6年前、学校を辞めた私は、すぐに自らの妊娠に気がついた。
友樹君には、二度と会わないと決めていた。
きっと私は弱いから。
会ってしまえば、先生と生徒の垣根を越えることが罪深いと知りながら、彼のためにならないと
分かっていながら、きっと彼に惹き付けられずにはいられない。
そして彼を巻き込むだろう。
でも不思議と、堕胎、という選択肢は私の中に無かった。
私も母子家庭で育った。母親だけでも、子供は育てられるのだ。
他に行く当てもなく、母の元に身を寄せた。
あなたまで未婚の母になるなんて! と母は泣いたが、結局は許してくれた。
こうなって初めて、知ったことがある。
女は弱し。されど、母は強し。
子供を宿して、女は強くなるのだということ。
まだ形にもなっていない小さな生命が、びっくりする位の気力を与えてくれるんだってこと。
お腹の中で育つ、好きな人の赤ん坊は、私に誇りと、そして生きる意味を与えてくれた。
私はこの子のために生きていけばいいんだ。
そして知る、私はこんな風に、母に愛されていたんだってこと。
私は、生まれてきてよかったんだ。
* *
生まれたのは、男の子だった。
子供が小さいうちは、あまり長時間働くことも出来ない。
保健婦としての資格で、市役所の臨時職に採用が決まった。
男の子の育児って、大変だ。よく動き回るし、うるさいし、発達は女の子よりゆっくりで、
何をするにしても時間がかかる。おまけに、ちょっと目を離すとどこかに傷をこさえてきたり
するし、好奇心が強くて活発なせいで、目が離せない。
でも、そのぶんすごく可愛い。
保育園で貰ったお菓子を「おかあさんにあげる」と持って帰ってきてくれたりするし(ただし
包み方がいいかげんなせいで、帰る頃にはぐちゃぐちゃ)、うたた寝してると、押入れから
引きずり出した、やけに分厚い布団をそうっと掛けてくれてたりする。。4歳の頃には「おかあさん、その服、にあうね。かわいいよ。」と、口説き文句まがいの言葉を
どこかから覚えてきてびっくりした。
名前は、彼の名から一文字を取って、友也。トモくん……と呼ぶたび、胸の中に甘い余韻が
過ぎることは否めない。
でも、この子の父親に会いに行くことは、躊躇われた。
何の相談もなく、産んだ子ども。今更責任を取ってなんて、言えるだろうか?
せっかく行っても疎ましがられて帰るだけなんて、悲しすぎる。
こっそり高校を訪ねてみれば、彼が志望大学に合格していることはすぐ分かる。進学校なので、
合格した大学名と生徒名は一年ほど掲示されているのだ。
大学に進学して、新しい恋人が出来ているとしたら……子供の世話にかまけて手入れもしていない
ぼさぼさの髪、ガサガサの肌で今更若い子と張り合うなんて、無謀だわ。
この子がいつか大きくなって、自分の父親探しをするようになったら、そのときは色恋なんかと
関係なしに、この子を会わせるためにだけ、連れて行ってあげよう。
そう思っていた。
なのに、なんで。
「……はるか先生。」
こんなときに、こんなところにいるの。
汗で崩れまくったメイクに、ウェーブの取れかかった髪。
クールビズ対応でラフなポロシャツに、着古してボロボロなスカート。
いつもならもっとちゃんとして、とは言い難いけど、今日は特に暑くて、汗まみれで、酷い状態なのに。
どうして先に連絡くれたりしないのかしら。突然でなければ、もっとちゃんと、こう。
「──元気そうだね。」
