薬品や資料が並ぶ研究室の椅子に、気絶した女が腰掛けている。  
いや『腰掛けさせられている』と言うべきか。  
 
女は一糸纏わぬ丸裸で、膝を曲げた両脚を大きく開き、  
椅子の肘掛けへと厳重に拘束されていた。  
言うまでもなく、その恥じらいの部分は前方へ晒されている。  
成熟した身体に反して、その下腹部に陰毛は見当たらない。  
おそらくは直前に剃り落とされたのだろう。  
まるで、秘部の様子をよりつぶさに観察しようというかの如く。  
その影響で、女のまだ勃ち上がってもいない陰核さえ、  
切れ目上部に隠れるようにして僅かに視認できる。  
その陰核、そしてそこから地続きの陰唇は色素沈着がごく薄い。  
やや朱を交えた桜色のそれは、持ち主の生真面目な性格が反映されているのかようだった。  
 
目を閉じていても、女の隙のない美貌が見て取れる。  
大学院や一流企業といった環境下でも、殊更研究のみに心血を注ぐ人間が纏う雰囲気。  
器量の良さから男が甘い声をかけても、それをぴしゃりと跳ね除けて説き伏せるような女だろう。  
サイズこそDあるかないかだか形に優れた乳房、色白でシミ一つない肌、モデルのような脚線。  
彼女は一体、どれだけの男に言い寄られ、そしてその心をへし折ってきたのだろうか。  
 
「ん……」  
数分の後、その氷の女王が目を覚ました。  
イメージ通りの切れ長で意志の強そうな瞳が開いていく。  
瞳は一度半ばほどまで開かれた後、自らの置かれた状態を悟って一気に見開かれた。  
その間一秒足らず、本当に頭脳をよく覚醒させている女性だ。  
 
「さすがにお疲れのようで、よくお眠りでしたな。主任」  
女が状況を把握したと見て、拘束された彼女の前に立つ男が言った。  
白衣を纏っている所からして研究員か。  
そしてそのような格好の男は十数人にも上ろうという数がおり、  
各々に女の裸体を視界に納めんと放射状の一定範囲内にひしめき合っている。  
女の眉がいよいよ不機嫌そうに顰められた。  
「斉藤、大好、瀬川……ダイサンが首を揃えて、一体どういうつもり?  
 次こそはクビだと言われて、いよいよ正気を失ったの?」  
女は男達を睨み据えながら告げる。  
 
男達は、第三開発班、通称ダイサンの研究員達だ。  
それなりに有能な人間が多く、一時は企業利益にも少なからず貢献した。  
そのため主任である女の監視下で、ある程度独立した研究が許されている。  
しかし近年はローションや強壮剤などの性的な物ばかりを開発し、  
そうしたものを毛嫌いする女から、たびたび人員削減を仄めかされているのだった。  
一説には、ダイサンは美しい女主任を激昂させるためにそうしている、との噂もあったが。  
 
「正気を失った……などとはとんでもない。  
 我々は自らの研究に誇りを持ち、それゆえ貴女にも性の悦びをご理解頂こうというだけです。  
 主任……いいえ、有原知夏という一人の女性として」  
初めに口を開いた男が、眼鏡の位置を直しながら答える。  
女の瞳が蔑みを表した。  
「ふん……要は性欲を持て余した結果じゃない。  
 セックスなんていう原始的な行為に拘っているから、思考まで獣になるのよ」  
「いいえ、違いますとも。これは我々から貴女へのプレゼンテーションです。  
 その証拠に、我々は貴女の身体そのものには決して触れません。  
 呼びかける場所は、ただ……あなたの脳にだけです」  
男のその言葉と共に、女の頭にヘルメット状の機械が被せられる。  
レーザー治療の装置に似て、フルフェイスではなく、女の前髪とうなじから下は覆わない形だ。  
それは彼女の頭蓋にしっかりとフィットし、複数の電極で脳へと連結を果たした。  
 
