「静香ってほんと寒がりだよね〜。中にも随分着込んでるみたいだし」  
友人の美佐が呆れたように言うけど、この寒い時期にスカートを穿いてるほうが、私には信じられなんだけどな〜。  
私の服装は、長袖Tシャツにトレーナー、その上からコートにマフラー。足のほうだって足首までカバーできるレギンスを履いてしっかり防寒しているのに、  
それに比べて美佐は、コートから覗く生足がなんとも寒そう。  
「うん、まあ、私にはスカートは寒すぎるよ…朝なんかも布団の外に出るのが辛くってさ」  
「いや、それは寒がりとか関係ない。断言する!まあ、今日はいつもより寒いって、天気予報でも言ってたしね〜」  
気楽な会話。でも、本当は息苦しいくらいに緊張してるんだ。  
「…いよいよだね」  
「うん」  
「静香はきっと大丈夫だよ。頭良いし」  
「ありがとう…でも、美佐だってこの日の為に必死に頑張ってきたの、私見てたから知ってるよ!  
 絶対って言葉好きじゃないけど、美佐なら絶対大丈夫だよ!」  
「うん、ありがと!じゃあ、帰り、笑顔で、一緒に帰ろうね!」  
「うん!」  
私達は別れてそれぞれの会場に向かう。  
市内有数の大学。私たちには少しレベルが高いけど…今まで頑張ってきたのはこの時の為。  
一生を左右しかねない大事な一戦。私達は、今からそれに挑む。  
…美佐と一緒に来られたことは、私の心を落ち着かせてくれた。だから、私の存在が美佐の助けになってると良いな…  
 
え〜っと、私の向かう会場は…?随分遠いね…  
一つだけやけに離れた場所に立つ、それほど大きくない建物。  
外からでは普段何に使われてる施設かはわからないけど、入り口にご丁寧にガードマン風の人が立ってるところを見ると  
実は重要な施設なのかも。  
 
会場の中は思ったより広くて、室温も私にとってはちょうど良いくらい(たぶん、他に人には少し熱いんじゃないかな)で、意外に快適だ。  
私はコートとマフラーを脱いで、自分の番号の席に座って待つ。  
真ん中より少し後ろの席。まあ、悪い席じゃないかな。  
…でも、なんか周りには薄着の人が目立つ。私くらい厚着の人は数えるほどしかいない。  
勉強っぽいことしてる人もいるけど、私はいまさら慌てても…ということで、出来るだけ頭リラックスさせてのんびり待つことにした。  
 
しばらく待つと試験官みたいな人が十人くらい入ってきた。…結構多いんだね、それにまだ試験まで結構時間があるけど…  
「え〜、試験前に服装と持ち物の検査をします。番号を呼ばれた人は、手荷物とコート等のすでに脱いだ衣服も含めて全て持って、前に出てきてください」  
呼ばれた人は、なにか少し話をして…何か、ぺたぺた触ってる?…  
なんかボディチェックみたいなことしてるみたいだ。  
どうも手荷物も上着も、全部試験官の人が纏めて預かって筆記用具だけを持って席で待つみたい。  
しばらくは何事もなく進んだけど、ある一人の女の子の番になったとき、その子が大声を上げた。  
「な、何でそんなことしなきゃいけないんですか!!」  
その子の怒鳴り声は聞こえたけど、ここからでは試験官の声までは聞き取れない。  
何か言い争いをしているのはわかるけど…  
「…わ、わかりました!私、受験やめます!こんなのおかしいです!!」  
その子はそう叫ぶと、走って教室から出て行ってしまった。  
……あたりはし〜んとして、重苦しい空気が立ちこめてる。  
いったい何を言われたのか…これから何を言われるのか…  
すでに呼ばれた人達にも、その子の言動や行動の意味がわからないみたいで、ひそひそとした話し声が周りから聞こえる。  
「えっ…なに…どういうこと?」  
「お前、呼ばれたよな。何言われた?」  
「え?何も…ただコートと鞄を預けて、ちょっと触られただけだよ」  
私を含め、まだ呼ばれていない人達の緊張が高まっていき、ぴりぴりとした空気が漂う中、もう一人の女の子が同じように教室を飛び出していった。  
 
教室が重苦しい空気に包まれる中、しばらくすると私の番号が呼ばれた。  
その人は長く綺麗な黒髪の、凛としていて人を寄せ付けない、そんな近寄りがたい雰囲気をした綺麗な女性だった。  
「荷物は鞄とコートにマフラー、と……随分着込んでるみたいですね…」  
「あ、はい。寒いの苦手で…」  
「パンフレットは読みましたか?」  
第一印象とは違い優しい声をしていて受験生である私に丁寧な口調で、思ったより感じの良い人だ。  
 
