そのまましばらく桃姉をあやすように抱き合っていたが、不意に桃姉がそっと顔を上げ、俺の瞳を覗き込んできた。  
「ねえ、ハル…………しよ?」  
桃姉が言わんとしていることが何か、桃姉の言葉が何を指しているか、俺には一瞬でわかってしまった。なぜなら俺も少なからず、それを期待していたからだ。  
しかし俺は桃姉の言葉を理解した上で、あえて良識的にそれを諌めようとした。  
「いや、しよって言われても……会って早々、しかもこんな昼間っから……」  
盛りの付いた獣じゃないんだから、と桃姉を制止する。しかしその言葉とは裏腹に、胸中では期待に心揺れていた。自制しようとする一方で、久しぶりに桃姉の身体に触れている事が興奮を煽ってくる。  
俺の諌める言葉を聞き、桃姉は寂しそうに眉根を寄せる。すでにその瞳の奥は情欲で濡れているように見えた。  
「ダメ、なの……?会えない間、私ずっと……ずっと寂しかったんだよ?五日間もハルに会えなくて、エッチもできなくて……原稿終わってからずっと……ていうか原稿やってる時もハルの事で頭いっぱいで、最後の方なんて何書いたかもあんま覚えてないくらいだったの……」  
それは……むしろそんな原稿持って行ってしまった柿沼さんが心配になってしまう。大丈夫なのだろうか?  
「ちゃんと一通りチェックしてたから大丈夫だよ。それより……ね?」  
再び濡れた瞳で覗き込んでくる桃姉。ことここまで来てしまえば、もはや断るに理由もなかった。実際、俺の方も桃姉に会えなかった寂しさと溜まった欲求がこれ以上は抑えられそうになかった。  
だが、俺がその気になった途端、口に出してそれを伝える前に、桃姉には俺の意思がわかっていたようだった。気が付いた時には眼前に桃姉の顔、そして唇に柔らかな感触。先手を取ったキスをされていた。  
「ん……ふぅ、んん……」  
口から吐息が漏れる。お互い二度と離すまいと言わんばかりにたっぷりと時間をかけてキスをする。くちゅくちゅと舌が絡み合い、口腔内の全てを舐めとろうかという勢いで激しく蠕動する。  
「んんっ……はぶ、んちゅう……はぁ、んむぅ」  
口の中で暴れまわる桃姉の舌は熱く、ぬらぬらと艶めかしく動いてくる。まるでがっついた獣の様だった。俺も負けじとめちゃくちゃに舌を動かし、荒々しく責め立てる。  
極限の飢餓に見舞われたかのごとく、俺たちは我を忘れてディープキスを続けていた。  
「…………ぷはぁ!はぁ……はぁ、くはぁ」  
やがて息が続かなくなり、本当に長い時間触れ合っていた唇が離される。最後まで未練がましく絡まり合っていた舌が解け、透明な唾液の糸の橋が架かった。  
「はあぁ……ハルぅ……」  
桃姉が嬉しそうに俺の名を呼んできた。眼鏡の奥のその瞳にどこか満たされたような喜びの色があるように見える。  
いや、恐らく気のせいなどではない。おあずけにされた時間、離れていた間に俺たちは強烈にお互いを求め合っていた。それが今ようやく再び触れ合い、キスをする事ができた。  
今のディープキスは単なるキスではない。俺たちは今、会えないという餓えからお互いを貪り合い、ようやく少し満たされたのだ。  
きっと桃姉から見た俺も同じように満足そうに映っているだろう。なぜなら俺自身がはっきりと胸に不思議な充足感があるのを感じているからだ。  
キスの興奮の余韻と、胸の充足感を味わいながら俺たちはしばらくぼんやりと見つめ合っていた。  
やがて桃姉が恥ずかしそうに身を捩り、両腕を身体の前で交差させる。豊かな胸が腕で持ち上げられ、そのボリュームを強調してきた。  
「ね、ハル……その、おっぱい……弄って?」  
切なそうにおねだりに俺は思わずゴクリと唾を飲む。ジャージの中に着ているTシャツの上からでも余裕でその大きさを誇示している。何度となく身体を重ねているが、それでも素晴らしいという感想しか出てこなかった。  
 
