それから次の学校の日、放課後になるなり担任から残るように言われた。進路の話題に関係なくとも、話し合いに便利だな進路指導室へ連れて行かれ、テーブルを挟んで向かい合うようにして麗華は椅子につく。 
「何の用ですか?」 
 嫌な思いをしたばかりで、麗華はどうしても冷たくなってしまう。 
 二度とあんな検査は受けたくない。 
「まあ、まずはこれを見て欲しい」 
 テーブルにはノートパソコンが置かれており、担任はマウスを使って何かの画面を開く。モニターが向けられた時、そこに流れていた動画に麗華は目を丸めた。 
「なんですかこれは!?」 
 いつもなら冷静な麗華が、切迫した声をあげてしまう。 
 その流れている動画は麗華が受けたドーピング検査のものだった。尿意に耐えるためにアソコを手で押さえ、モジモジしている格好悪い姿。短パンと下着のパンツを一枚ずつ下ろされ、恥ずかしい部分があらわにされていく瞬間……。 
 そして、あてがわれた尿ビンに排尿を終えるまでがしっかりと残されて、あろうことか担任教師のパソコンに保存されているのだ。 
 信じられない。 
 誰かの間違いでないかと目を擦るが、どうみても麗華自身が写っている。考えもしない思わぬ事態にゾッとして、麗華は自分の身を抱いた。 
「なあ、麗華。この動画どうしようか」 
 悪魔の一声が響いてくる。 
「脅迫するつもりですか?」 
 麗華は声を荒げる。 
「そうだね。これを剣道部のみんなに見られたりしたら、君も困るだろう?」 
 こんな動画を握られては、心臓を握られているも同然である。本物の命ではないが、生殺与奪を握られたようなものである。完全なる優位に立った担任は、悪魔となって腹黒いく笑っていた。 
「くっ……」 
 もはや麗華にはどうしようもない。 
 この場でパソコンを壊してやれば、という考えもよぎる。剣道では強すぎる程の麗華なら、例え男が相手でも丸腰で勝つことは難しくない。パソコンさえ奪い取れば、今ここでデータを消し飛ばしてやることは造作もないことだ。 
 そう思考が及んだ時には既に麗華は構え気味になり、目を鋭くして椅子から半立ちになっていた。今にも担任へ飛び掛りそうな勢いだ。 
 しかし、麗華が動くよりも先に担任は言う。 
「別のパソコンにもデータはコピーしてあるし、ネットに流す準備もある。ここでこのパソコンをどうこうしても、意味はないよ?」 
 それは呪文のように働いて、麗華の武力行使を完全に封じ込めた。ともすれば殴りかかっていたかもしれない腕はぴたりと止まり、身構えるための全身の筋肉からさえも力を抜かれる。麗華は抗う手段を失っていた。 
「……最低ですね」 
 これでは吐き言葉を吐いてやる程度しかできる事がない。 
 もちろん頭の片隅では警察への通報も考えるが、この動画があるということは、担任は検査を担当したあの二人と繋がっていることになる。仮に担任一人がどうにかなっても、残る二人に捜査の手が回るよりも早く、ネットに流されてしまいかねない。 
 ――何も出来ない。 
 剣道で鍛えたこの腕で解決できれば簡単なのに、犯罪相手なのに武力も使えない。 
 そんな悔しさを噛み締めながら、麗華は大人しく椅子に座り直すしかなかった。 
「まあ、とはいえ君の貞操が目的じゃない。脅すといっても検査を受けて欲しいだけだよ」 
「検査というのは、この前の医師が持ちかけてきた……」 
 麗華の脳裏にいやらしい笑みが蘇る。 
「そうだよ。これはきっかけだ。君は身体を曝け出し、相応の報奨金を得る。学校側には契約金が入り、医師の方々には貴重なデータが行き渡る。全員が勝ち同然の特をするトリプルウィンだ」 
 人を脅迫しておきながら、何がウィンだ。 
 どうにかならないものかと必死に思考を巡らせるが、切り抜ける方法は全く浮かばない。いや、何かあるはずだ。冷や汗を流し、焦りに焦りながら頭の中から考えを必死に探る。それでもやはり浮かぶものは何もなく、麗華は爪が食い込むほどに拳を握り締めた。 
「正当な取引とは言えませんね」 
「それじゃあ、部員のみんなに放尿動画を見られるのとどっちがいい?」 
 そんなことになれば……。 
 いつも顔を合わせている仲間達にそんな痴態を見られては、もう二度と彼らとまともに顔を合わせられない。こ 
 ほとんどの後輩は自分を慕って着いて来てくれている。 
 部長であり実力トップでもある麗華の痴態を公開されては、剣道部全体の士気にさえ関わりかねない。 
 先輩を酷い目に遭わせたと復讐でも考えてくれるだろうか。 
 それとも、身内の恥ずかしい映像は貴重だとして、男の子のオカズにされるだろうか。 
 どちらにしても、動画を公開されて良い結果が待っていることはありえない。ネットに流される可能性、部員どころかクラスにまで流される危険性、警察を頼ったとしても不祥事を起こす輩に当たってしまうケース……。 
 考えれば考えるほど、思考はマイナスにしか向かわない。 
 最後まで打開策が浮かぶことはなく、そうなると麗華にできる返事は一つだった。 
「……わかりました。検査を受けます」 
 麗華は屈辱を飲み込んだ。 
 
     * 
 
 検査は指定の病院施設を借りて行われ、交通費は支給されることになっている。 
 当日の日曜日を迎えて、麗華は予め渡された交通費ぴったりの小銭でバスに乗り、病院前のバス停で降りる。 