「はい。あの…なにか問題が?」  
「ええ。ここを読んでもらえますか」  
差し出されたパンフレットは、確かに私も目を通したものだった。そして最後の注意点が書き連ねられているところに  
『当日の服装は軽装でお願いします』  
としっかりと書かれていた。  
「あ…すいません。読んだとは思うんですけど、その、うっかり…」  
「いえ、結構あることですから。ですが、規則ですので脱いでもらえますか」  
…え?脱ぐ?…厳しいな〜。  
まあ、少し寒いのが嫌だけど、そんなこと言って目をつけられたら嫌だしね。  
私は一番上のトレーナーを脱いで試験官の人に渡す。  
中のTシャツは地味なやつだから、あんまり人に見せたくないんだけどな〜…  
周りを見てみると、いきなり脱ぎだした私にみんなが変な人を見るような視線を向けてるよ〜…  
私だって、こんな人前で脱ぎたくないんだけどな…  
あれ?…試験官の人がニコニコした顔で、まだ私を見てる。  
「あの…脱ぎましたけど…」  
「はい。ですが着込んでる人には、一度全部脱いでもらう決まりなんです」  
……え?…  
「……あの、全部って…え?でもこれ以上脱ぐと…その…」  
「もし従っていただけないのなら、そのときは受験資格剥奪となりますが…」  
「そ、そんな!だって、ちょっと厚着したくらいで…」  
そこまで言うと、試験官の人が表情を固する。  
「これ、何の検査だと思います?不正防止の検査だってことくらい、わかりますよね?注意書きにわざわざ服装の規定があるのもその為ですよ。  
 貴女はその規定に抵触しているんです。強制的に資格剥奪してもいいんですよ!?」  
今までの穏やかで丁寧な口調から一変して、責めるような強い口調で一気に捲くし立てる。  
「そんな…だって…私、脱げません!」  
私の大声に教室の中にざわめきが起こる。  
「おい…今、脱ぐって」  
「なに?え?何の話?」  
「受験生は静かにしてください!」  
試験官の一括にざわめきは治まり、一段と張り詰めた空気に包まれる。  
「わかりました。ええと名前は、保科静香さんですね。いったん席に戻ってください。そして、受験を続けるかどうか、しっかりと考えてください」  
「そんな!……はい。わかりました…」  
今なら出て行った女の子たちの気持ちがわかる。  
こんなところで脱げだなんて…  
周りから向けられる視線が痛い…まるで、私が悪いみたい…  
なんだか、すごく、寒い…たった一枚トレーナーがないだけで、こんなに寒いなんて…  
まるで、私の周りだけ空気が違うみたいに寒いよ…  
 
呼ばれた人は、今までとは違う種類の緊張に満ちた面持ちで前に出て行く。  
まだ呼ばれていない人は、せめて少しでも薄着になろうとギリギリまで脱ぎ始める。  
私が発した言葉のおかげか、それとも元から厚着の人は少なかったからか、教室を飛び出していく人はもういなかった。  
 
「これで全員終わりましたね。さて、保科さん前に来てください」  
「…はい」  
私の名前が呼ばれると、みんな一斉に私のほうを見る。  
…同情してるような目と、可哀想なものを見る目…女の子達も、男の子達も…  
知らない人たちばっかりなのに、みんなが私を心配してくれてる気がする…応援してくれてる気がする…  
…でも同時に、すごく惨めな気持ちになってくる…  
ゆっくり、ゆっくりと一歩一歩近づいていく。  
「あ!」  
思ったより参ってるみたいで、足がもつれて転びそうになったとき、近くにいた女の子が支えてくれて転ばずにすんだ。  
「あの…大丈夫?」  
「うん…ありがと」  
 
たったそれだけだけど…名前も知らない女の子だけど…  
涙が出そうになるくらい嬉しかった…  
 
「それで…どうしますか?」  
…今なら、まだ引き返せる。  
…でも、引き返しても受験は失敗。私一人頑張りもせずに逃げ帰って、それでどうなるの?…美佐との約束はどうなるの?…  
「無理みたいですね。では荷物を持って…」  
「待ってください…脱ぎます。受験させてください」  
私…馬鹿なのかな?……でも、このまま帰るのは絶対嫌!!  
「わかりました。最後にもう一度確認します…貴女は、あくまで自発的に協力するのであって、これは強制ではありません。いいですね?」  
受験資格を盾にとって、強制じゃないなんて言われてもね…  
今なら、まだ…服を脱ぐ前なら戻れるんだろうなぁ…でも  
「…はい。私は自発的に協力するため…ふ、服を脱ぎます」  
「そうですか。では、もう一度、皆に聞こえるよう、私の言ったことを続けて喋ってください。  
 嫌なら言わずに受験を取り止めてもいいですが、宣誓したら私達に従ってもらいますから、そのつもりで」  
……これを言ったら、もう戻れない…でも、す、少し…ふ、服を脱ぐくらい…  
「…わ、私、保科静香は」  
「…検査に協力するため…自らの意思で」  
「指示に従うことを誓います…」  
「ま、まずは規定に…従い…」  
「い、今からこの場で……ふ、服を…脱ぎます!」  
「…ですが、あくまで私自身の意思だということを…」  
「…私は…宣言します…」  
 
