「っと、できたっ」  
 制服を着た少女の目の前には、綺麗に盛り付けられた初挑戦のたまご丼。  
なかなか上手くできたかな、と少女は笑顔を浮かべた。  
その笑顔も瞬時に真顔へ変わり、使った鍋などの後片付けを手早く行う。  
 小さくはないが鋭い目、黒目が他人より上向きに付いてるため、目つきが悪いだの恐そうだの散々言われてきた。  
それでも今は学生生活をそれなりに楽しみつつ、新婚生活の真っ只中だ。  
 
玄関が開く音に少女の心が跳ねる。  
ちょうど片付けを終え、リビングのドアへ駆け寄る。愛用する「しろにゃん」のスリッパがぺたぺた鳴る。  
「ただいま!」  
帰宅と同時に少女は抱きしめられた。大好きな彼の匂いが鼻腔に広がる。  
「んっ……おかえり優斗」  
抱きしめられた温もりで心臓がとくんと跳ね、甘い声を漏らしてしまう。  
「ケーキ買ってきたから食後に食べよーな」  
飛び込んできた眩しい笑顔に、少女は頬を染め頷いた。  
「んっと、ちょうどごはん出来たからんんっ!?」  
ただいまのキスの不意打ち。  
「小羽」  
耳元で名前を囁かれ、  
「ひゃっ、待っんっ!」  
再びキスで言葉を塞がれてしまう。  
「んんっ! ちゅ、ふぁっ、んんぅっ! ひゃ、ぷぁあぁぁっ……」  
唇同士の浅く熱いキスから解放され、小羽は甘い溜め息を漏らした。  
「あ、ぅ、ご、ごはん冷めちゃう、から……」  
恥ずかしさのあまり優斗からしゅぱっと離れ、食事の準備にかかろうと食器棚へ向かう。  
「ははっ、照れてる小羽可愛いなぁごはあぁあぁぁっ!」  
可愛いという言葉に反応した小羽の音速突きが優斗の脇腹に直撃する。  
「うるさいっ!!」  
優斗が可愛いと言う度に、小羽の突きや肘打ちが繰り出される。  
可愛いと言わない約束だが、優斗はつい本音を漏らし、いつも小羽の一撃を喰らってしまう。  
「もう言わないって言った!」  
小羽がドスの効いた目で睨み付けても、  
「あたた、ははっ気をつけるよー」  
笑顔で流されてしまう毎日。その度に小羽は溜め息を付く。  
「はぁ……もういいから座ってて」  
優斗のいつもの調子に負け、小羽は食事を並べていった。  
 
「いただきます」  
「ん、めしあがれ」  
優斗と小羽は並んで椅子に座り仲良く御飯を食べる。  
顔を見られるのが恥ずかしいという小羽の要望で、二人はこの形で食事を取っている。  
「えと、国立病院で食べた味に近付けたつもりなんだけど……」  
優斗の一口目をどきどきしながら見つめる。  
「うまい! 小羽の方が上手だよ」  
笑顔で頬張る優斗に、小羽は安堵の溜め息をついた。  
「ふぅっ、よかったぁ……」  
ようやく小羽も一口目を頬張り、なかなかの出来に頬を緩ませた。  
 
「ごちそうさまでした」  
「んっ、ありがとうございました」  
二人は他愛のない話をしながらゆったりとした食事を楽しんだ。  
食後は優斗が食器を洗い、小羽はソファーでくつろぐのが日課になっている。  
小羽は愛用中の「しろにゃん」の等身大ぬいぐるみを抱きしめ、一日を振り返ったり優斗の事を考える。  
時折ぱたぱたさせる足にも「しろにゃん」のふわふわスリッパ。  
先程のキスを思い出し、頬を真っ赤に染めたり、上手く料理が出来たことに笑顔を浮かべたり。  
そんなふわふわした事を巡らせていると、食器洗いを終えた優斗の姿が目に入った。  
「しろにゃん」のぬいぐるみを脇に寄せる。  
「終わったよ。ゆっくりしよっか」  
優斗の言葉に小羽は笑顔で頷いた。  
 