「くっ……これは何なの!」  
頭と連結する謎の装置に、非難めいた声を上げる女。  
研究員の一人がそれを余裕の表情で見つめながら、同じく頭へ機械を装着する。  
「っ!?」  
その瞬間、女が反応を示した。  
「へへ、知夏さん。しっかり伝わってるようですねぇ、俺の勃起具合が。  
 そいつは、俺達とあんたの感覚をリンクさせる機械ですよ。  
 あんたのナマの裸を見てギンギンになってる俺の感覚が、そのままあんたに伝わる。  
 構造的には、男性器の先端が陰核亀頭、幹から下が陰核体で、玉袋が陰核脚ってとこか。  
 不思議なモンでしょう。心は全然出来上がってないのに、勃起の感覚だけがあるってのは」  
男の問いを受け、女は不機嫌そうに唇を噛んだ。  
男がほくそ笑む。  
「イイ顔だ。やっぱ知夏さん、あんたって最高にイジりがいのある女ですよ。  
 そして、そんな澄ましたあんたでも、こうすりゃあ…………!!」  
男はそう言いながら逸物を取り出し、女の目の前で悠々と扱き始めた。  
「あぐうっ!?」  
目を見開いて呻く女。  
「未知の感覚でしょう、知夏さん。普段身体の中に隠れてる陰核体と敏感な“クリ”部分を、  
 小人の手で余すところなく扱かれているような感覚になってるはずですよ。  
 何せこのチンポの気持ちよさが、そのまんま縮小されて繋がってるんですから」  
「くっ!!んくうぅっ!!!」  
男が解説しながら自らの物を扱きたてる。  
それと同時に、女は尻肉を引き締め、内腿に窪みを形成して反応した。  
なだらかな下腹も早い感覚で上下している。  
陰核にも秘部にも空気しか触れていないというのに、確実に何かの責めを受けるかのような反応だ。  
それは不可思議であると共に、実際に責めている以上の妙な淫靡さがあった。  
 
「おおお、気持ちいい、気持ちいい……っ!!」  
男は、女に見せ付けるようにそそり立った逸物を扱き上げ、やがて女に睨まれながら射精に至る。  
「んぐ!!」  
精液が放たれる瞬間、女は歯を食いしばって声を殺した。  
だがその実、腿の裏に力を込めていたらしく、椅子の肘掛けがギシッと音を鳴らす。  
彼女が射精級の快感を得ていた証拠だ。  
はぁ、はぁ、と男女2人の荒い息遣いが重なり合う。  
 
「ああ、すげぇ出たぜ……。しっかしあんたには酷ですよねぇ。  
 俺と同じだけ気持ちよかったのに、射精っていう区切りが付けられない。  
 途中で火が消えちまう線香花火みたいなモンですよね。  
 でも安心なさって下さい、感覚のパートナーは俺だけじゃない」  
男はかすかに汗を垂らす女を見下ろして告げ、頭の機械を脱いだ。  
そしてそれを隣の男が受け取り、布巾で軽く内部を拭ってから装着する。  
「ま、まさか……!!」  
その瞬間、女の顔が歪んだ。  
再びはち切れんばかりの勃起の感覚が沸き起こったのだろう。  
 
2人目の男はローションのボトルを手に取り、上向いた逸物の先端から垂らしかける。  
「全く斉藤、お前は乱暴だぜ、直に擦りまくるなんてよ。  
 クリトリスってのは、もっとソフトに扱ってやるほうが感じるんだ」  
そう言いながら、ローションに塗れた逸物をゆるゆると扱き始めた。  
「ん……っん……」  
女は唇を噛みしめたまま、顎をやや引く形で耐えている。  
声こそ一度目に比べて控えめだが、快感の度合いはそれ以上のようだ。  
「ほうら主任、今度は素直に気持ちいいでしょう?  
 ローション塗れのまま、ゆっくりと時間をかけて高まっていきましょう。  
 この自慰は派手さこそないが、その分快感の総量は凄まじんですよ」  
男の言葉に、女は答えない。  
 
ちゅくちゅくと、男の手が潤滑の豊かな扱きを繰り返す音だけが響いた。  
しかし数分の後。その音に、かすかに女の声が混じりはじめる。  
小さく口を開いたまま、あっ、あっと声を漏らす女。  
いつしかその陰核は肥大し、陰唇からはみ出したままひくひくと震え始めていた。  
クリトリスがそうまでになれば、当然女性器にも変化のない筈はない。  
初めは潔癖さを示すように閉じ切り、無機質な美しさを誇っていた陰唇は、  
今やかすかに花開き、その内部に肉感的な艶を帯び始めていた。  
 
自慰を行う男は、上司の変化に得意げな顔になり、より丹念に逸物を扱きたてる。  
女は眼前の男に秘匿すべき器官を晒しながら、なお毅然とした瞳で睨みつける。  
共に昂ぶりながら。  
共に熱い息を吐きながら。  
共に汗を浮かべ、肌を伝わせながら。  
共に尻の筋肉を収縮させ、太腿に快感からの強張りを脈打たせながら。  
 
