「ねぇ、今日の『えっちパーティ』、何時からするんだっけ?」  
 
放課後、帰り支度をしている香奈に明るく声をかけてきたのは祐希だった。  
男の子に混じってサッカー部に所属しているボーイッシュな女の子。香奈の親友の一人だ。  
「こ、こら! 大きな声で言わないで!」  
慌てて香奈が祐希の口を塞ぐ。それほど大きな声ではなかったが、人目もある場所で、  
万が一にでも聞かれてはいけない単語だったからだ。  
「もごもご…。そんなに大きな声じゃないよ〜」  
笑いながら抵抗する祐希。香奈は祐希と違って、柔らかな体つきで、ストレートロングの髪を  
カチューシャで留めている女の子らしい子。クラスメートから見れば妖しいレズカップルが  
じゃれあっているように見えるかも…。  
周囲の視線に気がついて慌てて祐希から離れる。祐希はそんな香奈の様子を見てニコニコと  
微笑んでいる。  
 
「今日ってさ、瑞穂の従姉妹も来るんだって」  
祐希が帰り支度を終えた瑞穂と廊下を歩きながら言う。  
「え…? 瑞穂の従姉妹って…彩乃さん?」  
「そうだよ」  
「そんな…」  
香奈の顔が真っ赤になる。  
「あれ? 彩乃さんの事、嫌いだっけ?」  
「そ、そうじゃなけど…。でも、上級生の人が来るなんて、恥ずかしいよ…」  
「そうだよね〜。憧れの人とあんな事したりやこんな事したりなんて…もごもご!?」  
「だ、だから! 声が大きいって言ってるでしょ!」  
今度は人目もはばからず、祐希に抱きつくようにして口を抑えた。その時…。  
「私の事がどうかしたの、香奈ちゃん?」  
優しい声が聞こえ、香奈は飛び上がりそうになった。  
 
「い…いえ! な、なんでもないで…す…」  
その人の方を見なくてもそれが誰だかわかっていた。今、正しくその人の事を祐希と話していた  
のだから。そうか、ここは3年生の教室前の廊下…と、今更気がついても遅い。  
「クスッ…仲が良いのね、二人とも。ね、今日は私も参加したいって瑞穂に言ったけど…  
迷惑だった?」  
彩乃は成績は学年で一番で、容姿も校内一の美少女と言われる才色兼備の生徒会長である。  
軽くウェーブのかかった長い髪を上品にまとめ、すらりとした佇まいは存在感で一年生の  
香奈達を圧倒する。その人が香奈の仲間である瑞穂の従姉妹である事を知ったのは最近だった。  
 
迷惑だった? と聞かれて初めて彩乃の方を見る香奈。首がもげそうなぐらい左右に振ってから、  
「と、とんでもない!! 大歓迎です!!」  
と、廊下中に響き渡る声で叫んでしまう。大きな声を出すなって言ったの、誰だっけ? と忍び  
笑いする祐希。香奈もそれに気づき、真っ赤になる。  
それにしても。彩乃は自分達の『パーティ』の内容を知っているのだろうか?  
「あの…でも…。わ、私たちのパーティって、どういう事をするか…ご存知ですよね?」  
ドキドキしながら確認する。瑞穂はどこまでこの人に話してるのだろう…?  
「どういう事って…。普通のパジャマパーティって聞いてるけど」  
首を傾げながら微笑む彩乃。その言葉を聞いて、早まらなくて良かった、と香奈は胸を撫で下ろす。  
 
パジャマパーティ。仲の良い女の子同士で誰かの部屋にお泊りし、朝まで気楽に語り合う。  
と言うのが一般的な概念だが、香奈たちのパーティは少し違う。先ほど祐希が『えっちパーティ』と  
身も蓋もない名前でよんでいたように、要するに、パジャマを着て朝まで仲間同士で居て、  
エッチな事をしあうパーティなのだ。  
勿論、中一同士の事だから、エッチと言っても、パジャマの上から胸をさわりっことか、くすぐり  
あいっこ、お尻を撫であいっこなど、他愛も無いことをする程度だが、それでも彼女達にとっては  
禁断の…とまでは言わないが、「いけない事」をしている背徳感でドキドキと胸が高鳴るパーティ  
だった。最初は誰の提案だったかは忘れたが、香奈と祐希と瑞穂の3人で時々、その秘密のパーティを  
開いている。勿論、親にも兄弟にも内緒だったのだが…。  
 