「はい。そういうことですので、受験生の皆さんも騒いだりしないように」  
私の宣誓が終わると、受験生たちの表情に少しの変化が生まれる。  
今までのようの私に同情的な視線を向けてくるグループと少しだけ…楽しそうなグループ…  
ああ、そうか…ここってみんなの表情もよく見えるんだ…  
じゃあ、私の位置は…みんなからもよく見えてるんだね…  
「どうかしました?」  
「いえ…」  
早く、早く済ませよう…  
私は無地で色気のないTシャツの裾を掴んで一気に捲り上げる。  
「うわ…」  
「あの子…ほんとに脱いだ…」  
「可哀想…」  
むき出しになった肌に視線と寒さが刺さる。  
どうして…どうして、始めてあった人たちの前で、こんな格好をしているんだろう…  
泣きたくなる気持ちを抑えて、私はレギンスへと手を伸ばす。  
………  
やだよ…脱ぎたくない…  
…でも、あと少し…もう少しだけ頑張れば、美佐との約束もきっと果たせる…  
だから…美佐、私に勇気を分けて…  
………  
でも…そう自分に言い聞かせても、それでも最後の決心がつかない…  
そんな簡単に人前で脱げるわけない…  
「どうしました?」  
「ご、ごめんなさい…少し…もう少しだけ、時間をください…」  
「そうですか…ですが、あまり時間もありませんし…宣誓も済んだことですし、お手伝いしますね」  
「え?…何を……いやぁぁ!!」  
その言葉と同時に、周りにいた試験官の人達の手が伸びてきて、私の手を掴んで高く掲げられる。  
大柄な男性に手を押さえられ、私がいくら身体を揺すろうとびくともせず、あっという間に私のレギンスは足首まで下ろされていた。  
男の人に力ずくで自由を奪われる。それがこんなに怖いなんて…  
「い、いやああぁぁぁ!!触らないで!脱がさないで!!」  
「大人しくしてください!あまりひどく暴れると、このまま放り出しますよ!」  
「ひ…や、やだぁ……お願い…下ろして…」  
両手を一纏めにして高く掲げられ、吊るされているかのような私には、身体を捩るくらいのことしか出来ない。  
 
ブラとショーツ。下着だけに身を包んだ私に、驚きに満ちた視線が容赦なく向けられている。  
「いやぁ!見ないで…みんな、見ないで…」  
「受験生の皆さん、保科静香さんの宣誓を聞いた貴方達は証人です。保科さんの為にも、できれば目を背けないでもらえるとありがたいです」  
一受験生の言葉と試験官の言葉。その重みはぜんぜん違い、私を包む視線は止むことなく私を貫き続ける。  
「下ろして…手を離して…もう、おしまい…なんですよね?終わりですよね?」  
「いいえ。言いましたよね?全部って。抵触した人は下着の中もチェックすることになってるんですよ」  
その言葉が終わると同時に、試験官の一人が手をブラへと伸ばす。  
自分でも顔が青ざめていくのがわかる。表情が固まっていくのがわかる。  
「ひぃ、や、やだぁ!離してぇ!!」  
身体だけ。手も足も押さえらた私に唯一残された抵抗が、身体を揺することだった。  
でも、そんな抵抗何の意味もない。  
すぐにブラはずらされ私の胸が露になると、どよめきが沸き起こる。  
驚きと悲鳴とが混ざったざわめき。ここにいる受験生の誰もが…きっと出て行った子達すら、ここまでされるなんて思っていなかったんだろうな…  
 
「いやぁぁぁああ!!」  
見られた!!…見られ…ちゃった…  
なんで…なんで、こんな目に…  
始めて、あった人達に…  
そんな人達に…  
私の胸…  
見られてる…  
見られてる!!  
「やだぁぁあ!!帰る!もういいから帰らせて!!受験なんていいから!!」  
ごめん美佐…私…もう、無理だよ……笑顔で…帰れそうにないよ…  
もう…帰りたい…逃げ出したい……消えて、しまいたい…  
「何言ってるんですか!せっかくここまで頑張ったんですから、受験はしたほうがいいですよ。あと少しです。頑張りましょう」  
この人は…何を言ってるの!?…私が、本人が帰りたいって言ってるのに!  
もう嫌なの…帰りたいの…  
裸なんて…見られたくないの!!  
「いやぁ!触らないで!」  
少しだけ上にずらされたブラの中、その内側をまさぐる手が時折私の胸に触れる。  
わざと触れてくるようないやらしい手つきじゃない…けど、  
Cカップの小さいとは言えない胸のすぐ近くを、男性の手が忙しなく動き、時折胸を掠めてその都度いやらしく揺れてしまう…  
試験官の人達の目つきだっていやらしいわけじゃない…でも、  
手の動きを追うその視線は、無遠慮に胸の周りを這い回り……乳首も見られてしまう…  
恥ずかしいよ…隠したいよ…  
もう…早く終わって…  
 
