日が暮れもう時計は19時を回っている。
昔はこんなことなかったのに。
中学校に入ってから勇樹は変わった。新しい友達、新しい体験。
そりゃ引っ込み思案だった勇樹が外に出るようになったのは嬉しい。
だからといって門限を破ったり家のことをなおざりにするなんて・・・
父の部屋に尋ねると父はビールの飲みながらテレビを観ていた。
「お父さん、勇樹がまだ帰ってこないの」
「あいつももう13歳だろ。そりゃ夜遊びの一つや二つするさ。
お前もお前も今年は大学受験だろ。あいつに構ってる暇があったら勉強しろ」
父はしつこい勧誘セールスを追い払うように冷たく言い払った。
この人はいつもこうだ。10年前に母親が死んでから子供に無関心。
今も私や勇樹に無関心でテレビを観ている。しかしテレビにも無関心なのだ。
返ってくる返事がわかっていても腹は立つ。自分の息子をなんだと思っているのだ。
玄関を開けて外にでる。人影はしない。いつになったら帰ってくるのか。
こんなことなら携帯をもたせたほうがよかったか。いやしかし中学1年にはまだ早い。
などと思案していたら人影が見えてきた。あの体格はおそらく勇樹で間違いないだろう。
また疎ましい顔をされるんだろうが言わなければらない。
「勇樹?どこに行ってたの!?」
思った通り「またか」の表情で下を向く。
「ごめん。友達ん家に行ってたんだよ。」
「今何時だと思ってるの?門限過ぎてるわよ」
「ごめん。でも友達の家の人なんにも・・・」
「人は人!家は家!」
勇樹はうんざりした様子で溜息をつく
「わかった。できるだけ早く帰ってくるよ!」
声を強め私の横を通りすぎようとするが私が腕をつかむ。
「ちょっとまってまだ話は終わってないわよ!」
「もううるさいなぁ。いい加減ほっといてくれよ。僕の勝手だろ?」
「わたしはあなたのことが心配だから・・・」
勇樹が腕を振り払い家の中に入っていく。