僕には一つ下の妹がいる。  
セミロングの髪に包まれた、白い小顔が愛らしい子。  
性格はとても穏やかで優しい。有体に言えばのんびり屋だ。  
色々と鈍くてやきもきする所はあるけれど、人の悪口など絶対に言わないし、一緒にいるとほっこりとする。  
 
僕もあまり活動的な性格ではなかったからとても気が合って、いつも一緒にいた。  
それは年を重ねて思春期になった今も変わらず続いている。  
世間様から見れば珍しいほど仲の良い兄妹。  
でも実はそれより一歩踏み込んでいて、いつしか僕はこの子を異性として意識するようになってしまっていた。  
 
何がきっかけだったか、僕自身にも分からない。  
あんまり優しくて無防備だから、守らなきゃと思う心が転じてそうなったのかもしれない。  
とにかく僕は妹を好きで、愛している。  
 
でもその心を直接彼女に伝えたことはない。  
性欲の対象として見れるほどに実の妹を愛しているなんて告白、普通に考えてできる訳がないから。  
もちろん彼女に僕をどう思っているか、などと聞いたこともない。  
妹も自分を異性として見てくれているかも、なんて楽観視ができるほど、おめでたい思考は持っていないから。  
 
伝えたが最後、聞いたが最後、今までの関係は崩れてしまうだろう。  
それはどうしても嫌だった。虎穴に入る勇気はとても持ち合わせていなかった。  
 
何も進められないまま時は過ぎ、彼女は年相応の色気を持つようになり、ますます思う気持ちは募っていった。  
最近の自慰行為は妹の妄想ばかりを題材にしている。  
バレたら嫌だからさすがに下着などを盗んだりはしないものの、  
いつか何かの弾みに過ちを犯してしまうのではと、日々穏やかではない。  
 
なまじ仲が良くてよく一緒にくっついているから、その度に自分の気持ちを抑える必要があり、苦労する。  
いつまでこんな調子が続くのだろうと、この所ずっとため息が尽きない。  
 
そして今日もまた試練の時がやってきた…  
 
 
僕は今、妹の部屋にいる。  
彼女は僕のすぐ目の前に座って、数学の課題を解いている。  
 
時々小首を傾げて、少しぼんやりした後、振り返って僕に質問する。  
その仕草にドキリとしていることなど覚られないように、平然と兄貴ぶって解き方を教える。  
顔を近づけた時に鼻をくすぐる甘い香りに、理性が飛びそうになる。それも踏み止まる。  
シャツの隙間からちらりと覗く二つの膨らみが目に入ると、股間が膨張しかける。その時は身を屈めて押し込める。  
 
1時間ほど悶々とする時間を過ごした後、妹はどうにか課題を終えてくれた。  
彼女は教科書とノートを整えながら、いつもありがとうね、と朗らかにお礼を言った。  
こっちこそいつもドキドキさせて頂いて…などとは言えない。  
うん、と簡単に答えてすぐに出て行こうとした。早く自分の部屋に戻って一回抜かないと、どうにも落ち着かない。  
 
妹はうーんと伸びをした後、そうだ、と思いついたようにこちらを振り向いた。  
どうしたのかと思っていると彼女は、  
 
「兄さん、何か悩み事でもあるの?」  
 
と、いきなりそんなことを聞いてきた。  
僕はちょっと驚いて、どうしてそう思うのか逆に聞き返した。  
 
「だって最近よくため息を吐いてるから」  
 
ああ、と納得した。妹の前でやっているつもりはなかったのだが、やはり気づかれてしまうものだ。  
もう少しちゃんと隠さないといけないなと思う。  
ため息の原因は僕の目の前にあるのだけれど。  
 
そんなことを考えていると、急に妹の顔が近寄ってきてビックリした。  
少し潤みを帯びて輝いた、黒い大きな瞳でこちらを見上げている。どうしたんだ。  
 
「もしかして、好きな人ができたとか?誰?知ってる人?」  
 
僕は飛び上がりそうになるのを必死で押さえた。  
知ってる人も何もお前だよ、なんて冗談でも言えない。  
何とか平静を装って否定するけど、妹はえーと不満そうに僕を見つめる。  
言ってよう、誰にも言わないから、などとしつこく食い下がる。  
 
