どこの世界か、いつの世か  
毎日帆をあげる船が行きかい、東西南北の文化が入り混じる異郷ともいえる港町の、  
裕福な家が並ぶ一角。  
その中では、比較的質素なこの家で、その主である若い女が  
寝室の窓より月夜の中庭を眺めていた。  
 
東の民族の血を引いている流れるような黒髪の美しい女主人は、  
自らの民族が良く着る簡素な寝着と、ゆったりとした絹のショールを羽織っている。  
 
雲に隠れていた月明かりが、女を照らした時、音もなく異変が起きた。  
風もないのにショールが動き出し、わずかな衣擦れの音を残して、女の襟元に忍び込んだのだ。  
 
その絹のショールは、昼間に訪れた馴染みの行商が、薦めた物で、  
南方より取り寄せた珍しい品との事。  
 
最上級の絹のすべる様な手触りの糸と、  
布を通して透けて向こうが見える程の高い織り技術で作られた、  
羽毛の様な不思議な軽さ。  
なによりうっとりする芳香を放つこの布が気に入り、購入した。  
 
これを身にまとった女性は美しくなる「天女の羽衣」だと  
冗談めかせて行商は帰っていった。  
 
胸元の異変に女が気づいた時には、片側の乳房は絹布に覆われていた。  
 
絹布が寝着の中で突然波打ち出し、乳房に刺激を与えだした  
加わる絹の感触は決して嫌なものでは無いが、突然の出来事に女は慌てて、  
ショールを寝着から抜こうと手を伸ばした  
しかしその手に絹布が巻き付き、両の腕を包み込んでしまうと、突然甘い香りが発しだした。  
香りを嗅いだ女の思考に、瞬時に靄がかかる。  
依然はっきりとしている意識は、この異常な状況に警鐘を鳴らしているが、  
なぜか悲鳴をあげる事すら出来ない。  
そうこうしている内に、寝具の上に身を転がされた女の小柄な躰に、  
明らかに長さの増した絹布が、意志を持つかの様にゆったりと巻き付きだした。  
 
滑る様な手触りの絹布に巻き付かれ、全身を撫でられるその感触は、  
千の羽毛で撫でられる様な感覚で、いつしか女の口からは艶の帯びた吐息がもれ始める。  
 
両の乳房を覆った絹布は、女の悦楽を引きだそうと様々に波打つ。  
時には、渦を巻く様に。時には、掃くように。  
すでに帯は緩み、はだけた寝着からこぼれてしまったたわわな乳房が、  
透ける布の下で、絶えず形を変える。  
まるで軽い空気に、胸を揉まれる様で、女の吐息は喘ぎ声に変わっていった。  
一方布の下から存在を主張する、その乳房の頂きは、絹の布で磨かれますます硬さを増していく。  
時々、波打つ布が頂きを乳房に押し付ける度、女の脊髄に甘美な痺れが走り躰が痙攣する。  
 
本当の天女の羽衣か、それとも妖しの布か、サラサラと絹ずれの音を立て、  
くまなく全身の素肌をなで上げていく動きに、女の意識もとろけだし、ゆったりと絡まる絹布に、  
身を預け悶える。  
着崩れた寝着の女の姿は、端から見ると、羽衣に乱れ戯れている淫靡な天女の様である。  
 
次第に絹布が乳房をなぶる動きも大胆になっていく。  
乳房の頂きの覆う布は、別の生き物のように、蠢動する。  
女は悶えながら、絡まる布の中身をよじるが、張り付いた様に覆う絹布は、たわわな乳房を弄ぶ。  
突然、人が摘んだかの様に、縒りあがった布に、硬くなった乳首が巻き込まれる。  
柔らかな絹の繊維が乳首を締め上げる、今までに経験したことのない、優しくも強い刺激に、  
甘い悲鳴をあげた女の躰は弛緩した。  
 
女を甘く鳴かせる全身への攻めの中、全身の力が抜けたの察したのか、  
大蛇の様に鎌首をもたげた妖布の裾が、波打ちながら両脚の間に滑り込む。  
尻の谷間から、白い脚の付け根に湧く女の泉に、絹布の大蛇は、体をこすりつける様に通り抜ける。  
弛緩したに関わらず、新たな絹布からの甘い攻めに、女の腰は跳ね上がる。  
 
繊細なガラス細工を布で優しく磨く様に、秘部を撫でるかと思えば、  
綱の様に縒り合わさって花弁を荒々しくこすりつけ、また布の皺が瘤の様に、泉の底を浅く削って通り過ぎる。  
様々な形に変化する絹布に秘部を翻弄され、女は絶えず歓喜の喘ぎ声を上げる  
妖布は女の泉から溢れ出す蜜を吸い上げ、ますます艶が増していく。  
強弱をつけて秘部をこすり上げる妖布の様子は、明らかに女を高みに連れて行こうとする動きだ。  
いつしか、女の声はすすり泣きに変わっていた。  
 
女の泉の奥から顔をだした肉の芽へは、結び目の様な連なった瘤が弾いてい行き  
その度に女のまぶたの裏に、火花が飛び散る。  
悪戯な結び目一つが、肉の芽に絡みつき根元を締め付ける。  
限界まで追い込まれていた女への、最後の一撃となる快感の電気が脊髄を走る。  
 
絡みつく布の拘束の中、精一杯を弓なりに白い身体を長々とそらせ、女は果てた。  
 
 
女が美しくなったと、最近近所での話題だ。  
気のおけない女の友人の一人が、好い人が出来たかと尋ねると、女は妖艶な笑みを返したと言う。  
 
今夜も月夜  
ますます艶を増した薄く透ける絹のショールを身にまとった女が、月光差し込む寝室に入る。  
羽衣と戯れる淫らな天女がのむせび泣きが聞こえてきた。  
 
[EoF]  
 

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