*  
 
「久しぶりだね、暗殺者」  
 荘厳なステンドグラスを背に、一人の少女が男を見下ろしていた。纏ったドレスは最上級の白。身につけた装飾品はどれも手の届かない煌めきを放つ。だが眼下の男が受ける光はただ一つ、不遜な紅い眼光のみ。  
「一度ならず二度までも私を狙うなんて、どこまで殺されたいのかしら? まあ、無駄な努力だったけど」  
 声を受けた薄汚れた黒いコートの男は何も答えない。手を背中の後ろで縛られつつも、緑の瞳で少女を見上げている。怯える訳でもなく、歯向かうわけでもない無感情な目だ。  
 ドームでの対決から一週間後。傷も体力も喋れる程度に回復したアイルは、再びミナレッタの前に呼び出されていた。  
「さて、あなたを呼び出した理由だけれど」  
 玉座から立ち上がったミナレッタが、傍らに置いてあったレイピアを手に取った。  
「あなたの雇い主の『白軍』の王妃、助けたいとは思わない?」  
「……なに?」  
 眉をひそめるアイルに、少女はレイピアを突き付ける。  
「あなた、この剣に見覚えがあるみたいだけど……この剣が何なのか知ってる?」  
「ただの剣だろう」  
「いいえ。……これはね、一種の封印なの」  
 何を言っているんだ、という表情のアイルの前で、ミナレッタは左手を掲げた。中指にはめられたルビーの指輪が光を受けて煌めく。  
 ミナレッタが何かの呪文を囁いた。すると指輪が一際強く輝き、同時にミスリルの短剣が現れた。宙に浮くそれをミナレッタは手に取り、ひゅんと空気を切り裂く。  
「まあ、こういうこと。あなたはこの剣がこういうものだって、聞かされてなかったのかしら?」  
 確かに彼は知らなかった。彼には魔法の才能が全くないから、王妃もレイピアの秘密を語ろうとはしなかったのかもしれない。  
 ふと、王妃の部屋を最初に訪れた時のことを思い出す。あの時彼女はレイピアの刃を撫でながら……何と言っていたか。思い出せない。  
「ただこのレイピアには魔術的なとっかかりが見つからなくてね。残念だけど、どうやって開ければいいか持ち主以外は誰にも分からないのよ」  
「それを知るために、俺に王妃を探せ、と?」  
「そういうこと。もちろん、あなたへの協力は惜しまないわよ?」  
 むう、とアイルが唸って黙する。かつての主が生きているのなら、探しに行くのは当然だ。魔王の娘の組織力がバックにつけば、仕事が捗るのは間違いない。  
「その剣の中には何が入っているんだ?」  
「それは分からないわ。でもあの城の宝物庫よりも厳重な鍵がかかっているのよ。開けてみたいと思わない?」  
「……分からんな」  
 本当に何も知らないか、それともある程度アタリがついているのか。わざわざ自分を使おうとするなら後者かと、アイルは予想する。  
「仮に王妃を見つけて、そのレイピアの中身を手に入れて、それから俺と王妃はどうなる」  
「そうねえ。中身次第ではあるけど、働きによってはあなたも王妃も放してあげるわ」  
 欺瞞。見下すような目つきからアイルはそう判断した。だがそれも当然だろう。滅びたとはいえ敵国の重要人物、そしてその子飼いの暗殺者。野に放つほうがどうかしている。  
 それでもミナレッタの慈悲にすがるしか無い、その苦悶の表情を魔王の娘は楽しんでいるのだろう。先程よりも一段輝きを増した微笑みがその証拠だ。  
「……分かった、やってみよう」  
 しばしの沈黙の末、アイルは答えた。ならばその笑顔を出し抜く。魔王の娘の裏をかき、王妃の下に馳せ参じる。そう決めたアイルの決意の言葉だった。  
 
