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ゴムの袋を手に私の前に戻ってきた悠生ちゃんを前にして、ようやく私の声、復活。
このまま形成逆転が出来なかったら……いやいや、今は余計な事を考えてる場合じゃない!
「駄目だよ、それは! 酔った勢いで、冷静じゃなくなってなくない?」
「チィ子の方こそ、冷静じゃなくなってるわよ」
「私の事は良いの! てか、ほっといたら何とかなるでしょ? 何もエッチしなくても」
「だって、このままじゃ苦しいんだもの」
へー、男の人って、そうなんだ。
まあ、女だって中途半端だと気分的には苦しい物があるけど。
……じゃなくて!
「それに」
一瞬、余計な事を考えたのがまずかったのか、悠生ちゃんは私を抱き締めると、あの低い声で囁いた。
「チィ子の事、好きだし」
…………。
嗚呼、駄目だ。
この声は心臓に悪すぎる。
いつもだって、別に意識をして女声を作ってる訳じゃないんだろうけど。
悠生ちゃんに『男』を意識させられたら、もう適わない。
「……用意が良すぎ」
「女のタシナミよ」
悔しくて、それでも拒否なんて出来なくて。精一杯の恨み言に、悠生ちゃんは男の人の声で小さく笑った。
「ベッド、行く?」
どこまでも優しい悠生ちゃんの言葉に、私は首を横に振る。
さっきのキスで感じてるのは、悠生ちゃんだけじゃない。
本音を言えば私だって、体の奥がもやもやして仕方なかった。
「いい」
「寒かったら言って。もっとも、そんな暇なんて与えるつもりもないけどね」
冗談めかして笑う悠生ちゃん。
見慣れたはずの笑顔なのに不思議な感じがするのは、その中に『男』が潜んでいると知ってしまったからかも知れない。
耳に熱い吐息を感じて、私はゆっくりと目を閉じる。
悠生ちゃんの口は魔物だ。
耳をなぞり、耳たぶを甘噛みされただけで、私の口から吐息が漏れる。
くちゅくちゅといやらしい音を間近で聞かされ、悠生ちゃんのシャツの袖を掴んでしまう。
「千鶴子」
「あ……っ、やぁ」
「千鶴子」
滅多に呼ばれない名前を繰り返す悠生ちゃんの声に、恥ずかしさがわき起こる。
「だめ……名前っ、やだ……ぁっ」
「駄目じゃない。千鶴子」
「んんっ!」
意地悪な声。
耳に舌を差し入れて、耳を口に含んで。その最中にも断続的に呼ばれる名前は、頭の中に直接響いてくるみたいで。恥ずかしいのに、気持ち良い。
「やぅっ、あ、悠生、ちゃ」
「千鶴子……可愛い」
「そんなっ、言わ、ないっ…」
頭を振って逃れようとしても、悠生ちゃんの右手は私の後頭部をしっかりと支えている。
羞恥心に煽られて、なのに逃げることも許されない。
悠生ちゃんは尚も私の名前を呼びながら、首筋に顔を埋めてきた。
「千鶴子」
舌先が私の首や顎を這う。
こんな時に限って、私の服装はハイネックのカットソーにジーンズ。
でも、悠生ちゃんには関係無いみたいで、僅かに覗いた首筋に吸い付きながら、逆の耳へと唇を移動させた。 それと同時に、背中に回されていた左手が服の中に潜り込む。
背骨を伝い撫で回されて肌が粟立つ。その感触に気を取られている間にも、悠生ちゃんの舌は妖しく蠢き。
「あああぁっ!」
じゅるり、と盛大な音をたてて耳を吸われ、私は思わず悠生ちゃんにしがみついた。
「千鶴子、耳、弱すぎ」
喉の奥で笑いをこぼす悠生ちゃんは、今度は私の背中に爪を立てる。
カリカリと優しく引っかかれ、その刺激に腰が浮いた。