私にとって少しだけ救いだったのは、受験生のみんなは一部を除いて目を逸らしてくれていたこと。  
特に女の子は、みんな私から目を逸らしたり、顔を覆っている子がほとんどで、  
男の子だって目を逸らしてくれている人が多かった…  
でも、同時にそんな風に気を使われることすら辛かった。肌を晒していることをより意識させられて…それが辛かった…  
それに、何人かは私と目が合っても、視線を逸らすどころか、私の身体を嘗め回すように見ていた…  
…そして……これは、まだ終わりじゃなかった…  
「上の方は異常無しですね。では証拠として、撮影をさせていただきますね」  
「え!?や、やだぁ!!もう、いやあああ!!」  
私の言葉を無視して、試験官が取り出したカメラのシャッター音が響く。  
腕を押さえられ隠すことも出来ない私は、精一杯身体を揺すって抵抗する。  
無駄な努力だってことくらい、わかってる…  
でもね、何もせずに受け入れるのは…私には、辛すぎるよ…  
試験官の人の目配せで、何本もの手が私の身体を押さえにかかる。  
お腹を押さえる手、腋に差し込まれる手。中には、胸を…掴むような手もあった。  
私の抵抗などお構いなしに、惨めに押し上げられたブラだけの、その上、何本もの手に体中を押さえつけられた私の裸の写真が撮られていく。  
「もう、いやぁ……撮らないで…」  
 
「保科さん、これは貴女の為でもあるんですよ。あなたの潔白がこの写真によって証明されるんですから」  
嫌な笑顔。さっきまでの穏やかな表情とは違う、暗い笑顔。  
まるで、私を辱めるのが楽しくてしょうがない…そんな笑顔に見える…  
「さあ、次は下のほうですね」  
「ひっ!!や、やだ…そんなのやだよ!そ、そこだけは…お願い…お願いだからぁ!」  
「…それは無理ですね。貴女は宣誓してしまいましたから。指示に従ってもらわなければなりません。…もし嫌だと言うのなら、貴女に不正の疑いがあり、  
 さらにその検査から逃げ出したことを、貴女の学校にも連絡しなければなりません。……ああ、安心してください。  
 先ほどの写真は、ちゃんと学校の方へ提供しますから。証拠ですからね」  
もう、きっと、何を言っても無駄だったんだと思う…写真まで、撮られちゃって…  
きっと、あのとき…宣誓したとき…  
意地なんて張らずに、帰ればよかったんだ…  
そうすれば…こんなことには…  
でも、しょうがないよね?…  
だって…こんなになるなんて、思わなかったんだもん…  
 
「…わ、わかり…ました……言う、通りに…し、しますから…だから…」  
「はい。こちらとしては指示に従ってくれさえすれば、問題はありません」  
もう…逃げられないんだ……だったら、少しでも早く…  
「お願い…早く…済ませて」  
試験官は私が観念したことを確認するとその手を離してくれたので、私はやっと胸を隠せた。  
でも、同時にブラは没収されてしまって、私の身に着けているものは、ショーツとオーバーニーの靴下…後は靴だけ。  
身体が、心が寒い…すごく、寒いよ…  
「足をもう少し開いてくれますか?」  
「……はい…」  
言われたとおり少しだけ開いても、試験官の人は顔を横に振ってさらに開くように促してくる。  
少し開いては顔を窺い、もう少し開いては窺う。  
何度か繰り返して肩幅ぐらいまで開くと、やっと顔が縦に振られる。  
なら最初から、肩幅って言ってくれれば…少しは楽だったかもしれないのに…  
私、脱がされちゃうんだね…こんなところで…こんな名前すら知らない人がたくさんいる中で…  
でもあと少し…本当にあと少しなんだ…  
腰へと手が伸ばされても、ただ見つめるだけで何もしない私を、みんなはどう思うのだろう?…  
しょうがないんだよ……だって…もう嫌だから…  
受け入れて…抵抗しないで…少しでも、早く終わらせたいの…  
ああ…手が…私のショーツを掴んで…下ろしてく…  
嫌だ…嫌だよ…  
…でも…しょうがないんだもん…  
しょうが…ないの…  
 
