一台の車が海の花女学園へと続く田舎道を走っていた。 
乗っているのは父と娘の二人だけである、娘は車の外の流れる景色をただジッと見ていた… 
彼女の名前は「橘 伊織」そして時折、窓ガラスに運転をしている父、和磨の姿が写る。 
そんな時、伊織は窓越しに父を忌々しく睨みつけるのだった 
家を出て一時間以上過ぎているが二人には一言の会話もなかった…… 
 
名門であると同じに難関を極めているで有名な海の花女学園の入学試験を伊織は見事に突破! 
これから学園の寮で新しい生活を迎える。 
入学式は明日なのだが伊織のように他府県の者や海外から来る留学生(がほとんどなのだが)などは 
前以て学生寮に移り、先に送ってある荷物などを出して住む準備をするのだった。 
 
伊織は最初、電車とバスを乗り継いで行くつもりだったのだが、まさか車で送ってもらえるとは思いもしなかったのだった。 
と言うのは、あの忌まわしい出来事以来、家族の…特に父の伊織に対する態度は冷たいものであったからだ、 
それなのに(何をいまさら)と言う思いと同じに四年前の嫌な記憶が甦って来るのだった……  
 
 
あの日… 
土曜日の昼過ぎに学校が終り 
伊織はいつもの様に友達と下校して、いつもの場所で友達と別れ、いつもの帰り道を一人で歩いていた。 
 
そんな時、後ろから「あの〜スイマセン」と声を掛けられ、伊織は立ち止まり振り返った。 
そこには黒のワンボックスタイプの車に乗った、大学生位の人の良さそうな男性が車の窓から少し身を乗り出していた、 
伊織は「はい、なんですか?」と返事をして男に近づいて行く 
男は「ここに行きたいんだけど、道に迷っちゃって」と言って地図を指差す。 
 
差された場所を見て伊織は(別に迷うような所でもないのに)と不思議に思いながらも 
「ああ、ここでしたらあのカドを…」と説明し出したその時 
突然、車の高部座席が開きアッと言う間に伊織を車内に引き摺り込んで車は急発進した。 
 
「えっ? なに…何なの?……」 
 
一体自分に何が起きたのか全く理解が出来ず辺りを見回した… 
どうやら今、自分は車の後部にいるらしいのだが、何故かガランとした空間で 
窓にはスモークのフィルムが張られていて薄暗く、そして近くに髪を茶色と金色に染めた 
二人の男性が伊織を見ながら 
「ヘヘッ うまく言ったな」 
「おい、コイツすげーカワイイじゃん」などと話していた。 
 
(もしかして、これは誘拐!)と思った伊織は 
恐い思いがあるにも拘わらず出来る限り気丈に振舞う。 
 
「ぁ…彼方達、これって誘拐なんでしょ…そんなのすぐ警察に捕まるわよ… 
 今直ぐ私を車から降ろしてくれたら、今日の事は誰にも……」 
 
と伊織が言い終わらない内に三人の男達は突然笑い出した。  
 
「な…なに?」 
「クックッ…いや、誘拐とはチットばかし違うんだよな〜」 
「そうそ、俺等の目的は金じゃなくてオメーなんだよ」 
「えっ?」 
 
伊織は男達の言ってる事が理解できなかった。 
彼女の家は、父が会社で重役を務めてる事もあって、なかなか裕福だった 
それなのに自分を連れ去っておいて目的はお金じゃないと言う意味が分らなかった。 
(じゃあ、ほかに一体なにがあるの?) 
と考えたいる伊織に男が話し掛ける 
 
「わかんねぇかな〜 要するにオメーの体で遊びてぇんだよ!」 
「ここまで言えば分るよな、分ったら着てる服を全部脱いでこっちこいよ」 
 
伊織は自分の耳を疑った、小学生と言えども性の知識は多少なりとも知っているし、 
心無い男性が女性に、無理矢理に暴行を働くいわゆる強姦と言うものも知っていた… 
だが、まだ小学生の自分にそんな事をする者がいるなど思ってもみなかったのだった。 
 
「じょ…冗談ですよね…私…小学生ですよ…まだ12歳だし…こ、子供だから…そんなの出来ませんよ…」 
 
目に涙を浮かべ、恐怖で声も体も震え出した伊織に追い討ちをかける様な 
残酷な言葉がさらに絶望へ突き落とす。 
 
「大丈夫だって、戦国時代じゃ12歳で普通にガキを産んでたらしいぜ! 
 つまりオメーはもう立派な大人ってワケよ」 
「良かったじゃねえか、問題が解決して、そんじゃ俺達と気持ちいい事しようね」 
「…そんな……ィャ…そんなの絶対ヤダッ!」  
 
