(可愛いなあ、俺の生徒たちは)  
放課後、勤め先の小学校の正門に立ちながら、蛭間ネムルは思う。ネムルは  
この小学校で、六年生を教える二十四歳の教員である。ただ、生来のチビッコ  
萌えの性癖があるので、  
(おッ!あいつ、ずいぶん胸が膨らんでるなあ。ふむ、あの子、あんなミニス  
カートで授業を受けてんのか。担任は、さぞかし目の保養になるだろう)  
・・・と、気になるのはいつも女児ばかりという、困った性分を抱えていた。だが、  
それだけに生徒への愛情は並みの教師をはるかに凌ぎ、少女のためならば  
命を賭す事も厭わない男でもある。要するに、ダメ萌え教師なのだ。  
 
「先生さようなら」  
「はい、さようなら。気を付けて帰るんだよ。君が最後だ」  
暮れなずむ街を向こうに見据え、最後の生徒を見送るネムル。その生徒は彼  
も知る、六年生の桜庭絵里(さくらば・えり)だった。  
(めちゃカワイイな、桜庭め。チクショウ、あいつを俺の組に入れたかったんだ  
が、別のクラスに行っちゃったんだよなあ・・・クヤシイ!)  
腰まで伸びた長い髪を揺らし、歩いていく絵里の後姿は可憐で美しい。すでに  
背は百六十センチに迫ろうかという長身で、チビッコモデルのアルバイト経験も  
あるという。胸はそれなりに膨らみ、ランドセルを背負う姿が、ちょっと滑稽でも  
あったが、そこがネムルの萌えツボになっている。  
 
「あんな子と、結婚したいなあ・・・」  
人道的にも法律的にも、まったく許されないチビッコとの結婚を夢見るダメ萌え  
教師。今、彼の傍に誰かがいようものなら、間違い無く通報するであろう。そして、  
ネムルが門扉を閉めようとしたその時だった──  
 
「キャ───ッ!」  
門を出て行った絵里の悲鳴が、ネムルの耳へ届く。姿は見えないが、あまり離  
れていない所から、叫び声は聞こえた。ネムルの全身が、嫌な予感に総毛立つ。  
「桜庭!」  
閉めかけていた門扉はそのままに、駆け出すネムル。自分に結婚の夢まで見さ  
せる少女の身に何があったのだろうと、不安で心臓が早鐘のように鳴っていた。  
 
「や・・・やめてください」  
学校からそれほど離れていない空き地で、絵里は追い詰められていた。相手は  
見も知らぬ若い男で、手にはナイフを持っている。  
「怖がらなくてもいい。パンツを脱いで、そこへ寝転ぶんだ」  
若い男は血走った目で、そう言った。拒否すれば、今にも絵里を刺さんばかりに  
興奮している。無論、絵里はそれに従うはずは無く、男を正対に見据えながら  
恐怖に身を竦めるばかり。  
「自分で脱げないのなら、俺が脱がしてやる」  
「やだあ・・・こわい」  
後ずさる絵里の背に、無情の壁が立ちはだかる。辺りに民家は無く、通行人も  
無い。少女は、絶体絶命のピンチに陥った。男は体格に勝るをいい事に、絵里を  
囲むように近づく。  
 
「動くなよ、お嬢ちゃん」  
片手にナイフを持ったまま、男は絵里のスカートの裾を持ち上げた。お洒落な  
チェック柄のフレアスカートは、いともたやすく巻き上げられ、少女の生足をさらし  
出す。そして、まだ穢れを知らぬ幼肉を隠す、純白下着が──  
「可愛いパンツ穿いてるな」  
「ぐすん・・やめてえ・・・」  
大人びた容姿だが、絵里はまだ小学六年生である。今、目の前にナイフを突きつ  
けられ、下半身を見つめられる事の恐ろしさは、計り知れなかった。しかし、男の  
欲望はこれにとどまらない。  
 
「脱がすぜ。でも、声は出すなよ」  
男はそう言うと、少女の下着を太ももの辺りまで、一気に引き下ろした。絵里は  
顔を下に向け、涙をこらえるような表情になる。  
「へへへ・・・つるつるだな」  
真っ白な大理石に一刀を刻んだような絵里の恥丘を見た男が、にやりと口元を  
歪めた。おそらく、己の期待通りの造形を、少女は持っていたのだろう。勝ち誇っ  
たような顔が、薄気味悪いほどに喜びを表している。  
 