「ふぁ……」  
無言で柔らかい膨らみに指を沈めると、桃姉が小さく声を上げた。微かな嬌声は可愛らしく、一瞬この人が自分より七つも年上だということを忘れてしまいそうになる。 ※  
「はぁ、んんっ……ハルの触り方、やっぱ上手いよぉ……」  
桃姉が甘えるような声で俺の手技を褒めてくる。胸を揉みしだくごとに俺も桃姉も熱がこもるように興奮していくのがわかった。俺は無言でTシャツを捲ると、中の生乳に手を伸ばした。  
「桃姉、またノーブラだね」  
「さ、さっきまで寝てたんだもん……急にハルが来るからだよ」  
恥ずかしそうな桃姉の言い訳を「そりゃゴメンね」というあまり誠意のない謝罪であしらい、俺は更に愛撫を続けた。  
むにむにと指を押入れてやると、自在に形を変え、従順なまで手に吸い付いてくる。何が詰まってるのかと不思議に思えるような大きさのバストは重さもそれなりで、ずっしりと手に心地よい重量感を与えてきた。  
「桃姉のおっぱい、すごい大きくて……柔らかいよ」  
「あんっ、やあぁ……」  
俺が囁いた言葉に少し恥ずかしそうに身を捩る。それだけでまた少し胸がプルンと揺れ、俺の目を楽しませた。再びその膨らみに手をかけると今度は下から掬い上げ、そのままじりじりと持ち上げていく。  
「え、ちょ、ハル?…………んあぁっ!」  
やがて乳房が桃姉の顔の辺りまで持ち上がったところで、俺はぱっと掬い上げていた手を引っ込めた。支えがなくなった重い塊が重力に引かれブルンッ!と大きく弾む。  
……大迫力の光景だった。  
まるでゴム毬が弾むかのような乳揺れ。それをもう一度見たくて俺は再び乳房を掬い上げていく。  
「んっ……やぁ!…………あはぁ!……ちょ、ちょっとぉ、ハルぅ!おっぱい……遊ばないでぇ!」  
何度も繰り返し弾ませていると、少し乱暴に扱われたことに桃姉が抗議の声を上げる。ただ本気で怒っている訳ではなく、その声色にも少しばかり快感の気が混じっていた。  
「弄ってって言ったじゃん」  
「そう、だけど……んっ!」  
「それじゃ、こんなのは?」  
俺はそう言って両の乳房の先端に指を当てた。少し硬くなっている乳首を指の腹で擦り、何度も何度も往復させる。クリクリと指で巧みに転がしてやると、どんどんそこは硬く大きくなっていき、ついにはプックリと背伸びでもしているかのように膨れ上がっていた。  
「はぅ……ん、ふ……はぁ、んん」  
悩まし気な荒い息を吐き、桃姉が切なそうに視線を送ってくる。俺はニヤリと悪戯っぽく笑うと、硬くしこり立った両の乳首を摘み、ぐいっと上に釣り上げた。  
「んあぁっ!? やっ、ハル……んぁっ、くひぃ!……お、おっぱい、ひっぱっちゃダメぇ!」  
嬌声混じりの甘い悲鳴が上がる。一見嫌がっているような拒絶のセリフだが、桃姉の顔は刺激に酔ったように蕩け、よく見れば下半身は微かにヒクヒクと震えていた。  
明らかに感じている様子の桃姉に俺はさらなる責めを敢行する。たっぷりとした柔肉を両手で持ち上げ、ぎゅむっと一か所に集めるように押さえつける。すると先端の突起が擦れ合うほどに近づき、桃姉が「くぅんっ!」と声を上げた。  
「はむ」  
「ああっ!? やあぁっ!」  
二つ並んだ乳首をパクリと口にくわえ、硬くなったそれをそっと甘噛みしてやる。桃姉は面白いほど反応を見せ、ビクンと腰を跳ねさせた。  
「ひあっ、あ……く、ひいぃぃ!や、ダメぇ、おっぱい……両方とも吸われるの、気持ちいぃ!」  
敏感な乳首をふたついっぺんに吸引される刺激に桃姉がよがり声を上げた。桃姉の胸の大きさがあってこそできる芸当だ。口の中がいっぱいに柔らかな乳肉と硬い突起を含み、コロコロと舌先で弄んでやると、次第に桃姉の上げる声も高くなっていく。  
 
