍の指揮を執るため、  
長期に亘って屋敷を空けることになった。  
ヴィルジールは常にも増して女中達に男子禁制を言い含め、  
鼓笛と旗旒を携えて、颯爽と出征したのである。  
今度は、夫が生きて帰ってくるかも分からないにもかかわらず、  
クローデッドは、いつものように上っ面の笑顔で見送り、  
その後は無気力に、自室に籠ってしまった。  
クローデッドが無聊をかこって一週間も経たない頃、  
南の辺境から、行商隊が街を訪れた。  
クローデッドは女中に命じて、その行商達の中で、  
最も面白そうな品を取り扱っている商人を連れてくるように命じた。  
小一時間程で、女中は一人の女商人を連れ帰った。  
女商人は、日除けのためと称する黒い布で全身を覆っていた。  
ゆったりとした闇夜のようなローブを纏い、  
足元も黒皮のブーツで、指の先までも黒絹の手袋で隠していたが、  
僅かに覗いた目元は、クローデッドが嫉妬するばかりに、  
白く透き通る白磁のような肌で、黒い瞳を秘めた切れ長な目尻は、  
エキゾチズムを影として引き、妖艶な魅力を放っていた。  
「南境の珍品・秘宝の数々、とくとご覧ください」と、  
女はクローデッドの前に、次々と品物を並べては、  
その由来を説いていく。  
香木の香を染みこませた貂の首巻、白象の牙を削ったステッキ、  
古代の蝶を閉じ込めた琥珀、東方の女王が纏ったとされるアプサラスのドレス。  
いずれも絢爛にして、奇異。  
豪奢なれども異端。  
王宮の宝庫にもないのではなかろうかと思われるような宝物が、  
次々とクローデッドの眼前に広げられていった。  
しかし、それらにクローデッドは関心を惹かれることはなかった。  
これまでに無数の行商人達から珍奇な品を見せられ、  
それらを金に糸目ををつけず買い漁ってきた彼女には、  
この程度の品々は、ありきたりで、面白みの欠片もないものであった。  
全く興味を示さないクローデッドに、話術巧みな女商人も流石に疲れたのか、  
気に入る品のなかったことを詫びて、荷物をまとめて退出しようとした。  
その時、女商人の袖口から、何かが転げ出た。  
 
それは、根を土ごと黄絹で巻いて球状にした、小さな苗木だった。  
クローデッドは、女商人がそれを懐中に収めようとするのを呼び止めた。  
「それは何かしら」  
あまりに宝物に慣れすぎてしまった彼女にとって、  
みすぼらしいまでの、この小さな苗木は、  
それまでの目を肥えさせるばかりの宝物とは違い、  
一種寂寞とした、異物感を内在させて、  
彼女に何かを訴えてきたかのように思われた。  
「お目が高うございます。  
これは、遥か遥か西の彼方にある異形の大地に生じる、  
“未亡人の木”と申すものに御座います」  
「不吉な名前なことね」  
「左様に御座います。  
ゆえに、御覧に入れるのを控えておりましたわけです」  
「それで、その木は一体どんなものなの」  
「はい。“未亡人の木”は、夫を亡くし、  
身を持て余す寡婦を慰めてくれるのです」  
「木が慰める? そんな馬鹿馬鹿しいことがあるの」  
「わたくしも、その様子は直にお目にかかったことは御座いません。  
しかし、この木が原生する地の住人は、  
幾人もこの木の虜となっているのでございます。  
それほどまでに、強く、不思議な力で、  
未亡人の孤独を慰めるので御座います」  
クローデッドは、その話に興味をそそられた。  
彼女が女商人にその“未亡人の木”を買いたいと告げたところ、  
女商人は存外のことと喜び、ただ同然の値を申し出た。  
クローデッドは、女商人に心づけとして、  
皮袋一杯の金貨を渡して、帰した。  
 