 小羽は先程ぬいぐるみにしていたように後ろから抱きしめられ、二人一緒にソファーに沈む。  
密着した背中越しに心臓の音がとくんと伝わる。  
「小羽制服着替えなくていいの?」  
さりげない気遣いが小羽は嬉しい。  
「ん、土日休みだから大丈夫……」  
制服のシワよりも優斗と一緒にいることが小羽には大事なことだった。  
それに制服を着ていると、嬉しそうな顔をする優斗が見れるのも小羽は嬉しかった。  
「そっか、ありがとな」  
言葉と同時に抱きしめる力が強まり、小羽の心臓がどくんと跳ねる。  
柔らかい沈黙が二人を包み、感情に熱がこもる。  
「小羽」  
耳元で囁かれる名前。甘い魔法。  
「小羽、好きだよ」  
優しくて、甘くて、切ない囁き。小羽の身体中がぞくっと震える。  
瞬間、身体中に甘い電気が走り、  
「ふあっ!? んくぁぅうぅっ!!」  
小羽は艶に満ちた声を漏らした。  
「う、あぁ、ぁっ……い、きな、り……ず、るい、よっ……」  
小羽はぽにゃぁっと崩れ、熱を帯びた可愛い顔を浮かべながら甘い余韻に浸った。  
小さな身体が何度もぴくんと跳ねる。  
「ふぁ、ぅっ、ゆ、うろっ……」  
甘い感覚に呂律が回らない。  
「好き」  
言葉と同時に耳にキスが降る。  
「にあぁああぁあっ!?」  
身体をのけ反らせ甘く可愛い声を漏らしてしまう。  
「ひあっ! まっ、てっ! おくっ、きゅんって、して、っる、からぁっ!!」  
優斗の腕をぎゅうっと握り振りほどこうとするが、とろけた状態では何も出来ない。  
「小羽」  
再び囁かれる名前。  
「ひゃわっ! すとっ、ぷ、だか、らっ!」  
「ダメ、小羽の声聞きたい」  
優斗の声が耳に染み込む度に、小羽の身体から力が抜けていく。  
「ぅやあ、あぁっ! だっめだか、らっ」  
小羽は甘い声で鳴きながら、言葉ではなんとか抵抗する。  
「好きだよ小羽。好き。好きだ」  
重なる「好き」の言葉とキス。  
小羽はあまりの刺激に目を見開き、身体がぴぴんっ!と伸びた。  
次の瞬間、  
「ぅあぁあぁああぁぁっ!!」  
今宵一番の甘い淫美な声が部屋に響いた。  
情けなく開いた口からは涎が漏れ、制服に淫らな染みを作っていく。  
眉を歪ませ、とろけた表情で甘い時間に浸る。  
「いあぁっ……ゆー、とっ! ゆ、うとっ! す、きっ、すきぃっ! す、きっ!」  
優斗に応えるように、小羽は大好きな人の名前を呼び、「好き」を繰り返す。  
「ふぁあっ、ゆーと、す、きぃっ……」  
小羽は優斗の愛を身体中に感じながらまどろみに飲まれていった。  
 
「う、んっ?」  
小羽が目を覚ますと先程と変わらぬ光景が目に入った。  
「あ、起きた? やりすぎたかな、ごめん小羽」  
優しく、包まれるように抱かれながら小羽は思考を巡らせる。  
途端に小羽の頭の中でぼんっ!という音が鳴り、頬がみるみる赤く染まっていく。  
「あ、あああ、の、あの、あ、う……」  
「汚れたり濡れたとこは拭いておいたから」  
優斗の優しい声。  
「う、うん、あり、がと……って、拭いた? あ、そそそ、そんな、ことっ……!?」  
わたわたと慌てる小羽。  
「え? あ、だ、大丈夫だって! あんまり見てながぱぁああっ!」  
小羽の豪速の肘が、優斗の脇腹にクリーンヒットした。  
「ばかっ!!」  
小羽は怒号を発しながら優斗から離れ、再びしろにゃんを抱く。  
そのままぷいっと背中を向けご機嫌ななめ状態に入った。  
「ご、ごめん……んと、さ、制服姿だったから調子乗っちゃって……」  
「しらないっ」  
振り向かず、しろにゃんをぎゅっと抱く。  
「ほんと、ごめん……僕、さ、小羽のことほんとに好きだから、伝えてないと不安で……」  
寂しそうな声に小羽の心がきゅっと痛む。  
「小羽はあんまり好きとか言わないしさ、迷惑なのかな、って思って、その……」  
愛されている、十分過ぎる程に。  
「ん。いいよ。もう怒ってない、から……」  
振り向き、笑顔で優斗を見つめる。  
「あ……ありがと。ごめんな……」  
しろにゃんごときゅぅっと抱きしめられ、小羽は目をつぶり温もりに身を任せた。  
「そろそろケーキ食べよっか」  
いつもの調子に戻った優斗の声に、小羽は胸を撫で下ろし頷いた。  
 