伊織は自分の体をギュッと固く抱き締め足も体に引き寄せる 
その姿はまるで胎児を思わせるように縮こまっていた。 
 
「チッ あんまり手間をかけさせんなよ、たくっ…」 
と言って男達は面倒臭そうに伊織の手や足を掴んで服を脱がそうとするが 
だが、もちろん伊織は「ヤダ…やめて…放してよ」と必死に抵抗をする。 
 
その時「パンッ」と乾いた音が響き渡ると同じに「キャッ」と言う小さな悲鳴をあげて 
伊織は叩き付けられる様に倒れ臥した。 
殴られた頬がビリビリ痺れるような痛みから、ジンジンと熱を帯びた物へと変わる 
もはや、恐怖と痛みで涙が溢れ出て止まらない 
そんな伊織に金髪の男は乱暴に髪を掴み上げる。 
 
「オイ、どうせ初めてヤル時は痛てぇんだからよ、余計な痛い思いはしたかなえだろが、 
 おとなしく言う事を聞けや コラ!」 
「ィッ…髪…引っ張らないで……痛いよ…」 
 
さらに茶髪の男が「こんなの使いたくはないんだけどね」と言って 
サバイバルナイフを取り出し、目の前でちらつかせる、 
伊織は初めて見る包丁のように大きく、それ以上に鋭い刃をしたナイフに背筋が凍り付く。 
 
「あんまり聞き分けがなかったらさぁ、一生消えない傷をつけなきゃいけない事に 
 なるかもしんないんだけど……ウソだと思うなら、ためして見よっか?」 
「ヒッ……イッ…ヤァ……やめ…」 
 
あまりの恐怖のため、思うように言葉が出てこないが 
首を激しく左右に振ってそれを拒む 
 
「それじゃあ、お兄さん達の言う事を何でも聞いてくれるよね」 
 
伊織は脅えた表情でガクガクと首を縦に振る 
その様子を見て茶髪の男は満足そうにニヤリと笑う 
(ここまでビビらせりゃ、もう抵抗する気も起きねぇだろ) 
「じゃあ服を脱いで行こうか、俺達も手伝ってやるからよ」 
「…は……は…い…」  
 
言われるまま、されるがままに着ている服を脱がされて行き 
あっと言う間に全裸にされてしまう… 
(恐いよ…恥ずかしいよぉ…私、なにも悪い事してないのに…どうしてこんな目にあうの?) 
 
伊織の体は雪のように白い肌をしていて、胸には膨らみ始めの幼いが形の良い乳房があり、 
腰はキュッと締まっていて、胸から腰、尻にかけて女性らしい綺麗なラインを作り出していた、 
股間にはまだ毛は生えておらず、細くて長い手足は儚く脆そうである… 
幼い子供のようであり、どこか大人びている、そんな魅力的な体をしていた。 
 
「へぇ〜、キレーな体してんな、コイツ」 
 
男達は伊織の乳房や尻、股間をまるでオモチャを扱う様に弄んだり 
体中を舐め回したりして楽しんだ 
 
「ぃ、痛い…オッパイ引っ張らないで……ヒッ…ャッ…そんなトコ広げて…舐めないで…気持ち悪いょ」 
「こんなもんでいいだろ、じゃ俺が先にいかせてもらうぜ」 
「おう!」 
 
金髪の男が伊織の幼い割れ目に自分のペニスを押し当てグッと力をいれる 
 
「痛…いいぃ……ダ…メェ…そんなの…無理……入いんないよぉ……」 
 
伊織の悲痛な声などかまわず、強引に突き刺し立てる 
幼い性器は無残に広がり、奥深くメリメリッと侵入して行く 
 
「ィぎ……ィダィ…よぉ……お願…やめてぇ…」 
 
まるで股間から頭まで真っ二つにされる様な激しい痛みが伊織を襲う 
だが男はそんな伊織を見て楽しむ様に、さらに腰の動きを早くして行くのだった。  
 
「さすがは小学生、つーか処女穴だな…メチャクチャ締まりがいいぜ」 
「マジかよ! だめだ、俺…待ってられねぇよ、もうケツにいっとくわ」 
「ぁ……ヤッ…何…するの?……」 
 
茶髪の男は伊織の後ろに回り込んで、小さな肛門に唾液を垂らしつける 
そして指で周りを塗り広げながら、穴の中にグリッと捻じ込んだ。 
 
「痛っ…そこは……ダメェ…」 
 
さすがに肛門は抵抗があるのか、グリグリと穴を穿る指を除けようと手を伸ばす 
だが、金髪の男がその手を掴んで、それを阻止する 
茶髪の男は「そろそろ、いいだろう」と言ってペニスを押し当て 
その小さな尻穴にズブブブッと柱の根本まで埋めて行く。 
 
