「ええ〜?どうしましょう……困ったわね〜」  
番台の言葉に母はのんびりとした口調で答える。  
「この子はちゃんと大人しくさせますから、ダメでしょうか?」  
「ほんとすいません、その子だからとかじゃないんですよ。最近ちょっとやんちゃなぼうず達が女湯で若いお客様に悪さしましてね…  
 それで、お得意様からも苦情が出ちゃって…だから男の子は女湯に入れないんですよ……いや、ほんとすいません」  
宮子は弟の大樹と母親の三人で銭湯に来ていた。  
ここ何週間か調子の悪かった風呂がついに壊れたらしく、残業で遅くなると電話があった父親を除いた  
家族三人だけで銭湯に来たのだった。  
番台の男はすまなそうに何度も謝るが、大樹が女湯に入ることは頑なに拒否している。  
今の時代にわざわざ銭湯に来てくれるお得意様は貴重なのだろう。  
(あ〜あ…なんでお父さん、こんな日に限って残業なんだろう…そうすれば問題無かったのに…)  
「こまったわ〜。ほんと、どうしましょう」  
あまりそうは聞こえない間延びした口調。  
(こういうときくらい、もっと強く言えばいいのに)  
どこまでものんびりした母。そんな母が大好きだが、それでも不満はある。  
長くなりそうだな、そんなことを考えていた時だった。  
「あの…僕、ちゃんと一人で入れるから。だから……大丈夫だから…」  
番台と母のやり取りに堪り兼ねたように、大樹が口を開いた。  
「う〜ん…ごめんね僕。僕みたいな小さな子だけの入浴もダメなんだ。せめてもう少し大きくないと…」  
大樹は自分なりの覚悟を決めて、勇気を振り絞った提案を断られて少し泣きそうな目になっている。  
自分のせいでこんな状態になってしまっていることに、責任を感じているのだろう。  
「あの、じゃあ、私も男湯に入ったらどうですか?小さい子一人だとダメなんですよね?」  
あまり気は進まなかった。  
当たり前だ。見ず知らずの男に裸を見せることになるのだから。  
しかし、このまま帰るようなことになれば、大樹の心がどれだけ傷つくかわからない。  
それはもっと嫌だった。  
「お嬢ちゃん、年はいくつだい?」  
「十二……じゅうに、なりました。…十歳です」  
実年齢では少し高すぎるかもと思い、少しだけ鯖を読む。  
「……いや、お嬢ちゃん位の子なら、こっちは文句無いんだけど…  
 女の子が入ってくるなんてめったに無いからね。たぶんジロジロ見られるよ?相当恥ずかしいよ?平気?」  
宮子の身体がかすかに震える。……無神経な質問に思わず目つきがきつくなりそうになるが何とか抑える。  
「……ええ、大丈夫です。じゃあお母さん、私、こっち行くから」  
「宮子、ごめんね〜。さすがに私が男湯に入る訳にはいかないし…大樹のこと、よろしくね〜」  
「うん。まかせて!大樹は大人しい良い子だもんね」  
「うん。僕、お姉ちゃんの言うこと、ちゃんと聞くもん!」  
こうして二人は男湯へと入っていった。  
 
脱衣所に入ってすぐ、宮子は周りを見回す。  
幸い脱衣所には人はいないが、風呂場の方には何人かの人がいるようだった。  
「さ、さあ大樹!脱ぐの手伝ってあげようか?」  
宮子は自分を鼓舞するため、無理に大きめの声を上げる。  
「僕、もう一人で着替えられるよ。大丈夫だよ」  
「あ、うん…そ、そうだよね。じゃあ、私も着替えるね…」  
宮子は服に手を伸ばすが、なかなか思うようにボタンが外せない。  
今、この場には自分達しかいないとはいえ、いつ男の人が入ってくるのかわからないのだ。  
「お姉ちゃん…」  
ふと声のしたほうを見ると、大樹が心配そうに覗き込んでいる。  
「あ…えっと、どうしたの?」  
宮子は心配を掛けまいと必死にボタンを外して、笑顔を大樹に向けると、大樹も素直に笑顔を返す。  
「お父さん、残念だね。お姉ちゃんと一緒にお風呂入りたがってたのにね」  
「ふふっ、そうだね。あ、お父さんに言っちゃダメだよ。きっと拗ねちゃうから」  
(お父さんが一緒来てたら、私は男湯には入らなかったんだけどね)  
大樹の素直な笑顔に、宮子の心は少しだけ和らいでいく。  
 