「嘘よ」  
クスクスと彩乃が笑う。  
「え?」  
香奈が呆然とする。勘のいい祐希は彩乃が何を考えてるか悟ったように頭の後ろに両手をやって  
とぼけている。彩乃は香奈に近寄ると、  
「エッチなこと、やりあってるんでしょ? 私も仲間に入れてよ……ね?」  
耳元に口を当てて囁く。香奈はこれ以上ないぐらい真っ赤になり、コクコクと反射的に頷いた。  
悪戯っぽい笑顔を浮かべると、香奈の耳元から離れる彩乃。  
「では、今夜、楽しみにしてるね。瑞穂の家で待ってるから」  
ウィンクして二人から離れる。その後姿を呆然と見守っていた香奈だが、何となく、彩乃が今までと  
違う人物の様に感じていた。遠くの高嶺の花でなく、近くに居ながら咲き誇っている薔薇の様に。  
 
「じゃ、ボクは部活に寄ってから帰るから。憧れの人がいるからって舞い上がってちゃダメだよ」  
悪戯ぽい笑顔を残して香奈と別れる祐希。柔らかな香奈とは違う、しなやかな猫の様な躍動感で  
ショートスカートを翻しながら部室に向って走っていく。通りすがる女子達から「頑張って!」と  
声援が。ボーイッシュとは言いながらも女の子らしさは失っていない彼女は女の子に大人気なのだ。  
 
確かにそう。彩乃さんはパーティ始まって以来初めてのお客様なのだから、落ち着いてお迎えしない  
と……。香奈は一人考えるが、とても自信が無かった。自分の憧れの人とエッチな事をする…。  
そう考えて舞い上がらない女の子などいるはずがないのだ。  
だけど、彩乃は何故、自分達のパーティに? と思ったが、もしかしたら祐希狙いなのかな、と  
考えてしまう。私みたいな地味な子なんか目もくれないだろうし…と、考えながら歩いている香奈を  
「人形みたいで抱きしめたい〜〜!」などと、実は彩乃が密かに妄想しているなどと、香奈自身は  
知る由もなかった。  
 
そして、その夜。  
早めに夕食と風呂を済ませた香奈は、母親に「勉強会」で瑞穂の家にお泊りする、といつもの言い訳を  
して、出かけた。実際にちゃんと勉強する日もあり、両親や兄弟に気づかれないよう、静かに  
『パーティ』をしていたので、家族は誰も彼女達の秘密に気がつくことは無かった。ただし、瑞穂の  
家でする時は事情が違ってる事が多かった。彼女の家は両親とも留守になる日が多くあったのだ。  
 
今日も彼女の両親は居ない。そして、彩乃が来ている…。香奈は高鳴る気持ちを抑えきれず、期待に  
胸を膨らませて日の暮れないうちに瑞穂の家についた。立派な洋館である。  
(いつ見ても大きな家…お屋敷みたい)  
瑞穂の父親はとある大学病院の院長で、医者である母親共々、留守にする事が多かった。香奈と  
祐希は一人で寂しそうな瑞穂を気遣って、良く遊びに来ていた。『パーティ』もここで開かれる事が  
多かった。  
(彩乃さん家は本当にお屋敷なんだよね…)  
その病院の理事長であり地元の名家である彩乃の屋敷はこの町に住んでいるものなら知らない者は  
いなかった。あの上品な物腰はやはり名家ならではの教育の賜物か。  
 
インターフォンを押すと、応対に出た声がその彩乃の声だったので驚いた。もう来てたのだ。  
今日は彩乃を迎えるために早めに来て準備してようと思っていたので慌てた。  
「ごめん、私、あんまり楽しみで早くから準備してたから、お迎えに出れないの。鍵は開けてあるから  
一人で入ってきてくれる? あ、香奈ちゃんで最後だから、鍵を閉めておいてね」  
インターフォン越しに朗らかな声が聞こえた。楽しみ、と言うのはどうやら本当らしい。  
迎えに出れない、と言うのはもうパジャマに着替えてる…? いつもと違う彩乃の様子に香奈自身の  
胸も高鳴りを覚えた。「鍵を閉めてね」この言葉が妖しい響きでもって頭を離れない。  
……そう、香奈たちは4人だけの世界に入ったのだ。  
 
「こんばんは、香奈ちゃん! 待ってたんだよ。さ、早く早く!」  
「あ…。は、はい!」  
朗らかな声で香奈を出迎えてくれたのは彩乃だった。予想通りパジャマ姿で、香奈が靴を脱ぐのも  
もどかしそうに、手を引っ張る。いつもの学校で遠くから見る上品な生徒会長と、少しイメージが違う  
けど、香奈はこの良く笑う彩乃はとても好きだった。まだ、自分の方が固くなって上手く話せないが、  
今みたいに手を取られて引っ張ってもらえると、自分が居ることで彩乃が幸せになってもらえると  
感じられて、とても嬉しくなる。  
 
