ある日突然、俺の世界は変わった。
何の気無しに買った宝くじで二億円を当てた、その日から。
仕事はすぐにやめた。
高層マンションの最上階に住み、馬鹿げた値段の珍味を食い漁る生活。
そして、時には『絶対的成功者』どものパーティーにも入り込んだ。
大企業の社長、ホストクラブの帝王、大成功を収めたクリエイター、
そういった錚々たる面子が集う秘密の社交場に。
一見すると、『そこ』はありふれたバーだった。
ただ入り口で、500万の認証カードを購入しなければならないだけの。
夜の街を見下ろすビル15階。
窓は天井から床までガラス張りとなっているが、全て一種のマジックミラーで、
外からだと内部がぼやけたように見えてしまう。
部屋の中央にはステージのような開けた空間が設けられ、
それを囲むようにガラステーブルと赤ソファが並んでいた。
その赤ソファにはそれぞれ各界の大物がふんぞり返っており、若い女からの奉仕を受けている。
絵としてはキャバクラに近い。
ただし異常な事がひとつ。
その奉仕をしている女性の殆どが、テレビで見た事のある顔なのだ。
例えば今、俺のすぐ近くの席で男の物を咥えている女は、元モデルの汲川真由に違いない。
とびきりの美人だが、鼻の通り方が特徴的ですぐに解る。
近年めっきりテレビで見かけないと思っていたが、まさかこんな所で枕をしていたとは。
本物の芸能人が、目の前にいる。
しかも丸裸に首輪をつけた惨めな格好だ。
彼女のセミヌード写真集には随分お世話になったものだが、その頃に比べるとかなり痩せていた。
手足が細く、アバラが薄っすらと浮き出てさえいる。
胸もこれほどに、探さなければならないほど貧相だっただろうか。
しかし案外、これが繕わざる芸能人の素なのかもしれない。
「触っても構わんよ」
汲川真由の裸を凝視する俺に気付き、奉仕を受けている老紳士風の男が告げた。
重く、自信に溢れた声色。元サラリーマンとしてはつい頭を下げてしまうタイプの男だ。
彼の許可を得て、俺は憧れの芸能人の身体に触れる。
後ろから抱きつき、暖かな背中に肌を触れさせる。やや硬めな背骨の感触。
ライトブラウンの髪に鼻を埋めると、鼻腔からうなじにかけて串で刺されるような強烈な香りが来た。
南国、いや灼熱の匂いと言ってもいい。
シャンプーだろうか、ともかく衝撃的だ。
上流階級のはびこる世界にいると、俺は連中が身につけている服や時計よりも、
こうした“匂い”で格の違いを思い知る事が多い。
ブランド品はその価値が解らなければガラクタだし、味も気取った料理ほどに旨くない。
けれども匂いというやつは、俺の乏しい感性に直接ガツンと来る。
一嗅ぎで魅了され、気分を変えられる。
いま汲川真由が漂ったのも、その匂い。上流階級の世界に身を置く女の匂いだ。
それは、今さらながらに彼女が芸能人その人なのだと強く印象付ける。
俺は興奮も露わにしたまま、汲川の腰に手を回し、秘部に指を沈める。
ぐちゅりと濡れた感触がし、彼女の脚がびくりと予想以上の反応を示した。
男の物から口を離し、元有名モデルの瞳が俺を睨み据える。
お前のようなにわか小金持ちに抱かれるか。そうはっきりと告げる瞳だ。
実際そうだろう。二億と言っても、この世界でははした金。
彼女が奉仕していた男の資産などは、優に100億を超えるのだろうから。
