聖女教会と呼ばれる街がある。  
街全体が教会となっており、そこに聖王国の中枢が集められている。  
魔を寄せ付けず、低級魔族ならば触れただけで滅するほどの協力な結界に守られ、  
また、聖なる力を用いて魔族のみならず、聖王国を侵攻しようとする人間をも叩き潰す聖騎士団も存在した。  
聖王国を守護する聖王騎士団と聖女を守護する聖女騎士団があり、  
聖王騎士団は男性が主で諸外国との戦を受け持ち、  
聖女騎士団は女性が主で、魔を封じたり滅する戦いを得意としていた。  
とはいえ、魔族は人を遥かに超えた力を持ち、ただ武装しただけの軍隊では太刀打ち出来ない。  
聖王騎士団とて例外ではないのだ。  
それを滅する事の出来る聖女騎士団、ひいては聖王国は人類の切り札として存在していた。  
だが、その切り札を手に入れようとする欲深い王も存在し、それに対抗するための軍が聖王騎士団であった。  
そして事件は聖王騎士団が欲深き隣国と戦争を始める際に起こった。  
 
それは聖王国が何故切り札足るかを考えず、功を焦った一人の魔術師の暴走であった。  
彼は聖女教会を蹂躙する事で聖王国を無力化すれば  
軍を労せずして人類の切り札を祖国のモノに出来ると考えてしまった。  
彼は知らない。  
何故魔を滅するほどの聖なる力を用いれるのは女性のみであるのかを。  
彼は気づかない。  
自らの行いが人類から切り札を奪い去る所業である事を。  
彼は知り得ない。  
後の世において自身の名が「糞尿にも劣るクズ」という意味を持つ事を。  
 
聖王国との戦争が始まるかもしれない。  
その噂を聞いた時、魔術師は即座に聖女教会へと足を向けた。  
戦争が始まる前であれば、旅人として教会へ入れるからだ。  
そうして彼が教会に足を踏み入れ街の下を流れる下水道に身を隠し情報を集め出した頃、  
彼は祖国の宣戦布告にあわせ、聖王騎士団が出立したという噂を聞いた。  
 
聖王騎士団がとって返しては意味が無い。  
数日は彼の計画の準備と聖女教会を孤立させる期間となった。  
そうして数日経ち、最後の準備を終えた彼は、身を隠していた空間に火を放つ。  
火は空間を埋め尽くし、床に置かれたモノを燃やしていく。  
下水道の臭気に甘い臭いが混ざり始めたのを確認すると、彼は一目散に逃げ出した。  
そのまま留まれば自らも贄となってしまい、祖国からの恩賞を受け取れなくなるからだ。  
 
火に包まれた空間に産まれたのは異形の怪物。  
甘い臭いを放ち、いくつもの触手を蠢かせ、獲物を求めて這いずる赤黒い化物。  
怪物は触手を器用に動かすと下水道を移動し始めた。  
そしてあるところで止まるとスルスルと触手を伸ばしていった。  
それは汚物をも糧としながら管を通ってゆき、聖女騎士団の宿舎の中で用を足していた女性の元へと辿り着いた。  
 
彼女は聖女騎士団でも高い位置にいる女性であった。  
銀色の長い髪が美しく、民からも部下からも慕われていた。  
しかし、その高い位からくるストレスのためかしばらくお通じがなく、今の彼女は陰鬱とした表情で座っていた。  
今日こそは出るかもしれないと彼女が息んだ瞬間、ズムッという音を立てて彼女の肛門に触手が突き刺さった。  
焼けるような痛みに目を白黒させ立ち上がろうとした彼女の手足を触手は絡め取ってゆく。  
叫ぼうとした口を塞がれ、舌を中心に口内も蹂躙されてゆく。  
その間も肛門への抽送は続き、痛みは増していった。  
コツリ、そんな音がして触手が止まった。  
コツコツ、と何かを確認するような音が下腹部から響き、彼女の顔は羞恥と怒りで真っ赤に染まった。  
ふざけるなと声をあげようにも口は塞がれている。  
それならばと噛みちぎろうとした瞬間、  
 
ズ ゾ ゾ ゾ  
 
そんな音をたてて下腹部で何かが蠢いた。  
 
吸われている。  
触手は中に溜まっているモノを吸っているのだ!  
 