隣りには同じくピンクのパジャマ姿の瑞穂が居た。瑞穂は小さくて恥ずかしがり屋で泣き虫な女の子。  
香奈と同級生なのに2つ3つは年下に見える。香奈と祐希と瑞穂は友達だが、その中で瑞穂は明らかに  
他の二人の被保護者だ。実際、二人で小学生の子に苛められていたのを助けた事がある。  
手も足も顔も小さく、胸ははっきり言ってブラいらず。柔らかな明るいブラウンの髪がより子供っぽく  
見せているが、その中で異彩を放つのは眼鏡の下からでも目立つ大きな瞳だった。この瞳がうるうる  
すると、香奈も祐希もたまらなくなって、「ぎゅっ!」っとしてしまう。  
彩乃に引っ張られながら、香奈が手を振ると、瑞穂も微笑んだ。だが、急に影のある表情になると、  
何かを言いたそうに香奈を見た。その時……。  
 
「なぁに、瑞穂。どうしたの?」  
そう聞いたのは香奈でなく、彩乃であった。ニッコリと瑞穂に微笑んでいる。一瞬、ビクッと顔を  
強ばらせる瑞穂。しかし、次の瞬間には笑顔になっていた。どことなくいつもの笑顔と違うように  
見えたのは気のせいか?  
「なんでもないの。いらっしゃい、香奈ちゃん…」  
その瑞穂の笑顔を満足げに見ると、彩乃は再び香奈と手を組む。  
「着替えはこっちの部屋ね」  
勝手知ったる従姉妹の家なのか、彩乃が案内する。  
 
「祐希ちゃん、もう来てるよ。でも…」  
着替えようと荷物を置き、上着を脱ぐ香奈に彩乃が声をかける。  
「どうかしたんですか?」  
着替え中に入られ、ドキッとしたがそれをおくびにも出さずに香奈が答えた。  
「う〜ん…。ちょっと口じゃ言いにくいかも。後で客間の方で話しましょう」  
客間と言うのは今日のパーティの会場だった。ちょっと古い和室だが十二畳の広さがあり、4人が  
泊まるには広々として良かったので、そこにした。彩乃の話では家中の布団を敷きつめたらしい。  
 
「プロレスごっことかも出来ちゃうよ……なんてね」  
ニコニコと話す彩乃。笑顔で応対しながら香奈は少し困っていた。  
「はい。……あの〜〜」  
香奈は着替えようとしているのに彩乃は出て行ってくれない。と言うか、そこにいて当然とばかり、  
動く気配すらない。香奈はブラウスのボタンをいじりながらそわそわしている。  
「うん? どうしたの?」  
屈託なく聞き返す彩乃。案外鈍感なのか、それとも……わざと、とぼけている? まさか……?  
「フフフ。ここに居ちゃ、着替えの邪魔よね?」  
更にもじもじと体をくねらせてしまう香奈を哀れに思ったのか、ニッコリと笑って彩乃は部屋を出よう  
とした。思わずホッとした香奈の耳に、まさかと思う言葉が聞こえた……様な気がした。  
 
「楽しみは取っておかなきゃ、ね。夜は長いんだし」  
 
 
「あ、香奈ぁ〜!」  
布団の上でぺたんと座っていたブルーのパジャマ姿の祐希が香奈の姿を見て手を振りながら声をかける。  
瑞穂も祐希の隣りにいるが、なぜか、ちょっと祐希を気遣う様子だ。  
お気に入りのパステルグリーンのパジャマに着替えて客間に入った香奈は、その光景にちょっと  
面食らった。何しろ、十二畳の部屋一杯に布団が敷き詰められ、クッションや枕などが乱雑に散り  
ばめられていたからだ。  
「すごいでしょ!? 結構、気持ちいいよ〜、これ。ざっば〜〜ん!!」  
海に飛び込むが如く、クッションの山に頭から突っ込む祐希。キャハハハ、と一人で子供の様に  
はしゃいでいる。その姿を笑顔で見守っていた瑞穂だが、  
「祐希ちゃん、無理したら…」  
と、気遣う声をかける。  
 