「こちらが厨房となっております」  
 ミナレッタとの面会の後、アイルはメイド長のジャスミンにウェステンブルグ城を案内されていた。今、彼の前では10人ほどのメイドが夕食の準備を進めている。  
 メイドたちの種族はバラバラで、ゴブリンやワーウルフなどよく見る種族から、アイルの記憶に無いような奇怪な魔族までいる。共通点は全員少女というところぐらいか。  
「ここも全員、女か」  
「お嬢様が男性を城に入れたがらないのです」  
 そういう趣味か、とアイルは納得する。彼の主も他人には理解できない趣味を持っていた。  
 
「しかし、若いのしかいないのはどうしてなんだ?」  
 そういうアイルの視線の先には、危なっかしい手つきで作業をするサキュバスの少女がいる。料理に慣れているようには見えない。  
「みんな長続きしないんです」  
「なるほどな」  
 魔族は人間より雑多ではるかに強力な力を持っているが、人間と比べて総じて意志が弱い。あるいは飽きっぽい。メイドなどという忍耐のいる仕事をやらせても、一年持つかどうかといったところだろう。  
 そういう魔族たちを軍隊としてまとめあげるには、強力無比な力が必要だ。例えば、先日アイルを散々に蹂躙したマニャーナのように。  
 厨房を出ると、とたんに中が騒がしくなる気配がした。やはりメイド長が目を放すと、すぐにサボり始めるようだ。  
 アイルとジャスミンは廊下の突き当たりにある階段を降りていく。華やかな館内からは一転して、少し薄暗い空間がそこにあった。  
「こちらが客人のエシェル様の部屋になります。アイル殿と挨拶がしたいとのことなので、お入り下さいませ」  
 そう言って、ジャスミンはドアの一つを開ける。  
「失礼いたします。アイル・ブリーデッド殿をお連れいたしました」  
 部屋の中は恐ろしく広大な空間と、その空間を埋め尽くす本と実験機材の山であった。辺りにはよく分からないマジックアイテムや機械が所狭しと並べており、ここが何かの研究室だと想像させる。  
「あら、ごくろうさま」  
 部屋の中央に、安楽椅子に座った金髪のエルフがいる。森の自然を好むエルフが、白衣を着て人工物に囲まれているのは何とも不思議な光景だ。  
「あなたが、例の?」  
「アイル・ブリーデッドだ。今日からこの城の主、ミナレッタに雇われることになった」  
「私は……えーと、人間には発音できないから、エシェルでいいわ。それと」  
 安楽椅子にけだるげに座ったエシェルはそう言うと、手元にあったボタンを押した。すると、本棚と実験機材の山を飛び越えて何かがやってきた。  
 警戒したアイルは懐に手を伸ばすが、そこに銃が無いことを思い出す。何をするか分からないということで、城の中では銃を没収されていた。  
「呼びましたー? マスター?」  
 降り立ったのは鋼のような灰色の髪の少女だった。いや、少女と呼ぶには外見がいささか人間離れしている。  
 左手は黒光りする得体のしれない金属で作られているし、両膝より先もまた銀色の義足で置き換えられている。幸い顔は人間の少女のそれだが、しかし金と赤のオッドアイはどこか不吉なものを感じさせた。  
「ティセ、この人があなたのお父さんよ」  
 ティセと呼ばれた少女はエシェルがそう言うとぱあっと明るい笑顔を見せた。  
「ほんと!?」  
「いや待て」  
 いきなり一児の父にされたアイルがツッコミを入れる。  
「ごめんなさいね、こうしないとこの子、懐かないもんだから」  
「なんだよ、それ……じゃあ、母親は誰になるんだ?」  
「母親はこの子を生んだ直後に死去。あなたが男手一つで育てていたけど、ある日突然戦火に巻き込まれて親子は離れ離れに。  
 死にかけたこの子は私に拾われて一命を取り留め、そしてあなたは13年ぶりにこの子と再会した。  
 そういう設定が、この子にプログラミングされているのよ」  
「なんだそれは」  
 胸を張って自分で考えた設定を語るエシェルに、アイルは大いに戸惑っていた。このエルフ、どこかおかしい。エルフは魔族の中でも特に変わり者が集まると聞いていたが、現物はアイルの想像以上だった。  
「だいたい、なんで俺が父親役にされなくちゃいけないんだ。13年前と言ったら俺は……」  
「そりゃ、あなたの見張り役だもの。娘って設定にしておいたほうが、側にいるのは自然でしょう?」  
 見張り、という言葉にアイルが眉をひそめる。  
「何よ、あなた一人で王妃を探しに行かせると思ったの? だとしたら見通しが甘い甘い、予想力が足りないなんてものじゃないわ。  
 いい? こっちはお嬢様のことを二度も殺そうとした暗殺者をわざわざ使って、そいつに敵の王妃の居場所を探らせようとしてるのよ。  
 見張りの一人や二人つけて当然じゃない。自由に動かしたら、何をしでかすか分かったものじゃないからねえ」  
 エシェルが偉そうに説教を垂れ、アイルは大人しくそれを聞いている。その間、ティセと呼ばれた少女は不思議そうに二人の顔を交互に見比べていた。  
「あー、それとも」  
「なんだ」  
「恋人のほうが良かった?」  
 