「はぁぅ…くはっ……苦…しい…死んじゃう…よぉ……抜いて…お願い…抜いてぇ…」 
 
直腸に今まで味わった事の無い凄まじいばかりの異物感が伊織を容赦なく襲う 
前と後ろの穴を同じに、時には交互に突き上げられ気を失う事すら出来ないでいた。 
そしてついに性器を犯していた男が絶頂に達し、伊織の中をさらに汚していく…… 
 
「ッヒァ…お腹が……熱い…」 
「かぁ〜気持ち良かった…ヘヘッ、お前の処女の血で俺のチンポが 
 汚れちまったぜ、しゃぶってキレーにしてくれよな」 
 
そう言って男は引き抜いたばかりのペニスを伊織の顔の前に持って行く 
 
「…そんな…ウゥッ…もう許して……おね…もごぉ!?」 
 
男は話などまったく聞く気が無く、無理矢理ペニスを口の中に突っ込んだ。 
 
「オラッ これがオメーの処女の味だ、最初で最後だからじっくり味わっとけよ」 
「もごっ…んぉっ……んう―――……」 
 
その後景を車を運転している男が見て 
「チッ 楽しそうにしやがって、おあずけを食ってるこっちの身にもなれよ」 
と羨ましそうに吐き捨てる。 
 
(どうして?…こんな酷い事してるのに…どうして楽しそうに見えるの?…) 
 
 ――――――どうして………――――  
 
 
伊織は「ハッ」と我に返った 
窓の景色はいつの間にか森に変わり、舗装された山道を走っている 
海の花女学園にはあともう少しで到着する様だった。 
 
(結局あの後、車は人気の無い所に行き、そこで三人に好き勝手に 
 弄ばれたわ…このまま嬲り殺されるのだと思うほど酷い物だった) 
 
伊織はチラッと横目で父を見る…… 
 
(この人も劣らず酷かったわ…あいつ等に解放された時はもう夜になっていた…… 
 さらわれた場所とほとんど同じ所に放り出されただけ、まだ良心的だったのかしら?… 
 そこから壁伝いにやっと家にたどり着いたのに…帰って来た私の姿を見て何があったのか 
 大体の予想がついた家族はまるで生ゴミを見るような目をしていたわね……) 
 
家に帰って来た伊織を心配して駆け寄る者は一人もいなかった。 
伊織の姿はブラウスもカーディガンもスカートも簡単に着せられ、乱れていた。 
下着は盗られて穿いていないため、男達の精液が足をつたい流れ落ち 
顔や髪にも掛けられた跡が見られる…そのため家族はそんな彼女を見下した目で見ていた。 
 
「汚ったな〜い、それに臭い! そんなんで家に入って来ないでよ〜」 
「ぇ?…お姉ちゃん…」 
「あとの事考えてもらわないと、掃除するの私なのよ」 
「そんな…お母さん…」 
「よく家に帰って来られたな、恥知らずな娘だ…まったく」 
「お父さん…酷い…みんな酷いよ、そんな言い方しなくてもいいじゃない! 
 私…恐くて…痛くて、苦しくて…死ぬような思い………して来たのに…」 
「いっその事、死んでくれいてた方が世間から同情が買えたのだがな…」 
 
(えっ……お父さん…それ…本気で言ってるの…私は……どうでもいい子なの…) 
 
父の意外な発言に伊織はショックをうけ、目の前が真っ暗になった 
母や姉がまだ何か言っていたが、今の彼女にはその声は届いていなかった。  
 
 
また嫌な事をおもいだし、思わずギュッとスカートの裾を握り締め 
隣の父をキッと睨みつけ、すぐに外方を向く。 
 
(「死んでくれていた方が世間から同情が買えた」なんて事を親が強姦されて帰って来た 
 娘に言う言葉なの……この人は世間体の事を考えてばっかり、だから自分の家から 
 不名誉な娘が出たのが気に入らないのね、私はあの時の彼方の言葉を一生忘れないわ…) 
 
それまで黙って運転をしていた父が伊織に話し掛けて来た。 
 
「伊織、お前に話しがある」 
「………………」 
「返事くらいしたらどうだ……まあいい、自分の事だからよく聞いておきなさい… 
 実はついこの間、お前の結婚相手を見付けて来た」 
「…えっ?……」 
 
突然の言葉に驚きの余り目を大きく見開き父を見る 
なんでもその相手は取引先の社長の息子で年齢は32歳、そろそろ身を固めたいと思っている所に 
丁度、年頃の娘が二人いる父に話しが来たのだと言う。 
 