「大丈夫、大丈夫……あ、イタタ……」  
調子に乗ってイルカの形をした抱き枕に跨って遊んでいた祐希が、ちょっと顔をしかめて枕から  
降り、股間を軽く擦る。何故か、痛そう?  
「どうしたの? 祐希。そんなトコ押さえて」  
香奈も気になって聞くと、祐希が大丈夫、と言わんばかりの笑顔で答える。  
「エヘヘ……部活でさ、ボールがアソコに直撃しちゃったんだ」  
恥ずかしそうに舌を出す。男子と混じってサッカー部に入ってる祐希だが、今日の試合形式の  
練習で相手ストライカーのシュートをブロックしに体を張ったら、至近距離でシュートが股間を  
直撃したらしいのだ。思わず口を押さえて唖然とする香奈と心配そうな瑞穂に照れくさそうに両手を  
振る祐希。  
「心配しなくても大丈夫だって〜。最初は痛くて飛び跳ねちゃったけど、女の子だから、ちょっと  
休んだら平気になったよ〜。だけど、みんなひどいんだよ。『男じゃなくて良かったな』って。  
女の子だってここ打つと、痛いよねぇ?」  
誰ともなしに聞かれても、香奈も瑞穂も答えに困る質問だった。  
 
「はい、ジュースと御菓子、用意できたよ」  
話に夢中になっている間に彩乃が用意してくれたらしい。恐縮しながら受け取る香奈や瑞穂に  
笑顔で応える。祐希を気遣うその表情は先ほどの妖しい笑顔でなく、いつもの上品な彩乃だ。  
さっきのは、やはり自分の思い過ごしだろう……と香奈はその時は思った。  
ジュースに御菓子、そしてトランプなどのゲーム。女の子同士のパーティの盛り上げには  
充分なアイテムが揃い、布団部屋と化した客間からは楽しげな笑い声が絶えなかった。  
 
しかし、この些事とも思えた祐希の一件が、この夜の楽しいパーティの雰囲気を一変させる  
きっかけに利用されようとは、この時はまだ、香奈も祐希も想像していなかった。  
 
「さて……。じゃあ、そろそろ『お楽しみタイム』と行きますか?」  
楽しくお喋りしたり、ゲームで盛り上がった後、一段落した頃に彩乃がみんなに声をかける。  
それまで楽しげに話していた他の3人も、みんな照れくさそうに誰ともなしに顔を見合わせて  
もじもじと苦笑いする。いよいよ、『えっちパーティ』の時間が来たのだ。  
 
「じゃあ、瑞穂は遊び道具を片付けて……。香奈ちゃんはジュースを台所に、祐希ちゃんは私と  
テーブルをこちらにお願いね」  
初めての参加だというのに、当然の如く彩乃が仕切り、みなもそれに違和感無く従っている。  
流石は生徒会長。とこんな時にも香奈は憧憬の目で彩乃を見つめてしまう。  
「ねぇ、祐希ちゃん。本当に大丈夫? 見たほうが良くない?」  
テーブルを運びながら祐希に尋ねる。  
「はい…? あ、ああ。あれの事。だ、大丈夫ですよ、勿論……え? み、見るって…!?」  
ちょっと動揺したような笑顔の祐希。彩乃は冗談で言ってるのだろう、と信じたい様子。  
だが、彩乃はテーブルを片付けた後も祐希の方を見ている。視線を感じ、少し身を硬くする祐希。  
その時、担当の片づけが終わった香奈と瑞穂が帰ってきた。そそくさと二人の間に入り、  
追求をかわそうとする祐希。彩乃も二人にご苦労様、と声をかけ、一旦は祐希から視線を外したが…。  
 
「こほん、では、恒例の『えっちパーティ』を始めたいと思います。……でも、その前に」  
彩乃の開催宣言?に香奈達が小さな拍手をしようとした時に、当の彩乃が話の腰を折る。  
そして祐希を見て、その方に近づいた。  
「え…? ええ? ぼ、ボク……!?」  
思わずお尻をつきながら後じさる。が、今度は彩乃も追及を止めなかった。  
「祐希ちゃん。そこの様子、見せなさい」  
今度は毅然とした声で詰め寄る。しかし、祐希はかぶりを振り、拒否。  
「大事な所なんだから、ダメ。恥ずかしがってる場合じゃないでしょ?」  
「い、いいです! 大丈夫ですったらぁ! 香奈、瑞穂〜、助けて〜!」  
パジャマの下を掴んで引き下ろそうとする彩乃と、必死にそれを拒もうとする祐希。美少女二人が  
絡み合い、白のスポーツショーツが何度も見え隠れする光景にちょっとドキドキしてしまう香奈。  
 