「あ、んんっ……だってぇ…」
「背中も、駄目?」
「だ、だめぇ……」
自分で聞いておきながら、悠生ちゃんの手は止まらない。
私の敏感なところを探るように指の腹で背骨をなぞって、私が声を漏らすたびにそこに爪を立てていく。
「やらしー声」
「ちが…っ、ゆうき、ちゃんがぁ」
「私が、何?」
ブラのホックを外した悠生ちゃんは、両方の手を服の中に差し入れる。
中途半端に浮いたブラが邪魔だけど、悠生ちゃんはお構いなしに、いやらしく手を動かしていく。
「悠生ちゃん、が……触るから…っ」
「私が触ると? 声、出ちゃうの?」
「ひゃうっ、ぅああ!」
答えようにも、口からこぼれたのは甘い悲鳴。
返事をする前に、悠生ちゃんが私の耳をくわえたせいだ。
人並みに経験はあるけれど、こんなに翻弄されるのは初めて。肝心な部分にはこれっぽっちも触れられてないのに、声を抑えることも出来ない。
「千鶴子」
嗚呼、本当に駄目だ。
悠生ちゃんの声だけで、頭の中が白くなる。
「千鶴子、すっごくエッチな顔になってる」
男の人の声で囁いて、悠生ちゃんの唇が私の唇を塞ぐ。
そのまま優しく押し倒された私の体に、悠生ちゃんの手が伸びた。
ブラごと服をたくし上げ、ひんやりとした外気にさらされた胸を手で覆う。
固くなった頂を指で摘まみ。かと思うと指の腹でこねまわされる。
そのたびに声が漏れるけれど、深く口付けられたままだから、表になったのはうめき声にも似た声音。
どちらかともなく舌を絡めあいながら、私はぼんやりと悠生ちゃんを見上げた。
整えた眉。長い睫毛。ふわふわとカールした髪が、私の肩にこぼれる感触。
キスも、胸への愛撫も気持ち良くて、悠生ちゃんの頬に手を伸ばすと、閉じられていた瞼が押し上げられた。
ばっちり交わる視線と視線。
目元を緩めた悠生ちゃんの眼差しに、こんな行為の最中だと言うのに、目を逸らす事が出来ない。
悠生ちゃんは唇を離すと、私の首の後ろに手を回した。
「千鶴子、借りるわよ」
後ろで一つにまとめていた髪が解かれ、私の髪ゴムは、悠生ちゃんの手に渡る。上体を起こして手早く髪をまとめる姿は、やっぱり色っぽい。
「服も脱いじゃうか」
力の抜けきった私は、促されるまま体をよじる。悠生ちゃんは私の服を脱がせると、自分もシャツの胸元をはだけた。
悠生ちゃんの手で上半身が裸にされたのは良いんだけど、フローリングの床は、直接横たわるとちょっと冷たい。
胸を抱えて一瞬体を震わせた私に、悠生ちゃんは気付いたらしい。
「千鶴子」
「ん…? あ、わっ」
鼻先にキスを一つ。かと思うと、私の体は軽々と悠生ちゃんに抱えられ、ソファの上に転がされた。
そんな何気ない行動の一つ一つに男の人を意識してしまう。
「床、冷たいでしょ」
「う…、ん」
「ベッドじゃなくて悪いけど」
「いいよ」
シャツを脱ぎ捨てた悠生ちゃんの体は、ほどよく筋肉がついて引き締まっていて、思わず見とれてしまう。
これで女の子になりたいだなんて……もったいない。
胸を隠す私の両手をやんわりと引きはがし、悠生ちゃんは私の胸に頬ずりした。
「柔らかい」
「んっ、くすぐったいよ、悠生ちゃん…」
私の両手をソファに縫い止め、悠生ちゃんは口を使って私の胸を刺激する。
寒さと快感で固くなった頂を口に含み吸われると、ジンッ――と下半身に熱が走った。
「ぅ…っふう」
ねっとりとした舌が乳首を転がし、時折そこに歯を立てられる。
