「ダークエルフってのは、淫乱なの?」
僕は同居人であるダークエルフに、そう問いかけた。
彼女は少しだけ不快そうに眉をしかめて、答える。
「いや、そういうわけではない」
「そうなの? なんか知り合いのダークエルフって、みんなアレだからさ」
「それは君の知り合いが偏っているだけだ。確かに、みな欲望に忠実ではあるが」
彼女は一度言葉を切り、言葉を探すように顎へ手をあてた。
「欲望、では少し印象が悪いな……。我欲、そうだな、我欲に忠実なんだ」
「我欲?」
「そう、我欲。みな、自分のやりたいことをやっている」
「やりたいこと」
「戦いが好きな者は戦場や闘技場を渡り歩き、物欲が強い者は己の好きな物を買いあさり……食べることが好きな者や寝ることこそ全てな者もいる」
「なるほどねぇ」
「三度の飯よりフリルやレースが好きな奴がいるんだが。ひらひらでふりふりな服を作っては売っていたら、いつの間にか有名になっていてな」
そう言って彼女が挙げた名前は、なるほど確かにひらひらふりふりな服で有名なブランドだった。
「と、言うわけで、ダークエルフは我欲に忠実なだけで、淫乱なわけではない」
「我欲に忠実ねぇ。よくわかった、解説ありがとう。じゃあ質問を変えよう」
僕は、僕をベッドに押し倒している彼女へ尋ねる。
「君は、淫乱なの?」
「まあ、否定はしない」
彼女はそう言ってにやりと笑い、僕の唇を奪った。