 服装は学校のセーラー服だ。 
 制服で来いという指定はなかったが、わざわざ私服を披露してやる気にもなれない。男は女子の私服を見て喜ぶことがあるので、あえていつも通りの服にして楽しみを減らしてやった。というつもりで麗華はいる。 
 既に迎えに担任とあの医師が来ていて、麗華は案内に従うようにして普通より大きな病院へ踏み入り、医師の手続きから受付を通って検査室へ連れて行かれた。 
 どういうわけか、担任も検査に立ち会うらしい。 
「検査と関係ありませんよね?」 
 と抗議したが、 
「立ち合いは許可されているから、見届けさせてもらうよ」 
 という事だった。 
 広い検査室には体重計や身長計といった検査器具が並び、診察用のベッドや婦人科検診で使う分娩台まである。他にも医療用に機材が置かれており、麗華はいよいよ自分の身体が調べ尽くされることを覚悟した。 
「いや、あなたに合意して頂けて助かりましたよ。もし検査対象が見つからなければ、ワタシは怒られてしまいますからね」 
 医師はわざとらしい身振り手振りを交えている。 
 麗華は彼を睨みつけ、担任にも不機嫌な態度を隠さなかった。強気を崩さずにいれば、きっと延々と調子に乗られる。いくら動画があろうとも、これから受けるものがあくまで検査である限り、必要以上の行為は必ず指摘してやるつもりだった。 
「そんな顔をするんじゃないぞ? 麗華」担任は言う。「君は引き換えとして大金を受け取るんだから、結局は損はしていない」 
「そうですよ? 我々は検査を行いたいだけです。ただそれだけなのですから、あなたがどんな交渉で合意に至ったのだとしても、良心的な方だと思いませんか?」 
 何を勝手なことを言っているのだろう。 
「いいえ。思春期の女性に対する配慮がありません。良心には全く欠けていると思います。ここに来たのも、他に仕方がないからです」 
 麗華はきっぱりと言う。 
 どうしようもないから引き受けただけで、精神的にまで屈服してやるつもりは毛頭ない。動画を握られている限りありえないが、逆転のチャンスがあれば弄り殺してやるくらいの気持ちを保っていた。 
 この状況でも心が折れないほどに、剣道によって精神さえ鍛えられていた。 
「なかなか素晴らしい生徒ですねぇ? 麗華さんは態度がはっきりしていらっしゃいます」 
「そうですね。今回に限っては立場をわかっていないように見えますが、文武両道で絵に描いたように出来た子です」 
 二人の無駄話に苛立ちが募る。 
「早く始めて、早く終わらせてください」 
「麗華は早く脱ぎたいようです」 
 そんなわけがない。 
「わかりました。では早速ながら検査に移りましょう」 
 二人は身勝手な解釈をするので、それは違うと言いたくなる。 
 医師はすぐに指示を出してきた。 
「では全裸になって下さい」 
「ぜ、全裸ですか?」 
 普通の身体測定よりも厳しいことは、何となくわかっていた。検査の途中で脱衣の必要が出るであろうことは覚悟していたが、さすがに最初から全裸になるとまでは予想していない。麗華は思わず後ずさっていた。 
 裸を見せたくない思いから、胸を隠すかのように無意識に自分の身を抱いてしまう。 
「検査項目は色々ありますから、最初から脱いでもらた方が早いのです」 
「けど、あの身長計とか体重計なんかは、どう考えても裸の必要はありません。先に脱がなくてもできる検査をやってもらえませんか?」 
 全ての検査を全裸でなど、たまったものではない。 
 麗華はとにかく、どうせ検査をされるならマシな方向へ、と考えていた。医師が相手とはいえ、この場には担任が立ち会っている。裸の時間は一秒でも長く減らしたい。 
「麗華、きちんと言う事を聞きなさい」 
 担任が注意してくる。 
「必要になったらちゃんと脱ぎますから、少しは配慮を下さい」 
 この主張はしごく当然のものだが、今はそれが聞き入れてもらえない。担任はむしろ麗華が我がままだと言わんばかりに全身から圧力を発し、麗華を従わせようとしていた。 
「麗華さんは担任との交渉の際に動画をご覧になっていますでしょう?」 
「うっ……」 
 人質でも取られたかのように、麗華はぐぬぬと歯軋りする。 
「ただ検査を受けてもらえればいいのです。ただし全裸で、ですがね。指示通りにして下されば不要になった動画の削除も考えますが、どうでしょう?」 
 そういわれても、動画はいくらでもコピーできる。担任も実際にコピーを取ってあると発言していた。 
 複製まで含めて、全て削除し尽してくれるのだろうか。 
 仮にパソコンを目の前に持ってきて、麗華の見ている前で削除をしてくれたとしても、信用はできない。本当に約束を守ってもらえる保証はない。だいたい、知識さえあればハードディスクのデータは復元可能ではないか。 
 それらの考えが麗華を取り巻き、判断を迷わせる。 
「どうするんだ? 麗華」 
 担任の圧力が麗華を追い詰める。 
「……わかりました。脱げば、いいんですよね」 
 結局、動画をばら撒かれたら……という恐怖が奥底にあるせいで、麗華は脱衣を了承してしまう。圧倒的に不利な立場では、これ以上食ってかかっては動画をダシにどんな命令をされるかもわからない。 
 諦めるしか道がないことを悟り、セーラー服のリボンに手をかける。ゆっくりとほどきかけるが、麗華の手はすぐに止まった。 
