価値の薄い魂  
 
地下の牢獄へアンネリカが閉じ込められてもう数週間  
ひとつの尋問もなく、ただただ幽閉されている  
質素だが寝床もしっかりしているし、食事も適量で飢えることすらない  
ただ、牢獄そのものは堅牢で、手足の枷には特大の鉄球が付けられいる  
大型モンスターでもここから出るのは容易では無いはず  
 
事の起こりは、アンネリカの属する小隊が地すべりに巻き込まれたことだった  
小隊の役割は山間部の調査  
緊張高まる近隣諸国に対し、曖昧な国境沿いの地理やモンスターの生息状況を掌握するための調査活動だ  
数ヶ月に及ぶ大掛かりな調査になるはずだったが、事故が起こったのは出発からわずか5日後のことだった  
激しい風雨の中、昼間だというのに薄暗い山中で突如起こった地すべり  
アンネリカ達の小隊はそれが地すべりだと理解する間もなく谷底へ落ちた  
 
「みんな、どうしているのか……」  
アンネリカが気がついたときにはもうこの部屋だった  
最後に覚えているのは冷たい河に落ちたところまで  
小隊は丸ごと壊滅したのか、自分以外の生き残りはいるのか、何もわからない  
 
ただここが何なのかは推測がついていた  
おそらく、人身売買を生業とした組織に間違いないだろうと  
 
敵国なら激しい尋問があるだろうし  
小さな山間民族や近隣の小国では、山中にこれほどしっかりた収容施設は用意できない  
傷も治療され食事もしっかり出ているところを見ると、単なる奴隷商ではない  
もっと富裕層に向けた、嗜好性の強い、高額の売買を行なっている大掛かりな組織  
 
アンネリカの推測はおおよそ当たっていた  
そしてアンネリカ自身が取引の対象であることへの覚悟も決まりつつあった  
たとえ商品に成り下がっても生き抜いて、いつか抜けだしてみせるという強い思い  
そして願わくば、他の兵たちもここに収容され、生きながらえているようにと思いながら  
 
突然カタンと音がして、扉の下の小窓が開いた  
そこからプレートに盛られた食料がおずおずと押し込まれてくる  
不自然に緑色に変色した粥  
それは毎日混ぜ込まれる薬の色だった  
薬のせいか、質素な食事のわりには体力の回復は早く、肉付きや肌ツヤまで良くなってきているようだった  
アンネリカも不信感は抱きながらも、今は食べて体力をつけることを優先していた  
 
粥の盛られたボウルを手に取って口へ運ぶ  
(……?)  
粥の色が今日は少しだけ色が違う気がした  
一瞬だけ疑念が浮かんだが、怪しんだところで答えなどない  
いつもどおり残さずすすり、食事はあっという間に終わった  
 
少しすると激しい睡魔がアンネリカを襲った  
(今日は睡眠薬だったか……)  
アンネリカは鉄球を引きずって、なんとかベットへと這いずるとそこで意識を失った  
 
(まぶしい)  
(それに、うるさいな……)  
(うるさい……??)  
「…ぁ、……様、…次の……で………ます」  
 
(人の声だ!? ここは??)  
「こちらの商品は、──」  
(商品? 何? ……私? ……オークションだ!!)  
 
アンネリカが無理やり意識を取り戻すと、そこはいつもの地下牢では無かった  
ぼんやりとした視線の中、手探りで周囲を確認する  
(……床が冷たい ……裸? そうか)  
アンネリカの衣類は一切剥ぎ取られ、手枷、足枷だけが残っていた  
立ち上がろうともがく体が何かにぶつかった  
(柵……??)  
アンネリカを囲う鉄柵、その向こうにうっすらと見える金色の仮面の人々  
だんだんと視力が戻ってきた  
鉄柵の脇に一人立って何やら説明している  
初めて見る組織の人間  
 
