ろくろくり
漢字で書くと「轆轤栗」または、「飛豆蛮」となる。
傘のろくろを上げるにしたがって、柄が長く上へ上へと見えてくる感じからきた名前である。
その名から予想されるとおりこれは女しかおらず、クリトリス、つまり陰核が長く伸びて、自在に動き回るのだという。
普段は普通の女なのだが、夜、寝ているあいだにクリトリスが伸びるので、一見それとはわからないようだ。
伸びたクリトリスは心を寄せる男のもとに行き、まとわりついて快楽を貪るという。
普段の姿は、若い娘や未亡人であることが多いようで、これは憑き物の一種であり、
欲求不満な者がこれにとり憑かれるとも言われている。
ある長屋に住んでいた後家のクリトリスが夜な夜な伸びて、密かに慕情を抱いていた隣に住む若い男の布団にもぐり込み、
欲望を満たしていたという話も伝えられている。
もともと敏感なクリトリスが、長く伸びて相手にまとわりつくというのだから、その快楽はいかほどのものであっただろう。
クリトリスは女性が快楽を得るためだけに存在する器官と言われており、そのクリトリスが伸びるということは、
女の満たされぬ心が形となってあらわれたものであると考えることができよう。
妖怪そのものというよりは、一種の「妖怪病」というべきものなのかもしれない。
(芽好木ぬける著「日本妖怪紳士録」より抜粋)