「どうしました? 脱がないのですか? 麗華さん」 
 医師はにやける。 
「衝立はありませんか?」 
「ありませんよ」 
 普通は用意するはずなのに、あえて撤去したのではと麗華は疑う。 
「向こうを向いてもらえませんか? せめて脱ぐところまでは見せたくありません」 
「駄目です。今すぐ脱いで下さい」 
 医師はあくまで譲らない。 
 担任も一歩足を踏み出すことで、無言の圧力をかけてくる。 
 少しでもマシな方向へ持っていこうという目論みは、思うようには通用しない。 
「シーツか毛布はありませんか? 服は脱ぎますから、少しは隠させて下さい」 
「麗華、いい加減にしなさい」 
 担任は静かに叱ってきた。 
 どう考えても麗華が怒られるべきやり取りではないのだが、ここでは理不尽な扱いは避けられない。 
「……わかりました。脱衣カゴはありますか?」 
「ええ、それくらいはもちろん」 
 せめて医師に用意してもらえたのは、脱いだものを入れるカゴだけであった。 
 カゴを足元に置き、麗華はセーラー服のリボンをしゅるっと引き抜く。リボンだけなら露出はないため、これくらいは何の抵抗もなく脱衣カゴへ落とすことが出来た。 
 セーラー服となると、躊躇いが生まれる。 
 じー――、 
 っと、担任と医師にじっくり視線を向けては、両手に握った裾を中々たくし上げることができない。これ脱いでしまったら、麗華はブラジャーだけの上半身を見られてしまうのだ。 
 とはいえ、麗華も過去に病院で内科検診を受けたことがある。 
 あくまで日常的な診察を受けた時は、見せるといっても自分の健康のためという意識があったので、比較的冷静に恥ずかしさを我慢できた。聴診器で音を聞くために、カップをずらして乳半分までを晒した経験もある。 
 それと同じと思えばいい。 
 二人には陥れられたようなものだが、これは身を守るためだ。動画を流されないため、そのついでに報酬をもらうためであって、ただ無意味に裸を見せるわけではない。麗華は自分に言い聞かせる。 
 言い聞かせることで、冷静な気持ちで我慢していられる自分を作る。 
 そして、たくし上げた。 
 二人の視線が気になる中、だんだんと白いお腹を晒し、やがて胸元まで曝け出すのは、やはり通常の診察よりは恥ずかしい。特に嫌なのは検査には不要な担任の立ち会いで、麗華の下着の胸をさも満足げに見つめてくる。 
 それでも、麗華はセーラー服を脱ぎ去って、下着姿の上半身を丸晒しにした。 
 ――大丈夫、これ程度は我慢していられる範囲内……。 
 海で着るような水着だって、形状だけなら下着同然だ。あれだけの露出面積があっても海やプールでは普通なのだから、ここも似たようなものだと思えば耐えられる。麗華はとにかく、水着と同じだと思うようにした。 
 麗華の肢体は引き締まっており、腰から脇下にかけてのラインはしなやかに整っていた。普段から運動をしているため、肉のつき方は健康的である。肌の白さはまるで雪で、素肌全体が敷き詰められた雪原のようにきめ細かく輝いていた。 
 ブラジャーは白い。 
 そのカップに包まれたたわわな果実は上品な丸みを持ち、生地から覗く乳の半円が本人の意思とは無関係に男の視線を吸引する。胸元に目を突き刺され、乳房の皮膚がじりじりするような感覚に麗華は襲われた。 
 まだ上一枚を脱いだだけなのに、医師も担任もこれでもかというほど視線を注いでくる。体つきを品定めでもするように、ご機嫌な頷き方をしていた。 
 二人の立場はいいものだ。 
 こちらがどんなに恥ずかしくとも、医師と担任はそれをどこまでも楽しむに違いない。ならば恥じらう素振りをは見せないようにして、こいつらの楽しみを欠片程度でもいいから削ってやる。 
 例え従う以外に道がなくとも、やはり無抵抗でいるなどまっぴらだ。 
 麗華は自分の顔つきに神経を集中し、頬が赤らんだりしないように羞恥心を抑えていく。余計な念を押し払い、心を無にしようと麗華は努めた。 
 無心のままスカートの腰横を探り、ホックを外す。チャックを下げると隙間から眩しい太ももが覗けて見え、パンティの布の一部も露出する。 
 ――そう、水着姿と同じこと。 
 麗華は今一度言い聞かせ、決心を込めてスカートを床へ落とす。輝かしく滑らかな太ももが姿を現し、パンティも完全に丸見えになった。 
 太ももには柔らかそうな質感があり、そのほどよい肉付きは叩けばプルンと振動しそうなのが見て取れる。 
 パンティに包まれたアソコには、性器の肉貝からなる白い丘があった。布地がぴっちり張り付いているため、縦スジが浮き上がっている。布に覆われたお尻の端では、ゴムの圧力で肉がプニっとなっている。割れ目に布が食い込んで、桃尻の形はくっきりとしていた。 
 麗華の肉体は贅沢すぎる高級品だ。 
 スベスベそうな肌もさることながら、中学生にしては大きな乳は谷間を作りかけていて、そこが絶対的な引力を備えている。腰のくびれは芸術的なラインを描き、お尻の膨らみはプリっと突き出ている。 
 二人はニヤつきを止められなくなっていた。 
 これほどのディナーを前にして、ヨダレの一つも垂らさずにはいられない。 
「どうしても、下着も脱がなければ検査は始められませんか?」 
 麗華は出来る限り重々しい声を発した。 