「んぐぅーーーっ!」  
 
くぐもった悲鳴を上げるがソレが誰かの耳に届く事はなかった。  
そうしている内に触手は彼女の膣にまで侵攻を始めた。  
慎ましく自己主張するクリトリスを摘み、鍛えられ、ピッタリと閉じた膣を揉み解すように土手周りに刺激を与えていく。  
そうして愛液が分泌され、彼女の準備が整ったと判断した触手は一際太いモノを彼女にあてがう。  
ブチブチという音を立てて膣が広がり、処女膜だけでなく周りの括約筋まで壊されていくようだった。  
激しい痛みに彼女は泣きだした。  
痛みだけでは無い、自身から魔を滅する力が永遠に失われた事への悲しみもあった。  
騎士としての役目を終え、愛した男と次の聖女教会を担う子を作る役目を担い、神と伴侶に処女を捧げる。  
そうして失うべき処女をこのような場所で、このような形で奪われたのだ。  
彼女の心が折れるのにそう時間はかからなかった。  
ほぼ反応しなくなった獲物を生死すら関係無いとばかりに触手は責めたて、子宮と腸内にタップリと精液を吐き出した。  
吐き出される度に獲物の身体はビクビクと震え、その腹がまるで妊婦のように膨らんでいく。  
行き場を失った白濁液が口や鼻から吐き出され始めた頃に射精は止まり、新たなステップへと進んだ。  
 
触手は知っていたのだ。この土地に住む女達は自分を殺せる力を持っていると。  
ならばそれに対応出来る仲間と多少殺された所で構わないほど多くの仲間を増やすしかない、と。  
見れば獲物となった女の股間から溢れ出す精液は色が違う。  
膣からは黄色く濁りとても粘性の高い液体がボタボタと流れ落ち、肛門からは白く濁った液体がトロトロと溢れ出していた。  
肛門に突き刺さったままの触手の中を通って球状の卵が女の中に送られる。  
卵同士がぶつかりゴツゴツと音を立てる度に感じているのか女はビクビクと痙攣する。  
同時に膣内では子宮まで埋め尽くした精液の中を泳ぐ精子が殺到し、まるで捕食するかのように卵巣までも包み込んだ。  
取り囲んだ精子のうち、いくつかが卵巣へと突撃し、自身を破裂させて中身を振りかける。  
それに誘引されるようにして生み出された卵子は一瞬にして蹂躙され、受精し、精液の海を運ばれて子宮に降り立つ。  
そこからは異常なスピードで受精卵も腸内に産み出された卵も成長を始めた。  
卵は周りの精液や粘液を吸い取るようにして大きくなり、卓球の球ほどだった大きさがテニスボール大まで大きくなった。  
覆っていた殻は薄くなり、中で触手が蠢いているのが確認出来る。  
殻を突き破り、その破片を食い尽くし、触手の子供はさらなる食事を求めて出口を目指す。  
小指程の太さしかなく、長さも20cmほどだがソレが大挙して女の肛門を押し広げる。  
ブリュブリュと音を立て次々と産まれる触手達は食事と獲物を求めて宿舎から街へと散っていった。  
 
そうして肛門から産まれた触手達がいなくなった頃、膣からは親である触手や先程までの触手とは違う色の触手が産まれてきた。  
赤黒い身体はピンク色に染まり、大きさも大人の腕程太く、50cm程の長さと、先程までより二回りほど大きかった。  
最後に産まれたピンク触手はまるで我が物顔で宿舎の天井を移動し始めた。  
後に残されたのは口や鼻から白濁液を垂らし、無残に拡がった膣と肛門を晒した女騎士だけだった。  
数十分後、女騎士を見つけた別の騎士らは犯人を探し始めるが当然のように見つからなかった。  
その日より聖女教会は緩やかに汚されはじめた。  
まず狙われたのは力を持たない民衆だった。  
朝のお祈りの時間になっても起きて来ない娘を起こしにきた母親が  
生気の無い目で虚空を見つめ、拡がりきって戻らない穴から白濁液を垂れ流す娘を発見する。  
買い物に行くと出て行った娘が戻らず、同じように娘が戻って来ない近所の住人と共に探すと  
茂みの中で謝罪を繰り返す少女や白濁液の中で痙攣する少女達を見つける。  
騎士団に併設された教会では、シスター見習いとして奉公にきていた少女達が失踪した。  
翌日には見つかるも、自慰という言葉すら知らなかった彼女達は  
自ら腰を振り、膣を広げ、もっともっととねだる様な言葉しか話さない状態で発見された。  
 
街での異変が表面化する頃には騎士団も動き出していたが、その騎士団の中ですら異変は起きていた。  
訓練に疲れて部屋で眠っていた見習いが何者かに犯された状態で見つかった。  
部隊配属が決まったばかりの新人が同じく何者かに犯されて発見された。  
夜間の見回り担当が交代が来るまでの間に犯されていた。  
事が大きくなり、決して個人で活動しない様にお触れが回ると、事件は一旦の収束を見せた。  
それでも明日以降も大部屋で寝泊まりし、民衆の安全を守るために尽力して欲しい。  
聖女騎士団の大講堂に騎士団員を  
集め、そう演説する騎士団長の頭にボタリと何かが落ちてきた。  
ドロリとしたそれは騎士団長が知識として知る精液のようであった。  
見れば同じような液体が大講堂の各所に垂れ、皆がその出元を確かめようと上を見ると、  
 