「あっ!?」  
いつものココアが一人分しかない。  
「僕はいらないから小羽飲みなよ」  
優斗が笑顔で返す。  
「で、でも……」  
「いいから。さっきのお詫び。僕は勝手に他の飲むから」  
頭をぽんぽんされ、小羽は頬を赤く染めながら頷いた。  
「んっ。ありがと」  
夕御飯の時と同じように、二人は並んで椅子に座る。  
「紅茶ケーキ?」  
甘い匂いに小羽は思わず笑顔を浮かべた。  
「そそ。はい。あーんして」  
「えっ?」  
優斗のいきなりの行動に、小羽は固まってしまった。  
差し出された一口大のケーキ。  
「あ、の、えっと……」  
恥ずかしさに堪えられず視線を泳がせる。  
「きっとおいしいよ? ほら、あーん」  
小羽は一瞬にして頬を林檎色に染めてしまった。  
このままでは終わりそうにないので、仕方なく差し出されたケーキを口にする。  
「うぅっ、あむっ……」  
口に広がる紅茶の香りと甘味。  
「おいしい?」  
目に飛び込む優斗のとびきりの笑顔。  
「お、いしい、です……」  
味よりも恥ずかしさが上回り、クリームとは対称的な真っ赤に染まる頬が際立つハメになってしまった。  
堪えられなくなった小羽は俯きながらぶつぶつと文句を呟く。  
「ばかっ、ばかばかばかっ……」  
ケーキはまだまだ残ったまま。甘い時間もまだまだ続く。  
 
「ココア遠慮しないで飲んでいいからね」  
優しいのは嬉しいが、恥ずかしさで上塗りされてしまう。  
「う、うん」  
ココアを一口飲み心を落ち着ける。  
「はい、あーん」  
だが再び甘々の笑顔が小羽を包む。  
「あぅ、ぅぅっ……あ、あむっ」  
打ち消すようにココア。ココア。  
「うぅっ……あっ、優斗飲み物いいの?」  
ふと優斗の方へ目を向ける。マグカップはあるが中身はない。  
「いいよいいよ。ケーキ楽しんでるからさ」  
ひらひらと手を振り笑顔を返す優斗。  
「でも……あっ、じゃ、じゃあ……」  
小羽はココアを口に含み、優斗の口元へ運ぶ。  
身長が小さいため、椅子から立ち上がり、優斗の顔に手を添えながらココアを流し込む。  
「んっ、んんっ、ふゃあぁぁっ……」  
小羽は上手く出来た安堵から甘い溜め息を漏らし、ぺたんと椅子にへたり込んでしまった。  
「んと、これなら優斗も、ココア飲める、から……」  
小羽は頬をさらに赤く染めながら視線を逸らす。  
「あ、ありがと。小羽がこういうことしてくれるって思わなかったからびっくりした……」  
優斗も頬を染め照れ笑いを浮かべる。  
「うぅ……恥ずかしい……あっ!」  
小羽が目を真ん丸くして叫ぶ。  
「べ、別に、優斗と半分こすればいいだけじゃ……」  
小羽の頭の中で「しばらくお待ちください」のテロップが流れる。  
次の瞬間、頭の中がぼぼんっ!と爆発し、ぷしゅうと煙が漏れた。  
小羽はテーブルに顔を突っ伏し、自分の行動を呪った。  
「ばかばかばかばかばか……」  
恥ずかしさで今すぐ消えてしまいそうな気分だ。  
「でもさ、可愛い小羽の味もしておいしかったよ」  
ぺかーっという効果音が鳴りそうな程の優斗の笑顔が広がる。  
「うるさいっ!!」  
小羽の強烈な突きが優斗の鳩尾にずびゃんと決まった。  
「ごぼぉ!」  
小羽は痙攣する優斗を尻目に、さっさとケーキを食べ終えてしまった。  
「ばかっ……」  
残ったココアをのんびりと飲んでいると、  
「一口いい?」  
痙攣から復帰した優斗が顔を覗かせた。  
「だめ!!」  
容赦なくギッと睨み付ける。  
「小羽。お願い」  
不意に耳元で囁かれ、ぴくんと身体が跳ねる。  
「だ、だめ、だからねっ」  
抵抗が弱まる。  
「小羽」  
普段とは違う低く真剣な口調に、心臓をぎゅっと掴まれてしまう。  
「あ……あ、さ、最後だから、ね……」  
小羽は震える両手でマグカップを握り、ココアを口にする。  
「んっ……」  
先程と同じように立ち上がり、優斗の口元へ自分の味が混ざったココアを運ぶ。  
優斗の頭を優しく抱き、少しずつ愛の蜜を注いでいく。  
「んんっ……、ひゅあっ、んんっ!」  
漏れる熱を帯びた声。  
「んっ、んっうっ、ふぁっ、ちゅぁぷっ、んあぁあぁぁっ……」  
事を終えた小羽は淫美な溜め息を吐き、優斗に寄り添うように崩れ落ちた。  
「ありがと小羽」  
「あぁ、うぅっ……」  
小羽は優斗の声に心地よさを感じながら甘い感覚に浸っていった。  
 