 低く重量感ある声質なら、恥じらっているとは思われにくいはず。 
「ええ、できませんよ?」 
 できるだろうに、医師はさらりと答えてのける。 
「ブラジャーは外します。パンツを脱ぐのは、下の検査の直前にしてもらえませんか?」 
 これは当然の要望だ。 
 この程度のリクエストなら、恥じらいを隠す目論見は崩れないだろう。 
「麗華、あんまり医者を困らせるな」 
「そうですねぇ。全く、困った子です」 
 どうあっても全裸は避けられないのか。 
 これで最後のあがきだ。 
 あと一回だけ麗華は粘ることにする。 
「わかりました。ノーパンで構いませんから、関係ない検査のあいだはスカートを履かせてください」 
 中身に何も履いていなければ、捲っただけで乙女の大事なものが見えるのだ。身に付けるものがスカートのみなら、許しは出るかもしれない。これでも苦言が出るようなら諦めようと、麗華は半ば悲しい決意を決めていた。 
 マシな方向へ運ぼうにも限界がある。 
 もし駄目だったら、あとは手で隠すしかない。 
「仕方ありませんねぇ。先生、ここはパンツ一枚でどうでしょう?」 
 パンツ一枚? 
 目論見とは違うが、性器と生尻を隠せるのならそれは嬉しい。そんなことで喜ばなければいけない状況は悔しいが、麗華は内心目を輝かせた。 
「いいんですか? 我がままを聞いて」 
「まあまあ先生、ワタシの考えはですねぇ……」 
 医師は担任の耳へひっそりと何かを伝えた。 
 二人は麗華の目の前で堂々と何かを企んだのだ。 
 一体、何を? 
 麗華の胸に不安が膨らみ、保っていたはずの無心が破られそうになる。剣道でならいくらでも雑念を消せるのに、下着姿を男二人に拝まれていては少しの不安も集中の妨げとなった。 
「まあいい。麗華、約束通りブラジャーは外しなさい。靴下は……履いたままでいい」 
「そうですね。せっかくの白い靴下でしから、履いたままでいてもらいましょうか」 
 明らかに二人の趣味だ。 
 自分の体をこいつらに楽しまれるのは気分が悪い。靴下が二人にとって楽しみの要素になるのなら……。 
「大丈夫です。脱ぎます」 
 麗華はあえて脱いでやろうとする。 
「よしなさい麗華さん。パンティを履く許可を取り消しますよ?」 
 医師は丁寧に止めてきた。 
 何がそこまで良いのかはわからないが、下腹部のことがかかっていては敵わない。 
「……わかりました」 
 仕方がないので、麗華は二人に背中を向ける。 
 後ろ向きなら、いきなり乳房を見られることはない。 
 背中のホックを外して、ぱかりとカップが緩んだところで片腕で胸を押さえる。肩からブラ紐を一本ずつ下ろしていき、生乳を見せないようにブラジャーをカゴへ入れた。 
 両腕で胸を隠しながら、二人を向く。 
「脱ぎました」 
 これでパンティのみだ。 
 靴下などあってもなくても変わりはなく、たった一枚しか身に着けているものがない。何とも心もとない状態で、二人の舐めるような視線に皮膚が熱くなりそうだった。 
「仕方ないからな。麗華、最初はそうやって胸を隠していても構わない」 
 どうして、急に妥協してくれたのだろう。 
 さきほどの耳打ちで何かを企んだには違いないが、これで胸を見られる時間も少しは減らせた計算になるはずだ。 
 あとは全然平気だという顔をし続けてやるだけである。 
「しかし、いい格好になりましたねぇ? 麗華さん」 
「パンティも無地だが可愛いし、似合っている」 
 二人は口々に感想を述べてきた。 
「確か校則には下着の色の指定はありませんでしたよねぇ? 先生」 
「あるにはありますが、形だけでチェックをしているわけじゃないですからね。どれだけ守っている子がいるかはわかりませんが」 
「なるほど、さすが麗華さんです」 
「それとも、検査に合わせて無難なのを選んだのか? ひょっとして、普段は意外な柄付きパンティかもしれないな」 
 いつまで無駄口を叩いているのだろう。 
 目の前で自分の格好について語られて、麗華は不快感と屈辱を覚える。 
「早く始めて、早く終わらせてください」 
「わかっているから、そう慌てるもんじゃない」 
 担任がいさめてくる。 
「それでは検査を始めましょうか」 
 医師は世にもいやらしい笑みを浮かべた。 
  
     * 
 
 最初は内科検診だと言われた。 
 聴診器で肺と心臓の音を聞くのだという。 
 麗華は医師と向き合う形で椅子につき、担任が横からそれを眺める。途切れることのない視線を気にしつつ、それを表情に出さないようにと麗華は意識し続けていた。 
「順番を変えて、背中からにしましょうかね。麗華さん」 
 後ろを向けということだろう。 
 くるりと回ると、真っ白な背筋にはやはり視線が注がれる。腰が引き締まり、背骨のラインが浮かんだ綺麗な背筋が二人を向いた。二人はなぞるようにして見てまわし、視線による愛撫を与えていく。 
 じわりとした熱さが皮膚を這い回り、視線に合わせるようにして上下に動く。ムズ痒くてくすぐったいような思いに襲われ、麗華は肩を丸めたくなった。 
 だが、それを麗華は堪える。 
 男を楽しませるような反応だけは、絶対にしてやらない。 
 さわっ、と医師の指が背筋をなぞる。やけに優しい手つきが背骨の線から首を往復し、指の通過した皮膚にはゾワゾワした感触が残留し、糸を引く。 
 ――くぅぅっ! 