「……何故そうなる」  
「いや、ひょっとしたらあなた、ロリコンなのかなって思って」  
「もう黙れ。娘でいいから」  
 うんざりした様子でアイルが首を振る。それを聞いて、エシェルが勝利の笑みを浮かべた。  
「はい、それじゃあそういうことで。これからティセのこと、よろしくね?」  
「……今すぐにでも首の骨をへし折ってやりたい気分だ」  
「ああ、それ無理」  
 アイルの毒づきをエシェルが打ち壊した。  
「その子の骨、ミスリルで作ってあるから」  
 
「ここがお父さんのお部屋?」  
「らしいな」  
 それから数時間後。城の案内が終わってアイルの部屋にたどり着いた頃には、すっかり夜になっていた。部屋に入るジャスミンに、アイルが、そしてティセが続く。  
「こちらがベッドルーム、そちらはユニットバスになります」  
「風呂付きの個室か。随分いい待遇だな」  
「殿方を私たちの大浴場に入れるわけにはいけませんので」  
「……そうか」  
 考えてみれば、この城で唯一の男だ。隔離されるのも当然か。  
「では、失礼致します」  
 そんな彼に何の気遣いもかけずに、ジャスミンは部屋を出る。バタン、と無慈悲な音がして扉が閉まった。  
 はあ、とアイルは疲れ果てたため息をつく。今日はこの広大な古城を案内されるだけで一日が終わってしまった。しかも鐘楼のてっぺんから誰もいない地下牢まで律儀に案内されたため、足が酷く疲れている。  
「お父さん、お風呂入ろう! お風呂!」  
 おまけに途中からティセがついてきて、疲れと共に煩さも倍増していた。  
「何故俺の部屋にまでついてくる」  
「だってお父さんだもん!」  
「答えになっていない」  
「親子は一緒にいるものだよ?」  
「……そうなのか?」  
 アイルには、親子がどういうものかわからない。物心ついた時から『白軍』で暮らしていた彼は、家族というものをほとんど知らなかった。  
「いいから部屋に戻れ。あのエルフが心配するぞ」  
「マスターからはお父さんの部屋に泊まってもいいって言われました」  
 またしてもアイルはうんざりしたようなため息をついた。この様子では何を言っても聞かないだろう。本人に自覚はないだろうが、監視役としての任はしっかり果たしている。  
 ティセ・ブリーデッド。昨日まではただティセと呼ばれていた少女。エシェルが引き取った瀕死の少女に魔術的・科学的な処置を施した戦闘用サイボーグだ。  
 内蔵武器は両手首から飛び出すヒートブレードに、両膝のドリル。両肩にはマイクロミサイルポッドを、腰には魔導ブラスターを装着可能。  
 背中に魔法の翼を展開させアフターバーナーを使用すれば生身で音速を突破。人界、魔界で会話に不自由しない20ヶ国語を学習済み、そして給茶機能やドライヤーもついている。その強さは先日アイルが戦った親衛隊長、マニャーナにも比するらしい。  
 一体どうして瀕死の少女をそんな風に改造したのかとアイルが問うと、エシェルは趣味だと胸を張って答えた。理解できない。  
 とにかくそんな物騒なものが監視についていては、魔王の娘を出し抜くことも難しい。  
「……どーしたの、お父さん? そんなに難しい顔して」  
 ティセが純粋な目を向けてくる。先ほどのメイドのように、敵意を持たれていないのがせめてもの救いか。ならば、そこにどうにかして付け込むしかない。  
 やり方はわかっている。しかしそれが自分にできるかどうかわからない。だがとにかくやらねば主には出会えない。  
「よし」  
 しばし瞑目した後、アイルは腹をくくった。  
「風呂に入るぞ」  
 
