「にいちゃん、起きなさい。学校に遅刻するよ。
あれ?すげぇ汗。熱?」
おでこに手が、冷たい。
「熱い!」
急いで立ち上がるお姉ちゃん。ぱたぱたと部屋を出ていく、あー?頭いたいのに、響くよ。
まあ、面倒見てくれるのがいるのは、一人っ子のボクには良いことか?
小学3年生の時、理由がわからないまま、1人だけ引っ越しさせられ、知らない人たちの家に引き取られた。
学校までは少し遠くなった。
女の子が2人、同学年と2年下。同学年でも誕生日では姉弟。
部屋が一緒。机3組、服入れ3箱、布団3人分、で、ほとんどいっぱい。
風呂も一緒に入るように言われる。
話でなら、善い環境だろう。
女の子の風呂を見放題、着替えも見放題
親の考え方なのか、学校などには、スパッツやデニムパンツ、スカートやワンピースなら見せるパンツ、などを着させる。
けど、家では、スカートやワンピースなどで下着のパンツ一枚の格好だし、パジャマはワンピースみたいな、ネグリジェというものだ。
女の子らしさは、持ち物と見た目、学校だけなのを、知る。
きっかけが、両親の都合の育児放棄。
家は、数日後に売りには出されていて、ボクの持ち物のほとんどは新しい家に届けられていた。
つまり、逃げ道が無くなった。
「これで、仕方ないけど、本当に、もらわれっ子だね」と姉妹に言われるが反対出来ないし、学校でも、3人一緒に登下校していれば、皆が気付く。
まあ、この年齢なら、まだ男女一緒でも構わないとは思う。
しかし、さすがに、中学生になってまでだと、どうだろう?
中学生。
少しずつ、体つきがこどもからおとなに変わる。
しかし
同じ物を食べているせいなのか、一緒にいる時間が長いせいなのか、見た目が二人に似てきたらしい。
名前を変えていないのに、つまり、名札の名前は違うのに
双子
だと思われた。らしい。
髪型が違うけど、顔や印象が似てるとか。
いくつかの小学校から集まって来ているとはいっても一年生全体で100人いないから、何かと一緒にいるのは目立つ。
しかも呼び名が、お姉ちゃん、と、兄ちゃん。
まあ、普通じゃないとは思われて当然。
そんなある日、具合を悪くした。
学校から帰る時は、だるいくらいだったので、いつも通りに姉妹の作った飯を食べ、いつも通り片付けて、いつも通りに互いにチェックしながらの歯みがき。
女の子に口腔を見られるから、ムシバと口臭が怖い。それに、女の子の歯や舌を見るのは慣れない。
その後、トイレを順番に済ませて風呂に。
背中は兎にも角にも前を洗われるので恥ずかしいし、女の子の髪や脇や胸、また、オダイジを洗うのに抵抗が出てきた。
しかし、二人は、あまり、気にしていないらしい。
と言うか、
「いつか、コレを仲良くさせるかもしれないから、互いにチェックしておかないと。」
と言うか、ホウケイを捲り中まで洗うのは、なんか違うと思う。
とは逝っても二人のオダイジを、ヒダヒダの中まで洗うのはボクの役目らしいけど。
しかし、なんだかふらつくし、身体が重たい。
勉強を放り出し、いつもは真ん中の布団で寝るが、端に敷くと、横になる。
翌朝、完璧に動けなくなっていた。
お姉ちゃんは、薬箱を持ってくると、
熱を尻で計り、手指で血圧を図る。
「あらまあ、これでは学校には無理ね。
食べ物、一応、朝作ったのと、お弁当を置いて行くよ。」
二人は、それぞれ学校に行く。
熱と血圧の記録、そして、出掛けにケータイ写真を撮って。
小学校は中学校より、30分くらい家から近い。
大抵は、3人一緒に家を出ている。
今日は玄関までお姉ちゃんと一緒だったのに、わざわざ戻って来てくれた。
しかし、
風邪になられるとお姉ちゃん1人で2人の世話をする事になり色々困る。
でも、1人オトナシク帰りを待ってるよ。
と言って追い出した。
しかし辛い。
1人でいると家が何倍も広い。
足元がフラフラで、何でもないはずの、洗面所や台所がすごく遠い。
何時間
1人横になっていると、時間が長い。
一時間前後で時計を見てしまう。
汗が、
しかし、着替えが面倒だ。
でも、ぬれたままだと冷たい。
なんとか、探そうとして、
そういえば、3人一緒のところに仕舞っていたんだ、
と、引っ張り出そうとしたら、
一応大きさと形から男用のなのだと思うのは、生地が、肌触りや色柄が、襟や袖、裾などの縁取りが、どう見ても女の子向けなものだけが見つかる。
他には、明らかに女の子向けの格好なので、諦めて、着替えてみた。
・・・・・・
「おにいちゃん?おにいちゃん!もっと悪くなるよ!ねぇ!」
妹に起こされた。
「1人が寂しくて、あたしたちのネマキを代わりにしてたのね?」
変な慰めをされた。
うわあい!
みんなのネマキを散らかした中で臥せているよ。
でも、身体中が痛くて動けない。
「お兄ちゃん、枕はこっちだよ。」
と言われて、体を支えてくれたのは良いが、
枕は膝で、敷き布団が彼女たちのネマキ、そして、彼女の毛布。
「今だけは、あたしだけのオトコのコ」
と、意味不明。
でも、普段ナマイキだけに、演技だとしてもうれしい。