「ふ〜〜……強情なんだから」  
「だ、だって〜。こんなトコ見られるなんて、恥ずかしいですよ……」  
体格で勝る彩乃が何度か膝上ぐらいまではパジャマを脱がせるものの、運動部所属の祐希は  
粘って、それ以上は降ろさせない。ショーツは見えたりするが、肝心の所は完璧にガードされてしまってる。  
香奈は祐希の具合も気になりはするが、それ以上に祐希が恥ずかしがる気持ちの方がよく理解できた。  
憧れの人に自分の一番の秘密の場所を見られる……。自分がそんな立場になったら、恥ずかしくて  
死んでしまうかもしれない。  
 
「仕方がないわ……」  
彩乃は息を切らしながら四つん這いのポーズで祐希を見ていたが、やがて決心したように立ち上がる。  
いよいよ、本気で来るか? と、祐希も身構え、香奈や瑞穂が固唾を飲んで見守る中、彩乃は予想を  
裏切るとんでもない行動に出た! するり……。  
「え!?」  
「な、なに!?」  
「あ、彩乃……さん!?」  
なんと、彩乃は自ら着ていたオレンジのパジャマの下を脱いでしまった。大人びた紐で結ぶタイプの  
レースのショーツが鮮やかに少女達の目に飛び込んできた。そこで少し顔を赤らめたが、更に……!  
「え? あ…ちょっと! そんな…!」  
彩乃の正面に座っている祐希が顔を真っ赤にして、何かを止めたそうに両手を前に突き出す。  
香奈も心臓が喉から飛び出そうになる。彩乃がショーツの結び紐に手をかけているからだ。右側の  
結び目を外すと、そのまま、下に落としてしまった! ゆったりしたパジャマの上着が、自然に落ちて  
きて隠す前に、香奈はしっかりとその若草の様な柔らかな草叢に縁取られた、綺麗な秘溝をしっかりと  
目に焼き付けてしまった。  
 
「これなら、どう? わ、私も一緒なら、恥ずかしくないでしょ?」  
白い頬をピンク色どころか完全に真っ赤に染めながら、彩乃は毅然と祐希に言う。無論、彩乃も  
恥ずかしいだろう。パジャマはゆったり目に作られてはいても、上だけで下半身を隠せるわけがない。  
懸命に引っ張って、辛うじて前は隠れていても、逆にお尻は丸見えだろう。現に、その位置に居る  
瑞穂は石像の様に固まって彩乃のお尻を見つめている。  
 
「で、でも……。」  
祐希はまだ決心がつかない。彩乃から視線を逸らして、パジャマの腰のゴムあたりを触っている。  
彩乃が恥ずかしさを堪えているのは充分分かるが、だからと言って直に決心がつくことでもない。  
「香奈ちゃん、瑞穂。あなた達も脱いで」  
彩乃が更にとんでもない事を言い出した。ええ!? と声にならない叫びを上げてしまう香奈。  
瑞穂も目を丸くして香奈を見る。  
「わ、私たちも、ですか?」  
「そう。祐希ちゃんの事、心配でしょ? 友達だったら、祐希ちゃんに勇気をあげなきゃ…ね?」  
まだ頬を染めながら、香奈の方を見てニッコリ微笑む。憧れの彩乃の言う事だから一にも二にも無く  
聞いてあげたいが、祐希同様、流石にすぐには……。  
 
「み、瑞穂!?」  
祐希が驚いた表情で瑞穂を見ている。なんと、あの恥ずかしがり屋の瑞穂が、ピンクのパジャマの  
下に手を掛け、するりと下に落とした。そして、可愛い猫のプリントが入ったショーツも一気に  
下げてしまう! 彩乃のと違い、そこは一本の筋だけの、何も無い丘であった。  
「………」  
あまりの恥ずかしさに言葉を失っている瑞穂。その瑞穂の頭を優しく撫でる彩乃。  
「偉いわ。瑞穂は友達思いのいい子ね」  
優しい表情で瑞穂を抱きしめる彩乃。今は香奈からは後姿になり、シミ一つ無い美しい双球が  
香奈の方に向いている。  
「わ、わかりました……」  
その光景を見て、覚悟を決めた様に祐希も立ち上がり、ブルーのパジャマとスポーツショーツを  
手早く脱いだ。祐希のは瑞穂の様に無毛ではないが、縁取りはごく薄く、産毛が生えている程度だ。  
昼間にボールの直撃を食らったそこは、少し赤みが差している気がしたが、特に怪我をした様子も  
無く、問題はなさそうだ。  
 
