*****  
 
 ブラのホックがはずされて、キャミソールの中で違和感が生まれる。そのことが気持ち悪くて、私がもぞもぞとブラを引き抜こうとしていると、長谷君はボレロもキャミソールも一緒くたにして持ち上げた。  
 長谷君の手を貸り、万歳をする形で衣服を脱ぐと、のろのろとベッドの下に落とす。  
 その合間に長谷君は体を起こすと、ミニスカートを脱がし、下着とレギンスを足の間から抜き取った。  
 酔いと軽く達したのとで体を動かすのも億劫。横たわったままの私の片足を、長谷君は大きく持ち上げると、今度は剥き出しになったあそこに指を這わせた。  
「ん…っ!」  
 一本。二本。  
 体の中に埋め込まれた指が、肉壁をほぐそうと動き回る。  
 逃げようにも、片足はしっかりと長谷君に抱き込まれていて、体をずらすこともままならない。  
「ひ、あっ! ああ、あっ」  
 激しく胎内を乱されて、大きな快感の波が押し寄せる。  
 気持ち良い。気持ち良い。  
 私の頭の中を埋め尽くす言葉は、まるで呪文のように同じことの繰り返し。  
 でも、それで良い。私が欲しかった気持ち良さを、長谷君は与えてくれる。  
「遠山ってさ」  
 空いた手をベッドに突いて、体を前に押し倒した長谷君は、すがる物が欲しくて枕を抱えた私の耳元で囁いた。  
「イイ声で鳴くよね」  
「ん、やあっ、あ、そん…な…っ!」  
 そんなことない。そんな訳ない。  
 言葉にしたかったのはどっちなんだろう。  
 もうそれさえも分からなくて、私は枕に顔を埋めて鳴き声を上げる。  
「そうだよ。俺、これでも結構我慢してるんだから」  
 舌先を耳に這わせた長谷君は、甘い声で私の思考を散らしていく。  
 指が増やされたのか、圧迫感を伴うあそこの刺激に、私は枕越しに鳴くしか出来ない。  
「うむぅ…っ、む、うぅぅ…っ!」  
「だから、もっと聞かせて」  
 そう言うなり、長谷君の指は乱暴に私の中を乱し始めた。  
 じゅぷっと深く指が埋め込まれたかと思うと、その勢いと同じ早さで引き抜かれる。それを何度も何度も繰り返されて、私は思わず枕から顔を上げた。  
 
「や…っ! あぁっ、あっ!」  
 クスッと、耳元で長谷君が笑う声がする。  
 けど、もうそんなの気にしてられない。  
「あっ! あっ! やぅ…っ、あああっ!」  
 耳をくわえられ、あそこをかき乱されて、長谷君に翻弄されるがまま、私はひたすらに声を上げて鳴き続ける。  
「や、だぁっ、も、やあぁっ」  
「イきそう?」  
「イくっ、や、イっちゃ…っ!」  
 私の体を背後から抱く形で引き寄せた長谷君は、私の声にベッドに突いていた手を私のあそこに忍び込ませ、きゅうっと強く肉芽を摘む。  
 その刺激に、私は声を上げることすら出来ず、汗ばむ体を大きく反らせて、二度目の絶頂を味わった。  
 さっきよりも大きくビクビクと痙攣するあそこから指が引き抜かれ、その刺激にすら私の体は反応する。  
 抱き込まれた足は解放されて、くたりと力なくベッドに落ちた。  
 けど、まだ終わりじゃない。  
 枕元に座り直した長谷君は、私の体を引き寄せる。  
 全力疾走のあとにも似たけだるさの中、ようよう顔を上げると、長谷君は私の手を取り自分の太股に導いた。  
 私の顔の前には、膨らみを見せる長谷君のモノがある。顔を見上げても、何も言わない。ただ、私がどうするのか、見定めているみたいで。  
 たぶん、このまま何もしなくても、長谷君は何も言わないだろう。何も言わず、私が望むように、この熱を体の奥深くに突き入れてくれるに違いない。  
 何となくそう思ったけれど、さっきまで散々気持ち良くしてもらっていて、何も返さないのも悪い気がする。  
 そんな妙な義務感に駆られ、私は長谷君の膨らみに手を沿えた。  
 寝間着代わりのハーフパンツ越しなのに、ピクンとそれが跳ねたのが分かる。  
 ゆるゆると下着と共に寝間着をずり下ろすと、固くそそり立った長谷君のモノが露わになった。  
「してくれる?」  
「ん」  
 私の頭を撫でて尋ねる長谷君に小さな頷きを返すと、長谷君は腰を浮かせて寝間着を脱いだ。  
 長身のせいか、長谷君のモノも少し大きい。太さはたぶん人並み。だけどその長さは、少なくとも今まで私が見てきた中では一番長い。ような気がする。  
「んむ…ぅ」  
 幹を握りしめ先端を口に含む。苦くてしょっぱい、男の人特有の味が口の中に広がった。  
 舌を絡めれば、長谷君のモノは私の口の中で膨らみ始める。  
 口いっぱいに長谷君のモノを頬張るけれど、まだまだ長さに余裕がある。やっぱり長い。  
 