 背中全体の毛穴が沸騰しそうなほどゾクリとして、麗華は声を出しそうになってしまう。もし堪えていなければ、それは感じた女の喘ぎ声のように聞こえたはずだ。 
 ぴたり、と押し当てる金属の冷たさが肌を刺す。 
 またも声が出そうになるものの、喉に到達するその前に押し潰し、喘ぎを体内に封印した。 
「深呼吸をしてください」 
「すー……はー……」 
 ゆっくりと息を吸い上げ、そしてゆっくりと吐き出していく。背中の上で聴診器がペタペタ動き、そのたびに冷ややかな感触が肌を襲う。気を抜けばビクンと跳ねそうになる肩を硬直させ、とにかく何も反応を見せないことに集中した。 
「前を向いて、手をブラジャー変わりにしてもいいですよ?」 
「はい」 
 麗華は前へ向き直り、両手で乳房を押さえた。大きさのために手の平からはみ出て、乳肉がプニプニとしている。担任と医師の視線はそのプニっとした肉に集中する。 
 検査のために呼ばれた以上、れっきとした診察目的もあるのだろう。医師はそこにセクハラを混ぜ、無意味に立ち会う担任はただ好奇心だけで麗華を見ている。 
 担任の視線は胸だけでなく、時にはくびれや太もも、パンティの白い生地を這い回り、そして胸へ戻ってくる。好みの箇所を何度も周回しているようだった。視姦による愛撫で肌がじわじわしてきて、しだいに皮膚全体が微熱を帯びてくる。 
 聴診器が胸の真ん中に当てられた。医師は遠慮なく胸元に顔を近づけ、手に隠された乳房を凝視してくる。聴診器は鳩尾や喉下の部位へ動くも、医師の視線は手ブラの手の甲にばかり集中していた。 
 呼吸につれてはみ出た乳肉は上下に動き、医師はそれを目で楽しんでいた。 
 いくら表情を取り繕っても、胸の中の羞恥心は打ち消しきれない。恥ずかしさに体中が熱くなり、全身の産毛が少しずつ逆立つ。 
「下乳から心音を聞くので、少し持ち上げてください」 
「はい」 
 手ブラの乳をたくし上げるようにすると、はみ出た肉の上弦がぐにゅりと潰れた。乳の柔らかな変形に医師も担任もニヤニヤする。 
 乳房のすぐ下にぺたりと当てられる。 
 ――いつまで顔を近づけているつもり? 
 あまりに長い視線照射に皮膚が泡立つような心地を覚え、麗華はつい自分の乳房に神経を集中してしまう。乳房の中の血流が乳頭へ向かっているのがわかり、手ブラの内側で乳首がほんのりと硬くしこってくるがわかった。 
 ――くっ、硬くなるな! 
 嫌でも尖ってしまう乳首の感触に、麗華は内心慌て始める。それでなくともこんな格好なのに、後々乳首が立っているところさえ見られるなんてことにはなりたくない。戻れ、戻れと念じるが、無情なまでに乳首は勃起しきった。 
 麗華は諦めずに静まるように念じるが、成果が出ることは全くない。そうしているあいだにも聴診器は動き、下乳に押し当てられていた。 
「乳房の真ん中に当てていきます」 
「そんな場所で音が聞けるんですか?」 
「聞けますよ。さあ」 
 医師は問答無用に聴診器をスライドさせ、手の内側にもぐりこもうとする。麗華は仕方なしに右手をずらして聴診器を受け入れた。 
 右の乳房がムニっと潰れ、柔らかなクレーターを作る。医師は力を出し入れして、聴診器を押したり引いたりして遊んでいた。 
 ――これでは、揉まれてるみたいだ……。 
 聴診器のマッサージにより、へこんで、元に戻って、と変形が繰り返される。 
「今度は左です」 
 左乳房も同じようにされ、揉まれているような刺激と不快感を麗華は噛み締めていた。やはり位置的にまともに音を聞けるとは思えず、ならば遊んでいるだけではと思えてくる。できればその都度抗議したり、説明を求めたかったが、自分の不利な状況を思うと反抗ばかりしてはいられない。 
 麗華は耐えるしかなかった。 
「はい。終わりです」 
「――っ!」 
 突然に聴診器が離れていき、硬い乳首が医師の前に曝け出されてしまう。反射的に手で隠して相手の様子を伺った。 
「乳首が立ちましたか?」 
 ――ば、ばれてる? 