女の勘という奴なのか。内心焦って彼女を見ると、その顔は悪戯っぽく笑っていた。  
これは僕をからかおうとしている時に見せる表情だ。  
 
人騒がせな奴め。こういう時、この子を黙らせる一番の方法がある。  
腋のくすぐり攻撃だ。  
 
僕は妹の腋にすばやく手を差し込む。彼女も一応警戒していたのだろうが、長い経験を持つ僕の素早さには敵わない。  
身をよじってきゃーきゃー騒ぐ。手を振り回して解こうとするけど、そう簡単には離してやらない。  
いよいよ大騒ぎして体全体をバタつかせ、必死の抵抗を続ける。  
 
そんな彼女を見て、僕の心臓は飛び出しそうなくらいに跳ね上がった。  
 
妹が脚をバタバタさせるたびに、穿いている短いスカートがめくれて下着が露になるのだ。  
彼女自身は気づいているのかいないのか、気にする風でもなく笑って抵抗を続けている。  
僕はくすぐりを続けながら、秘かに息を呑む。  
笑っていた僕の目は完全に見開かれ、健康的な白い両脚の根元に釘付けになっていた。  
 
触れている腋や二の腕は以前よりも柔らかさを増している。  
身を捩る際には時々胸の膨らみが手に当たり、時折めくれ返るスカートからのぞく股間は恥ずかしげもなく目の前で晒され続けた。  
 
いつもはほどほどで止めてあげるのに、本来の目的も忘れてただ一心不乱に彼女を悶えさせた。  
股間は熱を帯び、このまま押し倒してしまうかもしれないとすら思った。  
 
しばらく続いた所で、妹は急に強く身をよじり、強引に手の間をすり抜けて脱出に成功した。  
そのままピョンとベッドの上に跳んで避難する。  
ぜーはーぜーはーとちょっと苦しそうなのに楽しそうに笑いながら、なぜか勝ったような顔でこちらを見上げた。  
 
僕はあの肢体の光景や感触が失われたのが残念なのと、未だその余韻覚めやらぬ感覚に浸ってぼうっとしていた。  
妹は荒い息を整えると、ベッドの上に膝を立てて座り、くすくすと笑った。  
 
「もう…冗談なのに。兄さんは、すぐムキになるね」  
 
そんな彼女を見て、僕はまた息を呑んだ。  
両膝を立てて座る彼女の、つるりとした滑らかな両足が、短いスカートなんて存在しないかのように惜しげもなくその姿を見せた。  
見ただけで柔らかそうな太股、挟まれる膨らみのある股間、そっと包み込む白と薄桃色のストライプのパンツ。  
僕はまるで穏やかではいられない。両目は晒された股間を凝視して動かない。  
 
僕の心には焼け付きそうな激しい情欲と葛藤が渦巻き始める。  
 
ああ、どうしてこの子はこんなにも無防備なのだろうか。  
いくら仲が良くても、兄でも、異性を前にしてこんな恥ずかしい所を晒して。  
誘っているのか。他の相手でもこうなのか。好きな奴はいるのか。  
可愛い下着だ。上に小さなリボンが付いてるんだ。ぷくりと膨らんで柔らかそうだ。  
染みは付いてるのか。もっと近くで見たい、触りたい。だめだ。  
頭を埋めたい。舐めたい。ベッドに寄って、すぐにでも。いけない。  
 
自分はおかしい。違う。おかしくさせるのが悪い。  
あの下はどうなってるんだろう。毛は生えてるんだろうか。  
割れ目はどうなって、綺麗なのか、経験は、他の男は。  
ダメだ、穢しては、傷つけては、悲しませては。  
 
僕は邪念で一杯になる頭を激しく左右に振り回し、必死で自制心を保とうとする。  
彼女の顔をちらりと見やると、いつもと変わらない優しげな微笑がそこにあった。  
うつむきながら、うめく。  
 