自分は高そうな、仕立てのいいスーツ着て。アイロンの効いたシャツ着て。
前よりも深く響くハスキーな声になった気がするわ。
「う、うん、元気。」
「眼鏡、やめたんだね。」
あの頃、少年らしい透明さを持っていた眼差しはいま、年月を経て大人らしい重さと深みを増して。
眼鏡を挟むことなしに、そんな目で見つめられたら私、どうしていいか分からない。
──あ、だめ、トモくん。
「でもお母さんがいつも言ってる、お父さんはやさしくてかっこよくて、とってもすごい人だったって。
おれもそうなる。それで、お母さんをまもってやるんだ。
おまえもお母さんにわるいことしたら、おれがやっつけるからな。」
もうっ。恥ずかしいからよその人に行っちゃ駄目だって、いつも言ってるのに。あの子ったら、
お母さんの話を、いつも聞いてない。
「お父さんの名前は。」
あ、駄目、それ言っちゃ、だめ。
「トモキ。」
* *
トモくんと一緒に家に帰り着くと、いつも玄関を開けた瞬間から、戦場だ。
晩御飯を急いで作ってせかしながら食べさせ、お風呂に入れてあげる。5歳児はまだ一人で頭も洗えない。
寝かしつけも、添い寝して絵本を読んであげないと寝付けないし、そのあともう一度起きて、
後片付けと翌日の準備。それだけで、夜は更ける。
でも友樹君は、思ったよりずっと手際が良かった。
ご飯の準備をしている間にトモくんはシャワーを浴びてピカピカになってて、いつももたもた食べてる
晩御飯は急いで食べ終わって、『決闘だ!!』とか言いながら二人でテレビゲームで対戦。
食事の後片付けなんかを済ましている間に、トモくんはコントローラーを持ったまま倒れて寝てた。
「……子供の相手、上手いのね。」
子供なんて汚い苦手、って言うのかと思ってた。
「学生時代、実習やバイトもしたし、その他も色々やったから。」
隣の部屋に布団を敷いて、トモくんを運んであげる。
そして戻った私の袖を、友樹君が引く。
「俺、働いたから、ご褒美ちょうだい。」
「……あっ。」
今さらな年齢の私の何かが、まだご褒美として通用するのだろうか。戸惑う間に彼の腕の中に
すっぽりと包まれる。
パジャマ代わりに使っているTシャツの背を、骨張った手がするりと撫でる。途端にその手の
触れた軌跡がすべて燃えるように熱くなり、体中の力が抜けてしまう。
「ブラつけてないんだ……。これ据え膳だよね? もう食べないと恥になるレベルだよね?」
このあいだ泊まりに来た友達に、何だその色気のない格好は! と散々言われた、何年も着た
Tシャツに、綿の短パン。
新しい男作る気がないのかー! と言うので、いりませんとそっけなく答えておいた。
こんな格好で、何かを期待していた、というわけじゃないけれど。
「そんなつもりじゃ、ないんだけど……。」
触れられた部分が熱くて、熱くて、もっと触って欲しくて、泣きそうになる。
「なかったんだけど……、その、良かったら、食べてください……。」
彼はすぐに抱きしめてキスをしてくれた。
「ヤバイ、もうヤバイ。はるか先生は、俺を煽るのが上手いね。」
軽く何度か唇を合わせたあとに、舌を絡める情熱的なキス。唇も舌も、本当に食べられてしまいそう。
その間に、彼はそんなことを言う。
「もう、先生じゃない……っ……」
「ああ、そうだね。もうただの、男と女だ。はるかサン?」
ただの男と女じゃなくて、若い男とおばさんなんじゃないかしら?