「よく濡れているだろう?ここに来る前にも、私の自宅で一通り愛してやったからね」
男が口髭を歪めながら告げた。
その瞳には言外に、羨ましかろう、お下がりでなら抱かせてやるという意思が滲んでいた。
魅力的ではある。ただ俺は、愛想笑いを浮かべてその場を離れた。
いくら元芸能人と出来るとはいえ、お情けに甘んじるような真似は気分がよくない。
改めて場を見渡すと、辺りには似たような光景が連なっていた。
しばらく顔を見ていないアイドル、女優などが、必死の枕営業を繰り広げている。
ただその中で、一つだけやや異質な空間があった。
壁際のやや薄暗いテーブルに、6人ほどの男が固まっている。
そしてその男達に秘所を晒す格好で、一人の女の子が足を開いていた。
そう、『女の子』。
腰まである真面目そうなツヤツヤの黒髪に、成熟しきっているとはいえないスレンダーな肢体。
高校のブレザー辺りを着ていればちょうどいい年頃に見える。
俺はその席の傍に移動し、彼女の横顔、そして正面からの顔を覗いたが、
テレビなどでは全く見かけた事がない。
ルックスとしては十分芸能界で通じるレベルに見えるが、どうも違う。
業界慣れしていないというのだろうか。
ただ違和感を生む要因といえば、彼女の瞳もそうだった。
他の女は、大物の男に気に入られようと、やや屈辱的でありながらも表面上は媚を売る。
しかしこの少女は、あからさまに俺たちを『睨みつけて』いた。
瞳は、アーモンド型とでも表せばいいのだろうか。
目頭と目尻の部分が、絵に書けそうなほどにくっきりとしている。
ぴっと外を向いた睫毛も好ましい。
その瞳は相当に鋭く、けれども性格の悪さからではなく、しっかりしているからだと窺える。
部活の部長や生徒会長などをしているようなタイプに見えた。
少なくとも、このような腐った大人の遊技場にいるべき類の娘ではない。
「……なぁ、あの子誰だ?」
俺は、傍にいた割と歳の近そうな男に尋ねた。
彼は糸のような目をさらに細め、笑みらしきものを作る。
「知らないよねぇ。僕も最初聞いて、吃驚したからねぇ。
……彼女、屋城暁寛(やしろあきひろ)の娘さんなんだって」
彼の言葉に、俺は驚きを隠せない。
屋城暁寛(やしろあきひろ)といえば、どれほど芸能に疎くとも知らない人間はいないだろう。
知名度でいえば間違いなく芸能界トップ10入りする。
最初は歌手として世に出たらしいが、印象としては人気司会者だ。
数多くの人気番組の司会を行い、あらゆる年代に向けたお茶の間に顔を出し続けてきた。
そのキャラクターについては賛否両論あったとはいえ、とにかく知名度は高い。
ただ芸能界の帝王とすら呼ばれた屋城も、さすがに問題を起こしすぎた。
暴力沙汰、恐喝、挙句には薬物。
度重なる不祥事に、昨年の冬頃、とうとう芸能界を追放となって一波乱を巻き起こしたものだ。
その屋城の娘が、ガラステーブルで晒し者になっている、しっかりした風な女の子だというのか。
「……枕なのか?これも」
俺がやや声を顰めて言うと、糸目の男は頷いた。
「多分ね。僕は彼女の本意じゃないと踏んでるけど。
屋城って父親としても相当に問題のある男だったらしいから、庇う義理もないだろうし。
ただ影響力はある男だったからねぇ。芸能界復帰をと煩くする取り巻きも多いんじゃない?