「や、は……くぅ、あっ……ダメ、イっちゃ……あああぁっ!」  
絞り出すような嬌声を上げ、桃姉の身体が大きく跳ねた。内腿がキュッと閉まり、数回の痙攣を起こす。蕩けた顔からはだらしなく涎が垂れ、瞳は虚空を見つめるようにぼんやりと余韻に浸っていた。  
「はぁぁ……ん、気持ちぃ……」  
うっとりと吐息を溢す桃姉。その様子に俺も嬉しくなった。久々に桃姉と「こういう事」をするのがたまらなく嬉しい。日数的な空きは長くなくとも、心情的に寂しさが募った期間だったからだろうか。  
しかしそんな嬉しさとは裏腹に肉体の方は正直に反応していた。下腹部は熱を帯び、すでに一物がギンギンになっていた。たかが五日間と侮るなかれ、男子高校生にそれだけの期間があれば、我慢がきかないほど溜まってしまうものなのだ。  
「あ、ハルのも……もう、スゴイね」  
ようやく余韻から戻ってきた桃姉が、いきり立っている俺の下半身に目を向けた。そのままズボンに手をかけると、ジッパーが開かれペニスが外に開放される。はぅ、と小さなため息と共に桃姉がそれを見つめ、やがてそっと口の中に収めていく。  
「はは、桃姉……がっつきすぎ」  
「ん、だってぇ……ぺろ、ハルの……ちゅぶ、久しぶり……はぁ、なんだもん……」  
「んっ、ていうか……咥えたまま、喋んないで……うぁ、良すぎる……」  
生暖かい舌が絡み付き、ペニスを刺激してくる。する度に上手くなる桃姉の口奉仕に、俺は思わず情けない声を出してしまう。まして今みたいに溜まった状態だと、気を抜けばすぐにでも出してしまいそうだった。  
竿、裏筋、カリ首。執拗に、そして丹念に、じっくりとペニスが舐めあげられていく。その動きに俺の腰がひとりでに反応して、浮き上がるように跳ねてしまう。  
「はぁ、やべ……そろそろ……!」  
「ぷは、ん、待ってハル」  
あと少しで出そう、というところで桃姉が口を離し寸止めにする。もどかしさに俺は呻き、思わず恨めしい視線を送ってしまう。いくらなんでもこの生殺しはひどい、そんな気持ちが知らず出てしまっていた。  
そんな俺の視線を桃姉は可笑しそうな笑顔で受け止めると、捲り上げられ胸が丸出しだったTシャツを完全に脱ぎ捨てる。両乳を晒した上半身裸のまま極限までそそり立ったペニスに近づくと、顔を赤らめながらその豊乳で肉棒をすっぽりと包み込んでしまう。  
「ふぁ、すごい熱い……ね、ハル気持ちいい?」  
「くっ、う、うん……どこでこんなの覚え……」  
「えっちなマンガでよくやってるの見て、いつかやってあげたいなって思ってたの。ど、どうかな?見よう見まねだけど……」  
「気持ちいいよ。おっぱいに全部包まれてるみたいで、ふわふわなのに刺激されてて」  
さっきまでのフェラのように強烈な刺激ではないが、柔らかな乳圧がペニス全体を包む感触は何とも言えない心地よさだった。  
桃姉は俺の反応に気をよくし、おっぱいを上下に擦って更なる刺激を与えてくる。元々唾液でぬらぬらと濡れていた一物は乳肉との摩擦を無くし、スムーズに感触を伝えてきた。  
「ん……ぢゅる」  
「っ!」  
胸の谷間から突き出た亀頭に桃姉が口づけし、尿道を吸い上げてきた。思わず息が止まり、腰がビクンと跳ねる。そのまま桃姉が俺を見上げてきた。不慣れながらも必死にパイズリフェラをする姿があまりに淫らで、俺も中断されていた射精衝動がぶり返してくる。  
「あ、また……来た。で、出る……」  
「ん、いひよほぉ、こんろは、ほのままだひてぇ……」  
「く、ぅ……!」  
再び腰が跳ね、抜けそうな衝撃と共に射精していた。ビュル、ビュル!と吐き出された精液は久々だからか凄まじい量で、先端を咥えたままだった桃姉の口の中に収まらず、唇から漏れ出してボタボタと胸の上に落ちていく。  
「ん〜〜っ!」  
 