アンネリカはその人間にすがるように、鉄柵へと倒れこんだ  
まだ足の自由までは効かない  
 
「あら、今夜の生贄が目覚めたようですね」  
組織の人間は女だった。名はサンドラという  
ピッタリとしたスーツに身を包み、こちらは黒いマスクをつけている  
「ら、らりゅひゅ」  
アンネリカは色々問いただしたいことがあったが、まだ舌がもつれてうまく喋れない  
「入札はこれからよ、もう少し大人しく見ていなさい」  
やさしくそう述べるとサンドラは来賓の方へ行ってしまった  
(そうだ……、まずは冷静になんなきゃ……)  
アンネリカは鉄柵にすがりついたまま、周囲を観察することにした  
 
会場は広くないが、壁と天井の蝋燭で、中はしっかりと明るい  
特にアンネリカの周辺では盛大に火が焚かれていて、商品がよく見えるよう工夫されていた  
来賓にはワインこそ振舞われていたものの、パーティのような賑やかさはない  
会場の多くが富豪の闇商人で、ここで買った商品を転売する目的だ  
 
会場はおおよそアンネリカの想像通りだったが、一つだけ理解できないことがあった  
(なんで私を見てないの……??)  
買い手にとって一番気になるのは商品の状態のはず  
それを見るために服を剥いだはず  
ところが来賓はサンドラの説明にばかり集中している  
話を聞こうと身を乗り出すも、説明は終わってしまったようでサンドラが戻ってきた  
「心の準備はいいかしら?」  
サンドラは一声かけると来賓側へと向き直り声を張った  
「それではみなさん、本日の不憫なる生贄に盛大な拍手を!!」  
 
掛け声と共に勢い良く鎖を巻き上げる音が会場内に響いた  
ステージの両端に設置された2台の巻き上げ機が勢い良く回転し会場を盛り上げる  
その機械から伸びた鎖はアンネリカの檻の真上へと伸びていて、そこから両手の枷へと繋がっていた  
「ぐぁッ!!」  
アンネリカは身構える間もなく空中へ釣り上げられた  
会場が「おおお〜〜〜」とどよめき、拍手で満たされた  
 
拍手が納まるのを待ってサンドラが再び声を上げた  
「お待たせいたしました。本日の商品のお披露目でございまぁぁぁす!!!!」  
(お披露目? これから? 私は商品じゃないの??)  
アンネリカの不信感が最高潮に達した  
それと同時に、今までアンネリカのいた床が落ちてなくなった  
床の穴から何やらネチョネチョとした気配、それと甘いような匂いが登ってくる  
ゴリゴリという石の歯車の音  
それに合わせて穴の奥の気配がせり上がってくる  
「い、いやぁぁぁぁ!!!!!」  
会場の来賓よりわずかに早くアンネリカはその正体を見ることができた  
 
「本日の商品はこちらぁぁぁぁ!!  
 『ソルヴィーヌ変異体 β改修型』でございまぁぁぁす!!」  
 
ソルヴィーヌ  
イソギンチャクに似た半透明のモンスターで、水辺や湿地帯などに生息する  
たくさんの触手で昆虫や小動物などを捕食し、人間に襲いかかることはほとんどない  
変種は多く、毒を持つものや、特殊能力に長けたものもある  
体長は大きい種でも30センチと小型だ  
 
とてもポピュラーなモンスターで、アンネリカも当然知っていた  
だが、眼下のソルヴィーヌは体長2メートルはあった  
空中に吊り上げられたアンネリカでも、足を曲げて避けなければ触れてしまう  
「どうでしょうこのサイズッ!!  
 特別大きな個体を掛けあわせ、その中でもとりわけ巨大化した変異体でございます!!」  
サンドラが興奮気味に声を上げる  
「そして、その触手もまた特大サイズッッ!!  
 長さは最大で体長の1.5倍ッ!! それが無数に生えております!!」  
説明の最中もソルヴィーヌは構わず動きまわる  
まずは触手をのばして、目の前にぶら下がる獲物を物色していた  
「ひぃっ……、いやぁぁ……」  
粘液を一杯にまとった触手が、顔や髪の毛もお構いなしに這いまわる  
粘液が付着した皮膚は、軽い火傷のようにジリジリと熱い  
 
