土地勘がない者になると、帰る道さえ判らなくなる位、深い霧の立ち込める山の奥に、  
その淵があった。  
岩場険しいその淵の畔に立つ、一本の太い木の柱をよく見ると、白装束の若い女が吊されている。  
両手首に繋がれた枷で女を吊す鉄の鎖は、力自慢の男でも引きちぎることは出来そうにない頑丈なもので、  
実際女の体重が掛かっても、柱は傾ぐ様子はない。  
 
上げた両腕が捲れた袖より見える二の腕は、透ける様に白く、  
長く美しい黒髪のその女の瞳には、朦朧としている。  
吊られた高さは、つま先が着く位だが、膝に力が入らず、自分の足で立つ事が出来ない様子で、  
鎖にその身を預けている。  
 
数刻ほど前に男たちが担ぐ戸板で作った様な粗末な御輿に乗って、女はこの山深い淵にやってきた。  
麓の村を出る前に、色々な薬草を浸した水で全身を清めの儀式を行い、  
最後の不思議な甘い匂いのする屠蘇を飲んでから、女の意識は曖昧になって行った。  
運ばれた淵の畔の柱に女を吊した後も、  
神主らしき男が念入りに、胸元にこぼれるのも構わず、意識の薄い女に屠蘇を口に含ませる。  
そして男たちは、女を残して村に帰って行った。  
 
どれだけ時間が経ったのだろう。  
視界を染める白い霧は、時間の感覚をも、麻痺させる。  
夢とうつつの境を往復している女の視界を塞ぐ、大きな白い影に気づいて顔を上げた女の瞳に、  
徐々に理性が宿って行く。  
「ヒッッ!」  
悲鳴を飲み込む女。  
女の視界を塞ぐ位の白い大蛇が、淵の水面より鎌首をもたげていた。  
子供なぞ丸呑み出来そうな口から覗かせる、紅で染めた様な異様に長い舌は、  
白に染まった世界に淫靡にも映る。  
気づかれ無い様に息を潜めるが、緊張からか、また飲まされた屠蘇の影響か、徐々に息が上がって行く。  
大蛇より目を離せ無い女は、大蛇の目が無いことに気づく。  
『淵の主 盲の大蛇』  
あまりの異形さに、女は吊されて居ることを忘れて後ずさる。  
 
――カラン―――  
 
つま先が弾いた石が音を立てて、岩場を転がり落ちる。  
 
その音に気づいた大蛇は、ユルユル舌を出し入れして、女に眼の無い大きな顔を近づけて行く。  
まるで女より発する甘い空気を、舐めとっているかの様だ。  
無いはずの大蛇の視線に絡め取られ、身動きが出来ない女の身体に、二股に分かれた舌が器用に巻きつく。  
 
「ビリビリビリッ!」  
「キャァァ〜〜!」  
 
獲物の柔らかさを確かめる様な一瞬の締め付けの後、大蛇の舌は鞭のようにしなり、  
白装束を布切れに変えてしまった。  
一糸まとわぬ姿となった女は、逃げようと戒めを外そうとするが、太い鎖はジャラジャラと音を立てるだけだ。  
 
再び大蛇の舌がしなり、女の首に一重巻きつく。  
「ヒイッッ!」  
死の恐怖に駆られた女の目から、涙が零れ落ちる。  
しかし、首に巻きついた大蛇は締め付ける事はなく、二つに分かれた一方の長い舌の先端を、  
女の開いた口の中に入り込ませてきた。  
蛇の意外な行動に目を白黒させる女。  
 
見た目と違い、器用に動く大蛇の冷たい舌の先が、女の舌を絡め取る。  
また、もう一方の舌の先は、耳たぶや首筋、胸元を舐めて行く。  
どうやら、屠蘇の跡を舐めている様で、唇の端からこぼれた唾液をも、丁寧に舐めとっていく。  
まるで、大蛇の舌自体が意志を持ったような繊細な動きで、女の舌に絡みとり口内を蹂躙し、  
耳たぶや首筋からは、くすぐったさとは違う別の感覚を送り込んで来た。  
 
「ふぁん…」  
口内を味わい尽くしたのか、大蛇から解放された女からは、吐息が漏れる。  
長々と口の中を犯されて、全身が火照って居ることを女は自覚する。  
素肌に触れる、霧の粒子一粒一粒が気持ち良い。  
 
「ひぁっっ!ふぁぁぁぁぁぁんっっ」  
突如余韻に浸っていた女の背中を、腰から首筋まで一筋で舐めあげた。  
背筋から送り込まれてきたのは、明らかに快感。  
 
不自由な体勢でありながら身体は跳ね、下腹部に緩い炎が灯る。  
こんな状況でのこの感覚に女は戸惑う。  
 
混乱している女に構いなく、大蛇は形の良い女の乳房に、舌を伸ばした。  
先の分かれた二つの舌の先が、左右の乳房を弄ぶ。  
「ひぃんっ。はぁっ、やっやめて…」  
屠蘇の後を舐めとるだけでなく、乳房の柔らかさと弾力を確かめるかの様に這い回る。  
大蛇の舌に思うままになぶられ、柔らかく形を変える乳房。  
その先端の桜色の乳首は、逆に徐々に固くなっていく。  
 