クローデッドは早速、“未亡人の木”の手入れにかかった。  
女中に命じて、空のワイン樽を寝室に運び込ませ、その中を砂で満たした。  
その砂の詰まったワイン樽に、クローデッドは手ずから苗木を植えた。  
庭師の女中は、砂ばかりのところに木を植えても、  
普通の植物は成長しないことを説いたが、  
クローデッドは、全く気に留めることもなかった。  
それが、女商人の残した“未亡人の木”の栽培方法であった。  
クローデッドは、女商人に言われたとおりに、“未亡人の木”を育てた。  
“未亡人の木”は、流石は辺境の植物というべきか、  
恐ろしい速度で成長した。  
クローデッドが苗木を求めてから一週間と経たぬうちに、  
“未亡人の木”はぐんぐんと蔓を伸ばし、  
四面ある壁の一面を全て埋め尽くし、床にまで這い進んでいった。  
正気のものであれば、この異常な成長に恐怖を覚えたであろうが、  
日々の退屈に感覚を麻痺させられていたのであろう、  
クローデッドは恐れるどころか、退屈を覚えさせない成長振りに喜ぶほどであった。  
“未亡人の木”は十日とかけず、寝室一杯に蔓延った。  
 
――――――――――  
 
“未亡人の木”を植えてから十三日目の夜のことであった。  
クローデッドは夜着を脱ぎ、ベッドに入ろうとした。  
白い、清潔なバスローブが、床一杯に這い繁った蔓と葉の上に落ちた。  
クローデッドが、白い裸身を毛布に潜り込ませようとした時、  
不意に、視界の端に留まったものがあった。  
クローデッドは、揺らめく蝋燭の明かりの向こうに目を凝らした。  
その先には、“未亡人の木”を植えたワイン樽と、  
そこに、赤々と実る果実があった。  
クローデッドは、女商人の言葉を思い出した。  
「“未亡人の木”の木は、二週間ほどで赤い実をつけます。  
その実は、味覚を超越する素晴らしい感覚をあなたにもたらし、  
あなたはおそらく、“未亡人の木”を大いに気に入り、  
手放せなくなることでしょう」  
今まで、幾人もの商人がその手の誇大な騙りをしてきたが、  
クローデッドは、この“未亡人の木”の異様な成長力に、  
ときめきとでも言うべきものを覚え、  
女商人の言葉に信を置いても良いという気持ちになっていた。  
クローデッドは、幾らかの躊躇はあったものの、  
赤い果実をもいで、それに白い歯を突き立てた。  
途端に、えもいわれぬ程の甘い感覚が、クローデッドの感覚を満たした。  
それは舌に始まり、喉を抜けて腹に下り、  
臓腑をたちまちに甘ったるい感覚で埋め尽くした。  
クローデッドの体は、その甘美な感覚を、四肢の先端は勿論、  
シルバーブロンドの髪の隅々にまで充満させた。  
蕩け、崩れ去りそうな感覚に捕らわれる彼女の脳髄とは裏腹に、  
全身の神経は常にないほどに鋭敏に研ぎ澄まされ、  
痛いばかりの快感を流し込んでくる。  
ほの紅い乳首であったり、  
内から粘液を滲み潤ませる秘裂であったり、  
菫色にひくつく、後孔の窄まりであったり、  
最初に甘美な感覚をまともに受けた紅い舌などは、  
夜気に冷えて、冴え渡った空気さえ、  
髪の毛よりも細い、幾万本もの針で刺し覆われるような、  
異常な感覚を察知し、危険信号を彼女の脳に送った。  
 
