「チョコレートよりお前を食べたい。」
そうマジレスされて、あたしはポカーンとしてしまった。
眼の前でイカした殺し文句を言ってやった!って得意げな顔してるこのバカ男は、
あたしの幼馴染であり、なんとなく付き合ってるようなそうでもないような、そんな奴。
およそ物心ついた頃から顔つきあわしてて、昔っからあたしにぞっこん、らしい。
別に愛の告白めいたことを言われるのも今回が初めてじゃない。
とはいえ、バレンタインでチョコをくれてやったその場であんなアホな口説き文句を
言われるとは思わなかった。
まあ、こいつも男だし、あたしも何やかやとおあずけ食らわしてるので、そろそろ
もう一歩踏み込んだ関係になりたいんだろうとは思う。その気持ちは分からないでもない。
けど、もう少しロマンチックに事をすすめるとか、その前に色々言う事とかあるだろとか
思うわけで。
つー訳で、そのへん遠まわしに匂わせつつからかってやろうと思ったのだった。
「いくらくれるの?」
「なっ……金取るのかっ! ……い、いくら?」
「払うんだ……」
慌てて財布の中身を確認しだした幼馴染の姿で反応に困るあたし。
つーか、財布の中身で払えるって……あたしゃ風俗嬢か。
まあ、気をとり直して、本来誘導したかった方向に話をすすめる。
「んじゃね……生涯賃金の半分頂戴。」
「えええっ! ちょ、高っ!」
「月賦でいいよ。」
「そ、そうか。」
「ついでにサービスで、炊事洗濯もやったげる。」
「それ魅力。」
「あっちもいつでもやり放題。中出しおっけー。」
「ゴクリ……」
「あ、でも孕ませたら子供の養育費は必要経費で出してもらうから。」
「お、おう。」
「じゃ、これ契約書。ここにサインして、ここにはんこね。」
「おう。さらさらさらっと。そんではんこをポン。」
「……ここまでして、なんか気づかない?」
「ん? 何が?」
……あたし、考えなおしたほうがいいのかな