 えづかないよう気を付けつつ、喉の奥まで飲み込んで、長谷君の根本に指を沿える。  
 ゆっくりと、上顎に擦り付けながら強く吸い上げ、根本の指を上下させると、長谷君の口から熱い吐息が漏れた。  
「それ……気持ち良い…」  
 壁に体を預けた長谷君は、片足を立てて足を開く。少しスペースが空いたので、横になったままの私は、長谷君の足下ににじりよると、両肘を突いて体を支えた。  
 両手で長谷君のモノを握りながら、さっきと同じように大きくくわえる。つるつるとした先端を顎に擦り付け、音を立てて強く吸い上げる。  
「ふ、……っあ」  
 ビクン。手の中で長谷君のモノが震えると同時に長谷君は声を上げたけれど、すぐにその口元に手をやった。  
「ふん…?」  
 何だろうと、視線を上に向けてみる。  
 指の隙間から吐息と声を漏らす長谷君は、眉を下げた笑みで私を見下ろした。  
「んふっ…う。……どうしたの?」  
 唾液と先走りでべとべとになったモノから顔を上げ、両手の動きを緩やかにして問いかける。  
 刺激が弱くなったからか、長谷君は口元を覆う手を外すと、大きな吐息を漏らして問い返した。  
「声、出ちゃうからさ。男の喘ぎ声って、嫌じゃない?」  
 変なの。気持ち良いなら声を上げたって不思議じゃないのに。  
 そりゃあ、洋物のAVみたく喘がれたらさすがにちょっと驚くけど。  
「やじゃないよ? むしろ」  
 ぐりゅっと、先端を親指でこねまわす。とたん、長谷君は唇を噛みしめて声を押し殺す。  
「聞いてみたい。……長谷君の声」  
 ねっとりと舌を絡め、先端の割れ目に舌先を潜り込ませる。  
 私の答えに、気にすることを止めたのか、それともよっぽど気持ち良いのか。長谷君は今度は声を殺さず、吐息と共に小さな呻き声を漏らした。  
「う……っ、くぅ…」  
 ああ、何か可愛い。  
 幹をこすりながら、裏筋から根の方へ舌先をを滑らせると、今度は唇で軽く吸い上げながら同じルートを辿る。  
 もうガチガチに固くなった長谷君のモノは、私が与える刺激に素直に反応して、透明な露があとからあとから湧いてくる。  
「あっ……ん、んん…っ」  
 長谷君の声が色っぽい。  
 男の人が女の人を攻める時も、こんな感じなんだろうな。声が聞こえるたびにゾクゾクする。  
 ちゅるちゅると音をたてながら裏筋を上下し、袋をやんわりと口にする。舌全体を使って口の中で転がすと、長谷君はくうっと呻く。  
「……遠山っ、もっと下も…」  
 