やがて何十度にもおよぶ扱きの果てに、ついに男はローション塗れの逸物から精を迸らせた。  
まずは細かな飛沫が先端から噴き上がって遠くに飛び散る。  
次いでどろどろとした白濁液が溢れ出し、亀頭を握りしめる指の間を抜けて床へと滴っていく。  
見るからに心地良さそうな射精。  
「…………っっ!!」  
それと同じ瞬間に、女は横へと視線を投げ出し、恥じ入るように瞳を細めていた。  
 
やがて明らかなほど潤みを増した女の秘部へ、数人の男が鼻を近づける。  
「うひょお、こりゃまたエロい臭いがしてやがるぜ」  
「ホントだ、鉄の女みたいだった主任からも、こんなナマナマしい匂いが出るんだな。  
 上から漂ってくる香水もセンスいいぜ。  
 この臭いばっかりは、お前ェと全然違うのな」  
男がたった今射精を迎えた一人に向けて笑う。  
すると彼は、唇の端に薄笑いを浮かべながら亀頭部分を握りしめた。  
そしてまさに今達したばかりのそこを、自らの精液さえ交えてこね回し始める。  
「うあっ!?」  
恥辱に塗れながらも、ともかく一息ついていた女は、この不意打ちに堪らず声を上げた。  
声だけではない。虚を突かれた身体の方も、ビクンと腰を浮かせてしまう。  
 
「どうです、効くでしょう。この射精直後の弄りは正直ツライですが、凄いんですよ」  
男はそう言い、歯を食いしばって内股になりながらも懸命に亀頭部分を擦りたてる。  
その捨て身の所業は、だが女に確かな影響を及ぼした。  
「んん、っく!!はうっ、ああ……っあ!!」  
女は不意打ち以来声を抑えるタイミングを逸し、喘ぎを漏らし続けていた。  
やがて男が途切れ途切れながらも絶頂に至った時には、  
その喉の奥から漏れる掠れたような嬌声といい、腰のうねりといい、  
かなりの地点にまで昂ぶっている事が明らかとなっていた。  
そこまで追い詰められた女を前に、頭の機械はさらに3人目へと譲渡される。  
3人目は、手に電気マッサージ器を構えながら笑いを浮かべた。  
 
「あああっ、あっ、くぁあああああああううあ……あくぅううおあああっ!!!」  
女の唇から声が漏れる。それでもよく耐えている方だと言えた。  
彼女は今、逸物に直にマッサージ器を押し当てる快感とリンクしているのだから。  
 
「おおおお……やっぱコレだわコレ。数秒もたねンだよな。  
 あー、精液が太腿にまでドロドロ垂れてきてて気持ちわりー」  
男は半笑いのまま、マッサージ器を性器に押し当て続ける。  
亀頭の裏を圧迫するように振動させ、堪らなくなると腰を跳ねさせながら裏筋へと下ろす。  
そうして裏筋一帯と玉袋を刺激し続け、ある程度回復するとまた亀頭の裏へ。  
それを何度も何度も繰り返している。  
人力では到達し得ない微細な振動に襲われる性器は、鈴口から精液を溢れさせ続けていた。  
勢いよく飛沫くことはもうないが、締め忘れた蛇口のようにわずかずつ精液があふれ出し、  
彼の逸物を伝って玉袋を覆い、さらにその下の太腿にまで滴る。  
それは当然、感覚の通じる女とて同じだった。  
 
秘唇から愛液があふれ出している。  
慎ましかった陰核も、今や色・形ともに小豆そのものだ。  
幼い獣が啼くかのごとく、小さな身体を振りたてて痙攣するさまは幻想的だった。  
「あああ、くうああああっあ……!!!」  
身体の持ち主も、その圧倒的な快感を前に堪えきるのは不可能だったのか、  
左の目頭から一筋の涙を伝わせながら反応している。  
 
そしてさらに数分の後。  
ひくつきを増していた陰核の下から、突如飛沫が吹き上がる。  
綺麗な放射線を描いたそれは、空中で二筋に分かれて床に染みを作る。  
「ははっ、潮吹きだ!!」  
「おうおう、知夏ちゃんよ沢山出したなぁ。そんなに俺達の射精が羨ましかったのかい」  
男達が口々にそれを罵った。  
女にとっての射精といえる潮吹きは、確かに視覚に解りやすい変化で、  
美人主任の屈服を端的に表していたからだ。  
「あ……ああ……」  
女自身もそれを悟っているのか、自ら作った床の染みを口惜しげに見下ろしている。  
 
