【朝】  
「もう10時だぞ。休みだからっていい加減起きろと……うわっ」  
 不用意に布団をめくったのが失敗だった。開いた隙間から細長い腕がしゅるりと伸びてきて、一瞬でベッドの中に引きこまれる。  
 
 毛布の下で長い手足を巧みに巻き付け、懐に抱え込んだ獲物が反撃しないのを確かめてから、彼女は一言。  
「うーん、寒い……体温補給」  
「いつから変温動物になったお前は」  
「低血圧の苦労をわかってないなー。寝起きでこんな寒さの中、体なんて動かないから」  
「だからって放置するとお前昼過ぎまで起きないじゃん」  
「いっそ冬眠したい……」  
 時折日本語も通じなくなるなこの女。とはいえ、爬虫類ならば致し方ないか。  
 そんなことを考えながら、俺も冷え性の彼女の身体に自分の腕を巻き付けた。まあ、朝っぱらからこんな雁字搦めてなって過ごす休日も、悪くない。  
 
 
【夜・本番前】  
「はむぅ……んっ、んくっ……ごふ……ンっっけっほ」  
 おーい。そんな奥まで咥えこまなくてもいいからな?  
「ほご……っぷは。えと、気持ちよくない?」  
 いやそんなことはないというか、まあ、ぶっちゃけ変な征服感も満たされて最高なわけですが。でも、そんな何度もえずくまでしてたら辛いだろ。  
「つらいはつらいけど。でも、こう、このままじゃ負けた気分になるというか」  
 いやいやいや。ワタクシ、エロに関しちゃ貴女様に負け通しだよ?  
「そうじゃなくて……。こう、いつも私をいじめるこいつを、一度は丸呑みにしてやりたくて」  
 
 ふと、スカンクVSヘビ、という動画をどこかで見たことを思い出した。  
 
 
【夜・本番】  
「んっ……はぁっ、ふうっ……ぅ…ひゃう!」  
 事の最中、彼女はあまり声を出さない。でも、それは感じてないからではなくて、単に表現の手段が異なるだけだ。  
「ほら、そんなにしたら動けないだろ」  
「やっ……も、じゅうぶんっ、暴れて……あ゛ぅっ」  
 中へ突き込むたびに、押し潰したような嬌声が漏れる。とはいえ、別に上から体重をかけて圧し掛かっているわけじゃない。彼女の方から、自分で息もつけないほどに、全力でしがみついているのだ。  
 あまり豊かでない胸元から、肺の動きが直に伝わってくるほどに。  
「んっ……はうっ!……や…ぁ…・んぁっ!」  
 そして当然、それは息遣いに限った話ではない。  
 いい場所を当てたときには、巻き付いた手足がぴくんと震える。  
 最後が近くなってくれば、手に力が込もって足は少し抜ける。  
 そんな彼女は、自分にとって結構分かり易い女だ。あまり他人から賛成してもらえないけれど。  
 
「でも、このままじゃ終わんないしな……わりィ」  
「ん……はえ? ちょっ、やぁんっ!」  
 首に巻き付いた両手を引き剥がし、手首を掴んで耳の脇のシーツに縫い付ける。上半身が解放されて、ようやく腰を使い易くなった。  
「んっ…くぅ、やあっ、やだっっ……ばかぁっ!」  
 と言われても、動かないと終われないのが男の生理なわけでして。あのままずるずるとイかせてたらお前の方が辛いだろうし。あとでしっかり抱き締めてやるから、堪忍な。  
 そう、心の中だけでいって、自分を終わらせるための抽送を始める。普段はやや冷たい感もある切れ長の瞳が、このときばかりは切なげな熱に潤んでいて──  
 そのギャップに盛ってしまっているのは、毎度のことながら否定できない。  
 
 
 
【総評・彼が彼女に思う事】  
・蛇  
総じて哺乳類ではない(体温・体型的な意味で)  
 
 
【総評・彼女が彼に思う事】  
・蛇  
昼は小動物(体温的な意味で)  
夜は冷血動物(性的な意味で)  
 

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