うっすらとそう思ったけれど、Tシャツをたくし上げられて、そんな余裕はなくなった。
「あぁっ……!!」
布越しに触れられているだけでも燃え上がりそうだったのに、直接肌に触れられると、頭の中が
真っ白になる。
「さっきからどこ触ってもあんあん言っちゃって……全身性感帯なの? はるかサン。」
「身体が……おかしいの。ああ、熱くて、燃えちゃいそう……!」
「感じやすくて、すっごい可愛い……。まだ大したとこ触ってないのにね。じゃあ、これはどう?」
彼の手が胸のふくらみを掬い上げるように包んだ。何年も触れられる感触を忘れていた私の肌が、
その丸さと柔らかさを思い出す。手のひらに包まれる先端が、特別に繊細で敏感なことも。
柔らかな肉を捏ね上げるように大きな手がゆっくりと動き、長い指が食い込んでゆく。
「あッ……!! ──ッ!! ────ッ!!」
襖を隔ててすぐそばにトモくんが寝ているのに、大声なんか出せなくて、必死に自分の手を当てて
声を噛み殺す。
「乳首もすぐに勃てちゃって……。よっぽど触られるのが、好きなんだね。」
彼の手のひらに包み込まれて、先端を軽く転がされるだけで、身体の心までゾクゾクとした
刺激が突き抜ける。
「あぁっ、く、あっ……」
「ねえ、赤ん坊には母乳あげたの? あんまり形、崩れてないね。」
その手は私の胸のふくらみの柔らかさと形を丹念に吟味するように動く。
「あ……、一歳…すぎまで、ちゃんと……お乳、あげてたもん……」
「じゃあ、ざっと4年前までは、一日に何度も、こうやっておっぱい、吸わせてたんだ。」
そう言って彼はしこり切った胸の先端を口に含んだ。授乳のときとは似ても似つかない
いやらしい快感が全身を走る。
「違……っ。いいかげんなこと、言わないで……。赤ちゃんはそんな吸い方、しないもん。」
私がそう言って抵抗するのにも構わず、彼は口に含んだ敏感な部分を吸いたて、しゃぶり、
舌の上で転がした。
「だめ……! あっ、へんなの、なにか……ああ。」
口に含んでいない方の乳首も指先できゅっと捻り上げられると、倍増した快感が奔流のように
押し寄せ、もうどうしていいかわからなくなってしまう。
ただ泣きながら身を捩り、されるがままに任せるだけ。
ああ、でも我を忘れて、もっと、と強請ったりしなかっただろうか?
頭の中で何度も白い光が弾けて、私は胸を弄られたまま達した。
一度気をやってしまった私はぐったりとして、畳の上にそっと横たえられる。
「ん? 涙が出てる。気持ちよすぎて泣いちゃった? かーわいいの。」
私よりも八つも歳下の彼は、そんなことを言って眦に浮かんだ涙を舐め取ってしまう。
「こっちもまだなのに……あ。」
服の上から私の下半身をまさぐりながら、なにかいいものを見つけたように嬉しそうな顔をした。
「凄い、服の上からでも分かるくらい、濡れてる。」
そう言って何度も確かめるように、脚の間を撫で回す。酷く恥ずかしくなって私はぎゅっと脚を閉じる。
「きっとさっきシャワーに入ったあと、よく拭かなかったんだわ。」
それでも男の力は強くて、パジャマ代わりの丈の短い綿パンツは簡単に脱がされてしまう。
それからゆっくりと、弄るように時間を掛けて下着を引き下ろされる。
「糸引いちゃってる……。パンツの方も、ぐしょぐしょだ。」
私は恥ずかしくて両手で真っ赤になった顔を覆った。今更、顔だけを隠したからといって
どうなるというわけでもないけれど、そうせずにいられない。
ちゅぷ、と彼の長い指が侵入してくる。彼の言うとおり、そこはたっぷりと蜜を湛えていて、
侵入者を悦んで迎え入れる。
「──あっ……。あ、やあぁっ……。」
その指は酷く器用に、ひとつひとつの襞を探るように動いた。秘洞のなかを探りながら、奥へ奥へと