しかし、それでもなお彼女が許されることはなかった。  
女のように理屈ではない。まだ勃起したままの雄が、大勢いるのだ。  
 
 
今で何人目だろうか。  
視覚に変化が欲しいとの意見で女は椅子から下ろされ、  
今は手首を天井から吊るされる格好で晒し者になっている。  
椅子の時と比べて形のいい胸が上下するという動きが加わり、  
また何とか膝立ちで地面に付く状況の美脚が揺れる様も男の目を愉しませた。  
 
「気持ちいいぜぇ。やっぱオナニーといやぁコレだろ」  
今機械を装着している男は、自らの逸物を紅白に彩られた淫具に嵌め込んでいた。  
「どうです、オナホールに挿入する感覚は。堪らんでしょう。  
 普通の女はこれを知らずに死んでいくんですから、あなたは幸運でしたねぇ」  
男が激しく抜き差しを繰り返しながら問う。  
対して汗まみれの女は、脚を震えさせながら男を睨み返した。  
「……ふん、こんな単純な快感ばかり追い求めるなんて、男って本当に子供ね。  
 ファストフードをグルメと言い張るような滑稽さを感じるわ」  
散々に責められながらも、なお凛然としたその態度は並ではない。  
しかしその口の端からはだらしなく涎が伝い、本当に挿入セックスに耽っているかのようだ。  
彼女が快感の波に首元まで浸かりきっているのは、もう小学生にでも見て取れるだろう。  
 
「そうですか。ファストフード……ねぇ」  
男はにやけながら、逸物を扱くままの動きで後ろを向く。  
何をするのかと数人の男が彼に注目した。  
「ンッ……んんっ、んっ、んふぅうっ…………!!」  
女は喘ぎ、手首の拘束具を軋ませて腰を揺らす。  
すると、その様子を見ていた男の数名が突如笑い始めた。  
「……っ!!わ、私を嬲り者にするのがそんなにおかしいの?」  
女が苛立ちを露わにすると、男達が笑いながら機械を嵌めた男を指差す。  
その男が振り返ったとき、女は目を見開いた。  
 
彼は逸物を淫具に挿入したまま、動かしていなかったのだ。  
女がまさに腰を振っている、今この瞬間でさえ。  
つまり女は、絶え間なく襲い来る陰核への扱きを完全に身体で覚え込み、  
実際の刺激が無くなってもなお浅ましく腰を振り続けていた事になる。  
「………………っ!!!」  
事態を把握した女の頬が羞恥の色に染まる。  
「ファストフードってのは、実にいい表現でしたよ主任。  
 単純な旨味は、それゆえに中毒性が高い……そうでしょう?」  
男は愛液に塗れた女を見つめながら嗤う。  
彼女の陰核は、今や宝石のように鮮やかに赤らみ、小指の先ほどにまで成長していた。  
そのいやらしく成り果てたクリトリスを……さらに、容赦のない責めが襲う。  
 
「ねぇ主任。そろそろ一人の快感だけじゃ、物足りなくなってきたでしょう。  
 でもご安心を。この機械はね、なにも一つだけじゃないんですよ」  
 
散々に絶頂を迎えさせられ、気息奄々となった女に言葉が投げられる。  
それはどれほどに絶望的な光景だっただろう。  
今まで一つでもリンクした快感に翻弄されてきた機械が、6つも並んでいる。  
「今はまだ6つだけですが、将来的には量産体勢を整える予定でいます。  
 まさか今さら、こんな素晴らしいものを阻止しようなどとは思わないでしょう?」  
男の一人が問うた。  
女が答えに窮していると、残酷にも開始の合図が流れる。  
その瞬間、焦らしに焦らされた6人は思い思いの方法で自慰を始めた。  
 