「ふん? んん、んぁ……」  
 長谷君の要望通り、二つの塊を舌で転がし顔をさらに奥へと向ける。お尻から袋までの部分を唇で刺激していると、汗と長谷君自身と石鹸の蒸れた匂いに、私の体もきゅうっと切なくなってくる。  
 こんな所まで舐めたことなんてなくて、自分でもちょっとびっくりする。けど、長谷君が気持ち良くなってくれるなら。  
 そんな想いで長谷君のあそこに顔を埋めていると、長谷君は私の頭を撫でてくれた。  
「気持ち良い……、良いよ、遠山…っ」  
「んふぅ、んっ……気持ちいんだ?」  
「ん。あっ、ああっ」  
 もっと、もっと。  
 気持ち良くなって欲しくて、手を激しく上下させながら長谷君の体にむしゃぶりつく。幹も、袋も、その下にも。それこそお尻の穴にまで、唇と舌を使って攻めていく。  
 もっと、もっと。  
 私が気持ち良かったのと同じぐらい、長谷君にも気持ち良くなって欲しい。  
「は、あ、とお…やまっ……も、出る…ぅっ」  
 ちらと視線を上に向けると、長谷君は眉間に皺を刻んで目を細めて私を見下ろしている。  
 長谷君のモノをくわえると、私は一段と激しく吸いついた。それこそ喉の奥まで飲み込むぐらいに深く頬張り、強く強く顔を上下させる。  
 少し長めの長谷君のモノは吸い上げるのも大変だから、根本の方は手で刺激するしかないけれど。  
「くぅ、あ、ああっ、あっ!」  
 もう声を殺さない長谷君は、小さな悲鳴にも似た声を上げながら、私の頭を優しく掴む。  
 私が自分からシてるのに、長谷君に無理矢理ヤらされてるみたいな錯覚に興奮する。  
「遠山っ…あ、うぅ…っ……!」  
 ビクンッ、と。長谷君のモノが大きく震え、口の中に温かいものが放たれる。  
「んむぅ…っ」  
 反射的に飲み込むけれど、ビクビクと震える長谷君からは、止めどなく熱い塊が溢れてきて、喉を鳴らしても追い付かない。  
 独特の匂いがする熱を口の中に受け止めながら、最後まで搾り取るように吸い付いて。長谷君のモノが力を無くして柔らかくなった頃、私はようやく長谷君から顔を上げた。  
 飲み込みきれなかった熱が顎を伝い、ぽた、と私の手に落ちた。  
「っ……は……遠山…激しすぎ……」  
 肩で荒い呼吸を繰り返す長谷君は、私の口元に手を伸ばすと、唾液と長谷君のとでべとべとになった顔を拭ってくれた。  
「飲まなくても良かったのに」  
「ん……」  
 申し訳なさそうに長谷君が笑う。  
 
 でも長谷君の物だと思ったら、自然と飲み込めてしまったんだから仕方ない。  
 言葉を返す代わりに、私は長谷君のモノを掴んだ手を緩やかに上下させて、柔らかなソレに舌を這わせた。  
 さっきまであんなに主張していたのに、今はふにゃふにゃと心許ない。  
 男の人って不思議だ。  
「……長谷君」  
「何?」  
 まとわりついた液体を舌で綺麗に舐めながら、長谷君の顔を覗き見る。  
 一度達した長谷君は穏やかに笑っているけれど、私の方はそうもいかない。体の奥が疼いていて、足りない部分を埋める何かが欲しくて仕方ない。  
「ちょうだい、……これ」  
 余った皮を手で引き延ばし、露わになった先端に口付けを落とす。  
 私の言葉の意味を理解したのか、長谷君はくすと笑い声を漏らし壁から背中を離した。  
「良いよ。……遠山が大きくしてくれたらね」  
 私の足下に腰を下ろした長谷君は、足を投げ出して座り直す。その長谷君に跨る格好で座った私は、長谷君のモノを大きくしようと体を屈めた。  
 けど。  
「遠山、お尻、こっちに向けて」  
 長谷君は私の肩に手を伸ばして、私の体を引き寄せる。  
 その体勢から得られる甘美な予感に、私は一瞬躊躇ったけれど。気持ち良くなりたい欲望が勝って、素直に体を逆に向けた。  
 長谷君がTシャツを脱いでいる間にも、私は体を屈めて長谷君のモノを舐め上げる。手の中で小さく反応はしたけれど、そうすぐには大きくならないみたい。  
 さっきも、私が舐めたり吸ったりしてる間、固さと太さは増していたし。やっぱり、男の人って不思議だ。  
 口付けを落とし、手でしごきながら様子を見る。  
 さっきは舐めるのに夢中で、どこが弱いかなんて考える余裕もなかったから。今度は確実に長谷君の良い所を刺激したい。  
 そんなことを考えながら長谷君のモノをいじっていると。  
「ひゃっ!」  
 不意にお尻が持ち上げられた。  
「遠山ばっかり、ずるいよ」  
 笑い含みの声が聞こえたかと思うと、ぐちゅりっといやらしい音を立てて長谷君の指が私のあそこに埋め込まれた。  
「やぁんっ」  
「遠山のここ、ちっちゃいよね」  
 私の中を探るように指を動かしながら、長谷君は私のあそこに息を吹きかける。  
 身震いするような感覚に襲われながらも、長谷君の問いに答えずに、私は手にしたソレに唇を寄せた。  
「んぅっ、ふ、ん…っ」  
 少し勃ち上がり始めたソレをくわえ、口の中でなめ回す。  
 