甘い痛みに声を漏らすと、悠生ちゃんは気を良くしたのか、両手で私の胸をすくい上げて両方の乳首に交互に歯を立てた。
「ひんっ、あ、ああ!」
「痛いのに、気持ち良いの?」
わざと意地悪な質問をする悠生ちゃんに、私は声を漏らしながら小さく頷く。
そんな私に、悠生ちゃんは強く胸を揉みながら、なおも乳首に歯を立てて舌先でちろちろと舐め回した。
「うぁ、ああっ」
「やらしー。千鶴子、虐められるのが好きなんだ」
「ち、ちが…んんんっ! やぅっ!」
悠生ちゃんに触れられるたび、私の体はぴくぴくと跳ねる。
覆い被さる悠生ちゃんの顔は良く見えない。
休む間もなく与えられる快感に、私は声を上げることしか出来ずにいた。
「可愛い、千鶴子」
悠生ちゃんの手が脇を通って私の下半身に伸ばされる。
熱くほてった足の付け根に手を伸ばし、そこを強く押されると、ジーンズの上からだと言うのに、一際強い快感が私の身体を走った。
「や、ああ、ゆう、きちゃっ!」
「気持ち良いの?」
「ぅんんっ、は、気持ち、い」
むにゅむにゅと四本の指で足の付け根を蹂躙される。
胸を揉まれるのとはまた違う、じれったいような快感。
中途半端で。触って欲しくて。
足をすり合わせる私の姿に、悠生ちゃんは身体を起こすと、私のあそこをいじりながら目を細めた。
「千鶴子、どうして欲しい?」
「…っ、やぁ……」
そんなこと言えない。言える訳がない。
口許を抑え悠生ちゃんを見ると、悠生ちゃんは意地悪く笑いながら、空いた左手で私の足を割り開いた。
「ここ、気持ち良いんでしょ? どうして欲しいの?」
ジーンズを履いていても、もう私のあそこはぐちょぐちょになっているのが分かる。
もっとして欲しい。悠生ちゃんに触って欲しい。
けど吐息混じりの喘ぎ声しか上げることが出来なくて、私は小さく首を横に振った。
そんな恥ずかしいこと言えない。
「もっと触って欲しいんじゃないの?」
「ふぁ、う…んんっ!」
ぐりぐりと強く圧迫されて、私は強く目を閉じて大きく頷く。
悠生ちゃんは意地悪だ。
「言ってくれなきゃ分かんないわよ?」
何が悠生ちゃんの加虐心に火を点けたのかは分からないけれど、悠生ちゃんはあそこをいじったまま、私の耳元に唇を寄せた。
「言って? 触って欲しいって」
「う……あ……、さ、触って……悠生ちゃん……」
まるで熱に浮かされたみたい。
恥ずかしいのに、悠生ちゃんに言われると、どうしようもなくあらがえない。
吐息の隙間から切れ切れに呟くと、悠生ちゃんは私の耳に口付けを一つ。
「良く出来ました」
にっこり笑ってジーンズに手を掛け、私の足から引き抜いた。
両手で大きく足を割り開かれ、私は恥ずかしさで目を閉じる。
「もうぐちょぐちょ。女の子って、こんな風になっちゃうのね」
目を閉じていても、悠生ちゃんの視線がどこに向けられているのか分かる。
呟いた悠生ちゃんの屈み込む気配がしたかと思うと、熱い吐息が下着越しに感じられた。
太股を撫でながら、悠生ちゃんの唇が私のあそこに触れる。
何かを確かめるみたいに舌先が伸ばされ、私は思わず腰を浮かせた。
「んぁ、ああ…っ!」
「千鶴子……めちゃくちゃ濡れてる」
「や、あ…そん、な……ことぉ…」
にじみ出た蜜がぴちゃぴちゃといやらしい音をたてている。
悠生ちゃんは私の下着をするりと脱がすと、私の太股を持ち上げた。
「やらしー、千鶴子」
片足を悠生ちゃんに持ち上げられた私は、いまや隠す物もなく悠生ちゃんに全てを晒している。