「ひゃんっ!あんっ!」  
柔らかい双丘を舌の先でこね回し、その先端に息づく固い桜色の異物を、大蛇は舌の腹で弾き潰す度、  
跳ねる女の身体と声とを、楽しんでいるかの様だ。  
女の方は、いつも以上にするどくなっている、自分の感覚にさらに混乱している。  
この異様な状況にもかかわらず、異形に乳房を弄ばれると、下腹部の奥が潤んでくるのが判る。  
知らずと太ももをすり合わせるが、治まりそうもない。  
 
「あぁぁぁぁっ!」  
両の乳房にトグロを巻き、揉みしだく大蛇の舌に、悶える女。  
いびつに搾られた先端の乳首を、大蛇の舌の先端で舐め弾かれる度に、  
女の脊髄に甘い電気が走り、背中が反り返る。  
 
ますます甘い匂いを発する捕えたこの獲物の、匂いの元を探る為、  
大蛇は、匂いの強い方へと舌を伸ばしていった。  
乳房を開放したが、徐々に舐め下がっていく舌。  
大蛇の舌は、何処に向っているかは想像が付くが、  
どこを触られても感じてしまい、身体の痙攣が収まらない女には、  
どうすることも出来ない。  
 
「あぁぁぁぁんっっ!」  
大蛇の舌は、太ももまで濡らした女の潤んだ泉を尻の谷間に探り当て、甘い蜜を舐めあげた。  
溢れ出した蜜を丹念に舐めとり、太ももの付け根を大蛇の舌が往復する度、女は悶えまた蜜を溢れさせる。  
ジャラジャラと鎖を鳴り響くが、今は快感を紡ぐ音の様だ。  
蜜の溢れる泉の上方で、舌の腹が感じた小さな突起物を、大蛇はこすりあげながら長い舌で舐め上げた。  
 
「ひゃっっ!それはっ、やめてぇぇぇぇ〜〜っ!!」  
顔を出した肉芽を、秘部と共に長い舌で、強弱をつけて舐められると、  
女は耐えることは出来ずについに果てた。  
「ふぁんっっ、やんっ。もっもう、ゆるしてぇ」  
しかし、果てて脱力した女をお構い無しに、秘部を舐めあげてくる。  
蜜の味が濃くなる事に気づいたのか、舌の先で肉芽を弾いてくる。  
大蛇の舌は、スベスベとしてまるで絹の布の様で、秘部を擦られて居る様だ。  
 
「ひっ、やっ!そっそこは!ふわぁぁぁぁんっっっ!」  
度重なる責めで、ぷっくりと膨れ蕾を開いた秘部の奥に、ついに大蛇は蜜の溢れる元を突き止めたか、  
舌の先で蜜の源を確かめるかの様に、何度が突いた後、泉の中に二つの舌先を潜り込ませた。  
吊るされているにもかかわらず、女の身体は浮き上がる。  
二つ舌の先が柔肉の穴を探りながら、最奥へ向かって蠢いて行く。  
 
「あっあっあっ!ひゃんっ!あぁっ!!」  
人では考えられない舌の長さ、  
男の陰茎では真似の出来ないしなやかな動き、  
秘穴を突くのではなく二本の舌が柔肉を舐めあげる異形の行為が、  
再び女を絶頂まで一気に運びあげた。  
 
「はあっっ!!!あああぁぁぁぁっっっん!!」  
長い髪を振り乱し、白い裸体が弓なりにのけぞる。  
山深い淵の水面に女の嬌声が、跳ね返って響き渡った。  
 
淵に響く声を聞きながら、荒い息をつく女。  
しかし、絶頂の締め付けで動きを止めていた大蛇の舌が、  
女が息を整えるまもなく、柔肉の奥で再び蠢き始めた。  
 
「ああん!あんっ!そこっだめっ!ふぁぁんっ!!」  
大蛇の舌が緩やかに柔肉を掻き回す、人外の快感が女を狂わせる。  
握りしめる鎖の冷たさだけが、流されそうな女のより所だ。  
柔肉の中で二本の舌が絡み合う度、びつな形となり膣壁をえぐり、女の脊髄を甘い痺れが駆け抜ける。  
新たな蜜を探る舌の先が、女も知らない場所の奥の柔肉を舐めあげ、視界に火花が飛び散るのを女は自覚する。  
冷たい大蛇の舌先で、最奥の子宮口をクルリとなぞられると、女の足は勝手に宙を掻いてしまう。  
 
その甘い責め苦の一つ一つが、何度も女を絶頂におしあげ、新たな蜜を泉からあふれさせる。  
そしてその蜜を舐めとる行為が、また甘い責め苦となり、女の意識を蕩けさせ虜にさせる。  
 
身体の中心にしなやかな蠢く異形の『楔』に穿たれた、翻弄される快感に磔にされる人柱。  
女が役目を終えるには、まだまだ時間が必要な様だ。  
女のすすり泣く声は、長々と淵にこだまして、その日途切れることは無かったという。  
 
[EoF]  
 

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