「いえ、そんなわけ」 
 ここで焦っては相手の思う壺だと、麗華はあくまで平静を装う。 
「そうですか。先生、心臓も肺の音も異常無しのようですね」 
「さすが、麗華は健康体のようで」 
「ええ、ちょっと心臓の鼓動が早かったのですがね。まあドキドキしていたのでしょう」 
 ――そんな、心臓の音で……。 
 せっかく表情だけは取り繕っていたのに、聴診器から恥じらいを察知されてしまった。かといって不自然に否定しても余計に怪しいだけで、麗華は黙っているしかない。 
「恥ずかしいでしょうからね〜」 
 担任はわざとらしく語尾を延ばしていた。 
 ――そんなことは……。 
 やはり否定したくて仕方がなくなる。 
 麗華はそれでも無表情の顔を作り続け、頬の筋肉一つ崩さないよう気を配っていた。その方が得策のはずだと考えていたからだ。 
「次は目と鼻、耳を覗きますよ?」 
 眼科、耳鼻科検診もこの医師一人でこなすらしい。ペンライトや鼻腔を覗く器具を使って、耳鼻の他にも口内の様子を覗いてくる。聴診器一つで時間を使っていたにも関わらず、聴診などよりも遥かにスムーズにこれらの検診は済まされた。薄々わかってはいたが、羞恥心を伴う検査に絞って、わざとゆっくりやるつもりらしい。 
「次はどうするんですか?」 
 担任は期待を込めて医師に伺う。 
「体格のデータを取りましょう。先生、麗華さんを体重計へ連れて行ってあげてください」 
「わかりました。さ、麗華」 
 室内に置かれている体重計など自分で歩けば済む話だが、担任は麗華の肩を抱くようにして背中を押してくる。 
 麗華は体重計へ押し出され、すぐに数値が表示された。 
「ほうほう。まあ平均的でしょうね。先生、次は座高計へ」 
 麗華は息を飲んだ。 
 座高を測るためには、背筋をピンと伸ばさなくてはいけない。当然、両腕で胸を隠すことはできなくなり、硬くなった乳首は確実に鑑賞されてしまう。 
 担任に肩を抱かれ、連れて行かれる。 
 座高計測の瞬間が迫ってくる。 
 ――早く元に戻って! 立たないで! 
 いくら心で叫んでも、感じてしまった乳房の興奮は収まらない。不本意にも身体の反応は正直なもので、パンティ一枚のままでいればいるほど全身が刺激に弱くなっていく。肩に担任の手が乗せられることさえ、できることなら避けたかった。 
 そして、ついに座高計へ到着してしまう。 
「さあ、座りなさい」 
 担任の指示から腰を下ろし、ひとます背中はくっつける。しかし、胸を隠すための両腕ばかりは解くに解けないでいた。 
「恥ずかしがっても、時間が延びるだけですよ?」 
 医師が麗華を責め立てる。 
「麗華、早くしなさい」 
 担任からの圧力がかかる。 
 このままでは、恥じらいを隠し通して男の楽しみを削ってやる目論見も崩れるような予感がする。恥ずかしくて胸を晒せずにいる瞬間さえ、二人は楽しんでいるかもしれない。それよりは、やはりあっさり見せてしまおうか。 
「わかってます。少し心の準備をしただけですよ」 
 麗華は苦汁をなめる気持ちで腕を下ろし、背筋を伸ばして気をつけの姿勢を取る。一糸纏わぬ乳房があらわれ、頂点では焦げ茶色の豆がそそり立っていた。 
 とうとう生乳を見せてしまったことに、麗華は奥歯を噛み締める。 
 しかし、恥じらいさえ隠せば反応がつまらないとがっかりさせてやれるはず。 
「やっぱりねぇ、乳首が元気になっていましたか。羞恥心は刺激になりますからねぇ」 
 ――……こいつ! 