「もう・・・やめてえ・・・」  
男から顔を背け、ぽろぽろと落涙する絵里。彼女は予感している。この後、男は  
保健体育の授業で習った、男女の営み──すなわち、性行為を要求してくる事を。  
「あ、足を開くんだ・・・早く!」  
男がズボンのベルトをカチャカチャと鳴らしながら、絵里に命じた。やはりというか、  
この男は考えるだにおぞましい事を、少女に行うつもりらしい。  
「すぐ終わるからな。大人しくしてろよ」  
「やだあ・・・マ、ママ・・・助けてえーッ・・・」  
男の荒い息を間近に聞いたとき、絵里は思わず泣き崩れる。それと、同時だった。  
彼女が見知った誰かが──いや、見覚えのある教師、蛭間ネムルが、凄まじい  
勢いで空き地に入ってのは。  
 
「何をしてやがる!」  
ネムルは叫びながら、男の背後を衝いた。そして、男を跳ね除けると、絵里の体を  
ぐっと抱き寄せる。  
「桜庭!大丈夫か?」  
「せ、先生!」  
絵里は下半身が剥き出しだった。それに反応し、うすら勃起するネムル。少女を  
助け、抱き寄せたまでは格好よかったが、性根の部分は彼の背後にいる男と、  
どっこいどっこいであった・・・  
 
「なんだ、てめえは?」  
跳ね除けられた男が、ネムルを睨みつけた。手には相変わらずナイフを  
持っていたが、絵里を脅かしていた時と違うのは、明らかな殺意を持って  
いること。それはもちろん、獲物を横取りしたような、ネムルへと向けられ  
ている。しかし、  
「お前に名乗る名前なんて、ねえよ」  
ネムルはきらめく刃物を目の当たりにしても、少しも竦む様子は見せなかっ  
た。いや、それどころか、逆に男を睨み返し──  
「お前、よくも俺の生徒を泣かせやがったな。この罪、命であがなって貰うぞ」  
手のひら返して前に突き出し、ネムルは腰を低く落とした。これは、彼が幼  
少の頃から学んでいる、通背拳の構えである。  
 
「ぶっ殺してやる!」  
男が間合いを詰めてきた。ネムルとの距離は二メートルを切っている。  
「や・・・やめて・・・先生、逃げて・・あ、あたしなら・・・大丈夫だから」  
絵里は、怯えながらも気丈に言った。男は自分の体が目当てなのを、彼女  
は知っている。汚されるかもしれないが、命までは取られないという算段が  
つく。しかし、このままでは、ネムルは間違い無くナイフの餌食になるだろう。  
そう思っての事だった。幼くして、絵里は自己犠牲の精神を持っている。そん  
ないじらしい彼女が、ネムルには愛しい。生来のチビッコ萌えを差し引いても、  
だ。ゆえに、絵里をナイフで脅し、汚らしい野望を果たそうとした男が憎くなる。  
 
「お前が流した涙の分は、あいつにキッチリ償わせてやるからな」  
絵里に向かってにっこりと微笑んだ後、ネムルは足を進めた。疾い。その  
動きはまるで、サバンナを駆ける肉食獣の如し──  
「ぎゃっ!」  
ネムルの手が、男のナイフを持つ手を弾いた。その瞬間、ゴキンと鈍い  
音が空き地内に響き、次いで男の体が悲鳴と共に宙を舞う。ネムルの拳が、  
男の脇腹を突いていた。  
 
「死んじゃったの?」  
「殺す価値も無いやつだ。気を失っているだけさ」  
地にまみれた男を覗き込みながら、絵里とネムルは顔を見合わせた。後は警察  
に連絡して、男を逮捕してもらえばいい。そうなると、絵里は自分のために戦って  
くれたネムルの事が気になってくる。  
 
「先生、怪我は無い?」  
「ああ、まったく無いよ。どうして?」  
「だって、前かがみになってるから」  
「はっはっは。気のせいだよ、気のせい・・・」  
そう言うネムルの体が、くの字になっている。言うまでも無いが、これは勃起して  
いるからだ。さっき見た、絵里の真っ白な下半身と、半脱ぎになった下着が、ダメ  
萌え教師のツボを突いたのである。実は、ナイフを持った男を叩きのめす事より、  
こちらの方が事態は深刻だった。  
 