やがてアンネリカを捕食対象として認識したソルヴィーヌは、触手を絡みつかせてグイグイとひっぱり始めた  
「い、いやっ、やめてッ!! 手、手がちぎれるぅ……ッ」  
全体重を支える両の手首が悲鳴を上げる  
しかし粘液にまみれた両手は、細い枷の中を骨をきしませながら抜け落ちた  
「ヒッ!」  
突然の落下にアンネリカの悲鳴が一瞬もれる  
ドブォ……  
わずかな自由落下のあと、アンネリカの下半身はソルヴィーヌの口の中にハマっていた  
 
「落ちたぁぁぁぁあ!! どうでしょうこの怪力!! 鉄の枷もものともしません!!」  
本当は粘液で滑り落ちただけなのだが、サンドラが声を上げて盛り上げる  
沸き立つ会場をよそに、アンネリカは必死に抜けだそうともがいていた  
ソルヴィーヌの口内は糊のように特別濃い粘液で満たされ、底なし沼のようにアンネリカを飲み込んでいく  
「ひぃ、ひぃぃ、食べられるっ?!」  
アンネリカは口の縁に手を付いて踏ん張るが、先程傷めた手では力が入らない  
加えてヌルヌルの粘液とツルツルの皮膚が手を滑らせてどうにもならない  
 
アンネリカがもがく中、当のソルヴィーヌは獲物にがっつく様子もなく、  
むしろ動きを緩め、おとなしくなっていった  
その様子に会場も来賓も気付き出し、静かにざわつき始める  
今まで会場を盛り上げていたサンドラも動かない  
雰囲気の変化に最後に気がついたのはアンネリカだった  
(……な、なに? なんなのこの空気……?)  
腰のくびれが口に引っかかって沈み込みが止り、やっと冷静に周りを見れるようになっていた  
 
会場のどよめきが爆発しそうになったころだった  
ゾクリ……  
今度はアンネリカが最初に変化を感じた  
(あつ……い?)  
体の芯がふつふつと沸き上がる  
粘液に触れた皮膚がヒリヒリするのと同じような感覚  
それが内側でどんどん増幅されながらこみ上げてくる  
(なに……? なに? なんなのこれ??)  
不思議なもどかしさに何気なく太ももを擦り合わせる  
 
(       ひっ             )  
 
アンネリカの体の中を何かが突き抜けた  
ビクッと一回大きく身震いし、瞳孔の開いた眼で空中を見つめる  
やがてあご先がブルブルと震えだし、それに共振するように全身が身震いを始める  
「あ゛……あ゛あ゛……あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛」  
開きっぱなしの口から搾り出されたような声が漏れ出す  
 
アンネリカは絶頂していた  
わずかにこすれたクリトリスの快感だけで、意識を失うほどの激しい絶頂  
ソルヴィーヌ体内の濃い粘液  
これに浸り続けたクリトリスは知らぬ間に赤く腫れ上がり  
ジンジンと脈打つ、絶頂へのトリガーへと変貌していた  
 
そのうめき声に会場のどよめきが止まる  
そこにいた全員がなんらかの変化を察していた  
満を持してサンドラが一歩踏み出す  
「ご来賓の皆様、お待たせいたしました  
 これより、オークションに移ります  
 商品はこちらのソルヴィーヌ変異体 β改修型  
 これより分泌される特殊な誘淫剤  
 ボトル1本、最低価格100万Gからにございます」  
サンドラはいつの間にか用意したボトルを高々と掲げる  
極上のワインのようにラベルが貼られ、コルクで栓をされたボトルの中身は、アンネリカが浸かっている粘液だった  
 
