「またハデにやったわね〜。」  
床に散乱する未開封の買い物袋。  
毎度同じく、フトンに引きこもるアタシ。  
「うわっ、コレ今回いくら使ったの?」  
「…」  
高級ブランドの袋を見つけて優子が呻いた。  
 
「だから言ったのに。  
今回のことは、あんたに非があるんだから…ちゃっちゃと謝っちゃえば?  
なに意地はってんのよ。」  
無言で優子に背を向ける。  
「あたしが高山なら…、アンタみたいなヤツと付き合うなんてまっぴらゴメンね。  
金持ちのオカマなんて厭味ったらしくて。  
そのくせ何かあるとこうやって大騒ぎして他人を巻き込むのよ。」  
「…」  
「あの子、自分の弱いとこ知られるのが嫌なのよ。  
プライド高そうだもの。同情されたり、哀れまれたりしたって思ったんじゃない?」  
 
「アタシあのコに嫉妬してたのよ。ほんとの女のあのコが妬ましかったんだわ。  
アタシの手の中で可愛がっていたかったのよ。離れて行くのが怖かったから縛り付けておきたかった…。  
支配的で…依存的よね」  
「そうかな…?  
あんたはいつも、もっともらしい理由つけて納得させようとするのよね。  
だから上手く行かない。  
ほんとのことを知るのが怖いから、あり合わせの言い訳に自分を押し込めようとするの。」  
「どうゆう意味?」  
「さあ?それは自分で考えなさいよ。  
それに、高山だって頭にカッと血が上っちゃっただけよ。」  
「けど、『恥ずかしい』って言ったのよ!  
ほんとはずっと、オカマと知り合いなの恥ずかしいって思ってたのよ!」  
「あたしは高山がそんな事言う奴だとは思えないけど…。」  
「人の心なんて分からないって言ったのはアンタじゃなかった?」  
 
「…そうね。」  
 
避けているわけじゃなかったんだけど…、学内でハナ先輩に会うことはほとんどなかった。  
てゆうか、向こうは完全に私の事避けてるし!  
昨日なんて、挨拶したのに無視されたし!!私が怒ってるのに!!  
「高山」  
「あ、優子先輩。こんにちは」  
「アイツまたいつもの発作が出て大変だったのよ〜?」  
「知りません!」  
 
「私、前々から思ってたんですけど…、男とか女とかそうゆうんじゃなくて…  
ハナ先輩と感覚違いすぎるってゆうか、時々…ついていけない。  
お金の使い方とかもそうだけど、いい加減だし…。  
部屋だって、私がちょっと片付けても、次に行くともっとひどくなってるんですよ!  
それに」  
「問題はね」  
私の言葉を遮って、優子先輩は話し出した。  
「本人が思うほど、難しくないのかもしれない。  
 …けど、あなたが思うほど単純じゃない」  
「え…」  
「人の心なんて、誰にも分からない。  
あんたがハナの事分かった気になってるんなら、それは思い上がりじゃないの?  
たった1年にも満たない付き合いで、彼の何が分かるの?  
感覚が普通とは違うところあるけど、別に、労働をバカにしてるわけじゃないし、お金を大事にしないわけでもない。  
ただ…、あのお金に何の価値も見出せないだけなのよ。  
『手切れ金』なんだって。  
『女になりたい』って言った時に、両親に4年間の学費と生活費の入った通帳とカードを渡されて  
『もうこの家には戻ってくるな』って言われたそうよ。  
『こっちから縁を切ってやったのよ。せいせいしたわ』って笑ってたけど」  
「…」  
「意地っ張りだから、自分から謝るなんて出来ないだろうけど  
あいつの事嫌いにならないであげてね」  
「…」  
 
 
はあ〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜。  
せっかくの旅行なのに、ちっとも楽しくねぇ…。  
「やっぱり、高山いないとつまんないんだ?」  
帰りの車の中で、隣に座った真が言った。  
「そんなことない!超たのしい!」  
「顔に『寂しい』って書いてあるww」  
「…」  
「高山。いつも、ハナの話ばっかりするんだよ。知ってた?」  
「アタシの…?」  
「『家に遊びに来て、カーペットにコーヒーこぼした』とか『料理しようとしてもうちょっとで火事になるとこだった』とか  
ハナ先輩がど〜したこ〜したって。」  
「それ、アタシのことバカにしてんじゃないの?」  
まぁ全部事実なんだけど…  
「でも、散々言っても最後に必ず褒めるんだよ。  
優しいんだって。」  
どいつもこいつも…。何にも知らないくせに。  
 
家の近くの大通りで降ろしてもらうと、もう外は夕暮れ時だった。  
途中、コンビニに寄って帰ると、マンションの入り口の花壇に座り込んだ、小さな人影。  
「何してんの…」  
影が驚いて顔を上げると、髪の毛が揺れて長さのラインがわかった。  
「富岡先輩が…そろそろ帰る頃だってメールくれて…。」  
鼻の頭が赤くなっている。  
「…どうしたの、その頭…。」  
むき出しの首筋が寒々しい。  
「別に…ちょっと長くなって来たから切っただけで…。」  
気まずそうに髪の毛を弄りながらそう言うと、目線を逸らした。  
「…ごめんなさい。私、言いすぎました。」  
「別に。アレがアンタの本心だったって事でしょ?」  
「売り言葉に買い言葉って言うか…つい勢いで言っちゃっただけで…。  
先輩、仲良くしてくれるの…嬉しいし。」  
「けど。アタシと知り合いなの恥ずかしいんでしょ?」  
「??」  
「言ったじゃない。アタシがお店に来たら恥ずかしいって。」  
ああ、と思い当たった顔をした後、言いにくそうに  
「だって!!  
先輩、絶対来たいって言うじゃないですか。まだ入ったばっかりで、何にも出来ないし、  
毎日失敗してるし…、怒られてるとこ見られたら…恥ずかしいんだもん…。」  
と言って、唇を尖らせた。  
 
「…なんだ」  
バッカみたい。  
 
「ううん。何でもない。アタシもごめん。無神経すぎた。  
コレ」  
手に持っていた紙袋を差し出す。  
「何ですか?」  
「お土産」  
そう。ケンカしてるってのに見つけたら、つい買ってしまったのだ。  
小さな赤ちゃんライオンのぬいぐるみ。  
「私に?」  
受け取らないかと思ったけど、小春は袋の中身を見つめながら  
「ありがとうございます」  
と笑った。  
 
ほんとうだ、人の心なんて誰にもわからない。  
本人ですら分からない時もあるのだから。  
 
嫉妬でも、依存でもないその向こう側には、いったい何があるのだろう。  
 
「あ、これ」  
カバンをから小さな紙を取り出すと、  
 
「皆には内緒ですよ」  
 
と言って、来月から使えるコーヒーの割引券をくれた。  
暫くその紙を眺めた後、アタシは…  
 
 
先輩は…、いつものように私の頭に手を伸ばして、私は身構えたけれど、  
ぽんぽんと軽く触れて、  
 
「ありがとう」  
 
と小さく言っただけだった。  
 
 
おわり  
 

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