部屋の呼び鈴を鳴らすと、額に垢で黄色く汚れた皮膚電極バンダナをつけた師匠が慌てるように出てきた。  
「よお、アリア。待っとったぞ」  
慌てていたらしく、首筋のインポートリングからはコードが垂れ下がっており、  
接続ソケットがひざ元でぶらぶらと揺れていた。  
「まあ、上がってくれ」  
部屋の中は相変わらず雑然としており、様々な機械と酒瓶が雑然と置かれていた。  
 
私は部屋に入るとすぐに発熱植物に手をかざし、  
暖をとった。  
「うう。さぶい。こんな寒い日になんの用?なんか、でかい仕事でも入ったの?」  
いきなり電話で呼び出しを受けた私は、雪のふるくそ寒い中、  
師匠のアパートまで歩いてきたのだ。  
正直、けんな寒い日は家でのんびりしていたいところだが、  
師匠の呼出しなら仕方ない。  
 
 
スラムでゴミを漁っていた私を拾ってくれたのは師匠だった。  
行き場のなかった私に生きる道を示してくれた。  
すなわち私にコンピューターカウボーイーーーすなわちハッカーとしてのイロハを教えてくれたのだ。  
師匠は厳しかったが、他に生きる道のない私はこの道にのめり込んだ。  
次第にその道では、ちょっとした名前にまでなったのだ。  
 
 
「うん……まあ、ちょっとな。……来てくれ」  
師匠の手招きに呼ばれて、私はいつも仕事で使っているコンソールデッキの前に立った。  
コンソールデッキから伸びるコードの、ソケットを師匠は私に無言で差し出した。  
私は首筋のシュレーンリングにそれを差し込み、ネットな中に没入した。  
 
まぶたの裏で様々な記号や文字が無数の列を作って、  
めちゃくちゃに変色しながら高速でスクロールしていく。  
やがて、それらはだんだと行間を狭くしていき一つの大きな光となり、  
視界は白一色となった。  
 
気がついたとき、私の目の前に灰色のピラミッドがそびえ立っていた。  
しかし、いつもと様子が違っていた。  
いつもなら、ピラミッドを構成しているブロックの一つ一つが、  
テレビのように様々な映像を流しており、  
それが視覚化された接続先を示しているのだ。  
エロサイトから、国防省のサーバー、  
はては銀行口座のオンラインといった、様々な電子の枝への入り口を普段なら  
指し示しているのだが、  
どういうわけか、今日はピラミッド全体が、  
一つの巨大な激しい砂嵐を表示していた。  
 
次の瞬間、ピラミッドの砂嵐は止みそこには師匠の顔が映った。  
ーーー師匠の腕には私が抱かれていた。  
つまり、ネットに意識を没入させて抜け殻の私をーーー。  
「師匠!」  
私は叫んだ。  
ーーー正確に言えば、師匠のところに繋がっているはずの通信回線に、電信した。  
ピラミッドに映し出された、師匠はニヤリと笑う。  
「この日を待っておった。おまえを犯す日を……。おまえを拾った日からのう」 そう言って師匠は、私の本体に唇を重ねた。  
ネットに没入した私にはなんの感触もないとは言え、  
貪るように私の唇を味わう、師匠の姿に私は悪寒を覚えた。  
「……なんで」  
私は師匠に問いただした。  
口でなんだかんだ言いながらも、師匠に受けた恩は忘れたことがなかったし、  
実の父親のように思っていたからだ。  
「……なんで?馬鹿が!こんな理由でもなかったらだれが、貴様みたいなガキを拾うか。  
わしはこれだけが楽しみでのう。本人の見ている前で動けない身体を犯すのが。  
おまえ以外にも……確か五人くらい犯したかな」  
そう言うと、師匠は私の上着の中に手を入れて、いやらしく胸を触りはじめた。  
私は急いでネット接続を切ろうとするが、いくらやっても回線が切れない。  
「ハハハ。無駄無駄。接続が切れないように細工させてもらった。  
そこで自分が犯される姿をとくと見ておけ」  
巨大なピラミッドの中で蹂躙される自分を前にしながら、  
私はどうすることもできずただ途方にくれるしかなかった。  
 