桃姉は涙目になりながらも数秒続く射精を全て口で受け止めてくれていた。やがて射精が収まるとゆっくりとペニスから口を離す。すでに口から相当な量が零れて乳房も精液でベタベタになっている。  
「…………ん、んん、……ゴクンっ……」  
二度三度躊躇するような素振りを見せてから、桃姉は口に含んでいた精液を一気に嚥下する。五日ぶりの特濃のそれは粘度も高く、目を白黒させていたが、飲み下した後の桃姉は涙目ながら妙に嬉しそうだった。  
「ふふ、初めて飲んじゃった。けどなんか不思議……変な味だけどちっとも嫌な気分じゃない」  
そう言えば飲んでもらったのは初めての気がする。さっきのパイズリといい、やたらサービスがいい気がする。もちろんこっちとしては嬉しい限りなのだが。  
「ん、久しぶりだから、かな……なんかしてあげたくなっちゃったんだ。男の子が……ハルが喜んでくれそうなこと」  
私も興味あったしね、と恥ずかしそうに笑う桃姉に俺はたまらない愛おしさを感じた。それはそのまま肉体に正直な反応を促す。出したばかりだというのにすでに硬さを取り戻した一物がビンと大きくそそり立っていた。   
「ふぁ……ハルの、もう大きくなってる……」  
それを見た桃姉が、期待に満ちた顔で見つめてくる。我知らず、といった感じで右手が自然に下に伸びていき、ズボンの中にまで侵入しクチュという音を立てた。  
「ね、ハル……私、ハルの咥えて……飲んじゃって……それに精液の匂いいっぱい嗅いだら……すっごく濡れちゃってる……ドキドキしちゃってるよ」  
「ん、俺も……もう挿れたい」  
俺の譫言のような呟きに、桃姉はすぐにジャージのズボンを下す。その下に履いていた下着はすでにクロッチ部分がしっとりと湿って、桃姉の情欲を示していた。  
「ん、早く……」  
震える声で桃姉が俺を誘う。下着をそっと横にずらし、膣口が見えるように露出させると、俺はすぐにそこに亀頭をあてがった。クチャリ、と淫らな水音が響き、俺も桃姉も思わず歓喜の声を上げる。  
「ん、はあぁぁっ!」  
「あっ、ひぐっ……ああ、入ってくるぅ……ハルの、久しぶりにぃ!」  
正常位のまま、ズンッズンッ、と膣肉をかき分け奥へと突き挿れる。愛液でヌルヌルの膣内は暖かく、陰茎をきつく締め付けてくる。あまりの気持ちよさに俺の頭も一瞬で沸騰し、奥をえぐるような動きで腰を動かし始めた。  
その動きに桃姉はめちゃくちゃに乱れた声を上げ、貪るように腰を振りたくってきた。  
「気持ち、いぃ……気持ちいい、よぉ!ハルの、おちんちん……!」  
「うぁ……桃姉、ちょっと締めすぎ……」  
「だって、だってぇ……ずっと、欲しかったんだもん!やっとエッチできるの嬉しいんだもん!ハルに会えなかった分……会いたかった分、今取り戻してるのぉ!」  
嬌声混じりの吼えるような声を上げて、桃姉は必死に繋ぎ止めるように俺の身体を抱きしめてくる。俺の方もそれに応えるように桃姉の身体に手を回し、ギュッと抱きしめた。  
膣内の熱さ、そして身体の暖かさが桃姉を抱いているという実感を持たせる。一突きする度それを噛みしめるように、俺は腰を動かしていた。  
「はあ、あっああ、あひっ!くっうぅぅん!」  
腰を打ち付けあう乾いた音と、性器を擦れさせる水音が混ざり、バチュッ!バチュッ!と、奇妙な効果音となっている。そこに桃姉が上げる喘ぎが絡み、安アパートの狭い部屋の中は淫靡な音の合奏が鳴り響いていた。  
耳から入ってくるそれらの音がますます俺の興奮を煽り、自分の一物が大きく、そして敏感になっていくのを感じる。  
 
「ヤ……バい、もう……出そう」  
「んんっ、いいよぉ!……あん、私も……はぅ、イきそ……ひゃうぅ!」  
昂ぶりきった両者は、喘ぎながらも同時に限界が近くなっていく。より一層深く膣奥を突くように腰を動かすと、桃姉はいちいちビクビクと反応しその度にきつく中を締め付けた。  