「祐希ちゃん……頑張ったね」  
彩乃が今度は祐希を抱きしめる。香奈の眼には課題が出来た小学生を先生が誉める、そんな光景に映った。  
「後は香奈ちゃんだけだよ」  
香奈を見る彩乃。え? だって、祐希が脱いだのなら私は……と言いかけて、香奈は祐希の視線に  
気づく。祐希の視線にはほんの少し、非難の意図が感じられた。自分が恥ずかしい事を決心した  
のに……とでも言うか。しかし、香奈には別の強い意志の方が感じられていた。  
(香奈の……見たいの。見せて)  
実際にそう言ったのではないが、そう言う視線かと聞かれて祐希は否定しないだろう。ゆっくりと  
視線を下に向け、香奈の大事な所でピタリと止まる。そして彩乃も……。  
 
「あ、彩乃さん……?」  
思わず、呆れて彩乃を見てしまう。彩乃はもっと露骨な期待に眼を爛々と輝かせていた。既に祐希は  
離して今か今かと香奈が脱ぐのを待ってる様子……。  
(まさか、ストリップを見るオジサンってこんな感じなのかなぁ……?)  
学校のマドンナ(死語?)で、生徒会長。才色兼備の理事長令嬢を捕まえておじさん扱いは  
ないだろうが、どこと無く憎めないものも感じてしまう。  
そのお陰でリラックス出来たのか、意外と香奈もあっさりと脱ぐ決心がついた。ペパーミントグリーンの  
パジャマの下を脱ぐと、買ったばかりの真新しいレース入りのピンクのショーツ姿になる。  
万が一、彩乃に見られる事があったら、と思い、新しい下着に替えてきたのだ。しかし、ここまで  
はっきりと見られるとは……。しかも……。  
 
(え〜〜い! 思い切って!!)  
ショーツの両側に親指を入れると、思い切って一気に引き下ろした。祐希と同じく産毛に毛が生えた  
程度の飾りに覆われた丘は綺麗な縦筋がくっきりと確認できた。この4人は全員上ツキ気味だが、  
香奈と瑞穂が一番くっきりとした割れ目になっている。  
(わぁあ〜〜!! は、恥ずかしいよぉ!!)  
下着ならともかく、ここまで見せるのは想定してなかった。決心して脱いだとは言え、いざ  
下半身裸状態であるのを意識してしまうと、めまいがしそうになる。  
「これで4人とも……ね?」  
祐希の時と同じように、香奈を誉めるように彩乃は香奈を抱きしめる。心なしか、他の二人よりも  
ぎゅ……と。香奈の鼻を、彩乃の洗ったばかりの髪がくすぐり、陶然となってしまった。  
 
しかし、とんでもないことになってしまった。と香奈は思う。普段のじゃれあい程度のお遊びからは  
数段レベルアップしたエッチな状況が突然訪れたのだ。彩乃が参加しただけで……、と彩乃の方を  
ちらりと見る。祐希のアソコの具合を見るといってたはずだが、それを忘れたかのように、彩乃は  
敷き詰めた布団に寝転がってリラックスしていた。エッチなグラビア雑誌のカバーガールの様に、  
足を軽く交差させ、挑発的とも言える無防備さで、香奈には到底無い、豊かな丘を誇示するかの様に  
胸を反らしている。  
そして、これも忘れたかのように、ショーツとパジャマを穿く『許可』をくれない。それどころか…。  
 
「あ、彩乃さん! それ、どうするの?」  
祐希が慌てたように聞く。見ると彩乃は全員のショーツとパジャマの下を集めて、それを廊下に放り  
出したのだ。そして、そのまま扉をピシャッと閉めてしまう。勿論、代わりの衣服など、ない。  
「だって、こんなの必要ないでしょ?」  
クスクスと悪戯っぽく微笑む。エアコンは効いているので寒くは無いが、このまま下半身裸で朝まで  
この部屋にいろと言う事なのか? 彩乃以外の三人は戸惑いながら顔を見合わせる。  
(でも、ちょっと気持ちいいかも……)  
さっきから香奈は裸の下半身に布団が柔らかく触れる感触を、人知れず楽しんでいた。素肌にシーツが  
触れるのがこんなに気持ち良いなんて……。もし、上半身も脱いで全裸で寝転んだら、凄く気持ちが  
良いかも……。と考えてしまう。  
 
「全部裸になって寝転ぶと気持ち良いよ、香奈ちゃん」  
彩乃の声に、口から心臓が飛び出そうになってしまう。今、香奈が思っていた事が、そのまま彩乃の  
口から出てきたからだ。偶然? それとも、まさか心を読まれてる…?  
オロオロする香奈を見て彩乃は内心、お腹を抱えて転げ回りたいぐらいに笑いそうになる。  
香奈の表情は豊かで直に顔に出るし、そのよく動く瞳が見る先で何を考えているかわかってしまうのだ。  
無論、香奈は彩乃がそんな事を思っているなどと露知らず、彼女には隠し事は出来ない、と一人合点して  
いるのであった。  
 