 指であそこをいじられる刺激に耐えながら、長谷君のモノを舐めていると、長谷君のモノがピクピク震える箇所があった。  
 裏筋の上の部分の、先端と皮の境目。そこに舌を這わせると、長谷君のモノは明らかに反応を示す。  
 試しに、固く尖らせた舌でそこを執拗に攻めると、一瞬長谷君の動きが止まった。  
「遠山…っ」  
 快感の滲む長谷君の声。  
 やっぱり。長谷君はここが弱いんだ。  
 思わず笑みがこぼれる私。  
 だけど、相手の良い部分を探していたのは、私だけじゃなかったみたいで。  
「……っ!」  
 不意に襲った大きな波に、今度は私の動きが止まった。  
 長谷君の指が、私のお腹の方の壁をこすっている。指の腹が私の体を往復するけれど、少し強めに押された部分に、私は耐えきれず声を上げた。  
「や、うぅ…っ!」  
「ここ?」  
「ひっ、あぁぁっ!」  
 確かめるように、長谷君は何度も指先を押しつけてくる。  
 強い刺激にあらがえず、せめて声だけでも抑えたくて。腰をくねらせる私は、長谷君のモノをくわえることにした。  
 気持ち良い。けど、今はとにかく気を逸らせたい。このまま、されるがままだったら、間違いなくまたイかされちゃう。  
 私が長谷君のモノをくわえると、長谷君の指は私の弱い所を攻めるのを止めて、今度は深く潜り込んできた。  
 とめどなく溢れる蜜が音をたて、足の付け根を濡らしていく。  
「むふ、うん…っ、んん」  
 口の中で長谷君のモノは大きくなる。  
 長谷君の指で私のあそこはぐちゃくちゃになる。  
 与えられる快感に頭の奥がふわふわしてくるけれど、相手に快感を与えるのも忘れない。  
 気持ち良い。  
「気持ち良い?」  
「うんっ、ん…ぅぅ」  
 長谷君の問いかけに頷きながら、必死に長谷君のモノをくわえていると、ひときわ大きく下半身が持ち上げられた。  
 なかば逆さまになる格好にされて、それでも長谷君のモノを舐め回す私のあそこに、ぴちゃとなま暖かいものが触れる。  
 長谷君が、私のあそこに舌を這わせている。  
 そう理解するより早く。  
「ん…っ」  
「ぅむうっ!」  
 じゅるるっと、激しく蜜をすすられて、私は喉の奥から声を漏らした。  
 長谷君の両手はしっかりと私の腰を抱きかかえていて、逃げることも許されない。  
「ん、む…ふっ」  
「ぅあっ、や、あんっ、やぁ…あ!」  
 体の中で舌が蠢き、かと思うと肉芽をなぶられ、体の奥が熱くなる。  
「や、あ、らめぇっ! そこ、やあぁ!」  
 