「自分がなにしてるのかわかってるの?」  
通信回線にチャンネルを合わせて、私は師匠に怒りを込めたメッセージを飛ばした。  
「おお……わかってるよ」  
ピラミッドに映し出された師匠は、私の声など意に介さないように、  
私の胸を撫で回すように触りながら  
私の唇を貪っていた。  
ピラミッドに映し出された私は何事もないように、  
目を閉じて寝息を立てていた。  
感覚がないとは言え、目の前で自分の身体がいじくり回されるのは  
良い気分ではなかった。「うむ……やはり若い娘の唇は美味しいの」  
スプーンでゼリーを掻き回すような音が、ピラミッド全体から響いてくる。  
「……いい人だって信じてたのに」  
「……充分にいい人じゃよ」 美味しい飴玉を、無理矢理口から引き抜かれるように  
ちゅぽんと言う音を立てながら師匠は私の唇から、自分の唇を外した。  
「……わしは充分にいい人じゃよ。こうやって、おまえさんに、  
世の中には善人ばかりじゃないないと、教えてやるんじゃから」  
そう、言うと師匠は私の上着を脱がしはじめた。  
力無く万歳をさせられた私の身体は、なんなく上着をめくりあげられ、  
ブラジャー姿にさせられた。  
ブラジャーを捲くりあげられて胸を露出した私の身体は、やはり平和そうな顔をして、寝息を立てているだけだった。  
 
私の身体を自分の股の上にのせると、  
師匠は背後から手をはわしてじっくりと私の胸を直接揉みはじめた。  
「若い娘の肌はやはり……」  
そう言って乱暴に扱われる自分の姿から私は目を逸らしたかった。  
しかし回線が切れない以上それは不可能だった。  
目の前のピラミッドは物理的に存在しているのではない。  
ましてや、私の網膜に映っているのではない。  
直接私の脳内に投影されている光景なのだ。  
 
「やめてよ!」  
私の叫びをあざ笑うかのように、今度は私の乳首をつまむようにいじりはじめた。糸をよじるように、  
中指と親指で私の乳頭をつまわすと、こね回すように指を動かし続けた。  
「さて、おまえの感度はどうかな」  
同時にもう片方の乳首に唇を近づけ、ちゅうちゅうと  
音を立てながらむしゃぶりつくように吸いはじめた。  
胸に唇を押し付けるようにうずめたかと思えば、  
吸い込みながら乳首を引っ張る。  
吸引されるように、引っ張られる私の乳首は、乳房から噛むみちぎられそうだった。  
「いい顔じゃ」  
そう言うと師匠は、乳首から口を離して、カメラ目線になった。  
片手で乳首をいじりながら師匠は言った。  
「こちらから、おまえの顔は見えておる。  
ネット内に意識を閉じ込められたおまえの姿がな。  
……そうじゃ、その顔じゃ。  
そうやってネットの牢獄で悔し顔を作りながら、」  
わしを興奮させるんじゃ  
 
人を小ばかにするような表情で、師匠は高笑いをあげると、  
再び私の乳首に唇を寄せた。  
今度は蛇のように、舌先だけを出して私の乳頭を中心に、  
ねぶるようになめ回した。「う……うん」  
ピラミッドの中の私、小さく喘ぐ。  
「ハハハ。意識はがネットの中にいても、身体が反応するとは……  
おまえさんの感度はよっぽど良好なんじゃな」  
私は、全身が身震いするような感覚に襲われた。  
こんな爺さんに触られて感じるわけがないーーー。「そんなわけないでしょ。早くここから出して」  
「安心しろ。ちゃん出してやる」  
師匠は、舌を動かすのをやめてこちらに目線を向ける。  
「…………?」  
「わしがおまえさんの身体に挿入して、盛大に中にだしてやる瞬間に、おまえさんの  
意識を本体に戻してやる。そのとき、おまえさんがどんな反応をするか楽しみじゃわい。  
 
わしが中に出すとき、おまえさんをネットの中から出す。  
おもしろいじゃろ」  
そう言って馬鹿笑いをすると師匠は再び私の乳首をいじる作業に戻っていった。  
 

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