進んで行く。同時に外に残った指が、蜜の中でぷっくりと膨れた花芽をぐりぐりと擦りあげる。
「わかる? はるかサンの下の口が、俺の指を美味しそうに食べてる。はやく本物が欲しいって、
涎を垂らしてるよ。」
とても嬉しげに、彼はわたしを言葉でも弄る。
「言わないで……。」
ふしだらな女と思われるのは嫌だった。特に彼には。なのにわたしの体は意に反して、淫蕩に
彼を求めてしまう。
「とっても可愛いよ、はるかサン。可愛すぎて、もう我慢できなくなってきた。ねえ、挿れていい?」
そんなこと、聞かないで欲しい。
彼は私の沈黙をいいように解釈して、私の脚を開いた。
ちゅく、と猛った雄の先端が蜜口に触れる。
「や……あぁっ……!!」
全身が、彼を受け入れる予感に震えていた。
埋めて欲しい。埋めて欲しい。私の中の空虚を。君のいない6年間を。
そして、いっぱいに満たして欲しい。
彼は、ゆっくりと入って来た。何年も無視され、虐げられていた隘路が、ぎちぎちと押し広げられてゆく。
私は彼の背中に腕を廻し、痛みと恥ずかしさと快感がないまぜになった、嵐のような感覚に耐えた。
「うぁ……。はるかサン、そんなにきつく締め付けたら、すぐに出ちゃう……。」
苦笑交じりに、彼はそう言う。
でも、余裕がないのは私のほうだった。彼とひとつに繋がった、そのことに勝手に身体が歓喜の声を上げ、
ひとりでに腰が揺れてしまう。
「も……、勝手に動いちゃ駄目だろ。そんなに欲しいの?」
両手で私の腰を掴み、彼はそこからゆっくりと陰茎を引き抜いた。先端まで抜けてしまうぎりぎりの
ところまで引いてから、一気に奥まで押し込む。
「ひあぁぁっ!!」
頭の奥で、ぱちぱちと光が弾けた。彼は快感に朦朧とする私の腰を掴んだまま、もう一度ゆっくりと腰を引く。
期待感に焦れる私を眺めながら、彼はなかなかそこから動こうとしなかった。
「欲しいって、言ってごらん。気持ちよくなりたいんだろ?」
彼はうっとりするほど色気のある声で、凄みのある微笑でそう言う。その目で見詰められると、
私の理性はとろとろに蕩けてしまう。
「ほ……、欲しい……の。おくのほう、いっぱい、突いて……。」
私がそう口にすると、彼は満足げに笑った。
「……素直だね。」
途端に、がつがつと音がするほどに激しく突き上げられる。
「あぁっ!! イイっ!! イっちゃう、イっちゃうっ!!」
急激に高められて、また達してしまう……その寸前に、動きを止められてしまった。
「あ……?」
「ねえはるかサン、俺のこと、好き?」
既に理性も判断力もとろとろだった。ほとんど酩酊状態のような私は、喜んで彼の望むままに答える。
「うん、好き。」
「俺の名を呼んで。」
「友樹君、好き、好きよ……。」
「……俺と結婚、する?」
「する。したい。君のお嫁さんに、して欲しいの。」
そこから先は憶えていない。
ただもう苦しいほどに気持ちよくて、幸せで、抱きしめた彼の身体がふるりと震えたのを最後に、
私は意識を手放してしまった。
* *
次に目を覚ましたときも、まだ彼に抱きしめられていた。
快感の余韻の残る虚脱した身体で、温かく抱きしめられていると、幸せで泣きそうになる。
「はるかサン、俺を憎んでる?」
彼がそう問うので、ぼんやりしたまま答える。
「かんがえたこともない……。」
彼は続けて問う。
「俺が嫌い?」
「嫌いなわけない、すきよ。」
「軽蔑する?」
「友樹君は、エライ子だわ。みんな君を、好きなの。」
「本当?」
「ほんとよぅ。」
「……よかった。」
彼はそう言ってまた私をぎゅっと抱く。抱きしめられると気持ちが良くて、つい縋りついてしまう。
「はるかサンが俺に死ねって言ったら、俺、死ぬ自信あったもん。」