「ん? …どこ?」  
 固い舌が私の肉芽をぐりぐりとこねまわす。  
「ひゃあっ、ん、そこ…ぉっ!」  
 やだ。これじゃあ長谷君を気持ち良くさせるどころか、長谷君に翻弄されっぱなし。  
 でも体は思うように動かないし、長谷君の動きも止まらない。  
 蜜をすすり、舌でなぶり、私の腰を抱え上げて肉芽に吸い付く。  
 痺れるような快感に、頭の芯がぼおっとする。  
「ほら、遠山も」  
 片手で背中を押され、長谷君のモノに顔を近付ける。手の中で握りしめたままのソレは、さっきよりも勃ち上がっていて、かなり固さを取り戻していた。  
 体の中に舌を埋め込まれながら、私も長谷君のモノをくわえ込む。  
 さっき長谷君が私にしてくれたように、大きな音をたてて吸い上げながら、手で上下にこすり上げる。  
 早く欲しい。  
 指も舌も気持ち良いけど。この熱いモノで、早く私の中をいっぱいにして欲しい。  
「はせ、君…もう……」  
 じゅぽんっと長谷君のモノから唇を離すと、唾液と先走りの混じった物が糸を引いた。  
「も、駄目……」  
「……欲しいの?」  
「ん、長谷君のコレ…入れたい…」  
 顔を見ることが出来ない代わりに、長谷君のモノに何度もキスを繰り返すと、長谷君は私の体をベッドに横たえ、そのままベッドから降りて、机の上にあった小さな茶筒を手にした。  
 何だろうと思って起きあがると、中から取り出されたのは連なったゴムの袋。  
「そんなとこに入れてるんだ……」  
 思わず呟いた私に、長谷君は苦笑しながら缶を戻した。  
「あからさまなのは好きじゃないんだ」  
 ベッドに戻った長谷君は、一つちぎって「はい」と私に手渡した。  
 男の人がゴムを付けるあの空気って、いつもなら何だか微妙だけど。こうして手渡されると、それはそれで変な感じ。  
 けど長谷君の動きはスマートで、私の隣に腰を下ろした長谷君にすり寄りつつ、ゴムの袋を破る。  
 ゴミを返して長谷君のモノに手を掛けると、長谷君はゴミ箱に袋を捨てて私の方に向き直った。  
 ゴムを被せ、二三回長谷君のモノを手でしごく。薄い膜越しに熱を感じ、それが自分の中に入ってくる期待と興奮に、また私の奥で熱が疼いた。  
「遠山」  
 顔を上げると、長谷君の唇が私の頬に触れる。  
 腰を引き寄せられて私からも唇を寄せる。さっきの攻めで、私も長谷君も、もう口元がべとべとだけど。気にすることなく唇を交わし、舌を絡めながら、私達はどちらからともなくベッドに倒れ込んだ。  
 
 開いた足の間に長谷君は居場所を定め、私に覆い被さりながら私の胸を掴む。  
 そう言えば胸を触られるのは初めてかも知れない。  
 今更ながらに恥ずかしくなったけど、長谷君と絡め合う舌が気持ち良くて、すぐにその考えも消えていく。  
 胸を揉まれ。固く尖った頂を指でこねまわされ。長谷君のモノをあそこに擦り付けられ。  
 長谷君の体に腕を回しながら、高ぶる熱に私は必死になって長谷君の舌に自分の舌を絡めた。  
「は、せ…くぅん…っ」  
 絡め合う舌の隙間、名前を呼んで腰を浮かす。  
 せびるように腰を押しつけると、目だけで笑った長谷君は、私の両の太股を持ち上げながら体を起こし。  
「入れるよ」  
 そう、小さく呟いて、蜜にまみれた熱い杭を私の中に押し込んだ。  
「ああぁぁぁ――っ!」  
 散々指でほぐされた私のあそこが、長谷君の熱で押し広げられ、私ははしたなく鳴き声を上げた。  
「っ…やっぱ……ちょっとキツい」  
 ぐっと私の中に押し入った長谷君は、吐息を漏らしながら呟いた。  
 長谷君は少し窮屈そうだけど、ようやく満たされた体に心までが満たされて、腕を伸ばして長谷君の顔に手を伸ばす。  
 汗の滲む頬を撫でると、長谷君は私を見下ろした。  
「ね、ちゅーして」  
 長谷君とのキスは気持ち良い。私と同じように、長谷君も気持ち良かったら良いのに。  
 キスをねだる私に、長谷君は唇を寄せてくれる。  
 唇で食み、舌を伸ばして絡め合う。  
 ああ、やっぱり気持ち良い。  
 体の相性と同じように、キスにも相性があるんだとすれば、今までで一番長谷君とのキスが相性が良い。そう思えるぐらい、長谷君とのキスは気持ち良い。  
 私の体を抱きしめた長谷君は、体の一番奥に熱いモノが当たっているのに、更に奥を求めるように腰を押しつけてくる。  
 ゆっくりとした動きでぐりぐりと奥深くをこねまわされ、唇の隙間から声がこぼれそうになる。  
 だけど長谷君は、その声すらも飲み込むように、深く深く唇を重ねた。  
「んっ、うふぅ、んん、んぁっ」  
 ぐっ、と長谷君が腰を沈めるたびに体が軋む。  
 快楽の波が押し寄せるけど、唇をふさがれて逃げ場を失った波は、体中を駆けめぐり息苦しささえ覚える。  
 気持ち良い。気持ち良すぎて頭が変になりそう。  
 ちかちかと白い光が瞬く瞼に涙が滲む。  
 それでも長谷君と繋がっていたくて、私は必死になって舌を絡めた。  
 長谷君が大きく腰を引いて、また私の奥へと熱をぶつける。  
 