会場が一気にどよめき立つ  
それを切り裂くようにサンドラが声を張り上げる  
「なお!!  
 本日はこちらの商品を、「100本」ご用意させていただきました!!  
 提示価格の高い方から上位100名が権利を得る、パワーオークション方式とさせて頂きまぁぁぁす!!!!」  
その掛け声と共にステージ脇から複数の係員が駆け上がってきた  
彼らはオークションの進行係として、飛び交う金額の取りまとめを進め  
サンドラは紹介役としての役割を終えた  
 
(……い!! 熱い!! 熱い!! 熱いぃ!! 熱いぃッ!! )  
完全にトんでいたアンネリカに意識が戻り始めた  
自身に何が起こったのか考える余裕なんてない  
あるのは体の芯から沸き上がる感覚だけ  
まるで灼け溶けた鉛を宿したかのような感覚  
心臓の鼓動以上に子宮が収縮を繰り返して脈打つ  
強烈な誘淫作用を持つ粘液に浸けられ  
彼女の中の女性たる部分は完全に狂わされていた  
卵巣は不規則に排卵を繰り返し  
誘淫剤に染まった卵子は着床のたびに子宮を焼いた  
子宮の鼓動は尋常ではない陣痛によるもので  
固く閉ざしているはずの子宮口が呼吸するように開閉を繰り返す  
どれも通常の精神で耐えられるものではない  
だがこれらの刺激は誘淫作用で全て快感へとすり替えられていた  
 
「はぁ ぁぁぁ……」  
呼吸のひとつも慎重に行うアンネリカ  
それに気付いたサンドラが歩み寄って声をかける  
「あら、おめざめ?」  
アンネリカは焦点の定まらない眼で声の主を追う  
「な、なに、なんなの……」  
「よかったわ戻ってきてくれて  
 あれで終わりじゃあ、値段が釣り上がらないもの  
 そうね、出来ればあと2〜3回、お願いできないかしら?  
 できるだけ派手にね」  
「な、なにを、言ってるの……?」  
「あらぁ、わかってるくせにぃ  
 何も酷いことしようってんじゃないのよ  
 あなたはただ、気持よくなってくれればいいの」  
 
サンドラはアンネリカの周りを回りながらボトルの栓を抜く  
そして左腕のグローブにドボドボと粘液をまぶすと  
背後からその左腕でアンネリカの胸をなで上げた  
「こんな、ふうに、ね」  
「や、やめっ……」  
軽く一回触れたれただけの胸が、みるみるうちに赤く高揚していく  
血流が胸に集まって、乳腺は膨らみ、胸はふたまわり以上腫れ上がり  
静脈が浮き上がった  
「ひっ……ひいぃぃ……」  
「わぁ〜、まるで妊婦さんみたいなおっぱいね  
 ”ねぇ、ママァ、ぼくちゃんにも、おっぱいくだちゃ〜い”」  
サンドラはふざけながら腫れ上がった胸に唇を寄せ、むちゅぅと乳首に吸いついた  
顔ごと押し付けて、おっぱいがひしゃげる  
反対のおっぱいも同時に強く揉み上げた  
 
眼下の光景に、アンネリカは何かが高速で背筋を駆け上がってくるのを感じた  
さっきは一瞬で突き抜けたように感じた感覚が、今度は登ってくるのがわかる  
それは恐怖でしかなかった  
「ぎゃ、あああああぁぁぁぁぁぁぁぁああッッ!!!!!!!!!!!!!」  
アンネリカは無意識に絶叫した  
狂気に満ちた絶頂の中、脳の焼き切れる音を聞きながら再び気を失う  
獣の咆哮にも似た絶叫が会場を占拠する  
全ての人の手が止まり、次の瞬間、オークションの額が跳ね上がる  
 
「んん〜〜、いつ聞いてもいい声ねぇ  
 さぁ、休んでる暇はないわよ。あなたにはまだまだ叫んでもらうんだから」  
サンドラはポケットから注射を取り出すと、アンネリカの首元へと針を押し込んだ  
「次は”改造オークに突き上げられて絶叫”とかどうかしら? ねぇ……」  
覚醒作用のある薬液を注入しながら囁く  
アンネリカはうめきながら眉間にシワを寄せた  
 

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