だが、それすらも彼女の脳は快感と認識して、  
餓えた畜生のように、より一層の快楽を希求してきた。  
不意に彼女の下半身に、撫でるような感覚が奔った。  
それは、夫であるヴィルジールの愛撫よりなお、温かく、優しく、  
ゆっくりと、彼女の下肢を這い登った。  
クローデッドは焦れた。  
身を捩り、早く彼女の奥、女だけが持つ第二の思考器官とでも言うべきそこを、  
貫き穿つよう、急かしたかった。  
しかし彼女の四肢は、いまや溶けて崩れてしまったかのように弛緩して、  
彼女の意識の統制下から逸脱してしまっていた。  
クローデッドは、狂気にとり憑かれそうになった。  
どれだけの時間が経ったかなど、考えるだに愚かしい。  
夫であるヴィルジールの帰宅を待つ日々の、  
数千倍、数万倍の忍耐を要した。  
しかし残酷にも、その下肢を這い進む感覚は、  
全く急ぐ様子もなく、彼女の体を這い進んだ。  
クローデッドは、その瞬間に渇望し、恋焦がれた。  
その感覚は、恐ろしく緩慢ながらも、  
滑稽なほどに忠実に、彼女の秘められるべきそこへと這い進んだ。  
熟れ、濡れて、潤みきった、彼女の体内へ、  
その感覚は、じっくりと確かめるように潜り込んでいく。  
彼女は、それを感じたとき、  
えも言われぬ羞恥と屈辱と背中を合わせた悦楽の怒濤に呑み込まれた。  
じりじりと、その感覚は彼女の体内を侵し、  
彼女の思考を掻き乱していった。  
果たして、それがいつだったのか。  
その感覚が、膣内を埋め尽くし、子宮にへと妖しい指を掛けた時か、  
引きつる肛門を穿ち、その内奥へと流れ込んだ時か、  
はたまた、だらしなく涎を溢れさせるだけの器官に成り下がった  
口腔にへと潜り込んだ時か、  
彼女は、弛緩しきった声帯を震えさせることもなく、吼えた。  
その声は、彼女の脳内だけに響き、  
彼女の意識はそのまま、恐怖すべき法悦の波頭に呑まれ、砕かれ、消えた。  
 
―――――――――  
 
翌朝、朝食時間になっても下りてこないクローデッドを訝しみ、  
女中の一人が彼女の部屋の扉を叩いた。  
普通の民家ほどの広さは優にあるクローデッドの部屋であったが、  
その扉の隙間からは、すでに細い蔓が無数に廊下に這い進んでいた。  
女中が何度ノックしても、返答がない。  
女中は「失礼します」と断りを入れ、ドアを開けた。  
そこは、青々と繁る蔓に満たされていた。  
その、元はベッドのあった傍ら、いつも朝に呼びに来ると、  
クローデッドが立っていたところに、  
あまりにも異形で、悪趣味な物体があった。  
全身に蔓を絡ませた、クローデッドであった。  
クローデッドは、女陰、肛門、口腔、鼻腔に、無数の、  
それこそ細太様々、夥しい数の蔦を潜り込ませ、  
膝立ちのまま事切れているかのようだった。  
木質化して、太く、血管のように道菅を脈打たせるそれらの蔓は、  
裂けんばかりにクローデッドの膣口を押し広げて蠢いていた。  
女中は悲鳴をあげそうになった。  
しかし、声帯が引き攣り、「ひっ」と一声あげた他は、  
それ以上の声は出なかった。  
その声に反応したのか、クローデッドの眼球が回った。  
クローデッドの眼球は、眼の周りの筋肉が弛緩しているにもかかわらず、  
瞳孔だけで、不気味なまでに歓喜の表情を湛えた。  
蔓が、女中にヘと伸びた。  
植物とは思えない、肉食獣のそれにも似た俊敏さで、  
蔓は女中の手脚に巻きつき、瞬く間も与えることなく、その自由を奪った。  
木質化し、硬く筋張った蔓が、女中の体を這い進む。  
 
乾いた蔓が女中の女陰を、肛門を、口腔を、鼻腔を犯す。  
女中は必死にもがいたが、手足を締め上げる蔓は、  
まるで鋼の枷のように、きつく彼女を捕らえて離そうとしない。  
女中の粘膜に覆われた柔肉を、  
あまりに粗野で、無骨な、乾ききった硬い蔓が擦りたてていく。  
疼痛とも快感ともつかないその感覚は、  
次第に恐怖に支配された彼女の思考に、インクが紙に染みこむかのように、  
徐々にその域を広げていく。  
蔓に蹂躙された女中の孔と言う孔は押し広げられ、  
粘膜の乾燥を防ぐべく、非随意の反応によって分泌された粘液が、  
それらの孔から溢れ、流れ滴り、  
乾いた蔓を濡らしていった。  
甘い香りが、女中の神経を蝕んでいく。  
痛いとも、快いともつかぬ感覚が、女中の体を満たしていく。  
無数の硬く筋張った蔓が、体内に張り詰めていく感覚に思考を犯されながら、  
女中は、クローデッドの哄笑を聞いた。  
それは、征服者とも、被征服者とも取れぬ、  
圧倒的な愉悦をほしいままにする、妖しい笑いだった。  
女中の意識は、途絶えた。  
(了)  
 
