都市部から少し離れた、とある街。
その街にある女子校に通う、一人の美少女――冴木かな。
才色兼備で明朗快活、大和撫子と呼んで差し支えない彼女にも深い悩みがあった。
それは、彼女の幼馴染みの少年のことである。
少年は小学校の頃から運動が非常に苦手で、運動会や体育大会を何よりも嫌うような男の子だった。
また、かなのような美少女と幼馴染みというだけで目の敵にされたりもしていたという。
かなは少年が好きだったし、これから先も少年以外にファーストキスも処女もアナルヴァージンも捧げるつもりはない。
のだが・・・・・。
「あー!また食べてないぃ!」
「五月蝿いな、かなは・・・」
扉越しに聞こえる面倒そうな少年の声に、かなは頬を膨らませる。
朝、かなが早起きして少年のためにと作って少年の部屋の前に置いた食事に、全く手が付けられていないのだ。
「うるさいな、って・・・」
「かなみたいに、恵まれたスペックじゃないからな。俺は、一人でいいのさ」
「だ、ダメだよぅ。私、前にも言ったよね?好きで、好きで、たまらないんだって・・・保留されっぱなしなのに・・」
「俺みたいな運動音痴の頭でっかち、かなには似合わないだろ」
帰った帰った、と面倒そうな声がして、次にはゲームの音楽がかなの耳に入ってきた。
誤魔化されてばかりの日々が、ずっとずっと続くのだろうか、と、かなは不安になりながら、自分の作った料理の乗った盆を持って、自宅へと帰ったのだった。