「だめだよ…こんな格好したら、ダメだ…」  
 
上擦ってかすれた声を上げる。どうにかして艶かしい部分を見ないように努める。  
でも、彼女は。  
 
「だめって、何が…?」  
 
小首を傾げて何にも分からないような顔をして。  
腰を浮かして姿勢を変えると、さっきよりずっと広がった脚を晒したのだ。  
室内灯の白い光に照らされて、股間の下着が清らかに、妖しくつやめく。  
 
一瞬、呼吸が止まった気がした。  
そして短いため息が吐き出された瞬間、何かが弾けた。  
 
僕の体はベッドの彼女の上に圧し掛かった。  
両手首を押さえ、彼女をベッドに押し付ける。  
上半身は彼女に密着して体を縛る。顎は肩に食いつくように。  
下半身は彼女の脚を割って入り込み、彼女の秘部を閉めさせまいとする。  
 
「どうしたの、兄さん、何」  
 
体の下で妹が慌てている。当然だろう。僕は答えず、荒く息を吐きながら彼女の自由を奪い続ける。  
僕らの背丈はさして変わらない。互いの体のそれぞれの部位が、それぞれの同じ所に触れる。  
肩には肩が、胸には胸が、腰には腰が。  
そして僕のすでに熱く滾った股間も、布越しながら今にも潜り込もうとするかのように彼女のそこを強く圧迫している。  
 
いくら彼女でも、もう気づいているはずだ。僕がこれから何をしようとしているのか。  
言葉は掛けなかった。掛けられたくなかった。了解も拒絶も欲しくなかった。  
妹は兄さん、兄さんと小さく叫びながら華奢な体に少し力を入れてくる。  
僕は顔を合わせず何も答えず、ただ強く彼女を抱きしめ、割られた股間に自分の腰をぐっと押し込む。  
それが僕の言葉の代わり。何があってもするんだ、と。  
 
やがて彼女は諦めたように体から力を緩め、抵抗をしなくなった。  
どんな顔をしているんだろうか。悲しんでいるのだろうか。ごめん。でも。  
 
僕は妹の手首を押さえていた右手をゆっくり放し、少しだけ体を起こす。  
興奮にはやる心を荒い吐息でいなしながら、片手でズボンのジッパーを下ろす。  
赤く怒張した僕の股間の中身が露になる。ちょっとだけ妹が顔を向けたが、すぐに背けた。  
 
僕は自分の物を出したまま、少しの間ぼうっとしていた。  
一瞬、自分が何をしているのか分からなくなった。  
何故こんなことをしているのだろう。何で大事な妹に乱暴して。  
それでもすぐに密着した妹の太股の柔らかさが、傍にある彼女の甘い香りが、僕を甘美な現実へと引き戻す。  
股間が叱咤するようにますます屹立し、涎を垂らさんばかりに先端から汁が分泌される。  
 
僕は再び妹に覆いかぶさり、勢いよく先端を彼女の股間に突き立てた。  
下着の上からも伝わる柔らかな膨らみが、乱暴な自分の物を意外にも優しく包み込む。  
あまりの興奮と快感に思わずうっと息を止める。妹も同時にびくりと反応する。  
荒く息を吐きながら、そのまま下着の上から押し込み続ける。  
初めての体験に惜しげもなく分泌される亀頭の汁によって、みるみるうちに彼女の下着が濡れていく。  
 
ああ、僕は今、妹としている。妹を犯している。いいや抵抗していないから。多分大丈夫だから。  
いつも仲が良いから。許されるから。きっと許してくれるから。  
でも、本当に入れてしまったら。ひどく傷つけてしまう。もしかして、子供ができたり。いくら何でも、ダメだ。  
そうだ、このままでいい。パンツの上からで。十分気持ち良いから。  
パンツの上からなら処女も無事だ。射精しても妊娠なんてしない。  
そんな理性的なのかそうでないのかよく分からない思考がぐるぐると。それでも妹を貪ることだけは譲れない。  
 