(良し!大丈夫!タオルでちゃんと隠したし、大人しくしてればそんなに注目されないはず!)  
風呂桶を胸の前で抱えるように持ち、バスタオルをしっかりと身体に巻きつけて身体を隠し、  
わくわくした様子の大樹の手を取って、宮子は風呂場へと足を踏み出した。  
 
広い空間の中に、客は若い男の人が二人だけ。二人の客はチラとこちらを見ただけで、特に気にされている様子もなかった。  
ほっと胸を撫で下ろしたのも束の間、  
「うわぁ!すごい!こんなに広いよ、お姉ちゃん!」  
と大樹が叫ぶと、二人の客が驚いた様子で宮子のほうを見る。  
「大樹。大きな声出しちゃだめだよ」  
(ひぇぇ…いきなり注目されてるよ…ちゃんと注意しとくんだったぁ…)  
表面上涼しげな顔をしながら、心臓はバクバクと大きな音を鳴らす。  
二人の客は対照的だった。  
一人は、宮子と目が合うとばつが悪そうに目を逸らし、けれどチラチラと視線を向けてくる。  
しかしもう一人は、宮子と目が合っても気にせずに体全体を一通り眺め回してから、何事もなかったかのように身体を洗い始めた。  
(やだなぁ…ちゃんとタオルで隠してるのに、じろじろと……しょうがないか…女の子が…男湯に居るんだもんね…)  
「お姉ちゃん、まずは体を洗うんだよね」  
「え、あ、うん。そうだよ。……って、ちょっと待って!」  
「ん?なぁに、お姉ちゃん」  
大樹が座ってしまったのは、風呂場のど真ん中。脱衣所からはまる見えで、二人の客に前後を挟まれる形だ。  
島カランが障害物になって直接見られるわけではないけれど、男の人が立ち上がるだけで見られてしまうかもしれない。  
不安は付きまとうが、大樹を一人残して端っこの方へ行くのも、男の人を意識していることを白状するみたいで躊躇われた。  
仕方なく宮子は大樹の隣に腰を下ろし、少し警戒しながらタオルを外して、持ってきた石鹸を泡立て始めた。  
宮子は泡立った手を真っ先に胸へと伸ばす。  
クラスでも大きめで、最近ははっきりと膨らみがわかるようになってきた胸を泡まみれにして隠すためだ。  
(恥ずかしい…男の人がいるのに……私、胸触ってる……でも、早く隠さないと…もっと恥ずかしいんだもん…)  
何とか胸を泡まみれにし終えると、ちょうど前の男の人が立ち上がり、宮子はあわてて胸と下腹部を隠す。  
いくら泡まみれでも、手で隠せるやはりなら隠してしまう。  
男の人はチラと宮子の胸やお腹の辺りに視線を向けただけで、お風呂のほうへと歩いていき、宮子たちからは見えないが  
ザブンと音が聞こえた。  
もう一人の客も脱衣所へと向かい、宮子は身体を隠しながら洗っていると、すぐに見えなくなった。  
(…胸とか、し、下のほうとか、見えなかったよね。…お客さん一人だけだし、気をつければ…たぶん、大丈夫…)  
 