まるで絞り出そうとするかのような動き。それに俺は逆らわずに衝動のままこみ上げてきたものを吐き出した。背筋を抜けていくような快感に思わず低い呻きが漏れる。  
「く、おぉ……」  
「はあぁ!あつ、熱いぃ!あっ、やあぁ、おく……出てる!んああぁ!イク、イクうぅぅぅ!」  
絶叫と共に腰を跳ねあげさせる桃姉。あまりに激しく動くので、覆いかぶさっている俺の身体が浮き上がるほどだった。ビクンっビクンっ、と下腹部が何度も痙攣し、絶頂の余韻に浸る桃姉が半ば虚ろな目で呟いた。  
「はあぁぁ……気持ち、いい……」  
「…………ふぅ、はぁ……」  
その呟きを聞きながら、俺も荒い息を吐く。  
二回目の射精だというのに勢いは全く衰えず、数秒間ペニスが収縮を繰り返していた。  
「……ゴメン、重いよね」  
ようやくそれが治まった後、俺は桃姉の上に覆い被さったままだと気付き、慌てて身体を起こした。ヌチャッとペニスが引き抜かれ、その刺激に桃姉が小さく声を上げる。  
「あん……ふぅ……」  
「……桃姉?」  
なんだか桃姉の様子がおかしかった。未だぼんやりとした目で焦点が定まっていない。不思議に思った俺は顔を近づけ、その頬を軽くぺしぺしと叩いてみる。  
「ん、ハルぅ……」  
「んぅっ!?」  
するといきなり両腕が伸びてきて、俺の首をがっちりとホールドした。続いて桃姉の顔そのものが近づき、あっという間に唇を奪われる。  
「んっ、ふう……ちゅ、んぁ……はぁ、ハル……」  
正体を失くしたように甘えたディープキスをねだってくる桃姉。俺自身も舌を絡ませられるその快感に思わず無意識に舌を動かしていた。そして、そうなってしまったら後はもうどんどん興奮を煽られるばかりだった。  
(あー……スイッチ入りっぱなしだったか……)  
快感の余韻から抜け出せず、もっと欲しがっていたのだろう。恐らく桃姉はほとんど無意識にキスをしてきたようだった。  
(ったく……エロいんだから、桃姉は)  
内心で愚痴りつつも、俺もすでに股間のものが復活を果たしていた。  
桃姉の求めに応えるようにクチュクチュと舌を絡め合い、丹念に口の中を責め立ててやると、ようやく桃姉の目に光が戻ってくる。ただしそれは未だ熱に浮かされたような発情した色で、次に出た言葉もおねだりの言葉だった。  
「ね、ハル……お願い、もう一回……」  
「わかってる、いっぱい気持ちよくしてあげるから」  
「ん、して……メチャクチャにしちゃって……」  
「りょーかい」  
そう言って俺は桃姉に後ろを向かせると、座ったままの俺の上に腰を下ろさせた。そのままボリュームあるお尻に手を添えて、屹立したままの男性器の上に誘導してやる。  
背面座位の恰好だ。ズブズブとペニスが膣に埋まっていく感触と共に、桃姉が唸るような声を上げた。  
「はあぁ、んぅ……深ぁ、いぃ……」  
みっちりと根本まで埋まってしまったペニスが、桃姉の膣奥まで届いているようで桃姉は歓喜に身体を打ち震わせる。俺は自分のものが全部飲み込まれてしまったのを確認した後、ゆっくりと腰を動かして桃姉の身体全体を突き上げるように責め始めた。  
体重がモロにかかる体勢の為、腰に力を入れなくてはならないが、その分深く大きく挿入されるようで、ゆっくりとした動きの割に桃姉は大きく感じるような声を出す。  
 
「あんっ、ふあっ!これ、いい……深くて、奥まで来て……はぅ、ん……くあぁ!」  
「くぁ……また、桃姉の中……キュッて締まる……」  
膣内がキツく締め付けられるせいで、ますます動きが阻害される。感じやすく敏感な桃姉の身体は律儀に快感に対して反応していた。  
(ここ二か月で何回もしたけど、やっぱ桃姉の身体ってスゲエ……!)  