 風呂はごく普通の、むしろこんな古城には似合わないユニットバスだった。この城をリフォームした人間は、あるいは魔族は何を考えていたのだろうか。今更ながら疑問に思う。  
 外見は遥か昔に立てられた古城だが、その中身はやたらと近代的だ。電気も通っている。そんな無理をしてこの城に住む理由はあったのか。  
「おとーさん、お風呂大丈夫?」  
 風呂場の外から元気な声が聞こえてきて、アイルは我に返った。湯船に溜めたお湯はほんのりと湯気を上げている。入るには丁度いい温度だろう。  
「ああ、いいぞ」  
「わーい!」  
 ドアが開いてティセが入ってきた。もちろん何も着ていない。アイルもだ。風呂に入るのだから当然である。  
 お湯をかけて体を流し、それから二人で仲良く湯船に浸かる。縁からお湯がざぁっと溢れた。二人で入るには少し狭く、小さな肩がアイルの腕に触れる。  
「ふう……」  
「気持ちいいねー」  
 
「ああ。……そういえば、その腕、水につけても大丈夫なのか?」  
「うん。防水加工もしてあるって博士が言ってた!」  
「そうか」  
 他愛のない会話をしながら、二人は湯船の中でのんびりと寛ぐ。その様子はさながら親子のようだし、実際アイルは彼女の父親らしく振舞おうとしていた。  
 もちろん、身寄りのない少女を哀れに思ったからだとか、庇護欲を刺激されたからとか、そんな理由からではない。  
 監視役のこの少女を自分に懐かせれば、ミナレッタたちに隠れて王妃を探すのも楽になる。上手く行けばこちらの味方に引き入れて、魔王の娘の暗殺に役立てることができるかもしれない。そういう打算の上での、父親代わりだ。  
 ただアイルは自分の父親がどんな人間だったかを思い出せない。手探りで仲良くしていくしかなかった。  
 程よく体が温まったので湯船から出ると、ティセもそれについてくる。  
「おとーさん、背中流してー」  
「自分で洗え」  
「むー。昔は背中流してくれたのにー」  
「……わかった。洗おう」  
 そう言われては仕方がない。ティセを椅子に座らせて、背中を石鹸をつけたタオルで擦ってやった。  
 ティセの体はところどころ無機質な機械に置き換えられているものの、おおよそ見た目相応の体つきだ。成長途中のままサイボーグに改造された体は、ほんのり肉付きがよく柔らかい。  
「流すぞ」  
「ひゃんっ」  
 小さな背中をシャワーで流すとティセは可愛らしい声を上げるが、アイルは努めて気にしないように黙々とティセの体の泡を流す。さあっと水が肌の上を流れると、白い泡が溶けて肌色が見えた。  
「えへへ、ありがと」  
 振り返ったティセがはにかむ。それを無視してアイルは自分の体を洗おうとする。  
「あ、だめっ!」  
 その腕をティセの小さな手が掴んだ。  
「なんでだ」  
「おとーさんの背中はティセが流すの!」  
「む……わかった、わかったから手を離せ」  
 ギリギリと腕の骨が嫌な音を立てるぐらいの力で握られて、アイルはタオルを手放す。それを受け取ったティセはアイルの後ろに立って背中をこすり始めた。  
「えへへー。ごしごしー、ごしごしー、背中をごしごしー」  
 背中を流すのがそんなに楽しいのか、ティセは子供じみた即興の歌を歌っている。  
 自分が子供の時もこんな風に親の背中を流していたのだろうか。背中を洗われながらふとそんな事を考えた。記憶の底を攫っても、自分の親の顔は思い出せない。  
 物心ついた時、アイルは既に『白軍』の下にいた。親はどうしたのか、そんな疑問を抱くこともなくただ淡々と命令通りに殺し続けた。  
 彼の人生を語るには、その一文で事足りる。ただただ機械のように命令をこなして生きるよう、『白軍』の王妃に教育された。それから何年が経ったのか、それすら彼には把握できない。  
 そんな彼が、自分を父親と慕う少女に胸をぴったり押し付けられて体を洗われるとは、奇妙なめぐり合わせという他なかった。  
「……うん?」  
 物思いに耽っていた彼が、ふと気づく。  
「おい、ティセ」  
「なあに?」  
「そんなにくっつく必要、あるのか?」  
「……うん!」  
 やや間を置いてから答えるティセは、やたらとアイルの背中に体を押し付けている。膨らみかけの胸がふにふにと背中に押し付けられ、妙な気分だ。  
「あー……もう十分だから、タオルを」  
「だめ! 前もティセが洗うの!」  
 ティセが腕を前に回してくる。丁度背後から抱きしめるような格好になって、アイルの体がぴくりと震える。ティセの小さな体は風呂に入ってることもあって熱く火照っていた。  
 えへへ、と笑いながらティセがアイルの胸をタオルで撫で回す。その手つきがどことなくいやらしいものに思えるのは、気のせいに違いない。だが、どうにも変な気分になってしまう。  
 しっかりしろ、相手は子供だと自分に言い聞かせる。魔族に二度も犯されておいていまさらといった所だが、父親代わりである以上まさかこんな小さな子供にまで手を出す訳にはいかない。そう論理的に考える。  
「うーん……やっぱり前から洗うね」  
 やはり洗いづらかったのか、ティセは体を離すとアイルの前に回り込んだ。  
「……あ」  
 その視線が、アイルの股間あたりで釘付けになる。アイルも釣られて視線を追うと、そこにはすっかりいきり立つ自分の肉棒があった。  
 そういう趣味は無かったはずなのだが、体は正直だったらしい。  
「わあ……」  
「いや、違う違う。これはだな……」  
「あはっ、おっきくなってるね」  
 ぱあっと笑うと、ティセはいきなりアイルの肉棒を掴んだ。  
 