 
 
 Widow Solacer後記 
 
“未亡人の木”は、“王国”運輸省検疫局、並びに王立植物園刊行の  
『持込を制限すべき植物の一覧』中の  
「いかなる理由があっても輸入を禁制すべし」の項に見られる。  
“王国”暦162年刊行の版では「研究・学術目的においてのみ持込を認む」に  
カテゴライズされていたが、  
同169年の版にては「いかなる理由であっても禁制すべし」に分類される。  
この分類変更の契機となったのが、“王国”暦195年に起こった  
「ヴィルジール婦人事件」である。  
この「ヴィルジール婦人事件」では、“王国”一等騎士官ヴィルジールの妻、  
クローデッドが密輸された“未亡人の木”を栽培し、  
その虜且つは温床となった事件である。  
この事件からすでに一世紀余が経つが、未だに生々しく語られる事件である。  
この事件は“王国”封建体制を打ち崩し、  
人民主義(本邦においては社会主義乃至共産主義と解される)に  
及ぶ契機となったとされる。  
その辺りについては社会史学者に委ねるとして、  
本稿においては“未亡人の木”の生態について述べたい。  
“未亡人の木”は南西の未開の大陸に原生する植物である。  
乾いた土に根を下ろし、蔓を伸ばして繁茂する。  
その増殖方法は極めて異様で、  
“未亡人の木”自体は、雄性の因子しか持たず、  
他の雌・雄両性を有する種の、雌性と交雑することで子孫を残す。  
その果様実(果実にみえるが、種子はない)には  
非情に依存性の高い媚薬成分が含有され、  
一度その実を食べたものは“未亡人の木”の支配下に置かれる。  
特に栽培者の体液、たとえば汗や尿、血液等を与えられて育った固体の果様実は、  
その栽培者に対して、特に適合した幻覚や性的興奮を催させる。  
“未亡人の木”は、その果様実を食べた者を、最初の交接体として媾合し、  
その胎内にある卵と交雑して、次の世代を産み残す。  
“未亡人の木”は元来枯渇・荒廃した地に生じた植物であることから、  
培地には乾いた砂地を好み、捕らえた他の生物から栄養素や水分を摂取する。  
 
“未亡人の木”単体では、植物としては素早いものの、  
見た目には緩慢な動きしかとれないが、  
媾合後は、交接体に寄生し、その体液を栄養とすることで、  
俊敏な動きをとるようになる。  
「ヴィルジール婦人事件」においては、  
ヴィルジール婦人を温床に、“未亡人の木”は屋敷の女中を餌として成育し、  
“王国”城内面積の74%、王城内人口の62%を捕食し、  
遠征に出ていた直轄軍の退却を強いることとなった。  
一等騎士官ヴィルジールはこの始末を取るべく、  
帰国し、自身の屋敷に向かったが、その足跡は166年以降記されておらず、  
概ね、“未亡人の木”に捕食、殺害されたものと考えられる。  
「ヴィルジール婦人事件」は198年初頭、冬季に木の植物の動きが弱った際に、  
決死隊が突入、ヴィルジール婦人クローデッドを刎首することで、  
枯死せしめ、解決をみた。  
この事件を契機として、“未亡人の木”の危険性が十分すぎるほどに認識され、  
国教会、運輸省検疫局、王立農林研究所の合意と、  
国王の承認により、“王国”内への持込が禁止され、  
絶対的禁忌として扱われるようになった。  
しかしながら、その果様実の持つ媚薬効果を求め、  
“王国”封建体制崩壊以前から、ひそやかながらに栽培され、  
その苗木や果様実が、闇市場に出回っていたこともまた、事実である。  
 
(ゲンナジー・エンピクス著『生物災害論』より)  
 

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