僕は股間の快楽を感じながら、意識を少しだけ妹と密着する上半身に移す。  
彼女の肩越しにある僕の顔は、眼前のベッドのシーツを見つめる格好。  
隣にある彼女の顔は少し背けられていて、その表情は見えない。  
 
今更引き返すことなんてできないけれど、それでも彼女の気持ちは気になってしまう。  
何となく不安になって、妹の名前を呼んでみた。  
 
少し間を置いて、兄さん、とか細く切ない声が聞こえた。  
 
その声を聞いた途端、妹への気持ちが急速に高ぶるのを感じた。  
小さい頃からずっとこの子と一緒にいるんだ。誰よりも好きなのは自分なんだ。  
他の人間に触らせたりするものか。初めての相手だって、この僕が。  
もう迷いも後悔もない。この子を抱いて、何が悪いものか。  
 
僕は押さえつける手に力を込め、腰を浮かし、ゆっくりと前後に振り始めた。  
 
先端が妹の股間を規則的に打つようになって、しばらく時間が過ぎる。  
僕は腰を動かすだけでなく、抱き締める彼女の体の柔らかな感触も存分に堪能する。  
時折彼女の髪に鼻を近づけ、甘い香りを思いっきり吸い込む。たっぷりと唾液を含ませた舌で、彼女の首を優しく舐める。  
 
亀頭と接触する滑らかな素材の生地は分泌された体液を十分に含み、吸い付くような感度を提供する。  
その体液のほとんどは自分の先端が漏らしたものだろうが、いくらか彼女のも混じっているはずだ。そうであって欲しい。  
 
興奮と快感が高まると共に、より腰を強く振り下着越しの股間に突き立てるようにする。  
押し込まれる度に縞のパンツは歪み、股間の中に沈み込む。  
 
妹の顔は隣にある。頬や耳が触れている。でも表情は見えない。見ない。  
柔らかな感触と体温だけを奪い続ける。  
何を思うのか知ろうともせず、手を押さえ体を押し付け足を組み付け、固定し続ける。  
ただ腰だけがせわしく動いて、蕩けるような滑らかな、一方的な交信を繰り返す。  
 
ふと思いついて、押さえていた右手を離した。  
服の上から彼女の左の胸をまさぐる。今まですっかり失念していた。  
大きくもなく小さくもない膨らみは、シャツとブラジャーを挟んでもなお火照った体温と比類ない感触を確かに伝えてくれる。  
直接触ったらもっと気持ちが良いのかもしれない。乳首を噛んだり、舐めたりしてみてもいい。  
 
妹は少し身じろぎしただけで、抵抗することもなくされるがままになっている。  
けれど突然、何かとてつもなく嫌らしいことをしているような奇妙な罪悪感が湧き上がって、まさぐる手を止めてしまった。  
股間は相変わらず忙しく動いているのに。もっと酷いことをしているのに。  
何だかとてもあやふやな感覚に、僕は心の中で苦笑と自嘲をした。  
 
妹の手は僕が押さえなくても動くことはなかった。  
左の手も離し、彼女の二の腕を覆うように背中に手を回して、しっかりと抱きすくめる。  
顔を彼女に向け、微かな吐息と共に彼女の薄紅色の頬に口を付けた。  
それから軽く耳たぶを噛み、舌の先端でちょっと舐めた。  
ぴちゃっという音と、妹のふっと息の詰まる音が同時に聞こえた。  
 
僕はいよいよ激しく腰を彼女の股間に突きたてる。  
下着は完全に濡れ尽くし、擦る度に微かにくちゃりくちゃりと音を立てる。  
布地は股の中に食い込む形になり、時々剥き出しになった陰唇に接触した感触も伝わってくる。  
 
パンツをどけて、直接入れてしまいたい衝動に駆られる。しかしそれはいけないと思いとどまる。  
それでは完全に傷つけてしまうから。子供ができてしまうかもしれないから。  
今だって傷つけているくせに、それは怖くて。責任を取れなくて。ずるいと思いながらも、自分の気持ちが分からなくて。  
僕がこの子に期待するのは恋心などではなく、やっぱり女としての体を貪ることだけなのかもしれないと。  
そんな情けなさと自己嫌悪を抱えながらも、快感を得る作業はやめることができなくて。  
 
