「次の土曜日、海に連れてってよ!」
『次の土曜日』の前日まで、彼氏が国外出張なのは知っていた。
それでも、私の海に行きたいという欲求は大きかった。
彼氏も私と同じく、外出が好きだ。おまけにイケメンときている。
こんな彼氏と一緒に砂浜を歩けたらいいなあって、ずっと思っていた。
「すまん、次の土日は勘弁してくれ」
「ええー、だって次の土日逃したらもう海行けないよ?
その次の土日も予定埋まってるし」
「出張ってマジ疲れるんだよ、だから頼む。次の土日はゆっくりさせてくれ」
「ええーやだー」
少しだけ喧嘩になっちゃったけど、どうにか彼氏を説得して、海に連れてってもらえることになった。
「ひゃっほーう、海だ海だ〜!ほらユウ君(彼氏)、もっとテンションあげてよ!」
「お前……俺寝てないんだぞ。さっきまで車でずっと寝てたくせに」
イケメンで何でもいうことを聞いてくれる彼氏を持つと気持ちがいい。
どんなに疲れていても、私のいうことなら何でも聞いてくれる……女として、幸せな優越感に浸れるひとときだ。
「じゃあ、水着に着替えて、海の家の前に集合ね!」
ユウ君、さすがに今日はずっとお疲れだな……ごめんね、今日だけゆるしてね!(笑)
二人とも水着に着替えて、海の家に集合。
ほらほら、私の水着、どうかな?このビキニ、結構かわいいでしょ?
あ、まだ眠そうな顔してる〜。せっかく海にきたんだから、もっとはしゃごうよ!
さっそく海に入ろ〜!きゃあっ、意外と冷たいっ!!
こういうときは思い切って、えいっ!ほら、肩まで浸かっちゃったらもう大丈夫!
もう〜、ユウ君まだ海に入ってないの?
えいっ!水掛けてやる!
ほらほら〜、冷たいだろ〜!(笑)
まだまだ今日は他にもいっぱい遊ぶんだから!ビーチボールしたり、ビーチボート浮かべたり!
あ、ユウ君、ボールとボート、膨らましといてね!(笑)
ふうっ、いっぱい遊んでお腹空いてきちゃったなあ。
ユウ君何か買ってきて、私焼きそばとお茶でいいよ。
ああっ、ビニールシートで太陽を浴びながら目を瞑ってうとうと……これだけでもう夏満喫、って感じだよね。
……やばっ、ちょっと本格的に眠くなってきちゃったなあ。
まあ、日焼け止めちゃんと塗ったし、大丈夫か。ユウ君が帰ってくるまで、寝ちゃおう。
……。
……あ、そうか、私ビーチでうとうとしてたんだ。
あれっ、何か結構時間が経ったような?
ああ〜、よく寝ちゃったなあ。太陽がまだまだ眩しいよ。
って、何かみんな私の方を見ていく。
まあいいや。もうちょっとうとうとしとこう。
……あれっ、そういやユウ君にお昼ご飯買いに行ってもらってたんだ。
ユウ君どこ?
相変わらずみんな私の方を見ていく。何でだろう……
えっ!?
水着のブラがない!?
私おっぱい丸出しじゃん!!?
ちょっと待って、さっきまで私寝てたってことは……
私、ずっとおっぱい丸出しで寝てたの……!!?
やばい!やばいやばい!!
ブラがない!!
こらそこのおっさん!ニヤニヤしながら私を見るなぁ〜!
慌てて両手で手ブラしておっぱいを隠したけど。
でも、どうしよどうしよ、どこ行ったんだろう私のブラ……
あっ、ユウ君だ!
「ユウ君、ちょっとちょっと!」
「どした?」
「私の水着のブラがなくなっちゃったんだけど!!」
「海の家でも行けばわかるんじゃね?」
ユウ君がニヤニヤしながら答えた。
私は両手で手ブラしたまま、海の家に猛ダッシュした!
すれ違う人みんな、私の方を振り向いていく……!
うわああああ、何でよ、何でよ!
なんで私がこんな恥ずかしい目に遭わないといけないのよ〜!!!
うわあ恥ずかしい……こらおっさん、こっち見んな〜!!
ああああ、手ブラしててもおっぱい揺れる〜……
やっと海の家に着いた!
ここで落し物とか預かってくれてたらいいんだけどなあ……
「すみません!!」
私は上半身すっぽんぽんの水着パンツ一枚で、係員さんに尋ねた。
当然係員さんは私の方を向いちゃうんだけど、しかたない……。
「わ、私の水着……ビキニのブラ届いてませんか!?」
言うのも恥ずかしいよ、『ビキニのブラ届いてませんか』だなんて!
「は、はあ、……その胸の上に引っかかっているのは違うんでしょうか……」
えっ!?
「あっはははははははは!!」
後ろでユウ君の声が聞こえた。まさか……
「お前の水着はちゃんとそこにあるっての!ズレてただけなの!!」
ほんとだ……なくなったと思ってた私の水着のブラ、ちゃんと引っかかってた……
じゃあ私、水着がズレた状態で手ブラしながら、今までダッシュしてたの!?
……かっこわるい、恥ずかしいよ〜!
「……まさかとは思うけど、この水着ズラしたのって」
「はーい、俺で〜す!」
「バカバカっ!」
「へっ、日頃のお返しだよ〜!!」
とりあえずユウ君を10発以上殴って、このことはひとまず許してやることにした。
けど、……さすがにユウ君をこき使いすぎたなあ。
車まで出してもらって、私の方が寝ちゃうなんて、ちょっと反省。
ユウ君も日頃からストレスたまってたんだろうなあ。
ごめんねユウ君、ユウ君が優しいからつい甘えちゃってた。
それに、
……こういう恥ずかしい経験も、悪くなかったりして(笑)