 押しつけるような動きから、大きく抜き差しする動きに変わった長谷君の動きについていけず、私の中で高まった熱が大きく弾けた。  
 だけど長谷君の動きは緩まない。激しく打ち付けられる固い熱に、私は喉を反らして声を上げた。  
「ひっ! あぁ、やっ、ああっ!」  
 長谷君の顎を伝った汗が私の目尻にぽたりと落ちる。私の涙と混じり合ったその汗は、重力に従って枕元に小さなシミを作った。  
 体を起こした長谷君は、私の片足を大きく持ち上げ、太股に腕を回しながら絶え間なく腰を打ち付ける。  
「あっ、ああっ、ん、はっ、ああっ」  
 気持ち良い。気持ち良い。気持ち良い。  
 思考回路は焼き切れて、もう何も考えられない。  
 軽くイったのに、長谷君はそんなのお構いなしに、片手を伸ばして私の胸を鷲掴んだ。両方の胸を荒々しくまさぐりながら、抱きしめた足に甘い噛み痕を残していく。  
 それすらも今の私には気持ち良くて、私はシーツを握りしめた。  
「遠山…っ」  
 ぐんっ、と長谷君のモノが私の中を攻め上げる。さっきいじられたお腹の裏側を攻められて、また目の前が白くなった。  
「うあぁっ、や、だ、だめぇっ!」  
「駄目…? ここ、良いだろ…っ?」  
 激しく抜き差しを繰り返しながら、それでも確実に、長谷君は私の弱い所を攻めたてる。  
「やぁ、っ……あ、はぁぁっ!」  
「好き、なんじゃ…ないの? ここ…っ、こう、されるの…っ」  
「や、あぁぁっ!」  
 駄目なのに。そんなに何度も攻められたら、おかしくなる前に死んじゃいそう。  
「んはっ、やっ」  
「ほらっ……『梓』っ」  
 ビクンッ、と。無意識のうちに体が震え、これまでにない快感に私の体は固くなった。  
「あ…ああぁっ…」  
 開いた口からこぼれる声は甲高い嬌声にもならず、もう完全に快楽の色に染まっている。ただただ揺さぶられるままに、私は力を無くして音だけを漏らした。  
「あず、さ…、まだ…っ」  
「やう、うぁっ、あああ…っ」  
 長谷君に名前を呼ばれるたび、頭も体もふわふわする。  
 もう、自分がどこにいるのかも分からない。  
「ね、梓…っ、これ、好き…っ?」  
 ぐちゅぐちゅと粘ついた音と共に、長谷君の声が耳を打つ。  
 体の中をこすり上げる熱と、長谷君の声だけが、私の中に残る唯一の感覚。  
 好き。気持ち良い。好き。  
 長谷君に撫でられるのも、抱きしめられるのも、キスも、何もかも全部。  
 
