人は言う。王族になれれば、王族に産まれればどんなに楽であろうかと。  
だがそれは間違っている。王族だからこその辛さ、王族だからこその悲しみ。  
それは、人々から見た王族の「楽」の部分よりもはるかに大きい。俺は・・・・・・それをよく理解し 
ている。  
なぜなら、俺はそれを・・・王族を、今までずっと側で見続けて来たからだ。  
俺は、ある王国の、王妃様の侍女の子供として産まれた。  
そんな俺が、子供の頃、一番遊んだ相手・・・それが、この国の王女、つまりは王妃様の娘だった。  
単なる侍女の子供と一国の王女ではあまりにも地位の違いがあったが、王妃様はそんなことは気にされ 
ない人だった。  
子供の頃から、俺はずっと王女の側にいたんだ。子供の頃は遊び相手として。そして今は・・・側近と 
して。  
・・・国の民の間では、王女・・・エレノアは、勝ち気で、そこら辺の男よりもよっぽど強気な王女と 
して語られている。  
だが・・・それは違う。たしかにあいつは、エルはプライドが高いし、どんな人間であっても決して媚 
びないような態度を見せているが。  
本当はもっと、普通の女の子でいたい、とても寂しがり屋な奴なんだ。  
 
「もうよい、下がれ」  
「はっ」  
エルの一声で、側近や護衛の衆が部屋から出ていく。  
俺もその集団に混じり退室しようとしていたが、  
「そなたは待て」  
「・・・かしこまりました」  
呼び止められ、俺とエルを残して部屋の扉は閉められた。  
ここは、エルの私室だ。今日はもう大体の行動を終わらせ、これから就寝しようという時である。  
「・・・のう」  
「何で御座いましょうか、姫様」  
頭を垂れながら、俺は返事をした。これが、貴族や王族と、平民である俺の差だ。  
「もうこの部屋におるのは妾とそなただけじゃ、そのような呼び方は・・・やめてくれ」  
錠がされている事を俺はさりげなく確認する。これから俺が取る態度を、側近や護衛の者に知られては 
面倒そうだからだ。  
片膝をつき、深く頭を下げた「忠誠」の姿勢をやめ、エルと同じ目線に立つ。  
「どうしたんだ?俺を急に呼びとめたりして」  
前述の通り、俺とエルは幼少の頃から、いつも一緒だった。  
だから、二人だけの時はこうして、身分は関係ない話し方、接し方が出来る。  
 
「父上から聞いておろう?」  
「・・・隣国の王子との縁談の話か」  
エルは高級そうな扇を閉じて口元をそれで隠したまま、そっと頷いた。  
元々、この王国は平和な国だ。  
それは、歴代の王が民の事を第一に考え、一心に王政を行ってきたからこその長い長い努力の結晶・・・。  
今の国王様も、貴族と平民の隔たりをなくそうと、自ら城下に降りたりして民の声を聞く、とても朗ら 
かな王だ。  
その王が、隣国の王から持ち掛けられたのが、その縁談である。  
この国の王女であるエルと、隣国の若き賢人と称えられる優秀な王子。その二人を、結婚させないかと 
いう話が持ち込まれたのだ。  
たしかにこの国までその王子の聡明さなんかは伝わってきている。  
だが・・・当人のエルは、その縁談を快く思ってないようだ。  
「エルは、嫌なのか?」  
隣国だけでなく、この国の女性ですら、王子の伴侶になれる事を夢としている。  
一度だけこの目でその姿を見た事があるが、かなりカッコよかった。おそらく、あそこまでの美男子は 
なかなかいないだろう。  
それで頭が良く、さらに心優しいとあれば、その話を断る女性はいないのではないのかというほどだ。  
「妾は・・・嫌じゃ」  
顔を伏せたままエルが答えた。  
エルの気持ちが分からないわけではない。いくらそのようにいい事尽くめの男性であろうと、突然夫婦 
になれと言われたら誰でも困惑するのが当たり前だ。  
だが、王族同士の結婚ではそれが常識だ。互いの国の友好のために、それぞれの子供を結婚させるなん 
て日常茶飯事。  
「一度も話した事のない男と婚姻を結べなどと・・・そのような事、妾は嫌じゃ」  
「だけどな、エル・・・」  
「だけどなんじゃ!国のためなら、父上のためなら妾の声は黙殺されても良いと申すのか!?」  
伏せていた顔を上げて、エルが抗議の声を上げた。  
幸い、部屋の周りは人払いがなされているようで、外からは何の反応もない。  
「エル・・・我が侭を言うなよ」  
一介の側近でしかない俺が言えるのは、肯定の意見だけだ。  
第一俺が「そんなものはやめろ」と言っても、なんの効力もなさないのは自明の理である。  
「我が侭!?妾が・・・妾が言っておる事は我が侭なのか!?」  
エルの瞳には、涙が浮かんでいた。  
 
