「私、阿部さんのことが好きなんです!阿部さんにだったら何されても良い…お腹の中に何を出されても、阿部さんのだったら喜んで受け止めます!
…阿部さんが、男性にしか食指が動かなくても、いつか…。私、そう思ったからいつもこの公園に…!」
少女の訴えを遮るように、男はベンチから立ち上がった。そして少女を見下ろすと言った。
「お嬢ちゃん、そいつは違う」
よく響くバリトンが少女の耳を震わす。今にも泣き出しそうな少女とは対照的に、男の表情はいつものそれと変わらない。
「俺みたいな質の奴は、お嬢ちゃんの世界にとって珍獣みたいなものさ。物珍しさに引かれて興味をそそられただけだ。それは、恋じゃない、錯覚だ」
少女の目が驚愕に見開かれた。黒目がちな曇りのない瞳が男を映す。