「ふ、うあ、あっ…好きぃっ」  
「梓…っ」  
「すきっ、あ、はせ、くぅんっ、好きぃっ」  
 涙をこぼして鳴きながら、私は長谷君の言葉に頷いた。  
「あ、ずさ…っ」  
「はせく…っ、や、好きっ、好き…っ」  
 ひときわ大きく腰を打ち付けられ、もう何度目かも分からない絶頂を迎える。  
 すがる物がほしくて腕を伸ばすと、長谷君は私の中に深く体を埋めながら、その腕を取って私の体を引き寄せてくれた。  
「は、あ…梓…っ」  
 長谷君のモノが私の中で大きく震えている。  
 繋がった部分から溢れた蜜が行き場を失い、私と長谷君の太股を濡らしていく。  
「はせ、くん…」  
「ん?」  
「……好き」  
 しっかりと長谷君の体に両腕を回して抱きつくと、長谷君は私を抱きしめ返して、唇に触れるだけの口付けを落とした。  
 
 *****  
 
 目を覚ますと、窓の外は薄らと明るくなっていた。  
 時間を確かめようと首を伸ばすと、脱ぎ散らかした服の向こう、床に置かれた壁掛け時計は四時すぎを示していた。  
 壁掛け時計なのに、何で床にあるんだろう…。  
 まだ眠い頭でぼんやりとそんなことを考えながら寝返りを打つ。  
 その拍子に、穏やかな寝息を立てる長谷君の顔が視界に入り、私の頭は一気に覚醒した。  
 ……やっちゃった。いくらお酒が入っていたからって、これはないでしょ、自分……!  
 長谷君の穏やかな顔とは対照的に、自分の浅はかさに頭を殴られたような衝撃が走る。  
 最悪なことに、何をやらかしたか、きっちりばっちり記憶がある。覚えてない方が幸せだったと思えるぐらい、昨日の私の乱れっぷりは酷かった。  
 念のため、タオルケットをめくって確認すると、昨夜長谷君が寝間着代わりに着ていたTシャツとパンツは身につけていた。  
 けど、自分で着た記憶はない。たぶん、長谷君が着せてくれたんだと思うけど。  
 あぁぁぁ……何やってんの、私。  
 恥ずかしさを通り越して、情けなさに涙が出そうだ。  
 それもこれも……って、全面的に私が悪いのか。酔ったのも、最初にせがんだのも、全部私なんだから。  
「……馬鹿だ」  
 ボソリと呟いて再び横になった私は、いまだすやすやと眠る長谷君を見つめた。  
 くっきりと浮かんだ喉仏。少しまばらに髭が生えた顎。閉じられた瞼はぴくりとも動かないけれど、その奥の瞳がどんな色をしているのか、今でもありありと思い出せる。  
 
 つい昨日までは、単なるバイト仲間だったのに。今や私の中にわき上がるのは、そんな単純な想いじゃない。  
 体を重ねただけで情が湧くなんて、我ながら馬鹿馬鹿しいと思うけど。  
 体だけが満たされたのなら、こんな風に長谷君のことを想うことはなかったはず。  
 頭を撫でる優しい手も、私の名前を呼ぶ甘い声も。そのどれもが、私の心を満たしてくれたから。  
「……長谷君」  
 長谷君の胸元に体を寄せると、規則正しく打つ心臓の音が聞こえて、なんだか泣きたくなってくる。  
 もう一度眠ろう。せめて今だけは、傍に居ることを許してもらって、目が覚めたら何もなかったように、今まで通りに。  
 そんなことを考えながら目を閉じようとした時、長谷君が小さく声を上げて私の方に寝返りを打った。  
 腕が回され、体がぎゅっと抱きしめられる。  
 ああ、やっぱり気持ち良い。  
「…ん……?」  
「あ、……ごめん、起こした?」  
 何度か長谷君の瞼が動き、やがて薄らと目が開けられる。  
 何となく居心地が悪くなって、小さな声で尋ねると、長谷君は私の頭に顔を埋めた。  
「ん……今、何時…?」  
「四時過ぎ」  
 頭にかかる吐息がくすぐったい。  
 私の答えに、長谷君は小さく呻くような声を上げ、やがて私の体に回す腕に力を込めた。  
「遠山……」  
 小さく名前を呼ばれ、胸の奥がざわめく。  
 「梓」じゃなく「遠山」。それが如実に私と長谷君の距離を表しているようで、私は胃に何か重いものをぶつけられたような錯覚を覚えた。  
 けどもちろん、長谷君はそんなことは知らない。  
「昨日のあれ、ホント?」  
 頭上から聞こえる声に、私は何気ない風を装って、長谷君の腕の中で顔を上げた。  
「あれって……?」  
「最後に言ったの……忘れた?」  
 ……。  
 …………。  
 忘れるわけが無い。そのせいで、今、こんなに苦しい想いをしてるんだから!  
 長谷君は昨日恋人と別れたばかり。それを知っててあんなことを言ったんだから、弱みにつけ込んだと思われたって仕方ない。  
 何とか誤魔化そうと思考回路を働かせた私だけど、結局上手い言い訳も思いつかず、私は小さく頷いた。  
「……ほんと。……でも、ごめん。別に気にしなくて良いから」  
 自分で言ってて泣きそうになる。  
 でも泣いたところで何かが変わる訳でもなし。むしろ卑怯な気がして、私は顔が見えないのを良いことに、唇を噛みしめて無理矢理気持ちを押さえ込んだ。  
 