「妾は・・・そなたと、カイトと一緒にいたいだけなのに・・・それすらも許されんのか?」  
「・・・エル?」  
俺と一緒にいたい?別に、結婚しても俺が側近に立つ事はエルが望めば出来る事なんじゃないのか?  
そう思った俺の頭に、もう一つの考えがよぎった。  
「幼い時から・・・ずっと・・・ずっと一緒だったのじゃぞ・・・?妾は・・・妾は・・・」  
そこまで言うと、エルは俺の胸に突然顔を埋め、泣き出してしまった。  
鳴咽を上げる胸の中の女性を、俺はどうする事も出来ずに・・・いや、いつのまにか、俺は抱きしめて 
いた。  
「ぐすっ・・・カイト・・・」  
きっちりと整えられたドレスがしわになるのも気にせず、俺は抱きしめた。  
「エル・・・本当は、俺だって側にいたい・・・子供の頃みたいに、お前と一緒に笑ったりしたいよ。 
でも・・・」  
俺達には、身分という超えられない壁がある。  
そんな言葉を出そうとしたが、それは俺に向けられたエルの潤んだ瞳で遮られた。  
一心にその瞳で見つめられ、声が出せなくなる。  
「なら・・・そうすればよい。妾も・・・カイトの側にいたい」  
エルの華奢な体を抱きしめていた腕の力は、抜く事が出来なかった。・・・違う、抜こうとはしなかっ 
た。そう、俺も・・・俺も、エルの側にいたいんだ。こうして抱きしめて・・・離さないでいたい。  
互いが互いの瞳を見つめたまま、しばらく沈黙がその場を支配した。  
やがてどちらからともなく近づく顔・・・そして、触れる唇。  
「ん・・・」  
示し合わせたわけでもなく互いに瞳を閉じ、その柔らかい感触を楽しむ。  
一層エルを抱きしめる腕に力を込めて、俺はその体勢のまま永い時間を過ごした。  
そして始まりと同じように、どちらからともなく離れる唇。  
始まりと違うところは、俺もエルも、ほのかに頬が朱に染まっている事と、顔の距離がずっと近づいて 
いる事だけだった。  
「ようやく・・・妾の想いに気づいてくれたのじゃな・・・」  
「エル・・・」  
ようやくという言葉。  
これが意味するのは一つ・・・エルは、ずっと前から俺の事を想ってくれていた。ずっと。  
俺が、それにもし気づいたとしても、俺はそれから眼を逸らしただろう。身分の違いという壁を気にし 
て。  
だが、今は違う。今は、自分にも、そして、エルに対しても正直でいられる。  
 