宮子は身体を洗い終えバスタオルをしっかり身体に巻きつけてから、大樹とぬる目のお湯のほうへと向かう。  
熱めの方には男の人が入っているせいもあるが、二人とも熱めのお湯が苦手だからだ。  
視界の隅に見える男は、先ほどと同じように堂々と宮子のほうを見ている。  
大樹は一人でさっさとお風呂に入ってしまい、宮子は一人少し悩んでいた。  
どうすれば見られないか。  
バスタオルを巻いて入るのはマナー違反なのは知っている。  
知らなければともかく、知っている以上巻いて入るわけにはいかない。  
仕方なく、タオルの中に手を差し込み、内側から結び目を解く。  
かすかに布の擦れる音と共に、まだ幼く、しかし僅かに丸みを帯びた姿態が露になる。  
ほんのりと膨らんだ胸に片腕を押し付け、下腹部をもう片方の手で隠した、少々みっともない格好。  
みっともないがゆえに、宮子がどれほどの羞恥を感じているか、男にはっきりと伝わる。  
できるだけ内股で足を上げ、できるだけ急いで湯船に足を入れる。  
しかし、それでは守りきれない場所が一つあることは、宮子も承知の上だった。  
男の目は唯一守られていない真っ白いお尻へと注がれる。  
足を動かすたびにプルンと柔らかそうに揺れるお尻。  
男の視線がそこへと注がれていることを理解しつつ、しかし、胸や下腹部から手を離すことはできなかった。  
僅か十秒にも満たない、けれど、見られていると知りつつ、宮子は男にお尻を晒すしかなかった。  
 
宮子はほっと胸を撫で下ろす。  
男は熱めのお風呂の真ん中あたりで、宮子達はちょうど境目のあたりに浸かっている。  
そこならば、宮子は胸から手を離しても、仕切りの影で見えることが無いからだ。  
大樹は持ってきた風呂桶を浮かべて遊んでいる。宮子もバスタオルなどを入れた桶を風呂に浮かべくるくると回している。  
どうもすることが無い。が、何も思いつかないので、仕方なく風呂桶をくるくると回し続ける。  
「ねえ、ここ来るの初めてだよね?」  
「は、はい!?…えっと、ええ、そうです……よく、わかりますね」  
唐突に話しかけられ、思わず声が裏返る。  
 
「俺は良くここ来るんだけどさ、その子は見たこと無いから」  
「ああ、それで…私も大樹も…この子も銭湯なんて初めてなんです…」  
「へぇ〜、そのわりには、ちゃんと体洗ってから入ったり、バスタオル湯船につけなかったり、しっかりしてるね」  
「い、一応、お母さんに聞いて…」  
宮子もすることが無かったため、それになんとなく話しかけられたら無視するわけにもいかず男との会話を続ける。  
(私…会話してる…見ず知らずの人と……お風呂に入りながら…裸で………裸、なのに…)  
意識したとたん、ドクンと心臓が波打った。  
間仕切りがたった一つ。  
それが宮子を男の視線から守っているものだ。  
男が宮子の身体に興味が無いわけではないことは、たびたび感じた視線から明らかだ。  
けれど、今はぬる目のお風呂に近づくでもなくただ話しているだけで、そんなに悪い人ではないのかもと感じ始めてもいる。  
しかし、この人は自分が裸なことを知っていて、肝心なところは見せていないとはいえ、  
お尻や胸を見られた人だと思うと恥ずかしさがこみ上げてくる。  
(やだな……なんか…ドキドキする…)  
今、宮子は胸もアソコも手で隠していない。  
視線を落とすと、お湯の中に少しだけ膨らんだ胸が見える。  
その先端がチョコンと少し膨らんでることも、足が少しだけ開き気味なことも、はっきりと見えた。  
(やっぱり知らない男の人って違うんだ……大樹になら、みられてもぜんぜん平気なのに……  
 ただ一緒にお風呂に入ってるだけで、こんなにも……)  
宮子が胸に手を当てると、心臓がドキドキと強く鼓動を刻む。  
 