「おい!?」  
「だいじょーぶ。ティセが優しくヌイてあげるから」  
 そう言って笑うティセの顔は、外見に不相応な怪しい笑みで満たされていた。石鹸の泡で包まれた手でアイルの肉棒がぬるぬると擦られる。  
「うぐ……っ!?」  
 いやに慣れた手つきだ。まだ年端もいかない子供の外見とのギャップが興奮をそそる。巧妙にティセの手から与えられる刺激は、肉棒をいきり立たせるには十分だった。  
「ふふ、こーんなに大きくしちゃって……ティセの手で、悦んでくれてるんだ?」  
「おい、バカな真似はやめ……うあっ!?」  
 これ以上はまずい、と思ったアイルがティセを引き剥がそうとするが、それより先にティセは肉棒にしゃぶりついていた。  
「んっ……んぷっ……!」  
 最大限に膨れ上がった肉棒は、ティセの口に収まり切らない。ほんの少しでもティセが顎を閉めたら、歯が突き立ってしまいそうだ。それでもティセは懸命に肉棒を咥え込んで、もごもご奉仕している。  
 少し首をひねってティセが顔を前後させると、柔らかい頬肉に先端が擦り付けられる。そこに舌がぬるぬると絡みつくと、言葉に出来ない快感が脊髄を駆け抜ける。  
「ぢゅぶ……ぷはっ。おとーさん、きもちいい?」  
 おとーさん、と呼ばれてアイルの心の奥で得体のしれない感情が蠢いた。  
「あ、ああ……」  
「よかった。はむっ」  
 最初は引き剥がそうとしていたアイルだったが、そのフェラチオの気持ちよさに今ではすっかり大人しくなっていた。抵抗が無くなって動きやすくなったティセは、ますます丹念に肉棒に奉仕する。  
「んぐ……ちゅ……ふっ……」  
 口の中で舌を器用に這わせながら、唾液を絡めて口を前後させる。膣内に入れるのとも、前戯ともまた違うねっとりとした感触に、アイルはぶるりと体を震わせる。  
 だが、絶頂に至るまでには足りない。精液を吐き出すには、もう少し激しさが欲しかった。  
 熱心に奉仕を続けるティセが、上目遣いで彼を見つめる。情欲に濡れる金と赤のオッドアイと目があった瞬間、アイルの心の奥底で何かが切れた。  
「はんっ――んぶっ!?」  
 ティセの小さな頭を両手で掴んで、一気に肉棒を押し込む。喉奥まで肉棒を突きこまれ、ティセが目を見開いた。だが、もがくティセに頓着せず、アイルは顔を引き戻すと再び奥まで突き入れた。  
「んあっ、おごっ、んぶっ、むぅっ!?」  
 規則正しく、リズミカルに、苦痛を伴うイマラチオが繰り返される。だが、初めは戸惑っていたティセも、それが父親の望むことだとわかると、精一杯受け入れようとする。  
 その健気さが更にアイルを暴走させる。ほとんどティセを気遣わず、オナホールにペニスを突き入れるかのようにティセを扱う。どろどろになった口内から暴力的な快感を与えられて、アイルは一気に絶頂まで上り詰める。  
「ぐっ……出すぞ、ティセ……ッ!」  
「んぐっ、む……ぐ、うんっ!」  
 口中を撹拌されながらも、ティセが頷いた。アイルにはそう見えた。その瞬間、肉棒から大量の精液が喉奥に向かって直接吐き出された。  
「ぎゅ、ん、うううううん!?」  
 びゅくびゅくと、ティセの口の中から卑猥な音が響く。がっちりと頭をつかむアイルの腕は、少女に一滴足りとも精液を吐き出すことを許さない。  
 やがて射精が収まると、ようやくアイルはティセの頭を放した。だらりと力を失った肉棒が口から溢れ、ティセは呆然とその場に座り込む。口の端から飲みきれなかった白濁液が、つう、と一筋糸を引いた。  
 
