「教授……これって、これってほんとに必要なことなんですか?」  
少女がけげんな声で傍らの男にそう尋ねた。さまざまな本やら書類やらが  
雑然とした部屋の中で少女は両手をロープで拘束され、天井から吊るされていた。  
波打つ金髪の人形のように愛らしい少女だが、体の自由の利かない状態に  
され、そのかんばせに不安の色をのぼらせていた。  
 
「もちろんだとも、レイチェルくん」  
男は少女の不安を断ち切るようにそう断言する。眼鏡をかけた男は  
“教授(プロフェッサー)”の称号を持っているにしてはずいぶんと  
若いように見えたが実際は年がいっているのか、見た目からは  
分かりづらい男であった。  
「これは実験だからね」  
男はペーパーナイフを取り出すと、自分の指先をぴっと傷つけた。  
みるみるうちに赤い雫が指先に盛り上がっていく。  
するとそれまで不安そうに身じろぎしていたレイチェルだが、  
それを見たとたんきっと男に強い視線を向けた。  
 
「せ……っかく……がまん、してたのに……」  
そう言ったレイチェルの、小さく開いた口の端に尖った牙がのぞいている。  
彼女は人間ではない。吸血鬼であった。  
だが、レイチェルは吸血鬼としての本能を抑えようと努力して生きてきた。  
人の血を吸わないように、と。だが、本能を抑えるのは容易ではない。  
 
今目の前にいる男が吸血鬼のことを研究していると知り、何か良い  
方法を知ってはいないかと頼ってやってきたのだ。それなのに  
自分の目の前で血を見せて、吸血衝動を煽るような真似をするなど  
ひどいとレイチェルは男を責めたくなった。  
だが、男はレイチェルの恨みがましい視線を気にもせず笑う。  
 
「大丈夫、私にまかせなさい。平気だからこれを舐めて」  
「いや……」  
レイチェルはそういって顔を背けたが男はその口に指を差し入れてしまう。  
「ん……、う……」  
「血の味がするだろう、君たちには甘美に感じる生命の雫……」  
久方ぶりの血の味にレイチェルは思わず恍惚とする。駄目だと思いつつも  
男の指を舐め、さらに味わおうとしたが男はその指を抜いてしまった。  
「あっ」  
「これ以上は駄目だ。だが、どうだね血を吸いたいという欲求は高まったかい?」  
「はい……」  
レイチェルは恥じ入りながらそう呟いた。今もこの両手が自由なら目の前の  
男につかみ掛かり、その首筋に牙を立てていたかもしれなかった。  
ここから衝動を抑えるには強い意志の力が必要だ。レイチェルはぎゅうっと  
目をつむった。  
「教授……お願いですから、おさまるまでこの部屋から出て行ってもらえませんか?  
あなたがいると、さっきの血の味を思い出してしまう……」  
「いや、出て行くつもりはないよ」  
すると男はレイチェルの服のスカートを掴み、おもむろにたくし上げた。  
「なっ、何するんですか!?」  
「吸血鬼は吸血衝動と共に強い性衝動を覚える。……だからそちらを  
満たせばおのずと吸血衝動は収まるよ」  
 
低くそう言って男は狼狽するレイチェルの下半身に手を伸ばした……。  
 
 

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