「そうね。全部が恥ずかしかったら、こんなのはどうかな?」  
彩名が瑞穂の前に座ると、一つ一つパジャマのボタンを外していく! つ……ついに、全裸!?  
香奈と祐希が顔を見合わせてると、彩名は瑞穂のパジャマのボタンを全部外しただけで、脱がそうとは  
しなかった。そして、同じように自分もパジャマのボタンを全部外してしまう。ぷるん、と推定Eカップは  
ありそうな胸が揺れるのが隙間から見えた。  
「こうやってね、うつ伏せに寝転ぶの。そうしたら、全裸と同じでしょ? 恥ずかしかったら隠せば  
良いし」  
そう言うと自ら野球のスライディングの様に布団に飛び込み、きもちいい〜!と満足げに微笑む。  
後半の台詞は納得いかなかったが(上半身はともかく、お尻は丸見えである!)、確かに気持ち  
良さそうだ。香奈と祐希はお互い顔を見合すと、お互いのボタンを外しっこする。  
 
「あ、それ…いいな〜〜。私も香奈ちゃんとすればよかった…」  
指を加えんばかりに二人の様子を見る彩乃。そこまで考えが及ばなかったのを残念がる。  
この時ばかりは、祐希が得意気だった。香奈と祐希は小さい時からこうやって仲良くやってきたのだ。  
彩乃が憧れの人でも、一朝一夕には自然とこういう真似は出来ないよ。とばかりに、勝ち誇った  
ようにチラリと彩乃を見る。それに気づいたのか、彩乃の顔にちょっとムッとした表情がわずかに浮かぶ。  
「どうしたの?」  
二人の様子が少し変わったのに気づいたのか、香奈が二人を見比べる。なんでもないよ、と二人して  
言うと、特に気がつかなかったように祐希に身を任せる。知らぬは当人ばかりだ。  
勘のいい瑞穂は、一瞬で察して三人を見ながら苦笑する。漫画だったら笑顔に一粒汗がたらり、  
と垂れるだろう。  
 
「わぁ〜、ホントだ! 気持ちいい〜〜!!」  
上機嫌で布団の上ではしゃいでるのは祐希だ。ようやく裸で居る恥ずかしさにも慣れてきたか、  
ボタンを外したパジャマを引っ掛けているだけの姿でも動けるようになり、もともと明るい彼女は  
すっかり今の状況を楽しんでいる。水泳の様に水かきの真似をして香奈たちを笑わせる祐希。  
「そう言えば、祐希ちゃんの大事な所チェック、忘れてたね」  
突然、彩乃が思い出したように言う。ピタッと動きが止まる祐希。香奈と瑞穂も彩乃を見る。  
 
「も、もう大丈夫ですよ〜。ほ、ほら! こうやって元気に動けるし!」  
照れ隠しにか、わざとバタ足を強めて大丈夫な事をアピールする祐希。しかし、彩乃はそれには  
答えず、ダウンを奪ったプロレスラーの様にゆっくりと祐希の寝そべっている足のほうに移動した。  
「え…? な、なんですか!? あ…!」  
祐希が慌てて立ち上がろうとする直前、彩乃はしっかりと祐希の両踝を自分の両手で掴んでいた。  
きゃん! と布団につんのめり、うつ伏せに寝かされる祐希。そして……。  
「あ、彩乃さん、冗談はほどほどに……ひゃあん!?」  
香奈も瑞穂もその場で硬直してしまった。彩乃は祐希の両足をがっちりと脇で固定すると、その間に  
右足を差し込んだのだ! つまり、祐希の股間に彩乃の踵が食い込む様に押し付けられている状態だ。  
 
「さっきはよくも舐めた真似をしてくれたわね? 『で・ん・き・あ・ん・ま〜〜!!』」  
一瞬、やや物騒な表情でボソリと呟いた後、掛け声とともに右足の踝をグリグリと動かした!!  
「や、やだ…! なに? きゃあああん!?」  
うつ伏せになった状態で思いっきりビクビクッ!と胸と喉を反らして悲鳴を上げる祐希。  
彩乃は捻る回転だけでなく、縦の動きも微妙に変化させ、股間にかかる圧力を調節している。  
「はぁ…! ううぅ……? な、なにこれぇ〜〜!? あうううう…!!!」  
股間を責める彩乃の動きにシンクロするかのように、布団の上で悶える祐希。一頻り声を上げた  
後は、シーツを掴んで、唇を噛み締め、体を強ばらせて悲鳴を押し殺す。そうしないと耐えられ  
ないからだ。  
「く…ふ…ん、……あふ……」  
祐希の動きが段々小さくなる。しかし、今度は体が小刻みに震えていた。特にかもしかの様な脚の  
内股のあたりがプルプルと、それ自体が別の生き物の様に蠢いている。  
 