(どこかで、センズリしないと帰る事も出来ないぞ、こりゃ)  
可愛い絵里の艶姿を見て、愚息が聞かん坊(棒?)と化している。ネムルは焦った。  
このまま絵里を一人で帰すのは心配なので、付き添ってやりたいのだが、勃起した  
男根が言う事を聞いてくれない。今はポケットに手を突っ込んで抑えてはいるが、歩  
き始めたらその不自然さは一目瞭然。まさか、股間を尖らせたまま女児と共に、街  
を歩く訳にもいかず、困り果てている。  
(どうしよう・・・どうしよう)  
生来のチビッコ萌え人間ではあるが、ネムルには理性が備わっていた。絵里を見て  
股間は熱くするが、悪さはしない。というか、武道で培った正義感が、それを許さない  
のだ。その上、彼は教師でもある。倫理観は、人一倍厳しい。  
(そうだ、小便するふりして、コクか!)  
熟考の後、ネムルの脳にはそんなアイデアが浮かんだ。幸いにもここは空き地。  
丈は短いが、草木の類も生えている。隠れセンズリ(通称、闇セン)をするには、  
もってこいの場所だった。  
 
「すまん、桜庭。先生、ちょっとおしっこしてくるな・・・」  
「うん。でも、あたしも一緒に行く」  
「えっ・・・それはマズイ・・」  
「別に、先生がおしっこする所を、見る訳じゃないから・・・ほら、さっきの男の  
人もまだいるし・・・」  
「そ、そうだな・・・でも、あんまり近づかないでくれよ。先生、恥ずかしいから」  
「うん。うふふ・・・先生って、面白いね」  
頭を掻き掻き、ネムルは空き地の角へと向かった。おかしな運びになったが、  
もうこの流れは変えられそうにない。チビッコ萌えのダメ教師は、なんと生徒  
のすぐ傍らで、闇センをかます事となったのである。  
 
「絶対、こっちを見ないでくれよ」  
「うん。分かってるよ」  
膝の辺りまで生えた草の間に紛れ、ネムルはズボンの戒めからようやく男根  
を開放してやった。清々しい──そう思った。しかし、彼にはあまり時間が無い。  
(やりにくいな)  
冬の夕暮れ時なので、すでに辺りは暗くなりかけていた。そのせいか、絵里は  
ネムルの斜め後ろにぴたりとついている。心細いのかもしれない。だが、これは  
非常にまずい状態といえる。立小便をするといった手前、放尿時の音がしない  
とおかしい。そして、絵里はその音を耳に出来る場所に居る。  
(なんとかごまかさないと)  
寒い冬の日だというのに、ネムルは額に汗していた。そして、男根を擦り始める  
と同時に、彼は口笛を吹き始めた。これで、放尿音がしない事をごまかすつもり  
なのだ。なんという涙ぐましい無駄な努力であろうか。  
 
「ピー、ピ〜・・・」  
いかにも俺は尿を放っている。そして、軽快な口笛はそれを謳歌する喜びを  
表しているのだとでも言いたげに、ネムルは闇センをスタートさせた。彼自身が  
後述するのだが、これはネムルの人生の中で、もっとも苦難に満ちた自慰で  
あったという。  
 
(桜庭のパンツとアソコ・・・これで、五十回くらいはセンズリのおかずに困ら  
ないな)  
目を閉じて、先ほど見た絵里の艶かしい下半身を思い浮かべながら、自慰  
に耽るネムル。衣擦れの音は懸命な口笛のアシストでカバーし、ひたすら  
絶頂へと駆けていく。くだらぬが、彼はこの時、今年のベスト自慰ニスト(ジー  
ニスト)は俺だな、などと思っていた。本当にくだらないが。  
 
(先生ったら・・・何をしてるんだろう)  
一方、ネムルが男根を擦り始めてすぐ、絵里はその不自然さを見抜いていた。  
そして足音を消しながら、立小便をしているはずの教師の脇へ、そっと滑り込  
む。すると、やはりというか何というか、天を突くように反り返った男根を、ネムル  
はしごいていた。いや、しごくというよりは、振る。振るというよりは、空まで飛ん  
でいけと言わんばかりに、男根を突き上げていたのだ。  
 