「宮子ちゃ〜ん!私、マッサージしてるから、出たら呼びに来てね〜」  
女湯のほうから聞きなれたのんびりした声が聞こえる。  
「わかった〜!……あ、お母さんと来たんです」  
「へえ、なんか優しそうな声だね」  
「ええ。とっても優しいです。あ、でもちょっとのんびりしすぎです」  
男と適当な話をしていたため、宮子もすっかりリラックスしていた。  
「お姉ちゃん。僕、ちょっと熱くなってきた」  
「ん〜、じゃあ、えっと…もう少しあったまったらでよっか」  
「うん。わかった〜」  
しかし、落ち着いたのも束の間、いざ出るとなったらまた羞恥心がぶり返してくる。  
(大丈夫!タオルで隠しながら立てば……でも、やっぱりお尻は見えちゃうよね…)  
一応覚悟はしていたものの、それでも恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。  
「じゃ、じゃあ、大樹忘れ物は無い?」  
「うん。大丈夫!」  
そう答えると大樹はさっさと一人でお風呂から上がってしまう。  
「あの、じゃあ、これで…」  
「ああ。湯冷めしないようにね」  
男の方を向いて、まずバスタオルを両手で前面を隠しながら上げていく。  
どうしても後ろが無防備になるため、たとえ恥ずかしくても男の方を向いてバスタオルを上げる。  
そして、片手でバスタオルを押さえ片手で風呂桶を持つと、後ろが無防備だと知りつつ、男に背を向けた。  
湯船から出るときも必要以上に足を上げないように気を使い、チラと後ろを見てみる。  
(やっぱり……見てる……私のお尻……見られてるよぉ…)  
「ん?どうかした?」  
男は悪びれる様子も無く、宮子が見ていると知りながら腰の辺りに視線を這わす。  
「い、いえ……あの、あんまり見な、って、ええ!?」  
いきなり桶を持った手が引っ張られた。  
「ほら、お姉ちゃん!早く行こうよ!」  
「ちょ、ちょっと大樹!待って、待ってってばぁ」  
大樹に急に手を引かれ、無防備なお尻を晒したまま宮子は走らされる。  
(や、やだぁ……今もきっとお尻見られてるのに……いやぁ…恥ずかしいよぉ…)  
早い足の動きにお尻がプルプルと揺れる。  
宮子はそれを意識しながらも、大樹に手をつかまれているため隠すことも止まることもできない。  
しかし、僅かな衝撃と共に、大樹の足が唐突に止まる。  
「いてぇなぁ〜。なにすんだよ」  
大樹の前には宮子より少し年下くらいの男の子が二人立っている。その子達の一人にぶつかってしまったのだ。  
 
「あ、あの…ごめ、ごめんなさい!」  
「ごめんじゃね〜よ。イラついてんのによ。クソがっ!」  
強い言葉に大樹は怯えたように後ずさる。  
「弟がぶつかっちゃって、ごめんなさい!…私からも謝るから許して」  
「なんだよ。謝りゃそれで済むって…」  
「おいおい、ちょっと落ち着けよ。それよりさ…」  
大樹を庇うように前に出た宮子を、男の子の一人が眺め回し、隣の子に何かを耳打ちする。  
すると、もう一人の子も宮子を眺め回し、ニヤッと嫌な笑いを浮かべる。  
「あんた、女だよな。こいつの保護者?まあ許してやってもいいよ」  
「そう…ありがとう。それから、ごめんね。今度から気をつけさせるから」  
「いいよ。ただその代わり、お詫びにタオルの中見せてよ。それでチャラにするからさ」  
「な、何言ってるの!?…そんなこと出来るわけ無いじゃない!」  
男の子の手がいきなり伸びてきて、宮子のタオルを掴み強く引っ張った。  
「ちょ、ちょっと、なにすんの!」  
カランカラン、と高い音がして宮子の桶が転がり、宮子は両手で必死にタオルを押さえる。  
「許してやるって言ってんだから、大人しくしろよ!」  
「そんな…だって……」  
「じゃあ、いいよ。その代わり、こっちは痛い思いしたんだから、あんたの弟一発殴る」  
「それはダメ!……わかったから…でも、見るだけで…触らないで……それで、許して…」  
「……ま、別にいいんじゃないか?俺達もっと大きいの触ったことあるし、な」  
「…しゃぁねぇ。それで勘弁してやるよ」  
 