 
ショーツはゆっくりと下ろされ、膝のところで止まり、その状態で何度かシャッターが切られる。  
足を大きく開き、ショーツを膝に引っ掛けた私の姿が記録されていく。  
全身や顔を撮ってから、ショーツやアソコの接写まで…  
私はそれを黙って見ていることしか出来ない。  
写真を撮り終えると、試験官の人達が無言で指を這わせて調べていく。  
撮らないで!って言いたかった…触らないで!って言いたかった…  
…でも、それ言ってしまえば、きっと苦しむ時間が増えるだけ…  
こんな恥ずかしいこと一秒でも早く終わらせたいの…だから……隠しちゃダメなの!  
耐えなきゃ、我慢…しなきゃ、いけないの…  
下着を、それもさっきまで身に着けていたものを弄繰り回されるのは想像以上に屈辱的で恥ずかしい…  
それは、間接的に私の秘部を、弄り回されているようなものだから…  
さっきまで私の秘部に触れていた部分を、男性の試験官が弄ってる…指を這わせて、摘んで、表も、裏も…  
顔はこれ以上無いくらい熱くなり、心臓もドクドクと大きな音を立て続ける。  
 
「失礼します。これも規則ですので」  
あの試験官が一言断ってから、しゃがんで私の秘部へと手を伸ばす。  
「え?…嫌!!」  
試験官の人は私のそこへと手を伸ばして、秘所に生えている毛を撫で始めた。  
「うわ…そこまで…」  
「酷い…」  
私の声につられて、私を見た何人かの声が聞こえる…一様に同情的で、余計…惨めになる…  
秘所を撫でる指は次第に下へと降りていく。  
撫で摩り、毛の一本一本確かめるように執拗に、時折指でつつくようにしながら、私の秘所を両手で撫で回す。  
そんな所に…何かを隠すわけないのに…  
「…おや?」  
この状況が心底楽しくて堪らないような暗い笑顔。  
試験官の人が指を離し、その指を開くとそこに光る糸のようなものが架かる。  
「これは何でしょうか?」  
その指は微かに濡れていて、指をこすり合わせて開くとまた光る糸を引く。  
「い、嫌!見ないでぇ!見せないでぇ!」  
「保科さん、何か濡れているようですが…」  
そ、そんなこと…言わなくたって!  
「ふふっ、冗談です。安心してください。以前にも、この検査で濡れてしまった子もいますし、貴女が特別というわけではありません」  
この人…わざと大きな声で!!  
一瞬のざわめきの後、私を包む空気が変わった。  
「え?…何、濡れてるの?あの子…」  
「…あんなに辛そうだったのに?」  
「あの扱いで、感じてんのか?」  
さっきまでとは違う懐疑的で蔑みの色のこもった視線が私へと向けられている。  
「わ、私そんなんじゃ!」  
「保科さん、静かにしてください!…もう少し調べさせてもらっていいですか?」  
「ひっ……はい…あ、あの、だから……早く…」  
大きな声につい萎縮してしまう。  
「わかっています。すぐに、済みますよ…」  
 
 
どうして…どうしてこんなことになってるの?  
「ひっ!…やぁっ…ン!」  
とっさに口を押さえるけど、声が漏れてしまう。  
試験官の人が私の秘部に指を添えて開き、撫で、上の突起を捏ねる。  
もうみんな私から目を逸らさずに、私のソコへと視線を送り続けている。  
誰がどう見ても、それは愛撫だった。なのに、周りの試験官の人達はそれを止めようとはしない。  
ただ私の震える身体を支え、見守るだけ。  
「やっ…だぁ……はっ…やめ…てぇ…ひゃああ!」  
「それは無理ですよ、保科さん。これは検査ですから」  
恥ずかしさを我慢して紡ぎ出した甘く蕩けた声は即座に否定され、お仕置きとばかりに敏感な肉芽を摘まれる。  
こんな…人前で……私、何されてるの?…なんで…こうなってるの?  
表面を撫でるだけじゃなく、浅い進入を何度も繰り返し、その都度電流のようなものが駆け巡る。  
異物の進入に身体は強張り、異物を排除しようとより強く締め付け、  
強い締め付けは異物のわずかな動きですら敏感な粘膜を抉り、大きな電流となって帰ってくる。  
「ひやぁ…も、もう…はぁン…」  
指先をほんの少し動かされるだけで、いやらしい声が漏れて、身体を貫く衝撃にその身を震わせてしまう。  
「ふふっ…本当によく濡れますね。でも、これは検査なんですよ?わかってますか?」  
「や…あぁ…そ、そんな…ぬ、濡れて、ひゃあああ!!」  
私が否定の言葉を発する前に、今度は締め付けられた指を無理矢理動かし掻き回す。  
身体の奥の、今日まで誰にも触れさせた事の無い場所を、名前さえ知らない人に好き勝手弄くられている。  
屈辱的で…恥ずかしさに、胸の奥が焼けるように熱いのに……身体を奥から沸き起こる甘い痺れを、心地いいと思ってしまう…  
「ほら、こんなに。濡れているのがわかるでしょう?」  
目の前に突き出された指、キラキラと光を反射して、濡れていることが一目でわかる。  
 