(これって、オナニーじゃ・・・)  
目を瞑ったのが仇となり、ネムルは絵里が自分の真横まで来ている事に、気が  
つかない。絵里はこの行為を、男性の自慰と認めた。今時の小学生である。そ  
れくらいは、知識として持っていたのだ。  
(や・・・やだ、先生ってば・・・)  
と、思いつつも目を皿のようにして、ネムルの自慰を観察する絵里。ほとんど  
無意識のうちに、懐から携帯電話を取り出し、カメラのシャッターを切る所も、  
今風のチビッコといえよう。幸い、ネムルは自らの口笛で、シャッター音を聞き  
取ることが出来ていない。絵里は思うままに激写した。  
 
(待ち受け画面に設定しちゃおう。えへへ・・・)  
角度を変え、十枚も男根を接写した所で、絵里は携帯電話をしまった。そして、  
次の興味を生身の男へと移していったのである。  
 
(オチンチンって、面白いカタチしてるな・・・あッ!先っぽから汁っぽいものが・・・)  
ネムルが闇セン(すでに意味は無いが)を開始してから、四十秒が経過した頃だ  
った。絵里がその興味から、無意識のうちに手を差し出したのは。  
(触ってみたいな)  
さっきの男のように、無理やり純潔を奪おうとする輩はご勘弁こうむるが、このよう  
な場合なら別だ。絵里にも、異性への興味がある。幸い、テキストが目の前にある  
ではないか──と、絵里は生き物のように動く、ネムルの男根を根元から掴んだ。  
と、その瞬間である──  
 
「うッ!」  
マンボ!ではなく、ネムルの呻き声が上がった。猛り狂っていた男根に、冷ややかな  
少女の手という打ち水が差し向けられた事によって、あっという間に絶頂へと導かれ  
たのである。男根はあさましくも吼え、少女の手、そして顔を、白濁液で汚していく。  
「キャッ!」  
怒涛の放出力に驚き、尻餅をつく絵里。しかし、男根は手放さなかった。  
「あ、ああ?さ、桜庭、お前!」  
驚いたのは、ネムルも同じである。目を瞑って、いい気持ちになっていたのがまずか  
った。彼は、自慰のフィナーレを、教え子の手遊びで迎えるという、大失態を犯した  
のだ。男根に感じた冷たさに思わず目を開ければ、そこには顔射をくらった我が生徒  
の姿ときている。完全なミス・ファイアであった。  
 
「何してるんだ、お前!」  
「ごめんね、先生。ちょっと、興味があったの。うふふ」  
顔を真っ赤にして憤るネムルを、絵里は笑っていなした。ちなみに、この時尻餅を  
ついた彼女は、体育座り風パンチラ状態になっており、ここでもダメ萌え教師のツボを  
突く。それはもう、胸に七つの傷がある男に、秘孔を突かれたも同然に──  
「だ、だめだ!イッてしまう!ああ、こんなことは初めてだ・・・」  
玉袋から、すべての子種が放たれていくような感触を、ネムルは味わっていた。絵里  
のパンチラは、それほどに破壊力があったのだ。  
 
「先生、これオナニーでしょ」  
「な、何てことをいうんだ!桜庭!」  
「いいよ、ごまかさなくても」  
絵里はそう言うと、ウインクをしつつ唇の端から、舌を出した。顔にはネムルの  
子種がねっとりと付着していたが、それには何の反応も示さず淫蕩な顔を見せ、  
「これ、美味しいのかな?舐めてみようかな?」  
いまだびくびくと白濁液を放ち続ける男根の先を、舌と唇でこそぐようになぶった  
のである。  
 
「ウッ!」  
マンボ再び!ではなく、これもまたネムルの呻き声であった。あの愛らしい絵里の  
舌と唇が、自分のいやしい男根に触れている。それが、にわかに信じられず、夜が  
近いというのに、ネムルは白昼夢でも見ているような心地になった。  
「さ・・・桜庭」  
「さっき、命がけで助けてくれたお礼・・・それと、あたしの個人的な興味・・・悪いけど、  
先生、協力してね」  
絵里は男根の下に潜り、まずは鼻先をくっつける。そして、いつかティーン誌で見た、  
気になる異性とのエッチ!という記事を、思い出していた。  
 