さっきは夢中でしていたせいで意識していなかったが、素晴らしいものだ。浅めの入り口あたりは挿入されたものを奥へ引っ張るかのように動き、奥は奥で無数の襞が容赦なく絡み付いてくる。  
桃姉は俺に何度もイカされてると言うが、その実、俺の方こそ気を抜くとこの身体を相手してすぐに果ててしまいそうになる。結果、テクを磨いて攻める方向で発展してしまっただけなのだ。  
慣れないながら何度か動かしていくと、じきにスムーズに抜き差しができるようになってきた。そうなると動きにも多少の余裕が出てくる。  
俺は腰の動きだけで桃姉を突き上げながら、空いた右手で勢いよく跳ねる豊乳に背後から手を伸ばす。   
「は、あ……やぁ……!また、胸……気持ちぃ……」  
上下に揺れる乳房を後ろから鷲掴みにするように指を立て、何度も乱暴に揉みしだく。荒い責めに時折息を詰まらせるようにしながらも、桃姉が喘ぎを止めない、いや止められないようだ。  
「ふぅ、はっ……くふっ、んぅ……はくっ……んんっ!」  
ぎこちないピストンながら奥まで届くペニスと胸への激しい愛撫。桃姉は悩ましげに眉根を寄せ、汗で髪が張り付いた顔を官能的に歪ませていた。その表情の艶めかしさに猛烈にサディスティックな衝動をくすぐられる。  
今や桃姉は俺の動きに合わせて自分から腰を振っている。手で押さえる必要もなく両手がフリーになった俺は残った左手で更なる責めを敢行した。  
「あひぃ!? やっ、ハル、そこはっ!あっ、やあぁぁ!」  
ジュプジュプと出し入れが繰り返される性器同士の接触。手を伸ばしたのはその少し上に位置する小さな豆粒のような性感帯だった。指でなぞるように擦ってやると桃姉がビクビクと大げさに身体を震わせる。  
「やあぁぁ!あっ、くひっ!あっあっ、ハル……んんっ!ダ、ダメぇ!そこはぁ……ひああぁぁ!」  
思わず片腕を伸ばし俺の左手を止めようとするも、腕を掴んで快感に耐えるだけで精いっぱいのようで桃姉はただひたすらよがり声を上げながら悶えるだけだった。  
「メチャクチャにしてって、言ったろ」  
「で、でもぉ……!」  
挿入されながらの胸とクリへの三点責め。強烈な責め方に嬌声を上げ続ける桃姉の目には涙が溜り、決壊寸前といったような雰囲気を醸し出している。  
とどめとばかりに俺は一際強く桃姉の身体を責めた。腰を大きくグラインドさせ最奥まで男性器を打ち込み、右手で思い切り硬く勃った乳首を摘み、左手は剥きあがったクリトリスを強く転がす。  
「ひぐっ!? はひいぃ!ダメぇ、ふぁぁっ!イ、イっちゃ……はっあぁ!あっああぁぁぁぁ!」  
プシィッ!プシュッ!プシャアアァァッ!  
豪快に水を吹き出す音と共に、勢いよく噴出された液体がクリを弄る左手を濡らした。限界まで昂ぶりながらも潮を吹いてしまった、という事に気付いた桃姉は、羞恥に頬を染めながら喉も枯れんばかりに吼え、背筋をいっぱいに反らして絶頂へと昇り詰めていく。  
同時に、膣内がギュウギュウと痛いほどキツく締め上げられ、挿入されたペニスを責めたててくる。  
二重三重に押し寄せる刺激にガクガクと身体を揺らして喘ぐ桃姉の顔は快楽に蕩けきっていた。だらしなく開きっぱなしになった口からは涎が垂れ、目尻から溢れた涙が頬に一筋の流れを作っている。  
 
「はあぁぁ、ひ……あ、はぅ……」  
長い絶頂がようやく治まり、それでもまだ乱れた呼吸を繰り返しながら小さく痙攣を続けている桃姉の身体。うなじからむわっと汗とフェロモンの匂いが鼻を突きむらむらと欲情を誘う。  
未だ達していなかった俺は今度は両手を伸ばし、荒い呼吸に小さく上下する両の乳房を鷲掴みにした。同時にストップしていたピストンを再開させた。  
「はあぁ!? やっ、ハ、ハルっ!待って!い、今……イッたばっかでぇ!あぅ、んくぅぅ!」  
絶頂直後の敏感な膣内を抉られ、堪らず桃姉が掠れた嬌声を上げてよがり鳴く。その嘆願を無視するというより自分自身で止められず、俺はひたすら自分が気持ちよくなるように動き続けた。  
「ゴメン、もう少しで、俺もイクから……ちょっと我慢して」  
「ん、ふうぅ、あっあぁぁ!で、でもぉ、こんなの、またすぐ……イッちゃ……!」  
休憩なしに強烈な刺激を与えられ、あっという間に再びイキそうになっているようだ。さっきの激しい締め付けで最早俺も出る寸前まで昂ぶっていた。  