ニヤニヤとした嫌な笑いを浮かべて、二人は宮子の身体を眺め回す。  
宮子の心臓はまたドクンと高鳴る。  
羞恥に身体は震え、心は悲しみが覆う。しかし、それとは対照的に身体は燃えるように熱くなる。  
「あの、大樹は……弟はもういいでしょ。だから…」  
「ダメに決まってんだろ。こいつ逃がしたら、あんた逃げるかもしれないし」  
「逃げないって約束するから…だから…」  
男の子達は大樹の肩をしっかりと掴み、宮子にタオルと取るように促す。  
宮子は目を瞑り、ゆっくりと手を少しずつ下げていく。  
「あ…」  
最初に声を発したのは二人の男の子ではなく大樹だった。  
右手でタオルを押さえているため、まだ手で押さえられている左胸は見えていなかった。しかし腕を押し付けてタオルが動かないようにしている右胸は、  
腕が下りていくと共に胸とタオルの間に隙間ができ、タオルが捲くれるようにその胸の頂が露になった。  
「うお!綺麗じゃん。やっぱ若いとそういうとこも綺麗なんだな!」  
「女湯に居るのたいていババアだもんな、こんな子がいるなら女湯に入れなくて正解だったな」  
「おい、お前の姉ちゃんいい乳してんな。大人と比べると小さいけどちゃんと膨らんでるし」  
宮子は恐る恐る目を開ける。  
そこには、いつもと違う熱っぽい目をした大樹と、いやらしくニヤニヤと笑う二人の男の子が、ただ一点、宮子の右胸へと視線を送り続けていた。  
「いやぁ!」  
宮子はあまりの羞恥に思わず両手で胸を庇う。  
「おい、姉ちゃん。弟殴ってもいいのか?」  
「あ、ごめんなさい!…で、でも……ほんとに触んないでね!触ったら怒るからね!」  
「わかったって!信用しろよ」  
宮子は少しの間自分を抱きしめ目を瞑ると、一気にお腹の辺りまで手を下ろす。  
プルン、と宮子の胸が弾むように揺れる。  
ほんのりと紅く染まった肌は濡れて微かに光を反射し、先端は羞恥にツンとその身を固くし、荒い呼吸に合わせて胸の膨らみが上下する。  
場はしんと静まり返る。  
辺りには宮子の呼吸音と、ぺたぺたという音が響くだけ。  
宮子が近くで見る気なんだと思ったとき、不意に胸の頂を何かが撫でた。  
「ひゃあああ!」  
驚いて目を開くと三つの顔が胸の十センチほど前にあり、その一つが口を窄めて息を吹きかけている。  
「触ってはいないから、問題ないよね」  
すぐにもう一人も同じように、胸へと息を吹きかけ始める。  
 
「ああ…いやぁ……く、くすぐったいよぉ…」  
宮子は羞恥にその手を震わせるが、懸命に押さえつけ、胸への刺激を甘受する。  
「いい心がけだね。ちゃんと言うこと聞いてりゃあ、俺達は触んないし弟にも酷いことしないからさ。頑張ってよ」  
言い終わるとまた男の子は胸へと息を吹きかけ始める。  
強く吹きかけたり、弱く仄かな風を長い間吹きかけ続けたり、初めて他人から胸に受ける息という刺激はそれほど強くはないものの、  
しかしそんな微かな刺激にすら、宮子の胸の先端はさらにプクリと膨らんでフルフルと震えるように揺れる。  
「へえ、こんなに膨らむんだ。なんか嬉しそうに見えるね」  
「弟はどう思うよ。今の姉ちゃんをどう思う?」  
宮子がうっとりとした目で大樹を見ると、大樹も同様に何処か熱に浮かされたような目で見つめ返す。  
 