目を開けると、悠生ちゃんは私の足に唇を這わせていたけれど。その眼差しは一点に向けられていて。
「だ、だめ…ぇっ、見ちゃ、やあ…っ!」
部屋の明かりは点いたまま。
悠生ちゃんの眼差しに、私は思わず両手で顔を覆った。
「どうして? 可愛いわよ、千鶴子」
「だ…って……あああっ!」
くちゅり、といやらしい音が耳に届く。
私の足を味わう悠生ちゃんが、右手を私のあそこに伸ばしていた。
「千鶴子」
悠生ちゃんが入り口を指でかき回すたび、ねばついた音が絶え間なく響く。
「んあ、ぁ、や、あぁぁ」
「千鶴子の中、すっごく熱い」
低い声で囁かれ、その声が気持ち良さを増して。お尻の方まで蜜が伝うのが分かった。
「舐めて良い?」
なんでいちいち訊くんだろう。
私のあそこは、もう指だけじゃ足りないのに。
けれど悠生ちゃんは、今度は私の答えを待つ事はせず、私の中に指を埋めたまま身体を屈めて顔を近づけた。
「ああぁっ、悠生、ちゃん…っ!」
じゅるっと悠生ちゃんが蜜をすする音が聞こえる。
かと思うと、一番敏感な場所に吸い付かれ、私は堪えきれず声を上げた。
私の中で蠢く指は、徐々に本数を増やしているのか、圧迫感が増している。
でも、それを苦しいと思う暇なんてないぐらい、悠生ちゃんの口は私を気持ち良さでいっぱいにして。
もう、何も考えられない。
「やぅ、あ、はあっ! ゆ、きちゃ…っ!」
淫らな音と淫らな声。
快楽に身を任せる私の視界は、いつしかぼんやりとした水の膜に覆われた。
「あ、ああ! だ、だめぇっ! いや…やあぁ――っ!」
制止をかけようとする声は悲鳴にも似ていて、悠生ちゃんの指は激しく私の中を乱していく。
その勢いに全身が大きく突っ張って、私は身体を孤にした。
快楽の絶頂に息も絶え絶えな私を見下ろし、悠生ちゃんは指を引き抜きながら体を起こす。
酸素を肺に送り込みつつ悠生ちゃんを見ると、蜜に濡れた唇をぺろりと舌で舐めながら、にんまりとした妖しい笑顔を浮かべていた。
「ゆ……きちゃん…」
悠生ちゃんは、一端ソファから降りると、さっき取り出したゴムを手に取る。
ズボンを脱ぎ捨てソファに戻った悠生ちゃんに、私はのろのろと身体を起こした。
「悠生ちゃん…?」
「あんま見んな。……恥ずかしいだろ」
ボクサーパンツの前は膨れ上がっていて、ゴムの袋を破りながら悠生ちゃんは苦い笑み。
わざと男言葉を使う悠生ちゃんに、思わず小さく笑いがこぼれた。
「貸して。付けたげる」
私ばっかり気持ち良くなるのも悪いと思う。
両手を差し出し悠生ちゃんを見ると、悠生ちゃんは少し戸惑ったようだけど、存外素直に私の手のひらにゴムを乗せた。
「お手柔らかに頼むわよ」
「ばか」
肩の高さで両手をぴらぴらと掲げる悠生ちゃん。
おどけた口調がおかしくて、つい笑い混じりに唇を尖らせてしまう。
ゴムを取り出し左手に持った私は、右手で固く張りつめた悠生ちゃんのモノを包み込んだ。
酷く熱くて、先走りのせいかじっとりと湿っている。
優しく撫でながらボクサーパンツに手を掛けると、悠生ちゃんは私の頭を撫でながら、私の動きをさまたげないように腰を上げた。
途端、雄々しいとも言える悠生ちゃんのモノが顔を出す。
綺麗な顔に似合わないソレを思わず凝視してしまった私に、悠生ちゃんは眉を下げた。
「だから見ないでって」
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