薄く朱に染まった頬、そして、どこかはかない、潤んだ瞳。  
どこにでもいる普通の女の子じゃないか。だったら、嫌がるのだって当たり前だ。  
「カイト・・・んっ・・・」  
エルの言葉を待たず、俺は二度目の口付けをした。  
もう離れないように、その身体をまた一段と強く抱きしめながら。  
眼を閉じたエルの瞳から一筋涙が零れ、俺はそれを指で拭う。  
何度も短い間隔で、今までの空白を、互いのすれ違いの代償を取り戻すように、キスをする。  
一応の女性経験はある俺に対し、エルは男というものを全く知らずに育っている。  
戸惑う様子のエルを優しくリードしてやりながら、その唇の甘酸っぱいような感触を味わった。  
「カ、カイト・・・」  
「ん?」  
おずおずと、エルが口を開いた。  
「その、この間本で読んだのだが・・・「きす」の時は舌を入れたりするのだろう?」  
「・・・どっからそういう本を見つけるかね」  
「うっ、うるさい!妾も、こういう時に備えてだな・・・・・・んぅっ!?」  
ちょっとだけ乱暴に口付けて、またエルの言葉を遮る。・・・そしてついでに、聞かれた通りに舌を滑 
り込ませる。  
「んんっ、んふぅっ・・・ちゅっ・・・」  
俺の方から積極的に舌を絡めでもしないと、驚いて何も出来ないエルは動かない。  
舌と一緒に唾液が混ざり合って、唇と唇の隙間から漏れる粘液の音がいやに部屋に響く。  
「んふぁ・・・い、いきなり舌を入れるなんて・・・!」  
ようやく唇を離してやると、その間を唾液の糸がいやらしく引いた。  
そんなこともお構い無しに、エルが顔中を真っ赤にしてまくしたてる。  
「だって、エルが舌がどうこう聞いてきたんじゃないか」  
「やれとは言っておらんだろう!・・・もうっ」  
子供みたいに唇を尖らせながら、ぷいっとそっぽを向くエル。・・・それがたまらなく可愛い。  
「でも・・・これで終わり、じゃないぞ」  
俺の言葉に一瞬視線をこちらに戻し、またそっぽを向いて、少しだけ頷いた。  
「わ、妾も・・・もっとしたい」  
そっぽを向いたままのエルの胸元――ちょうど鎖骨の辺りだ――を人差し指でなぞりながらおろしてい 
く。  
もちろん・・・行為を続けるために。  
 
煌びやかな宝石の輝くネックレスが、エルの白い肌によく似合う。  
その白い肌に指を這わせ、鎖骨の辺りから胸元へと、その指を段々下げていく。  
そして、ドレスの上から、控えめな大きさの乳房の辺りをそっとなぞった。  
「やっ、い、いきなり何を・・・」  
おそらく、他人にそういう部位を触られるのは初めてなのだろう。恥ずかしそうな声で、反応を示す。  
「ドレス脱がしちゃった方がいいかな・・・」  
そう言いながら俺が手をかけようとした時、エルが慌てて俺を制した。  
「ま、待って・・・続けるなら、その・・・」  
最後の方は聞き取りづらくなったが、たしかに「ベッドに・・・」と言った。間違いない。  
顔を赤くしながらなんとかそう言ったエルの髪を撫でてやって、俺はその身体を持ち上げた。  
世間一般で言うところの「お姫様抱っこ」。この場合だと、まさに文字通りである。  
「カイトは、こんなに大きくなったのだな・・・」  
切なそうな表情で、俺の首に腕を回していたエルが呟いた。  
「エルだって、大して身長変わらないじゃないか」  
俺の言葉に、その表情のまま、静かに首を横に振る。  
「妾は・・・まだ小さいままじゃ」  
そんな会話をしているうちにベッドにつき、俺はエルの身体をそのシルクのシーツの上に横たわらせた。  
じっとしたまま何もしないエルのドレスを、するすると脱がせてしまう。  
頭や首元に付けられた装飾品もついでに外す。無論邪魔だからだ。  
「あ・・・」  
されるがまま下着だけの姿になると、エルは心底恥ずかしそうに身をよじらせた。  
下着の色もその肌と同じに白く、飾り気のない、エルらしいシンプルな物だ。  
胸は標準より少し小さい程度で、下着が着けられていてもその形のよさが分かる。  
「の、のう、カイト・・・」  
「なんだ?」  
「その、妾だけ脱いでいるのは恥ずかしいから、カイトも・・・」  
そんな幼いことを、顔だけでなく身体中までを朱に染めて言うエルが可愛くて、俺は上着を脱いだ。  
さっそく、下着の上から乳房に触れる。  
「やっ」  
ピクン、と身体を反応させて、俺の手から逃れようとするエル。  
 