「こ…。これって……」  
どきどきどき…と心臓が高鳴るのを感じながら、香奈は電気あんまの二人を食い入るように見つめて  
いる。ふと気づいて瑞穂の方を見る。意外にも瑞穂は落ち着いていた。流石に頬は紅潮した様子だが、  
香奈と違い、見慣れた光景を見るかのような落ち着きぶりだ。  
(瑞穂はもしかしたら、彩乃さんとこういう事を…?)  
だとしたら、今日の瑞穂の落ち着きは納得できる。いつもの瑞穂だったら、とてもじゃないが、  
こんな淫らな展開についていけず、パニックになっていただろう。  
(もしかして、今日の事って、瑞穂と彩乃さんが……?)  
二人の共謀で仕組んだことなのだろうか? 今までの流れを思い浮かべるとあながちありえない事  
ではない……。そうだとしても、二人が何を目的としてるかまではわからないが。  
 
「はぁ……はぁ……はぁ……ボク、もう……だめ……」  
ついにぐったりと布団に伏す祐希。ボーイッシュなショートカットは乱れ、全身は苦悶と快楽の  
汗でどっぷりと湿っている。女の子の急所を責められる痛さと気持ち良さ、それが交互に、或いは  
一緒になって押し寄せる数々の波に翻弄され、一気に体力を使い果たしてしまった祐希……。  
彩乃も電気あんまを続けていた右足を止めた。彼女の右足も攣りそうになったからだ。  
 
「ふぅ……。どう、思い知った? 今度香奈ちゃんの事で私に舐めた態度を取ったりしたら、  
こんなものじゃすまないからね?」  
祐希がぐったりしてからようやく電気あんまから解放すると耳元で祐希にだけ聞こえるように囁いた。  
香奈からは絶対に見えない様に、聞こえないように細心の注意を払っている。  
「……ふん」  
祐希は祐希でそんな脅しには屈しない。ベェ!だ、とばかりに香奈の死角で思い切り舌を出している。  
一瞬だけだが、眉を顰める彩乃。二人の様子が見える瑞穂側からはカチンと来た様子が丸分かりである。  
 
「ゆ、祐希…。だ、大丈夫?」  
ようやく電気あんまが終わったのを見て、香奈が祐希を抱き起こす。ちょっと心配そうだが、  
それ以上に胸がドキドキしているのが祐希にも分かる。  
「うん、大丈夫……やられている間は大変だったけど。ねぇ、香奈はボクがあんな事されてるのを  
見て、ドキドキした?」  
「えっ…? そ、そんな事……」  
悪戯っぽく笑う祐希に戸惑いの表情を見せる香奈。それは全くの図星だった。肯定もしないが  
否定もしない。  
 
「香奈もボクにこんな事してみたい? それとも、香奈がされてみたい?」  
祐希も少し真顔になって聞いてみる。どちらも嫌だと言われたら、どうしよう? 一抹の不安が  
胸をよぎる。  
「……されてみたい」  
これ以上ないぐらい、真っ赤になって答える香奈。恥ずかしそうだったが、否定もごまかしも  
しなかった。はっきりと祐希の願いを受け入れる。  
「香奈…!! じゃあ、次は香奈の番だよ? 覚悟してね」  
嬉しさのあまり、香奈を抱きしめる祐希。頬をすり合わせながら、次のプレイを約束させる。  
コクリと頷き、祐希の胸に顔を寄せる香奈。  
 
「………」  
その様子を面白くなさそうに見ていたのは、勿論、彩乃だった。胸がはだけているのも気にせず、  
髪をかき上げてつまらなそうにソッポを向く。その横で、祐希が嬉しそうに香奈を布団に  
横たわらせていた。さっきと違い、仰向けの姿勢だ。そして、自分は香奈の体に覆い被さる  
ようにして、胸を密着させる。甘い息遣いが二人の唇から漏れ、お互いのテンションが共鳴しあって  
高まっていくのが感じられた。  
「じゃあ、始めるよ?」  
祐希が確認すると、香奈は恥ずかしそうにコクリと頷いた。  
 
 

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