「ひぁっ!?」  
身体が浮く感覚に小羽は情けない声を上げる。  
「ソファーで続きしような」  
「あわ、わっ」  
わずかな距離だがお姫様抱っこでソファーまで運ばれる。  
優斗の膝の上にちょんと座らされ、向かい合う形になった。  
「っ!? やだっ!!」  
小羽は顔を思いきり背け、優斗から離れようとする。  
「小羽の顔見せて」  
「いやっ!」  
ただでさえ恥ずかしい行為だというのに、見られながらするなんて小羽には堪えられない。  
可愛くない姿を晒すのがとても辛い。  
「今日もだめ? じゃあ……」  
瞬間、ぐんっ!と引き寄せられる小羽。  
「うあっ! んんっ!? んちゅぁっ、ふぅっんっ!」  
突然のキスに小羽は戸惑いの声を上げた。  
「ぅあっ……んっ」  
キスが止むと、優斗の胸の中に促される。  
「あ……ゆう、との匂い……」  
きゅっと優しく抱かれ、小羽の心がとくんと跳ねた。  
「これならいいよね?」  
「う、ん……」  
優斗の匂いが頭を柔らかく包み込み、小羽は頬を擦り寄せながら頷いた。  
「僕は小羽じゃなきゃ嫌だから」  
頭上から降る声。心が踊り、心に刺さる。  
「可愛いよ。小羽が一番好きだ」  
優斗の「可愛い」の言葉に胸が痛くなる。  
他の人に言われても特別気にしないのに。  
優斗に言われた時だけ胸が痛い。  
「可愛いよ小羽」  
まただ。  
声は可愛い。名前は可愛い。料理は可愛い。何かが可愛い。  
だったら可愛い「顔」は?  
付き纏う三白眼。付いたあだ名は狼少女。  
「う、るさいっ……」  
優斗に抱き付く手に力が入る。  
「うそ、ばっかりっ! やめてよっ!」  
ギリッと優斗を睨み上げる。  
「絶対趣味おかしいよ! なんで可愛い人と結婚しなかったの!? バカだよっ!」  
心の堰が崩壊する。  
「私なんて、いつも睨んだ、ような目だしっ、恐いって、ひっく、言われ、るし、ひぐっ狼みた、いだ、しっ」  
溢れる涙と本音。  
「も、うやだ、っ!! ひくっ、嫌われ、るの、やだっ!」  
涙で優斗が見えない。  
嫌いって言われたら楽なのに。  
嫌いって言われたくないのに。  
「ば、かぁっ! ゆ、とっきら、いっ! やさ、しい、ひくっからっ、きらいっ!!」  
ボタボタと涙をこぼし、制服が悲しみで濡れる。  
「きらいっ、て、いって、よっ! かわい、くないっからっ、ひぐっ、きらいって!!」  
 
吐き出した。全部。汚い言葉で。馬鹿だ。  
瞬間、頬をぐにっと摘まれた。  
「はにっ!?」  
いきなりの事に情けない声を上げる。  
「僕の結婚相手は、小羽に付き纏う世間体なんかじゃないよ」  
真っすぐで淀みがない真剣な声。  
「僕は小羽と結婚したんだ。小羽が好きだから結婚したんだよ。  
それとも小羽の人生を狂わせたいがために結婚したと思ってるのか?」  
わずかに含まれる怒り。だがすぐにやんわりとした口調に戻る。  
「もしまた同じこと言ったら、またほっぺぎゅーってしてあげるから。覚悟しといてね」小羽の目から別の味の涙がこぼれ、染み込んだ制服が少しだけ笑った気がした。  
「小羽が一番可愛いよ」  
とびっきりの笑顔に小羽は涙を流しながら応える。  
「う、うる、さいっ、ばかっ」  
小羽は突きの代わりにキスをお見舞いする。  
「んっ……ぅんっ、ふぁっ……」  
目を腫らしながら、見つめながら。  
「時間たくさんあるからもっとキスしような」  
優斗の囁きに小羽は頬を赤く染め頷いた。  
「う、んっ……」  
 