「嫌なの?」  
からかうように言うと、俺から視線を逸らしながらエルは首を横に振った。  
手のひらで包むように触れて、軽く揉んでみたりすると、くすぐったそうにもう一度身体を震わせる。  
あんまりじれったいとまた文句を言われそうなので、俺は思い切って乳房を隠す下着を取り去ってしまう。  
「カ、カイト・・・」  
すぐに胸が露になるが、恥ずかしがったエルが、両手でそれを隠してしまった。  
上半身をややひねらせて、俺にそれが見えないようにしようとするエルの肩にそっと手を触れる。  
「隠してたら先に行けないよ・・・?」  
耳元でそう囁きながら、ふぅっ、と息を吹きかける。  
「ひゃっ」  
それに反応してエルの身体の力が抜けた瞬間、俺はその腕をどけた。  
今度はもう隠せないように、覆い被さるような形にして腕の侵入を拒む。  
ようやくしっかりと眺める事が出来た乳房は、下着の上から見て予想したのよりもずっと形がいい。  
豊かではないが、その双丘は、十分に自己の存在を示すまで成長している。  
その二つの膨らみの中央に、控えめに存在する、薄い桜色の乳首。  
「やだ・・・恥ずかしい、カイト・・・」  
まじまじとそれを見つめる俺の視線に、エルは頬を特に紅潮させて恥ずかしがる。  
俺は、そのほのかに赤らんでいる乳房を、緩やかにではあるがしっかりと手の平でも揉み始めた。  
「んっ」  
それだけでエルは、短く声を上げてぴくん、と身体を震わせる。  
ほんの少しだけ、指に力をいれ、できるだけ痛みを与えないように気を付けながら、マッサージのよう 
に揉む。  
エルが初めてである以上、あまりやりすぎるのはよくない。  
柔らかい感触が、手のひらを通して、たしかに伝わってくる。  
「・・・んっ・・・はぁっ」  
くすぐったいような、そしてどこか鼻がかった声。  
それが上がり始めたのとほぼ同時に、乳房を揉む手のひらになにか、硬い物の感触が現れてきた。  
なだらかな丘のような乳房を、中心へ向けて指でなぞってみる。  
「あ・・・」  
その丘の頂点となっている、初々しい薄い桜色の乳首。それが、すでに十分に尖っていた。  
そして、さらにそれを指でつついたりする。  
 
「んっ!」  
一際高く声を上げるエル。どうやら、けっこう敏感なようだ。  
「エルのここ、硬くなってるね・・・」  
さっきのようにもう一度耳元で、息を吹きかけるように囁く。  
エルは、かあっ、と頬を赤くして、小声で「言わないで・・・」と言った。  
親指と人差し指でその突起を挟むように摘まんで、少し、少しと力を小刻みに入れてみる。  
「んんっ・・・ひゃ、ぁっ」  
力が入る度に、それと同じようにエルが小刻みに声を漏らす。  
「気持ちいい?」  
分かってこそいるが、わざと本人から答えを出させるために聞く。  
この間にも、右手での胸への愛撫は休めていない。  
「わ、妾にそのような事を・・・んひゃっ」  
言葉を、その途中に乳首をわりと強く摘まむことで、遮ってしまう。  
別にSっ気があるわけじゃないけど、エルのこういう様子を見ていると、普段の彼女とまったく違って面 
白い。  
そしてなにより、その恥じらいや感じる仕草一つ一つが、とても可愛らしいからだ。  
「・・・カイト、すごくいやらしい・・・」  
「エルが可愛いから」  
俺がそういうと、エルはまた顔を赤くして黙ってしまった。  
恥ずかしい台詞ではあるが、あくまで本心である。  
しかし、エルもさらなる強い快感が欲しいのだろうか。  
本人は気づいてこそいないが、腰を微妙にうねらせている。  
「・・・エル、もっと気持ちよくなりたい?」  
エルがぷいっ、と視線を逸らしてから、そっと頷いた。  
それでも俺の悪戯心は止まらない。  
「口で・・・言ってごらん?」  
ここまで来ると自分でも止めたくなってくる。しかし欲望が勝る。  
「・・・もっと、気持ち良く、なりたい・・・」  
なんとか、自分の口からその言葉を出したエル。  
そのエルに口付けてあげながら、俺は、お願いされた通りの行動に出た。  
胸を愛撫していた右手を、腹部へ、腹部から腰へ、そして・・・下着の上に。  
 

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