その交渉のカードが実の娘の売春なんだと思う。
その証拠に、あの子を嬲ってる面々を見てみなよ。全員テレビ業界を牛耳る重鎮だ。
屋城の娘が器量良しだってのは、業界内でも有名なハナシだったみたいだしね」
俺と糸目が視線を向ける先で、少女はやや腰を浮かせ、後ろに手を付いて男達に秘部を晒していた。
「おうお、まだ入りよるわ。いやらしく拡がったもんやなぁ、なあ聡美ちゃん」
男の一人が彼女の脚の間で指を動かしている。
よく観れば、彼の手には細いアナルパールが握られており、
聡美と呼ばれた少女の後ろの孔に入り込んでいた。
しかも、それ一本だけではない。
彼女の肛門には、すでに他にも細いバイブや、珠状の繋がりがいくつか差し込まれている。
桜色の肛門が健気に拡がり、それらを咥え込んでいるのが見えた。
「ほうら、気持ちええやろ」
すでにぎちぎちと音さえしそうな状況ながら、男はその中の一本をゆっくりと抜き差しする。
「………………っ」
聡美は、その男の瞳をあくまで静かに睨み据え、人形のように無表情に耐えていた。
「あれはね、今日でちょうど2週間になるんだ。
前も後ろも正真正銘初物って状態から、毎晩あの親父さん達の手で調教されてる。
何しろかなり偏った性癖の人たちだからさ、僕でも傍から見てて時々引くような調教だよ。
でも聡美ちゃんにも意地があるのかな、あくまで無反応を決め込んでるんだ。
あの根性は、まだちっちゃいって事を抜きにしても凄いものだよ。
ま、それがまた変態さん達の嗜虐心を煽っちゃうんだけどね」
彼の言葉の最中にも、6人の男達の手で肛門の責め具が様々に抜き出され、抉り込まれる。
聡美はガラステーブルの上で腰を浮かせ、ただそれを蔑むように見下ろしていた。
少女のその無機質な姿勢は、しかしそれゆえに異様なほど倒錯的だった。
やがて男の一人が、聡美の肛門から一つずつ責め具を抜き出しつつボーイを呼んだ。
「きみ、頼んだアレを持って来てくれ」
男に命じられると、ボーイは足早にその場を離れ、やがて何かを手に戻ってくる。
ガラス製のサラダボウルに並々と盛られた、黒く粒のある軟体。
俺はそのフルーツ盛りのような量を前に、中身が玉蒟蒻である事をしばし気付けなかった。
そしてよく見ると、ボウルの底には茶色い液体が並々と注がれている。
「さて、聡美ちゃん。あんたも腹が減ったやろ、ディナーの時間や。
この山盛りのコンニャクと、最上級のコニャック……語感的には合う思うが、でやろか?」
男は背筋の寒くなるような台詞を吐きながら、玉蒟蒻の一つを摘みあげる。
茶色い雫が滴った。
コニャックはボウルの底だけでなく、盛られた上の方にも満遍なく掛かっているようだ。
男の指はそれをしばし弄び、聡美の肛門に押し当てる。
「自分でお口を開いてみなさい」
男が命じると、聡美は言われるがまま若い尻肉に手をかけて割りひらく。
複数の器具で拡げられた尻穴が、さらに幅広く口を開ける。
男の命令に対し、躊躇すら見せない。
何ら困った事など起きていない、と訴えるかのようなその動作は、なるほど糸目の言うように凄いものだ。
そうして少女は、切れ長の秘部を薄汚い男達に晒したまま、肛門に玉蒟蒻を受け入れていく。
「どや、ひとつひとつは小さいが、集まってくるとキツいやろう。
おまけに上等なコニャック入りや……どんどんお腹が熱ぅなってきよるで。
女は酔えば酔うほどに大胆になるんや。
今日こそ聡美ちゃんのその澄ました皮引っぺがして、女にしてやりたいわ」
男は言いながら、次々と玉蒟蒻を捻じ込んでいく。
何個ほどが入っただろうか。
「…………んっ…………」
やがて聡美の喉から、ほんの少し苦しげな息が漏れた。
男はそのかすかな声を見逃さず、嬉しそうに聡美の顔を見上げる。
やがて玉蒟蒻は目に見えて入りづらくなり、やがては指で押し込んでも、
半ばほどからすぽりと飛び出してしまうようになる。
「……ふむ、この姿勢ではここらが限界みたいやな。まぁ腹圧キツいしなァこれ。
ほな聡美ちゃん、お腹にモノ入りやすい格好しよか。
4日ほど前に色んな体勢で腹一杯浣腸しながら、よぉー教え込んでやったやろ」
男が言うと、聡美はやや苦しげに膝を付いて体勢を入れ替える。
倒立するように肩をテーブルに付け、開いた脚をその肩の近くまで下ろす格好。
いわゆるまんぐり返しだ。
「そーやそうや。この格好なら、入れたモンがどんどん奥ぅに落ちてくさかいな。
ほな、よう出来たご褒美や。たーんと食べや」
男は嬉々として、ますますあられもない姿となった少女に玉蒟蒻を押し込んでいく。
サラダボウルに溢れるほど盛られた蒟蒻は、次々とその嵩を減らしていく。
それは未成熟な少女の腹の中に入ったのだ。
次第にその白い腹部は、明確なほど膨らみはじめる。
童顔で手足が細く、まるで未熟なのに、腹部だけが妊婦のようになっていく。
それは胸がざわつくほどに背徳的な光景だった。
やがて腹がすっかり膨らみきり、ボウルの中はコニャックだけを残して空となる。
そこへ至った時、男は最後に聡美の肛門へアナル栓を宛がった。
少女の器官に入るのか怪しい黒い極太栓は、しかし男の指に押されて無理矢理に入り込んでいく。
聡美はその際にもなお人形のような無言・無反応を貫いていたが、
肝心の肛門の紅輪だけは演技も何もなく、苦しみのままにヒクついていた。
その後聡美は、腹部を異物によって妊婦のように膨らませたまま、様々な恥辱を受けた。
ある時には、ガラステーブルの上に仰向けになって天井に膨れ上がった腹を向け、
すらりとした細長い脚はテーブルからはみ出たままにぶら下げる。
その状態で、やはりテーブルの端から下ろした頭へのイラマチオ。
腹部の苦しさに体勢の過酷さが加わった状況下での喉奥蹂躙は堪らないだろう。
「ごォっ!!お゛う゛、う゛ぇおおお゛お゛っ…………!!