「いーいおーゆーだー」  
 それから数分後。汗と体液で汚れた体を洗い流した後、アイルとティセはまた湯船に浸かっていた。二人で入るには少し狭いが、アイルが隅によっているためティセにほんの少しだけ余裕がある。  
 のんびりくつろいでいるティセに対して、アイルの表情は沈痛だ。何しろ初対面でイマラチオである。どれだけ嫌われたか、想像するだけであの機械の腕で胸板を貫かれそうだ。  
「ねえ、お父さん?」  
 一曲歌い終わったティセが、アイルに呼びかける。  
「な、なんだ」  
「……また、一緒にお風呂はいろうね」  
 その言葉に、アイルは一瞬返事が遅れてしまった。  
「……なに? いや、え……?」  
「どうしたの?」  
「どうしたって、お前……あんな事されて、平気なのか?」  
「うん。平気だよ。お父さん、大好きだもん!」  
「……そう、か」  
 戸惑いながら、そう返事をするのが精一杯だった。  
 
 その頃。  
「男手一つで育てられた娘。大切に育てられた娘はしかし、父親に抱いてはいけない感情を抱いてしまう。  
 それから月日は流れ、少女は憧れの父親と再会する。しかし自分はかつてとは違う機械の体。だがもう二度と父親と離れたくはない。  
 決心した少女は、自分の拙い性技でもって、父親の心を繋ぎとめようとする……。  
 とまあ、こんな設定なんだけど、どうよ?」  
「誰も頼んでないわよ、そんな余計な設定。何なのよもう……」  
「ああ、もちろんティセが見た映像は全部記録してあるから。今晩のおかずにでもどーぞ」  
「いるかっ!」  
 嬉々とした表情でティセに施した設定と仕様を話すエシェルを、本気で城から追いだそうかとミナレッタは悩んでいた。  
 
 

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