「あ、う、兄さ、ん」  
 
突き立てるのと同期するようにして、妹の喘ぐような吐息が聞こえるようになった。  
それは僕の罪悪感を少しだけ和らげてくれる。  
この子も気持ち良いんだ。もっと気持ち良くなって。  
 
ひたすら同じ所を突いていた先端を、思い出したように別の所にも擦り付ける。  
クリトリスの付いている辺りに。食い込みと股肉の境目に。尻の穴の近くに。  
太股にも擦り付ける。汗ばんだ皮膚の上を滑るようにして、白く柔らかな脚をねばりつく体液で穢していく。  
 
その間彼女は荒く呼吸するだけでどう感じているかはよく分からなかった。  
やっぱりあの部分を突かれるのがいいのか。  
元のように食い込んだパンツの上から中に差し込んだ。ちゅっという音と蕩けるような感触が戻る。  
さっきよりぐっと強く押し込む。下着を間に挟んで先端だけが中に埋もれる。  
妹がはっという吐息と共に体を強張らせるのを感じた。僕はぎゅっと力を入れて彼女を強く抱きしめる。  
 
そろそろ限界だった。このまま、このまま出してしまおう。  
股に食い込んだパンツが彼女の深部を守っている。できるだけ奥へ、膣の中に布地を入れ込むような勢いで貫く。  
一部むき出しになった肉の襞が亀頭に触れ、確かに妹の中を味わっている実感を与えてくれる。  
 
もう何も考えたくない。  
もう一度妹を強く抱きしめる。下半身だけこれまでに無いくらい強く、早く前後に振る。  
くちゅっくちゅっと淫靡な音が何度も何度も大きく響いて、僕も妹も激しく息を吐く。  
 
そして、ぐっと中に入れ込んだまま、食い込んだ布地ごしにたっぷりと白濁液を注ぎ込んだ。  
 
白と桃色の可愛らしいパンツがねっとりと汚れながら、侵入を試みる嫌らしい液から妹の奥を守っている。  
少し腰を浮かし、余韻と共にびくんびくんと痙攣しながら精液を放出する亀頭を、股間を中心とした部位に擦りつける。  
太股に、尻に、スカートに、パンツのリボンに、下腹に、臍に。  
とうとう元気を無くして萎れるときに、それは妹の股の上にぺちょりと落っこちた。  
 
僕は激しく激しく息を切らせる。  
強烈な快感。征服感。疲労感。充実感。罪悪感。様々な感情がぼんやりする頭に踊る。  
妹の方は僕より落ち着いているような気がする。一体何を思うのかは分からない。  
 
しばらく抱きついていた僕が疲れたように身を起こすと、彼女もゆっくりと起き上がった。  
うつむいて僕の方を見ようとはしない。そのまま固まっていたかと思うと、思い出したように自分の股間を見やる。  
大量に出された汁や精液が付着し、スカートの上に溜まり、ベッドのシーツにも達していた。  
 
妹はしばらく眺めた後、もう…と呟いて、小さくため息を吐いた。  
僕は途端に申し訳ない気持ちで一杯になった。  
 
「…ごめん…」  
「…謝るなら、やらないでね…」  
 
彼女はもう一度ため息を吐くと、僕に目を向けないまま辺りを見回し、  
近くにあったティッシュの箱を取って濡れた所を拭き始めた。  
僕はただそれをぼんやりと眺めるしかなかった。  
 
べとついた大量の精液は中々拭き取れず、何枚も何枚もティッシュを使って苦労して吸わせていた。  
染みになるかな。悪いことしたな。  
そんなことを考えて、妹を傷つけたことよりシーツの心配をしてどうするんだ、と一人激しく反省した。  
 