そこに再度快感に震える桃姉の膣内の動き。あっさりと限界を突破し、俺は存分に桃姉の中に欲望をぶちまけていた。  
「ああっ!……も、出る……く、んっ!」  
「ひゃ、あっ!出て……はぁあ!なか……出てるので、イッちゃ……ぅ……ああぁぁぁ!」  
膣内でペニスが暴れまわるように射精し、それを受けてまた桃姉がエクスタシーを迎える。自身も腰が抜けそうな感覚に陥りながら、俺は途中で桃姉の顎を掴み、強引に後ろを向かせて口づけをした。  
「ふう、ん……むぅ、んふぅ……」  
「はん、ちゅ……んんっ」  
身体はお互いに余韻に浸りながら、それが引くまでの間ずっと俺と桃姉は唇を触れ合わせていた。くぐもったような声が吐息と共に漏れ出し、意味のない唸り声だけがしばらく部屋の中に響いていた。  
「ぷはぁ……!はぁ、はぁ……」  
「っはぁ、ん……ふぅ……」  
やがて息が続かなくなり、ようやく唇を離した時には身体はすっかり落ち着いていた。荒い息を吐きながら挿入されていたペニスを抜き、二人揃ってぱったりと布団の上に倒れこむ。  
「ふぅ、はぁ……ふぃ〜」  
連続して何度も激しく動いたせいか、身体が妙に重い。なかなか息が整わないまま、それでも俺は心地よい気怠さに身を任せていた。  
(なんか……スッキリしたな……)  
性的な意味で、とか何発も射精したから、とかそういう意味ではなく、ここ数日なんとなく心の内側に溜まっていたどんよりしたものが無くなった、という事だ。  
当然それは桃姉に会えなかった事が原因なのだが、ただ一目会えたからそれが解消された訳ではない。こうしてセックスをした後でこんな風に感じるというのは――  
「なんか……『繋がった』って感じするね……」  
桃姉が俺の感じていた事をズバリと的確な言葉で言い表した。  
確かにそうだ。こうして身体で繋がりあって、お互いの体温を感じ取ることで初めて心も繋がった気がする。会えなかった時、ぽっかり空いてしまった心の隙間が今、完全に満たされたと、そう思った。  
 
「なんか今日、いつも以上に感じちゃった……」  
ボソッと言い放ち、恥ずかしそうに頬を染めて桃姉がはにかむ。俺も今日はいつも以上に興奮した気がする。今までやらなかったような事も今日はしてしまったし、それがまた一段と気持ちよかった。  
「あれかな、会えない時間が愛を育むって……あーいう感じの」  
「あは、そうかも、ね。我慢して我慢してようやくって思いながらのエッチだったし」  
「じゃあ、これから時々エッチするのおあずけしてみる?その次にする時すごい気持ちいいかもよ?」  
「ん……それはイヤ」  
「ああ、やっぱり」  
その答えを予想していた俺は少し笑ってしまった。まあできないよな、桃姉がこういう事を我慢するなんて。いやそれどころか今日だってまだ満足しきっていないかもしれない。  
という俺の思考を読んだ訳でもないだろうが、桃姉はまた少し恥ずかしそうに口を開き、俺が考えていた通りの事を口にした。  
「あ、あの、ハル……もう少ししたら、その……また、しない?」  
「りょーかい、もちろんいいよ」  
欲求不満の恋人を満たすため、今日はまだまだ踏んばらなければいけないようだ。すっからかんになるのを覚悟で俺はにっこりと微笑んだ。  
   
目覚めると部屋の中は真っ暗だった。ぼんやりと覚醒しきっていない意識で俺は何とか状況を把握しようとする。  
(えーと桃姉の部屋でエッチしててそのまま寝ちゃって……)  
何の事はない。部屋の中が真っ暗なのは外が夜になっているからだ。  
「っていま何時だ!?」  
大慌てで飛び起き、暗がりから携帯を探し出す。開いて液晶に映し出された時刻を見ると午後九時半前だった。俺がここに来たのは午前十一時半前。実に十時間近く経っていた。  
いつごろ眠ってしまったかは覚えていないが最後に時計を見た時は六時過ぎだったはずだ。五時間以上エッチしていたということか……。  
「うぁ……しまったぁ……」  
学校をフケて桃姉の家に直行し、そのままずっとここにいた事になる。サボっておいて恋人と一日中セックスとか退廃的にも程があろうというものだ。  
「桃姉、ほら起きて……」  
ヤリ過ぎたのが響いているのか、俺はずっしりと重たい身体を動かし起き上がると、横に丸まって寝息立てる桃姉の頬をぺちぺち叩いた。  