「しゃぶるんだよね。しゃぶると、男の人は気持ちよくなるって、本に書いてあった」  
「桜庭・・・お前、まさか・・・」  
「エッチした事あるかって?ううん、キスもした事ないよ。でも、もう経験しちゃった子  
も、クラスには何人かいるよ・・・」  
絵里は得意げに言って、男根の雁首を頬張った。その上、頭を前後させ、射精した  
ばかりなのに、萎える事の無い逸物を、丁寧に唇でしごいていく。  
「ああ・・・さ、桜庭・・・駄目だ・・・」  
ちゅぷっと艶かしい肉音が、己の男根から放たれている。しかもそれは、紛う事なく  
絵里の口唇愛撫によって、奏でられている物だ。その奏者は、ネムルが結婚すら夢  
見る愛しい少女なのである。  
 
「うう・・・吸われていく」  
尿道に残った子種が、絵里の唇に吸い取られている──絵里は頭を前後  
させるだけでなく、すぼめた唇で茎の部分と開いた肉傘までもこそいだ。  
時に吸い、時に舐める。その緩急をつけた動きも、本で身につけた知識なの  
だろうか。  
 
「うふふ・・・どう?気持ちいいかな?アイスキャンディー食べるときなんかに、  
みんなで練習したんだけど、いかが?」  
「す、すごく・・・いいよ」  
「じゃあ、もっとサービスしちゃうね」  
再び、ぴちゃっという生々しい肉音が男根に響いた時には、ネムルはもう、忘我  
の域にあった。一度精を放出した男根は萎える事無いまま、絵里の口の中で力  
を滾らせている。どうやら、二度目の射精はこの状態で、果たす事になりそうだ。  
「ん、んん・・・」  
絵里は上目遣いに、男根を頬張っている。ネムルはそんな少女の髪を、そっと  
手で梳いてやりながら、こう言った。  
「絵里って呼んでもいいかい?」  
その問いかけに無言で頷く絵里。幸いと言うべきか、辺りはすっかりと暗くなって  
いた。教師でありながらチビッコ萌えのダメ人間と、性に目覚めかけた幼い少女  
の罪を、まるで隠してくれるかのように──  
 
 
翌朝、ネムルはいつものように正門の前に立っていた。そして、いつもの如く、  
通り過ぎる美少女たちのチェックをしている。  
(ああ、あの子何年生だろう。パンツが見えるかどうかの、ギリギリミニスカート  
なんか穿いちゃって・・・俺が親なら、注意するのになあ。おッ、こっちはボーイッ  
シュな短パンでの御登校か。足が細いなあ・・・)  
朝から脳みそを煮詰めつつ、そんな事ばかり考えるネムル。しかし、絵里が正門  
をすり抜けて行く時だけは、さすがに勝手が違った。  
 
「おはよう、先生」  
「やあ、桜庭」  
昨日の事もあり、顔を合わせるのがお互い恥ずかしい。教師は己の男根を  
しゃぶってもらい、生徒の方は精液までも口にしたのだ。それが、恥ずかしく  
ない訳が無い。ちなみに、昨夜ネムルと絵里は、こんな誓いをした。  
 
『学校では先生と生徒。プライベートでは恋人でいようね』  
 
他愛も無い約束事のように思えるが、実はかなり危険な賭けである。なにせ、  
ひとまわり以上、年が離れている恋人だ。人聞きの悪さは、半端ではない。  
絵里はネムルの脇を通りすがるとき、にこっと微笑みながら、  
「先生、忘れちゃダメだよ」  
そう言いつつ手を口の前に当て、何かを握るような素振りを見せ、その拳を上下  
させた。意味ありげな動きである。  
「さ、桜庭!」  
煮詰められた蛸のように、顔を赤らめるネムル。絵里は、昨夜しゃぶってあげた  
事を、忘れるなと言っているのだ。  
「悪戯なやつだ」  
恥ずかし紛れにネクタイを直す仕草をするネムル。だが、絵里の悪戯はこれに  
とどまらなかった。彼女は懐から携帯電話を出し、待ち受け画面を見せつける。  
 
「これなん〜だ?」  
うふふ、と艶笑を見せて、謎かける絵里が手にした携帯電話の画面には、昨夜  
撮影したネムルの勃起した男根が壁紙として、設定されていた。それに気づいた  
時のネムルの顔ときたらなかった。  
「い、何時の間に?消してくれ!」  
「いやよ。じゃあね、先生」  
絵里は縋るようなネムルをかわし、教室へと駆けていく。その時鳴った始業を知  
らせる鐘は、まるで福音のようであった。  
 
おしまい  
 
 

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