「…そ、それは……だって…」  
「大丈夫ですよ。ここにいる人は皆、貴女がいやらしい子だなんて、思っていませんから」  
まただ…  
また、あの楽しそうな暗い笑顔…  
「さあ、あと少しです。頑張りましょうね」  
 
「…ン…ひゃあ…」  
口を閉じて声を我慢しようとしても、指の動きを少し変えられるだけで、声が漏れ出してしまう。  
また試験官の人は私の前にしゃがみ、私のソコを弄くり始める。  
足はいつの間にか押さえられ閉じることすら出来ず、無様に開かれたソコを弄くる様を、  
無機質なレンズが捕らえ、この場にいる誰もが見つめ続ける。  
顔を赤く染め口を押さえる女子、身を乗り出して興奮した様子の男子、蔑んだ、だけど楽しそうな目をした女子。  
だんだんと思考がぼやけ、心の中ですら抵抗できなくなっていく。  
クチュクチュという卑猥な音と、私の息遣いといやらしい声だけが教室に谺する。  
ここが何処なのかとか、人前だとか、それすら考えられなくなってきたとき、それは唐突に終わりを告げた。  
引き抜かれた指はキラキラと輝き、数瞬の間、アソコとの間に橋を架ける。  
「…ハァ…ハァ……なんで…私、まだ…」  
…あと、少しだったのに…もう、ちょっとだったのに…  
「何を言っているんですか?検査は終わりです。ふふっ、靴下はサービスです。席に戻っていいですよ」  
散々弄くられた私のアソコから流れた液が、唯一残った衣服である靴下に恥ずかしい染みを作っている。  
高ぶった身体は、特に弄くられたソコは火照り、疼き、もっと弄って欲しいと…  
寸前まで高められた身体は、もっともっとと刺激を欲しがってる…  
思わず自分で弄くってしまいそうになるほど…  
でも、肩の辺りを押さえられていて、腕に力が入らなかったのが幸いしたのか、かろうじて人前で弄ってしまう前に思考が戻ってくる。  
「ハァ…ハァ……あ、あの…服…服を…」  
「すみませんが、要検査対象は裸で受けてもらうことになっています。室温は十分ですし、問題ないでしょう?」  
少しだけ言葉を理解するのに時間がかかる。頭がぼ〜っとしてるのもあるけど、何よりその言葉が信じられなかったから。  
「……そ、そんな…ハァ…だって…疑いは…晴れたんじゃ、ないんですか?…」  
「はい。ですが、念の為です」  
食い下がろうかとも思った。でも、こんな異常な人達に通用するわけない…どうせ、時間の無駄…  
「……わかり…ました」  
「あっ!ちょっと待ってください!」  
私は大人しく歩き出したそのとき、後ろから手が差し伸べられる。  
その手には小さなタオルが握られていた。  
「筆記用具を忘れていますよ?それと、これをお尻の下に敷いてくださいね。そのままだと、イスが濡れてしまいますから」  
彼女の楽しそうな笑顔が、私の心をより惨めにしていく。  
 
無駄に反抗してもしょうがない…どうせ…  
私は自分の席のほうを見る。戻れと言われた、その席を。  
真ん中より少し後ろの席。悪くないと思った席。  
それが今は、すごく遠くに感じる。  
もうみんなはさっきまでの同情的な感じではなく、面白がっているような人や、明らかに蔑んだ視線を送ってくる人、  
……それから、いやらしい目をした人…  
しょうが…ないのかな?…  
そうだよね…しょうがないよね…  
足に垂れるほど濡れちゃうような……みんなの前でイッちゃいそうになる子は…そういう目で…見られるよね?…  
右手で筆箱を持って胸を隠し、左手とタオルをアソコに当てて、私は歩く…みんなの中を、一人…裸で…  
「やだ!あの子、裸でこっちに来る!」  
「へえ、胸も結構でかいし、エロイ身体してんな」  
「あんだけやられた後で、いまさら隠しても遅いんじゃない?」  
「わざわざ、靴下だけ残してもらったの?なんか、やらしい」  
ひそひそとした声がそこかしこから聞こえてくる…  
「お尻も大きくていいね。ああいうの安産型って言うのかね?」  
嫌…そんな言葉聞きたくない!  
胸とアソコとお尻。女の子として、最低でも守らなくちゃいけない場所。  
なのに、私には服どころか下着すら与えられていない。  
 