 でも。  
「いや……むしろ、謝るのは俺の方……かも」  
 私の頭に顔を埋めたままの長谷君が、何やら言いにくそうに、もごもごと呟いた。  
「……え?」  
「その……。和樹さんと別れたけど……彼が浮気する少し前からかな……気になる人が出来たんだ」  
 顔を上げようとしたけれど、視界に入るのは長谷君の喉元だけ。  
 何が言いたいのか、いまいちピンと来ない私に、長谷君は視線を合わさずに尚ももごもごと呟いた。  
「その人が、いつもバイトの休憩中に裏口で煙草を吸ってたのも知ってた。知ってて、わざとあの時間、あの場所を選んで和樹さんに別れ話を切り出した」  
 え……っと?  
「お酒があんまり飲めないってのも、本人から聞いて知って……それでも居酒屋を選んだ。まあ、無防備さに負けてキスしちゃったのは……俺の計算違いだったけど」  
 え…? あれ……?  
 ち……ちょっと待って。  
「和樹さんが好きだったのもホント。けど、同じぐらい……それ以上かな、気になる人にベクトルが向いてたのも、ホント。……だから、遠山が気にする必要なんてないよ」  
 そう言って、長谷君は私の頭をぽんぽんと優しく叩く。  
 一気に色んなことが起こって混乱する私に、長谷君は大きな体を屈めて、私の顔をのぞき込んだ。  
「だから……ごめん」  
 ……。  
 …………。  
 ち、ちょっと……。ちょっと待ってよ!  
 てことは、全部長谷君の計算のうち!?  
 私が別れ話を覗き見ることも、酔いつぶれることも、もしかするとあれやこれやをせがむことも。  
 全部長谷君の計算だった訳!?  
「そん……ちょ、それって……もしかして私、長谷君にはめられた……?」  
 昨日の告白以上の衝撃の事実に、私は愕然とした声を漏らす。  
 私の表情に長谷君は困ったように笑いながら私の頭を撫でた。  
 
「人聞きの悪い。計算じゃなく賭。どう転ぶかなんて、俺にも分からなかったんだから」  
 いやいやいや、確かにそうかも知れないけど!  
 だったら、見事に全部の賭に負けた私の立場はどうなるの!  
 さっきまでの苦しい想いとは一転、私の中にわき起こるのは、長谷君に対する怒りなのか呆れなのか。  
 だけど長谷君は、私の頭を撫でながら、悪びれた風もなく口を開いた。  
「答えてよ。遠山は、俺のこと好き?」  
 甘い声で囁く長谷君に、私は言葉を失って視線を逸らす。  
 今となっては、もう抑えることも出来ないけれど。だけど、簡単に答えるのは癪に触る。  
 だから。  
「……梓って呼んでくれたら、答えてあげる」  
 怒りか、照れか。顔を真っ赤にして唇を尖らせた私を見て、長谷君は喉の奥で小さな笑い声を上げた。  
 
 その甘い声が、私の名前を呼ぶまであと少し――。  
 
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