 効果がないのか、恥じらいを隠しきれていないのか。 
 どんなわけかはわからないが、感情を表に出すよりはやはり隠し続けている方が何となくマシだ。 
「綺麗な色合いじゃないか。麗華」 
 乳首の状態をわざわざ声に出して指摘され、麗華は表情を歪ませそうになる。だが、表情の動きにも注意を配って、麗華は無表情であり続けた。 
 もっとも、頬だけは真っ赤に紅潮していたが。 
「こんな美乳は滅多におりませんよ? 形の良さもさることながら、体型とのバランスがしっかりと取れていて、やはりボディ全体が極上です」 
 医師は麗華の前で屈み込み、乳房の鑑賞を始めた。担任もその隣で膝を曲げ、じっくりと観察してくる。直接の視線照射にはまるで乳首を焼かれるようで、神経から快楽の疼きが駆けて来る。乳腺から来る刺激の信号は乳首へ集まり、感じたくもない快楽に麗華は苦しい気持ちを味わった。 
「見ていないで、座高を」 
 麗華は意識して声を固くする。 
 そうでもしなければ、恥ずかしさのあまりに声が震えてしまいそうだった。 
「ええ、先へ進みましょう。正確に測りたいので動かないで下さいね」 
 医師はようやく後ろへ回り、麗華の頭のバーを下ろす。 
 そのあいだ――。 
 さわっ、 
 担任は麗華の柔らかな太ももに手を乗せて、さも優しげな手つきで撫でてきた。 
「せ、先生! 触る必要は――」 
「動かないで下さい」 
 医師の注意で麗華は抵抗を封じられ、数字を確認してもらうまでのあいだは座高計から動けなくなる。 
 それをいいことに、担任は麗華の太ももをさすり、揉んでくる。 
 数字ぐらいすぐに読めるだろうに、医師は一体いつになったら座高を測り終わってくれるのか。こうしているあいだにも太ももは好き勝手に撫で尽くされ、内股にまで手を差し込まれる。担任の手がアソコへ接近してきて、麗華の心臓は激しく高鳴った。 
 このままいけば恥丘に触れられてしまう。 
 心で感じる不快感とは裏腹に、素直な身体には期待感が疼く。このまま触られて、愛撫されたがっている自分のアソコをがいる。どうして、こんな奴の手に反応してしまうのか。麗華は自分の陰部を叱責したい心境になっていた。 
 ゴツゴツとした手の感触は内股の付け根へ染み入り、恥丘には触れようとはしてこない。変わりに目を乳首に近づけて、毛穴の一つ一つまで観察してきた。 
「毛穴が見える距離からでも、やっぱり綺麗だねえ?」 
 感想を述べられて、麗華は羞恥を噛み締める。 
「乳首もこんなに硬くしちゃって、仕方ないねぇ? 生理反応なんだから」 
「……うるさいです」 
 少しでも動けば医師に注意される中、麗華は首を動かさないように声を絞り出す。そんな麗華の小さな叫びを無視するように、担任は続けた。 
「曲線というか、丸みが滑らかだ。砂糖菓子のように真っ白で美味しそうで、見ているとヨダレでも出てしまいそうになる。ぽつんと乗った淡い乳首がまた可愛らしくて最高だ」 
「……数字読むだけですよね? 早く……」 
 言葉責めから逃れたい一身で懇願するが、医師は聞こえないフリをする。 
「このパンティも好みだよ」 
 担任の手は麗華の腹を触り、そして腹部にかかったパンティの布地を指で撫でた。その位置は女性器に触れる直前で、やはりアソコが疼いてしまう。ヒクッ、ヒクッ、と肉貝が内側から引き締まるのを麗華は感じる。 
「うるさいですって」 
「ふふっ、触ってあげよう」 
 とうとう太い指が恥丘へ伸び、中指と薬指の二本によって包み込むようにされた。くねらすようなマッサージに刺激され、じわりとした熱の痺れを覚える。 
「……んっ!」 
 麗華は小さく声を漏らしてしまった。 
「おやあ? 今のは喘ぎ声かな?」 
「そ、そんなわけが……」 
 否定はしたいが、あまりにそれらしい声を出したので強い否定には出られない。麗華の声は細々としたものとなっていた。 
 縦スジをなぞられるにつれて電流が走り、それは背筋を通り抜けていく。麗華の無表情には無理が出て、唇を噛む動きから若干の我慢の素振りがうかがえた。 
「座高は八十センチジャストですか」 
 やっとのことで、医師は数値を読み上げる。 
 しかし、次は身長だ。 
 すぐに身長計に背中をつける。 
 胸を隠していられる時間などないに等しい。担任に乳首を鑑賞されながらの気をつけ姿勢のまま、少しでも動けば医師に注意を飛ばされる。アゴを引いていなければならないので、首をずらすことさえ麗華には許されていない。 
「麗華、我慢も大事なことだからな」 
 担任は屈み込み、人差し指をピンと伸ばす。それを内股に差し込むようにして、恥丘の縦スジに沿うようにして前後の往復スライドをさせてきた。 
 動いてはいけないのをいいことに、遠慮なしにアソコを愛撫してくるのだ。 
「くぅっ……」 
 麗華は熱気を帯びた域を漏らし、刺激でくねってしまいそうな身体を抑える。感じた素振りを見せれば、余計に楽しまれるに決まっているのだ。筋肉一つの反応にさえ気を配り、麗華は必死に気をつけの姿勢を保っていた。 
 頭にバーが下ろされるも、やはりすぐには数字を読んでもらえない。 
「湿ってきたなぁ! 麗華!」 
「そ、そんなわけ――!」 
「ほら、動いたらずれてしまいますよ」 
 わざと読まずにいるくせに、少しでも体をくねらせれば注意をしてくるのだ。だから麗華は性器からの摩擦を堪え、歯を強く噛み締めながら担任を睨む。 