お゛ア゛、おぉ゛お゛うお゛アああ゛えお゛っっ!!!!」
聡美は、幾度も喉奥から反射によるえづき声を上げた。
濃厚な涎の線が可愛らしい顔を汚していった。
苦しさからか、単純な身体反応としてか、幼さを残す脚線が蠢く様が性的だ。
美麗な脚の合間に覗く桜色の秘部もまた、ひくん、ひくんと反応していた。
またある時には、彼女は男の膝に乗せられ、膨らんだ腹のまま膣を犯された。
腹一杯の蒟蒻が圧迫してきて堪らない、膣の中が感じてるような動きをしている。
そのような言葉責めを繰り返されながら、聡美は淡々と身体を揺らしていた。
まるで人形のように。
ギシッ、ギシッとなる無機質なソファの音がそれに拍車をかけ、
滑稽なほどに一方的な愛情表現に見える。
とはいえ、ここでもよくよく観察すれば、聡美の僅かな反応が見て取れた。
汗がひどく、上下運動のたびに顎や腋の下から飛び散っているさま。
アルコール分が吸収されたのか、かすかに頬紅を差したようになっているさま。
ぎじゅっぎじゅっぎじゅっと汁気たっぷりの音で行われる抽迭の7回に1回ほどの割合で、
彼女の足の両親指がたまらなそうに外に反るさま。
長きに渡るセックスのうちの、ほんの数刻、気のせいのように短い間ではあるが、
聡美のきりりとした瞳が意識を失う寸前のように上を向いたさま。
彼女とて歴とした人間なんだ。苦しくないはずがない。
そしてそれを、責める男達もよく解っている。
「さぁ、お前の全てを見せるんだ」
やがて、散々に膨らみ腹で嬲られた末に、聡美の肛門栓が抜き去られる。
会場の真ん中で。
他の女との遊びに興じていた男達も、一様にそのショーの様子に目を向けた。
「んんんんん…………っ!!」
唇を噛みしめたまま、中腰で元あったサラダボウルへと玉蒟蒻をひり出す聡美。
玉蒟蒻にはコニャックだけでなく、それ以外のつるりとした液体も纏わりついており、
肛門から抜け出す際に糸を引いている事があった。
玉状の軟体は、次々と飛び出してはボウルに飛沫を上げ、あるいは狙いを外れてフロアに滑っていく。
ただ、腸の奥深くまで入り込んだ数十個もの異物を全て排泄する事は並ではない。
さすがの聡美も汗をかき、息を荒げ、鼻水を長く垂らして息むしかなかった。
必死に無感情を装おうとするその聡美を、場の男達は薄笑いを浮かべながら眺めている。
彼女はこれまでもそうして嬲り者にされてきたのだろう。
そして、明日もまた……。
「さぁて、あのショーが終わったら、次は僕があの子を調教できる約束なんだ。
一晩4000万なんて、ぼったくりもいいトコだよね。
まぁそれだけ支払った以上、たっぷりと遊ばせてもらうけど」
俺の横に立っていた、同じ歳くらいの糸目もまた、面白そうに目を見開きはじめていた。
終わり