「ん、あふ……ハル?」  
寝ぼけまなこを擦りながら桃姉ものっそりと起き上がる。眠りに落ちた状況が状況なだけに着衣に随分乱れがあった。下はズボンを履いてないし、Tシャツはよれよれになっている。後でこれも洗濯しなきゃと思いながら、俺は桃姉に優しく声をかける。  
「腹減ってるだろ、ちょっと時間かかるけど晩飯作るからさ、起きて顔洗ってきなよ」  
「ん……ごはん、食べたい……何作るの?」  
「グラタン。ここ来る前に材料買ってきておいた。次来た時作るって約束だったしね」  
それを聞いた桃姉の目が一瞬ぱっと見開き、寝ぼけていた表情が引き締まってくる。  
「ありがと……ハル」  
「ん」  
短く返事して桃姉を洗面所に送り出す。そうしておいて携帯を取ると家の電話番号をプッシュした。出てきた母親に連絡が遅れた詫びを入れ、桃姉の家に来ている事を話して通話を切った。サボりに関しては後でじっくり説教を受けよう。  
台所に立ち、グラタン用のマカロニを袋から取り出していると、洗面所から出てきた桃姉が自分の携帯を俺に突き出してきた。  
 
「ハル、電話……」  
「俺に……?」  
桃姉の携帯にかけてきて、なおかつ俺に用事がある人物なんてこの状況では一人しかいない。出てみる、相手は予想通り、もはやすっかり聞きなれたハスキーボイスだった。  
「もしもし、彼氏君?」  
「どーも……」  
「いや〜電話して大丈夫だったみたいで良かったよ。もしかしたら『お楽しみ中』だったかもしれないって思ってさ」  
「…………」  
いかにも冗談交じりの口調だったが、ほんの数時間前に「お楽しみ」だったのを見透かされているようで、俺は赤面しながら何も言えずに黙っていた。俺が赤くなったのを見て、桃姉が近くに来て会話を聞こうと耳を近づける。  
「んで、どうだった?浅井センセとのお話は」  
その場で俺は、桃姉に悪気はなかった事、桃姉に二度としないと誓わせた事、今後は俺もスケジュールチェックに協力する事などを話した。黙って聞いていた柿沼さんは、俺が話し終えると、ハーッ、と一つため息をつく。  
「生活管理してる君が協力してくれるなら、一安心だな。……ていうか私も君に一つ謝らなくちゃいけないんだ」  
「謝るって……何をですか?」  
「いや、よく話し合って欲しいって言われたからそんな風に真面目に結論だしてくれたんだろうけど……ホントのところ、あれちょっとした脅しのつもりというか……少し気を引き締めてもらおうとしただけなんだよね」  
「…………」  
俺が黙り込んだのを怒ったと勘違いしたのか、慌てて柿沼さんのフォローが入る。  
「あー、えっと、ゴメン!まさか高校生の君がそんな真面目に考えてくれるとは思わなかったからさ!だってまさか当事者のセンセより真剣だなんて思わないじゃん?……まあ、逆にそんな君なら今後のスケジュールのフォローも信頼できるってもんだし」  
そう言われてはこちらとしてもいつまでも怒気を見せている訳にはいかない。大人しく虫の居所を納める事にした。  
「とにかく悪かった。今後お仕事の方ではよろしく、彼氏君。あー、それと……」  
強引に会話が打ち切ろうという流れの中、思い出したように柿沼さんが付け足す。  
「桃に言っといて。アンタますます彼氏君いないと生きていけない人間になってるよ〜って」  
妙に砕けた口調、恐らく桃姉の友人としての顔でそう言って、柿沼さんは通話を切った。  
「……だってさ」  
「む〜……」  
すぐそばで聞き耳を立てている桃姉にそのまま話を振ってみる。自覚はあっただろうが第三者に言われたのが効いたのか、桃姉は複雑な顔で唸っていた。やがてポツリと独り言のように声を漏らす。  
「やっぱり私……ハルに頼りすぎかな……?」  
「今更……まあでも俺は構わないぜ」  
「そう……なの?」  
「そりゃまあ、好きな人になら……いくらだって頼られたいし……」  
途端に桃姉の顔が赤くなる。次いで照れたように顔を伏せ、嬉しそうにはにかみ、幸せそうにうっとりとした顔を作るという百面相を見せたあと、全て許してしまえるような満面の笑みを向けてくれたのだった。  
「ん、ありがと……ハル」  
 
了  
 

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