 確かに麗華の股は熱気で蒸れて、布地はかすかにねっとりとしていた。わざわざ指摘されたことで羞恥心が刺激され、麗華の頬の赤みはますます濃くなっていく。もはや耳まで赤いというのに、それでも無表情を作っていた。 
「社会に出たら嫌なことがたくさんあるからな。こうして、我慢の訓練をすることだって大事なんだぞ?」 
 担任は立ち上がり、両手で乳房を掴んできた。十本の指が柔らかにしなり、踊るかのように蠢き、乳房をマッサージしていく。麗華の乳は内側の芯から熱くなり、溢れ出す快楽をとにかく堪える。 
「けど、こんな我慢が必要なところなんて……」 
 麗華は担任をにらみつけた。 
 真っ赤に染まった顔で、パンティ一枚で、乳を揉まれながらだ。本人は相手の楽しさを削ったり、威嚇をする効果があると思っているが、大人二人はその程度の目論見にはとっくに気づいている。 
 担任は抵抗できないクセに睨みだけはしてくる麗華を楽しんでいた。 
「もしかしたら、セクハラを受けても訴えられない状況に陥るかもしれないだろう?」 
 ニヤニヤとした表情と共に、攻め方が変わる。下乳を手先で救い上げるかのようにして、プルプルと振動を与えてくる。柔らかい乳房は波を打ち、たっぷりと揺れ動く。麗華は耐えるために拳を握り締めていた。 
「先生が今こうしているようにですか?」 
「そうだよ?」 
 担任は両の人差し指を乳首に乗せて、上下に動かすことで玉を虐めた。指が動くにつれて乳首の玉も向きを変え、あらゆる方向を向いていく。刺激が乳腺をほとばしり、麗華は歯を食いしばった。 
「麗華さんは背が思ったよりありますねえ。167センチですよ?」 
 やっとのことで数字が読み上げられ、麗華はすぐに担任の手を振り払った。もう気をつけをしている必要はない。腕で胸を覆い隠し、湿りかけのアソコに手をあてる。 
 次にどんな検査があるのかはわからないが、少しは終わりに近づいたはずだ。 
「麗華、装っている顔は最高だったぞ?」 
「な、何を言ってるんですか?」 
 まさか、無駄だったというのだろうか。 
 もし気づかれていたとしたら、せめてもの抵抗は全て逆効果だったことになる。必死に耐えている姿を嘲笑い、ニヤけた顔でずっと楽しんでいたことになるのだ。 
 想像するだけで産毛が逆立ち、背筋に寒気が走った。 
「さあ、スリーサイズを計る。もう一度おっぱいを見せなさい」 
 担任はメジャーを用意し、麗華に迫った。 
「頭の後ろに手を組むのですよ?」 
 医師からの指示に泣く泣く従い、麗華は今一度乳房を丸晒しにする。全裸で頭に手を組んだその姿は、さながら羞恥の取調べでも受けているかのようだ。 
 そして、実際に麗華は身体を検査される。 
 メジャーの紐が背中をまわり、乳房へ巻きついた。担任はわざわざ乳房の上に目盛りを合わせ、さりげなくタッチしながら数字を読む。 
「84! 84センチですよ!」 
 担任は大声で読み上げ、医師が数値を記録した。 
 メジャーは乳のすぐ下へずらされて、下乳に手があたってくるような位置で目盛りが合わせられた。 
「さてさて、アンダーバストは? 70センチ!」 
「くっ……」 
 誰にも知られたくない秘密の数字が、よりにもよって最低な男の測定されている。麗華には耐え難い屈辱だった。 
 しかも、無表情を装ったところで逆効果ではという不安もある。 
 麗華はどんな顔をしていいかわからず、結局は唇を噛み締めたり頬を強張らせたりしていた。 
「トップバストとアンダーバストの差は……ふむ。麗華さんはCカップですねぇ」 
 医師も医師で、わざとらしくカップサイズを声に出す。 
「ウェスト54!」 
 今度は腰に巻かれたメジャーから読み上げられ、残るはヒップとなる。 
 お尻を通して巻きつけられて、恥丘のそばに目盛りが合わせられた。担任はすぐには数字は読まずに、パンティ越しのアソコをじっくり眺める。指で弄ったせいか、貝肉に布が張り付きラインがくっきり浮き出ていた。 
「あの、早く」 
「やっぱり、濡れてるな」 
 恥丘の元で布地はかすかな水分の変色をし、実際に触れれば蒸れたような水気がある。濡れているという以外に他はなかった。 
 じい……と至近距離から視線をあてられて、アソコがヒクっと疼いてしまう。大事な部分の前に男の顔があるだけでも嫌なのに、こんな最低な奴のために下腹部がウズウズしてしまうのがたまらなく不愉快だった。 
「早く数字を。さっさと終わらせてください」 
 麗華は声を尖らせる。 
「はいはい。えーっと? ヒップ86だ!」 
 担任は最後まで大声で読み上げ続けた。 
「上から、84・54・86ですね」 
 医師がさらに復唱する。 
 気分は最悪だが、これでスリーサイズも終了した。内科検診に身長体重、座高や耳鼻科検診なども消化したので、確実に終わりに近づいているはずだ。 
 耐え抜いていけば大丈夫だ。 
「残りも全部計っちゃいましょうか」 
 担任が医師に語りかける。 
「え、残りって。体格はみんな計りましたよね?」 
「おやおや。乳首や乳輪は計っていないでしょう?」 
 医師が答えた。 
「そんなとこまで――?」 
「ええ、恥ずかしい部分のサイズを見るのも発育検査のうちですから」 
 医師は卑猥な笑みをよこして、麗華をぞっとさせる。 
 担任の手にはノギスが用意され、そして麗華に迫っていった。 
 

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