もう胸もアソコも見られちゃってるけど…でも、だからって、胸もアソコも…捨てることなんて出来ない…  
だから…仕方なくなの……  
お尻までは、守れないの…  
…だから、見ないで……何も言わないで!  
「うわ…お尻なんて、丸見えだ」  
「あ〜あ、荷物預ける前なら、撮れたのに…」  
「よく平気でいられるよね…私だったら、とっくに逃げてるけどな〜」  
やっぱ、そうだよね……そういう目で見るよね…  
みんな、私を…そういう目で、見てるんだ…  
 
私にとって長い時間、けれど一分に満たない時間が過ぎ、私はやっと自分の席のすぐ近くまで来た。  
嫌そうな顔をした女の子と、ニコニコした男の子に挟まれた、三人がけの席。  
「あ、あの…と、通りますね」  
「あ、うん。どうぞ」  
女の子は私から距離をとるようにイスを端のほうに動かし、男の子は私の足や胸に視線を這わす。  
あ…タオル、敷かなきゃ…  
出来るだけ周りのことを考えないように、出来るだけ意味のないことを考えながら…  
両手で身体を抱きしめて、視線から身を守るようにして待つ…試験が始まるまで…  
横からも前からも、チラチラとみんなが振り向いて私を見てる…  
中には体ごとこっちを向いて、ニヤニヤとしてる子もいる…  
きっと後ろも、私の背中とか腋とか…お尻とか…見てるんだろうな…  
もう嫌だよ…恥ずかしいよ…早く帰りたいよ…  
でも、きっと、許してくれない…  
それに、写真も…  
もう…私には、進むしか…耐えるしかないんだ…  
 
試験開始の合図とともに、会場の雰囲気は一変した。  
さっきまで私の身体中を這い回っていた視線が嘘のように無くなり、無言で重苦しい空気に変わる。  
誰もが目の前の問題に取り掛かり、私が裸でいることなど…取るに足らないことのように…  
それは私にとっては僅かばかりの救いとなり、同時に決断を迫る。  
身体を抱きしめたままでいるわけにはいかなかった。  
手を伸ばせば触れるくらいの距離に男の子がいるのに、視線を遮る為の手を離して問題に取り組まなくちゃいけない。  
でも、たとえ相手がもう気にしていなくても、胸から手を離すのは…  
いつまでも、こうしてるわけにはいかないのはわかってる…それこそ、  
ほとんど強制とはいえ、今まで恥ずかしい思いをしても頑張ってきたのが無駄になる…  
せめて…せめて、今だけは…  
少しずつ…  
まずは、足を強くこすり合わせて…お、男の子の方の足を少しだけ上げて…そうすれば…たぶん、大事なところは守れる…  
こ、今度は手…両手で、まずは胸を隠して…そ、そこから、少しずつ…離す…  
大丈夫…きっと…誰も見てない…  
だから…  
…両手を…机の上へ…  
心臓がドクドクと大きな音を立て、手には自然と力がこもってしまう。  
私…自分の意思で…胸を…  
もし、今、誰かがほんの少し視線をずらすだけで…きっと、見えてしまう…  
もしかしたら…もう、気づいてる人もいるかもしれない…  
…ダメ!…今は集中しないと…  
筆箱から鉛筆を取り出して握る。  
私…震えてる……当たり前だよね…  
早く…早く、問題に取り掛からないと…  
 
鉛筆やシャーペンの音だけが響き、私もなんとか問題を解いていく。  
 
頭のほうはそれなりにうまく回り、何とか半分くらい問題を解いたときだった。  
「おっ!」  
という小さい声。  
「へぇ…」  
と、また小さな声が聞こえた。  
それが何の声なのかは考えたくなかった。  
鉛筆を持つ手がまた震え始め、手は自然と胸のほうへと引き寄せられる。  
ダメだ…気にしちゃダメ……問題のことだけを、考えなくちゃ…  
それに、今だってこんなに前のめりになってるんだから、きっと…見えてない、はず…  
「…ひょっとして、自慢?見せびらかしちゃってさ…」  
「最低…」  
「少しは隠そうとか、思わないの?」  
どこかから聞こえた女の子達の声は、私の心に痛いほど響く。  
なんで?……  
私だって…こんな格好…したくてしてるんじゃないのに…  
女の子なら…少しぐらいわかってよ…  
私が今…どんな気持ちなのか…  
鉛筆を持つ手の震えは大きくなり、頭もうまく回ってくれない。  
一度気になり始めたら、もう無理だった。  
前の子が少し顔を横に向けたとき、横の子が動いたとき、後ろから音が聞こえたとき、  
全部が気になってしまい、もうまともに考えることも難しくて、問題文すらうまく頭に入ってこなくなっていた。  
 