と、急に自分の股に刺激を感じてびくっと反応した。  
妹が数枚のティッシュを持って、むき出しのままだった僕の股間を拭こうとしていた。  
 
「あ、え、ちょ、ちょっと…」  
「いいから…」  
 
動揺する僕を制して、先端をティッシュで包み込む。  
やっぱり僕の方は見ないまま、あまり動じる様子も無く付着した汁を吸わせ、拭いていく。  
その微妙な刺激と近くに寄った妹の香りが、また僕の気持ちをかき乱した。  
妹がティッシュを離すと同時に、ぴょこんと僕の股間が立ち上がった。  
 
妹はちょっと驚いて目を丸くして、同時に呆れたような顔をして、僕のそれをじっと見つめた。  
それからまるで聞き分けのない弟を諭すかのように、一言。  
 
「だめだよ」  
 
そして人差し指で先端を軽くピンと弾いてティッシュを捨てに行った。  
僕は股間を情けなく立てたまま、呆然と彼女の後姿を見ていた。  
 
ティッシュを捨てた彼女はしばらくじっとして、何かを考えているように見えた。  
僕は自分がしてしまったことの重大さを思い出し、顔を伏せた。  
そしてまだ立ったままの股間を見つけて、何とか仕舞おうと押さえたり腰をすくめたり、悪戦苦闘を始めた。  
 
やっかいなことに中々萎んでくれない。馬鹿馬鹿しい行為に自分が嫌になっていると、急に目の前に何かが現れた。  
白と桃のストライプのパンツ。さっきまで散々に擦り付けていた下着を、妹が手に持って僕の前にかざしている。  
 
「何か可哀想だから、あげる」  
 
妹は僅かに微笑みながら、何も返答できない僕を見下ろしていた。  
 
「さっき、パンツとしてたみたいに見えたから」  
 
そうして下着を持ったまま、くすくすと笑う。  
僕はさっきの妹との行為を思い出し、焦って慌ててよく分からない弁解を始めた。  
 
いきなりあんなことして悪かった、だけど僕は下着フェチとかそんなんじゃなくて、  
何というか積もり積もった気持ちがああなったけどお前を傷つけたくはなくて、  
入れたいけど入れられなくてあんな形でしてしまって、とにかく本当にごめんなさい、何でもするから云々と。  
 
妹は黙って聞いていたけれど、僕が言い終わると急に表情を固くしてこう言った。  
 
「それで…兄さんは、どうしてあんなことしたの?」  
 
僕は目を逸らすこともできず、じっと見つめる彼女をしばらく見つめ返した。  
そして少し迷って、思い切ったように言った。  
 
「好きだから…です」  
「…パンツが?」  
「いや、お前が、好きです…」  
 
妹はそれを聞くとしばらく目を閉じた後ゆっくりと開き、「最初からそう言えばいいのに」と微苦笑した。  
僕はそんな彼女を見て本当の意味で後悔した。気持ちを何も伝えないまま、劣情だけをぶつけてしまったことを。  
もう一度詫びの言葉を言おうとした時、彼女に遮られた。  
 
「でも、今日のは減点だから」  
 
もう一度ずいとパンツを差し出す。  
 
「罰として、もう一度これにしてあげてね」  
 
妹は手を離し、パンツはいつの間にか萎えていた股間の上にぽとりと落ちた。  
それからすたすたとドアに向かい、済んだら洗ってあげてね、と言い残して部屋を出て行った。  
あの悪戯っぽい微笑みが、ちらりと見えた。  
 
僕はパンツを乗せたまましばらくぼうっとしていた。  
布地に染み付いた体液が少し冷えて、ひんやりとした感触を伝えてくる。  
パンツを手にとって、軽く匂いを嗅いでみる。自分の精液の強い臭いがして、少し顔を背けた。  
とりあえず頑張って抜くためにパンツを擦り付けたけど、今度はなかなか元気になってくれなかった。  
 
それから何とか立たせて時間を掛けてようやく射精できたのと、妹が風呂から上がって部屋に戻ってきたのは同時だった。  
妹はそんな僕の姿を見て、またくすくすと笑った。  
 

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