「お前が結婚すれば、会社だけではなく我が家の為にもなる、どうだ悪い話しではないだろう… 
 別にすぐと言う訳じゃない、結婚は高校を卒業してからで構わない」 
 
伊織は、なぜ父が今日会社を休んでまで自分を送り届けてくれるのかを理解した 
(そんなくだらない話をするために……) 
伊織の中に静かだが激しい怒りが込み上げる 
 
「嫌よ…そんな話、綾姉さんの所に持って行ってよ…どうして私なの… 
 どうして今、そんな先の話をするのよ…」 
「綾とお前の写真を見せたら、相手はお前の事を気に入ったからだ……見た目だけじゃない 
 中学の弓道の成績や名門校への入学はその辺の女達とは比べ物にならないからな…… 
 今、話しをするのは、卒業したら直ぐにでも結婚できる様にその心積もりをしておいて貰う為だ) 
「…そんな…私の意志は?…私、まだ大学にも行きたいのに……どうして顔も… 
 名前も知らない人と結婚しなきゃいけないの?……私、絶対に嫌よ… 
 そんなの勝手に決めて来ないでよ!」 
 
普段から無口で冷静な伊織が珍しく感情的になって講義する 
だが、父はそんな事などでは、まったく動じる気配は無い。  
 
「大学など行く必要は無い、お前は黙って父さんの言う事を聞いていればそれでいい」 
「私は…そんな事の為に苦手だった勉強や弓道を頑張って来た訳じゃ……ないのに」 
(私が頑張ったのは、弓道の全国大会で優勝したり、姉さんが入れなかった 
 海の花女学園に合格したのも、すべてはあの日…私のことを「死んだほうがいい」 
 と言った彼方を見返す為だったのに…それなのにどうしてこんな事になるの? 
 この人はどれだけ私を傷つければ気が済むの? それともそう言うのが分らないの?) 
 
自分の努力して来た事が結果として父のいい様に利用されるのが悔しくて仕方なかった。 
 
「ゴールデンウィークになったら一度帰って来なさい、その人を家に招こう 
 直接会って話をすれば、お前も気に入るかもしれんぞ」 
「……誰が………」 
 
それだけ言うと伊織は外方を向いて押し黙った 
それ以降二人の会話は無くなるのだった。 
 
しばらくして伊織を乗せた車は海の花女学園に着いた。 
二人は車を降りトランクから荷物をだす、 
すぐにバッグを担ぎ寮へと向かう伊織を父は呼び止め 
伊織は振り返らずに立ち止まる。 
 
「伊織、結婚の事は真剣に考えておくんだぞ」 
「…………」 
「お前は一人でまともに外を出歩けないのだろう…… 
 そんなお前が一生一人で生きて行けると思っているのか」 
「!?……」 
 
痛い所を付かれ、伊織の顔が俯く…… 
あの日以来、若い男性(中学生位から)を見ると体が小刻みに震えだし 
時には半径1メートル以内に近づかれると恐くて動けなくなる事があるのだった。 
それは相手が女性でも例外ではない、男性ほどではないが女性の場合は、 
体に触れられると、あの日の事を思い出し、体が強張ってしまい思わず 
「私に触らないで」と言って突き放す様に相手を拒絶してしまうのだった。  
 
「分ったな……そうだ、お前に渡す物があった、これを持って行きなさい」 
 
振り向くと父は車の後部座席から袋に入った一本の弓を取り出し伊織に手渡した。 
 
「目利きの出来る者に一番良いものを持って来させた、弓の事はサッパリだが 
 お前なら分るだろう、なんでもこの弓は………」 
 
伊織は途中から父の話を聞いていなかった…また、父が見えを張って 
無駄に高価な物を買って来た事に嫌気が差したからである。 
 
「…と言う物らしい、まあ、どうでも良いくだらん事だがな… 
 それじゃあ、父さんは学園長に挨拶をしてから帰るから……しっかりな」 
 
そう言って校舎へと向かって行く父の後姿を見詰めながら伊織は考える 
(あの人にとって一体、私は何なのだろう)と……… 
そしてその視線を手に持つ弓へと落とす。 
 
「こんな物、一生使うもんですか…」 
 
伊織は弓をギリッと強く握り締めた 
この弓が後に伊織を…仲間達を助けるのに役立つ事になる 
だが、それまでは部屋のクローゼットの中に眠るのだった 
 
そして伊織は学生寮へと向かって行列を作って行く 
他の新入生達から少し離れた所を歩き始める…… 
この海の花女学園で数々の出来事、事件、淫獣との戦いを通して 
数多くの親友が出来るなど、この時の伊織には夢にも思わなかったのだった。 
 
                     〜傷ついた心〜 ―完―  
 

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