倉庫の前にはその中身が飛び出し、廊下は半ば通行止めとなっていた。
所々が欠けたタイプライターや薄汚れたカーテン、枠がびっしりと錆び付いた鏡など、かつて我が家で働いていた物たちが今は埃をかぶっている。
「マチルダ、何か探してるの?」
「……坊っちゃま。……実は脚立を探していまして」
今日は確か来客の予定があった。マチルダの無機質な表情からは感情を読み取り難いが、僕には彼女が少し焦っているように見えた。
時間が押しているのかもしれない。
「電球の交換くらいなら、僕が肩車しようか?」
そう聞いたマチルダはどこか探偵のように拳を口に添えて、しばし思案した。
「……いえ、今日の下着は肩車にふさわしくないので」
もっと気にするべくは他にあるんじゃないですかね、マチルダさん。