そこには天井一面に張り付いた様々な触手がいた。  
 
白いモノ、青いモノ、細いモノ、緑色のモノ、イソギンチャクのようなモノ、  
男性器のようなモノ、ホオズキのような形のモノ、ピンク色のモノ、赤黒いモノ。  
 
「ヒッ……!」  
 
誰かのあげた声が引鉄になって触手達が降り注ぎ、女騎士達は触手の海に呑まれていった。  
それでも彼女達は戦った。  
魔を滅する力を振るい、自身達が振るえる唯一の武器である鈍器を振るい、  
自身を、仲間を、そして後ろに控える民衆達を護る為に戦った。  
しかし触手達は数が多く、その半数以上は魔を滅する力が効かず、  
ヌルヌルとした体表は刃の無い鈍器には滅法強かった。  
振り上げた手を取られ、足を掬われる。  
力の奔流を遡って手を掴まれ引き倒される。  
触手の体表から分泌される粘液やすでに捕まってしまった仲間の愛液、  
その仲間に注ぎ込まれた精液で床が滑りはじめ、満足に立つ事すら覚束なくなる。  
そんな時に大講堂の扉が開かれた。  
誰か助けに来てくれたのかとそちらを見た騎士団長の顔が絶望に染まった。  
 
「聖女騎士団の皆様が此方にお集まりと聞いたので私も是非激励をと……これはっ?!」  
 
そこにいたのは名を継いだばかりの聖女騎士団が最も護るべき存在。  
教皇と呼ばれ、聖女教会の外には秘匿される女性。  
最も強い魔を滅する力を持ち、故に魔族に対して最も恐れられる女性。  
ゆっくりとした時の流れに身を起き、聖王国建国以来400年間で二人目の教皇。  
その教皇が共もつけず、法具すら持たず、ただ法衣を身につけただけで現れた。  
彼女は教皇となる以前から自由奔放で、仕来りなどでは縛れない女性だった。  
お逃げください!と騎士団長が声をあげようとした瞬間、  
教皇は触手の海に引きずりこまれ、一瞬の内に裸にされると即座に処女を散らされた。  
それを目にした聖女騎士団の心は簡単に折れた。  
後には肉と肉のぶつかる音と、女の嬌声、粘着質な水音と何かがひり出される音だけが残った。  
 
聖王騎士団長は焦っていた。  
攻め込んで来た国の王が突如として休戦を申し込み、  
急ぎ教会へ戻るように伝えて来たのだ。  
使者を立てるでも無く、王がただ一人で対話を望んだ事に嘘は無いと信じた彼は王の話を聞いた。  
聞けば彼の国の魔術師が暴走し、教会内で繁殖するように調整した生物を解き放ったというのだ。  
欲しいのは教会の持つ土地や権力ではない、魔を滅する力が欲しいのだという王を捕らえ、  
人質とする事で彼の軍を抑え、聖王騎士団は急ぎ聖女教会へと足を進めた。  
そうして戻ってきた彼らが見たのは  
美しく白い外壁に這う様々な色と形状をした触手だった。  
重い門を更に強固にするようにへばりついた触手を切り落とし、  
中へと進んだ彼らを待っていたのは街のあちこちで倒れた女達と彼女達が産み出す触手だった。  
女達を救出し触手をなぎ倒し、教会本殿へと向かう聖王騎士団。  
しかしそこに教皇の姿は無く、それを守護する聖女騎士団の姿もなかった。  
 
手分けして探す騎士団員達は街の一角に一際触手の密度が濃い場所かある事に気がついた。  
聖女騎士団大講堂である。  
彼らは慎重に歩を進め、大講堂前に辿り着くとその扉を一気に開いた。  
その中で彼らが目にしたのはまるで玉座のような触手に座り、腹を大きくした教皇と  
大講堂内の壁を埋め尽くす触手に拘束され、腹を大きくして喘ぐ聖女騎士団の姿だった。  
 
「ああ、戻ってきたのですね。聖王騎士団長。ちょうど良いところです。今から私達の出産の時間ですの」  
そう言って息んだ教皇にあわせて壁の其処彼処から嬌声が上がる。  
 
そうして産まれた触手を愛おしそうに抱き上げ教皇は嬉しそうに笑うのだ。  
 
「これがわたくしのこどもたちです」  
 
これを期に人類から魔を滅する力は失われた。  
同時に強者との戦いを好む傾向にある魔族も人類に目を向ける事は少なくなったため、  
表面上は何も変わる事無く人類は繁栄していく。  
しかし、魔族が気まぐれで現れた際には一切の抵抗が虚しく終わり、  
国が一つ二つ簡単に滅ぶ事が確約された。  
 
聖女教会はどうなったのかと言えばその建物に残された宝を求めて  
冒険者と名乗る者達が時折訪れる場所になっていた。  
しかし、その度に教皇や聖女の血を引く子供たちに襲われ、  
ある者は命を落とし、ある者は命からがら逃げ出して噂をばら撒いて別の命知らずをおびき寄せ、  
ある者は子供たちの妻として迎えられ新たな子を孕み、産んでゆく。  
それを見守るかつて教皇と呼ばれた女性は当時と同じく愛おしそうに子供たちを見つめ、  
同じ母となった冒険者を慈しみ、腹を痛めて新たな子を産み続けていた。  
 
 

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