なんだか彼の言うことが不穏で、ちょっとだけ現実に引き戻される。
「どうして、そんなこと……?」
「俺、酷いことした、あのとき。そしてはるかサンは、俺を許さずに、俺の前から消えた。」
彼の身体は小刻みに震えていた。
「許さなかったわけじゃなくて……。」
なんと言ったらいいのだろう。君の事を、嫌いなわけない。軽蔑なんかするはずない。
「許せなかったのは、私自身。友樹君は、優秀な生徒で、未成年で、私は……先生だったのに。」
「そんなこと、関係ない!」
彼は絞り出すように叫んだ。
「俺はガキでも本気だったし、今でも、本気だ。
笑うかな? 俺の時間は、あのときから止まってる。最悪なときに好きな人が出来て、その人だけに
褒められたくて頑張って、棄てられそうになって、怖くて怖くて、どうしようもなくて、傷つけた。」
「それで、自分の方が傷ついてしまったの……。優しいね、友樹君は。」
どうしたらいいか分からなくて、彼の髪を撫でる。
「優しくなんてない。」
「優しいんだよ。」
ゆっくりゆっくり、彼の髪を撫でた。
「……あのときの男とは、どうなったの。俺のせいで、別れたの。」
「あのときの? 男?」
はてどの男のことだろう、と首を傾げる。別れた、ってことは、恋人関係にあった男性のことかしら?
最後に男と付き合ったのはいつのことだったか、昔過ぎて、思い出せない。
「この指輪を、くれた奴のこと。」
私の左手の薬指を、長い指がなぞる。そこには、随分昔に買って、そのままお守り代わりにつけ続けている、
男避けの指輪。
「自分で買ったのよ、これ。」
彼は茫然として私を見詰める。
「……どういうこと。」
鋭いところは鋭いのに、こんなところは鈍いなんて、変なの。
「左手の薬指に指輪があれば男がいる、なんて、変な先入観。でも、そのために買ったんだけどね。」
私は笑う。あの時は切実だったのに、今となってはどうでもいい。
そうだ、もう関係ないんだわ。
「どういうこと?」
彼は繰り返す。
「多分、私も君のことが好きだったからだと思う。」
きっと、好きだから、中傷に傷ついた。好きだから、必死で遠ざけようとした。好きだから、ずっと会いに
いけなかった。
「でももう、先生と生徒じゃないのね。」
「分からない、説明してよ。」
彼は戸惑いを隠せない表情で、縋るようにわたしを見る。出会った頃の、少年の面影を残した顔で。
「説明してあげる、ゆっくりとね。もうこれからは、そばに居てくれるんでしょう?
でももう、どうでもいいことよ。笑っちゃうくらい。」
そっと薬指から、慣れた指輪を抜き取った。晴れやかな気分だった。
「まずはこの指に、新しい指輪を買ってもらわなきゃね。」
私は彼の頬に、軽くキスをした。
「いいよ。」
彼もお返しに、唇にキスをしてくれる。
私も更にお返しに、ちょっと長いキスをする。
次は舌を絡めあう、濃厚なキス。
「あ、あのね。」
激しいキスの合間に、やっとの思いで話しかける。
「私、もう大きな子供もいるけど、こんな歳だけど、ちょっとだけ、えっちでもいいかなあ……?」
「なにそれ。超萌える。」
「えっと……あのね。また、したくなっちゃったみたい……。」
「俺なんか、ずっとしたいよ。さっきから、押し倒すの我慢してるとこ……だったけど。」
抱き寄せて首筋にキス。それから鎖骨に掛けて、降るようなキスをくれる。
「本当にはるかサンは、俺を煽るのが上手いね。」
彼はいつでも優しい。
この優しくて繊細な男の子を、私も長い間、傷つけてしまっていたんだなあ、って思う。
でも、それももう、終わり。
これからまた新しく、始めていけばいい。
「優しくしてあげる……。」
そう言って私は、彼の広い背中をそっと抱きしめた。
────終────