「くぁあおおおおおおおおっ!!!!」  
 
その瞬間、女の喉から快感一色の声が張り上げられる。  
同時に六つの、強烈な、そして異質な快感を流し込まれてしまった。  
未だ一度も射精していない男の猛りを、六つ分合わせた感覚を持つクリトリスへ。  
「いいいイクイクイクイクっ、はぁああああああ゛あイクいくっ!!  
 ま、また、またイガされる゛ぅうううっ!!!!!!」  
反応は凄まじかった。  
男達が実際に達するよりも遥かに早く、累積された快感による絶頂を迎える。  
一度ではない、断続的に。いや、一度達しているその最中にさえ絶頂しているようだ。  
秘部からは愛液が溢れていた。  
すらりとした両脚は内股になり、あるいはがに股に情けなく震え、  
それはまるで背後から巨大な獣に貫かれて身体を開かされているかのように見える。  
 
「どうです主任。素晴らしい研究でしょう?」  
再度の問いかけ。  
「……認めて、下さいますね?」  
「あああああ゛、あがった、みとえるっ、みろえるわっ!!!!  
 こうなの……もっ……す、すごいっ、すごょふぎてぇっ…………  
 うぁ、うあぁア゛っ!!!ひきゃあああぁあああおふおお゛お゛あああおああッッ!!!!」  
女はついに白目を剥き、涎を垂らして快感の高波に呑まれた。  
背中が何度も波打ち、むちりとした太腿が左右交互に振り上げられて、  
まさに極感に苛まれている陰核を擦ってさらに快感を貪ろうとするかのごとく暴れる。  
その『完成品』を前に、男達は幾巡にも射精し、美しい女の脳に自らの快感をなすりつけた。  
 
狂乱の宴は夜通し続き、誰しもが深い眠りにつく。  
そして朝が来た…………。  
 
 
 
※  
 
「おっ、おい、何だこれは!!」  
目覚めた男達は、口々に悲鳴を上げた。  
なんと男達は手足を縛られ、床に転がされていたのだ。  
さらにその中の何人かには、見覚えのある六つの機械が嵌められている。  
その蛆虫のような彼らを見下ろす形で、女が研究室の机に乗っていた。  
瞳にはまるで飢えた獣のような光が見える。  
そしてその頭には、やはり昨晩の機械があった。  
 
「…………まさか」  
機械を嵌められた男達が、ひきつるような笑いを見せる。  
その笑いを総括するかのように、女がとても良い笑顔を浮かべた。  
「昨日は有難う、そしてごめんなさい。私ったら、本当に性への理解が足りなかったわ。  
 貴方たちの快感は、一滴残らず受け止めて味わいました」  
「……そ、それは、どうも」  
「そこで。お返しに、今度は女の性感というものをご教授するわ。  
 貴方たち男にとっては未知であると共に、夢のような世界でしょう?  
 たっぷりと味わって。逝っても逝っても終わらない、むしろどんどん深くなる快感を」  
 
その瞬間、男達は悟った。  
女と快感をリンクさせる事が、どれほど危険な事だったのかを。  
女と性感の深さを競うことが、この世の何よりも苦行になるという事を。  
 
 
「う゛ああああああ゛あ゛っ!!やえでっ、もぉやめでぐれえええっ!!!」  
「ああああ、もう出ない、もう出ないい゛い゛い゛い゛ッッッ!!!!  
 あそこがっ、あそこが硬いっ、つらいいっ!!!!  
 無理だ、もっ無理ィっ、も゛ぉ゛勘弁してくださいいっっ!!!!!!」  
 
数十分の後、研究所には地獄絵図が広がっていた。  
床に裸で転がされたまま、何の刺激もない逸物から幾度も射精し、  
身体の下に白い液溜まりを作る男達。  
その表情は焦りと不安に満ち、それと同時に多大すぎる快感に侵されている。  
部屋の隅に転がってその同志の惨状を見守る研究員達は、  
被害者の苦痛よりもむしろ、それまで見た事もない快感の表情にこそ恐怖していた。  
 
「ほぉら、まだまだ、まだまだよ。  
 こうしてクリトリスの先を羽ペンで撫でて……ああ、痒くて、でも気持ちいいわ。  
 この後は、容器洗浄に使う強めのシャワーを当てて、もっと昂ぶらせるわね。  
 ふふっ、皆凄い声が出てるわよ。  
 そっちのみんなも、もうしばらく辛抱してなさい。  
 今の人間を搾り取ったら、機械を移して抜かりなく愛してあげるわ」  
 
女は男達の快楽の叫びに囲まれながら、恍惚の笑みを浮かべ続ける。  
いつまでもいつまでも、彼女の旺盛な知的好奇心が満たされる、遥かな先まで……。  
 
 
 
                                  終わり  
 

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