 
最初の試験はボロボロだった。  
出来るだけ答えは埋めたけど、集中力の無い今の状態じゃどれだけ合ってるか…  
今は、試験の合間の休憩時間。  
隣の女の子はすぐに何処かへ行ってしまい、周りには多くの男の子と少しだけど女の子も集まってくる。  
そして、まるで珍しいものでも見るみたいに、私へと視線が向けられる。  
「へえ、結構可愛いじゃん」  
「胸も大きめでさ。良いねえ、俺の好み」  
「今更しおらしくしても、ねえ…」  
心が…痛いよ…  
どうして…  
どうして、みんな…そんなこと言うの?…  
私がしたくてしてるんじゃないこと、知ってるはずなのに…  
男の子の嬉しそうな顔やニヤニヤした顔も辛いけど…女の子の顔はもっと辛い…  
蔑んだ目をして口元を歪ませてる子…私の身体を、汚らわしいものでも見るように見下した目をした子…  
同情的だった子達も、私のほうを見ようとはしない…  
気遣いからなのか、それとも視界にすら入れたくないからなのかはわからないけど、蔑まれるよりはずっといい…  
あ、そうだ…  
一つだけ、確かめておかないと…  
私はまた自分の身体を抱きしめてから、立ち上がる。  
「お、どっか行くのか?」  
「歩き回って、見せびらかしたいだけだったりして」  
嫌!早く、早くこの場を離れたい!  
私が三歩ほど歩いたとき、後ろから声が聞こえた。  
「やだ!あのタオル、グッショリしてない?」  
「なんか、色々染み込んでそうだな」  
や、やだ!タオルもここに置いといたら、何言われるか…  
 
急いで取ろうと、よく考えもせずに右手を伸ばしてしまった。  
「お!オッパイ丸出し!」  
「サービス良いねえ」  
「おい!こっちからだと、スジまで見えたぞ!」  
「腰なんか突き出して、いやらしい女!」  
「どうせ、こうやって騒がれるのが、嬉しくってしょうがないんでしょ!」  
イスの上のタオルを取ろうと、右手を伸ばして体を少し前へと倒す。  
普段何気なくする物を取る動作。  
でも、今だけはやっちゃいけなかった。  
右手を前に出し中腰になったその姿勢は、胸もアソコもお尻も…  
きっと……全部、丸見え…  
頭の中が、顔が、身体が、全部カッと燃え上がるように熱くなる。  
心臓はすごい速さで鼓動を刻み、肌の上をゾワゾワとした感覚が走り抜ける。  
タオルを取るまでの…実際には、二秒あるかどうかの無防備な時間…だけど、私が顔を上げたとき女の子達の目には、より強い蔑みの色がこもっていた。  
 
「あ、あの…と、通りたいので…」  
通路には、いえ、私の席の周りには大勢の人が集まっている。  
邪魔しているような人はいないけど、一言断りを入れる。  
「ああ、俺達邪魔だった?ごめんごめん」  
「さ、どうぞどうぞ」  
みんなはすぐに道を開けてくれる。  
でも、少しだけ躊躇する。  
また人の中を歩かなくちゃならないから…  
でも…やらなくちゃ…聞いてみなくちゃ…  
私が歩き始めると、すぐに後ろから声が聞こえてくる。  
「可愛いねえ。お尻プルプル震わせてさ」  
「前なんて、ほとんど人いないのに…ああ、きっと、お尻見られるのが好きなのね」  
「みんなが見てるの知ってて隠さないんだもんね」  
さっきと同じように胸とアソコを隠している私は、お尻までは隠せない…  
ほとんどの受験生が私の席の周りに集まっていることはわかってる。だから、お尻を隠した方が良いかとも考えた。  
でも、やっぱり、胸もアソコも隠さずに歩くなんて出来ない…  
後ろから聞こえてくる声を無視して、歩くしかない…  
「あ、あの…」  
「はい、どうしました?」  
「わ、私はいつまで、この格好…なんでしょうか?」  
「はい。試験中はその格好ですね。服を着たいなら着ても良いですが、試験前に脱いでいただきます」  
「そ、そうですか…着て、いいんですか…」  
服を着て、そのまま逃げちゃおうか………なんて…思わなくもなかったけど…  
写真まで…撮られちゃったんだよね…  
やっぱ…無理、かな…  
「どうします?服、着ますか?」  
「…いえ、いいです…」  
私の席の周り、まだ人が大勢いる…  
また歩かなくちゃ…大勢の中を…  
嫌だな……  
………  
嫌だよ……  
美佐…私、もう、帰りたい…  
ごめんね…  
約束…守れそうにないよ…  
 
 
終わり  
 

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