「ちゅっ、んんっ、ふぁっ、ちゅ、んっ」  
キスの音色が部屋に甘く響く。  
小羽はソファーに押し倒され、されるがままにキスを感じていた。  
「んうっ! ふぁぷっ、ちゅっ、ちゅ、ぷひゃっ、んむっ!」  
時折唇が離れ、笑顔で見つめられる。  
「小羽」  
「うーっ、はず、かしいから……」  
優斗を無理矢理引き寄せ、小羽は再びキスを味わう。  
「んっ、んくっ、ちゅっ」  
浅くても愛を感じる優しいキス。  
「んむぁっ、ひゅあっ! んっ、ちゅっ」  
可愛い声を上げながら小羽の快感が高まっていく。  
「んんっ! んっ、あぁっ、ちゅ、ちゅっ、んぅっっ、ふぁぁっ……」  
唇が離れ、涎が糸となり二人を繋ぐ。  
「なんか、幸せ、かも」  
小羽はにへっと笑顔を浮かべる。  
「僕もだよ。小羽。大好き」  
優斗は応えるように小羽の髪をとかす。  
「んっ……」  
手から伝わる温かい安らぎに声を漏らす。  
「じゃあ耳にもキスするよ」  
小羽はぴくんと身体を震わせ、身体を強張らせた。  
「緊張してる? 可愛いな」  
耳に落とされるキス。ぞくっと甘い電気が走り身体の奥が熱くなる。  
「やぁっ、んっ! ゆ、うとっ!」  
キスも声も心も甘い。  
「小羽。好き、好きだ」  
優斗のキスと囁きが激しくなる。同時に小羽の甘い声も濃度が増していく。  
「うぁあぁっ! だめっ、そ、んなっ、あっんあぁあっ! や、だっ、んぁああぁぁっ!」  
身体をのけ反らせ快感に包まれる。  
全身にキスを落とされたような甘く刺激的な感覚に心がとろけていく。  
「ひゃぁうっ、あ、ぁあぁっ……」  
ふにゃあっと小羽の顔が緩み、口から涎が漏れる。  
普段の姿からは想像も付かない淫美な姿。  
 
「そろそろいいかな?」  
不意に伸びた優斗の手が、小羽の一番熱い部分に触れる。  
制服と下着越しの感覚にも関わらず、小羽の頭に甘く白い電気が走った。  
「ひゃうぅっ! あぁっ、だっめっ!!」  
両手で優斗の手を押さえるが、とろけた思考では力が入らない。  
「楽になっていいよ」  
「まっ、てっ!」  
小羽の言葉に重ねるように、優斗は小羽の甘い熱溜まりを撫で上げた。  
「あぁああぁあっ!!」  
視界が脳内が思いが弾ける。  
「小羽。大好きだよ」  
小羽は耳に愛の言葉とキスをプレゼントされ、甘い秘部を先程より強く撫でられた。  
「んあぁああぁああぁぁっ!!!」  
一瞬にして甘く可愛い嬌声が部屋いっぱいに広がった。  
「にあぁあっ! やっ、えっ、ちなこえっ、やらっ!」  
無意識に出てしまう淫らな声。恥ずかし過ぎて頬が林檎色に染まる。  
「あ、あぁあっ、ゆーろっ、あ、ぁぁっ、」  
ぎゅうっと優斗に抱き付き、快感の余韻から身体をぴくんと震わせている。  
「わた、しも、すきっ、ゆう、とっ、すきぃっ……ふぁあ、ゆ、っとすきぃ……」  
重なる心臓の音に心地よさを感じながら小羽は目を細めた。  
「じゃあは反対の耳でエッチしよっか」  
優斗の優しい甘い呟き。  
「ふぁいっ……!」  
小羽は優斗をさらに抱きしめ甘い声で鳴いた。  
ソファーの隅ではしろにゃんが二人をまったりと見つめていたのだった。  
 
えんど、れすらぶ!  
 

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