幼なじみ。なんと甘美な響きだろうか。
幼なじみ。なんと羨ましい立場だろう。
これほどまでに近くにいる女の子が、甲斐甲斐しく世話をしてくれるなんて。
しかしそんなのは、二次元の世界だけなのだ。
リアルはもっと、残酷で――
「姉さん、ほら起きなよ。ハロワが開く時間だよ?」
「やだぁ……寒いのやだぁ……」
「姉さんったら!」
女らしく飾られた部屋で、ベッドに寝たまま布団にしがみつく美女。
ソレを剥がすために、僕は必死に布団をめくる。
幼なじみの姉さんは大学卒業後、就職先が見付からずニートに。
僕は大学在学中、今はバイトの夜勤明けである。
「やだよぉタクちゃあん……」
「何いってんの、おばさんにまた怒られるよ?」
「私ぃ、タクちゃんのお嫁さんになるから……」
「っ!」
「そしたら永久就職だもん、はいこれで解決だよぉ」
「バカ言わないでよ」
布団から顔だけを出して、頬を膨らませる姿も愛らしい。
ボサボサの髪に隠れるうなじや、肉厚の唇のエロティックさも堪らない。
あぁそうさ、僕は昔からお姉さんに惚れているんだ。
「本当だよぉ。だから、私は今日からタクちゃんのお世話を頑張るから、外にお仕事なんて行かないからねぇ?」
「自分のこともロクに出来ないのに、僕の世話を焼くなんて無理だって」
「むぅぅぅ……」
姉さんが不機嫌そうな顔になる。
しかし、姉さんは本来気難しいタイプの人間ではないのだ。
だから。
「なら、いいもん。タクちゃんとはチュウもエッチもしたげないもん」
布団から出てきた姉さんは、その寝間着姿のだらしない格好でそう言った。
なお、勘違いされないように言うが、キスもセックスも僕は未経験だ。
「はいはい。布団を干すからね」
「あぅ、寒いよぉ……」
「着替えりゃいいじゃん」
わかったよぅ、と泣きそうな声でいいながら、姉さんはおもむろに寝間着を脱ぎ出す。
恥じらいのひとつもあれば可愛いのだが、残念ながらそういうのはとっくに乗り越えており。
寝間着の下から、全く拘束されておらぬ巨乳がまろび出るのを後ろ目に見た後、僕は階下に降りて、姉さんの朝食の準備を始めた。
これが、僕と幼なじみの最近の毎朝の光景である。