「あれ?ここはどこ?」
少女は,病院の病室のような部屋で目を覚ました。何だか頭が重く、少し気分が良く無い。
それに、仰向けにされ、なぜだかベッドに数箇所で拘束されているのだ。足首・手首・肘の上・膝の上で・・・・。
(ゆ,誘拐・・・?)
記憶をゆっくり思い起こしてみた。
確か、学校が終わって家に帰る途中、雑木林の前でワンボックスカーに追い越されたんだっけ。
そしたら、大学生位の若い女の人が乗っていて、窓から道に迷ったので教えてくれといわれ、差し出された地図に気を取られたら、
スプレーみたいなものを吹き付けられて気を失ったんだっけ。
誘拐?
そんなはずはない。だって、私の父親はサラリーマンで、そんなにお金がある訳では無いもん。
金目当てでは無いようみたいだ。
だって、病室みたいな部屋、この体を固定する器具、とても金に困って誘拐されたのでは無いのは明白だ。
身体が目的ならとっくにレイプされているはずだ。
「篠原麻里子、聴こえるな」
いきなり天井のスピーカーから聞こえてきた男の声に、彼女は身を硬し、思わず視線を泳がせました。
抵抗が無駄な事、反抗的な態度には厳罰が与えられる事、命令は絶対である事、全ての指示を二度繰り返すと、
「解ったな?理解できたのなら、頷くんだ」
少女は反射的に頷いた。アナウンサーみたいな温か味のある声、指示に従えば助かるかもしれない、そう感じた。
チャンスを待つしか無い。
あたりを見回せるだけの余裕を取り戻すと、仰向けに固定されたまま,室内を凄いスピードで見回していました。
「篠原さん、良いですか?これから貴女にはあるモノをご覧いただきます。それを参考にして,貴女も私たちを楽しませて下さい」
スピーカーから相変わらず優しい声が響いて来る。
「さて,スクリーンをおろして即席映画館を創りますから,少々お待ちを・・・」
すると、電灯が消え黒いカーテンが窓を塞ぎ、大型スクリーンが天井から下りて来た。
スクリーンに写った光景を見て、麻里子は目を大きく見開き、声にならない悲鳴をあげた。
スクリーンには彼女の姉の亜矢子がどこかの手術台に固定され、顔に麻酔マスクを押し当てられ
全身麻酔を掛けられる様子が映って居たのだ。
「亜矢子さんは、この通り、全身麻酔ガスを嗅がされて意識を失いました。今度は貴女の番ですよ」
そう言うと、ストレッチャーに移し替えられた。
彼女は、今が逃げるチャンスだと思い暴れて見せたが、顔に白いハンカチを押し当てられて、
意識が遠くなり失神して、結局手術室へ連れて行かれた。
篠原亜矢子は、学校の制服姿のまま、手術台の上で仰向けにされ、両腕を身体と平行にされ、両脚を肩幅に開いた状態で
金属製のリングを使って固定されて居た。
白衣を着た男が、黒くて大き目のマスク上部のみ透明なマスク麻酔マスクを彼女の顔に近付けた。
「さあ、暫くの辛抱だよ。すぐに眠くなるからね。我慢は駄目だよ、眠くなったら何時でも瞼を閉じていいからね」
男は亜矢子の耳元で囁くと、身動き取れない彼女の顔にマスクを押し付け、顎を上に持ち上げ、マスクを固定した。
「むぐっ、いや、いやあ、やめて!」
男は彼女の頭を軽く抑え付けると、マスクの透明な部分が息で白くなった。
涼香の目が次第にとろんとして来た。
「さあ、そろそろ麻酔が効いてくる頃だね」
男の予言は的中して、彼女のまぶたが数回開閉したと思うと、白眼を剥いて重そうにまぶたを閉じて、亜矢子の意識は途絶えた。
男が彼女の顔が脱力して横に向きそうになるのを抑え付けて、上を向いたまま固定した。
麻里子は隣りの第2手術室へ連れて行かれ、亜矢子同様の姿に固定された。
白衣を着た男が麻酔マスクを手に彼女の顔を覗き込んだ。
「それでは始めますよ。大人しくしてて下さい」
そう言うと,いやらしい笑みをこぼした。
気丈にも抵抗の意思を示して居た麻里子であったが、黒くて大き目のマスク上部のみ透明な麻酔マスクを見せつけられると、
怖い物は怖いので、思わず悲鳴をあげてしまった。
「キャア―――――――ッ!!」
男は無情にも、エチルエーテルのコックを捻ると、麻酔マスクで麻里子の口と鼻を覆った。
シューと言うガスの噴射音がしている。
四肢を拘束され、首のみが自由の麻里子は顔を醜く顔を歪めた。
そして、顔を左右に振って逃れようとしている。
しかし、男が彼女の頭を軽く押さえ付けている為、思うように行かない。
息を止めているのだろうか。力んでいるようだ。しかし、そうそう息を止めている訳には行かない。とうとう大きく吸い込んでしまい、麻里子は目蓋をゆっくり閉じた。