「な、なんか…すごく、かわいい…」  
宮子はどちらかといえば気が強いほうだ。大樹に対しては甘いところもあるが、厳しいことを言うことも多い。  
その姉が身体を弱弱しく震わせながら嫌がる姿は、まるで別人のように可愛らしい。  
また、さっきまではなんとも思っていなかった姉の胸が、すごくいやらしく映る。  
ツンと立った先端が時折ピクンと震え、呼吸に合わせて胸を僅かに上下させ、汗と水滴が混ざり胸の上を流れ落ちていく。  
色っぽく肌を上気させ、細められた目は艶っぽく、僅かに開いた唇からは荒い呼吸が繰り返される。  
それは、大樹が知っている姉の姿とはまるで違う、知らない大人の女の人に見えていた。  
 
(いや……ううん。嫌じゃないけど…なんか、いや……大樹なのに…大樹の言葉なのに…なんか、恥ずかしい…)  
宮子は大樹に可愛いなんて言われたことはない。  
そんな言葉を胸を見られながら、胸に息を吹きかけながら言われたのだ。  
(なんか……すごく…や、やらしいよぉ……それに…)  
宮子は改めて自分の姿を意識する。  
男の子達の前に胸を晒し、自由であるはずの手はお腹の前で胸を守ることを放棄し、男の子達は面白そうに胸の先端に息を吹きかけている。  
まるで自分からオモチャにされているかのように。  
男の子達に胸をいじめられて喜んでいるかのように。  
(いやぁ……恥ずかしいよ……こんな状況で、可愛いなんて言われても……)  
宮子は否定するかのように目を瞑り、頭を何度も振る。  
そのたびに小さな胸が微かに震えることを宮子自身は気付かず、それを見て、つい手を伸ばしてしまう。  
ぷにゅっ、と胸に小さな指が触れた。  
「!嫌!さ、触らないって…!?」  
手を伸ばしていたのは、胸へと指を埋めていたのは、大樹だった。  
「そ、そんな……大樹、どうして…」  
「あ、あの…ごめん…なさい…お姉ちゃん…」  
言葉では謝りつつ、しかしその指は宮子の胸の頂を愛おしそうに撫で摩る。  
「ひどいなぁ、お姉さん。俺達約束は守るよ」  
「傷つくなぁ。お、そうだ!じゃあ、疑った罰として弟にオッパイ好きなだけ触らせてやれよ」  
「ん、や……そ、そんな………そんなこと……いやぁ…」  
「ほら、好きなだけ触って良いってよ。なんなら俺達が触り方アドバイスしてやっからよ」  
 
「大樹…やぁ…ン……ダメだよ……姉弟なんだよ?……私、お姉ちゃんなんだよ?…だから…ふぁあ!」  
大樹の指が先端をギュッと摘むと、宮子は一段高い声を上げる。  
「お姉ちゃんのオッパイ…僕、大好きだよ…かわいくて…コロコロしてて…」  
「ンン、や……ダ、メだよぉ………撫でちゃ……転がしちゃぁぁ…」  
指は先端を擽るように弄くり、そのたびに宮子は甘い吐息を漏らす。  
「なかなかいいぞ。それからもっと全体を揉んだりするといいぞ」  
男の子の言葉を聞いて、大樹の動きが変わる。  
胸全体を揉み解すように、大樹の手が大きく動き始めた。  
「嫌!いっ…たいよ……お願いだから、それはだけ止めて…」  
まだ成長を始めたばかりの宮子の胸は、少し押されるだけでも痛みが走る。そんな胸を揉みしだかれては、宮子も耐えられない。  
宮子はあまりの痛みに、目に涙を浮かべ、恥ずかしさを懸命に堪え息を吹きかけられても、先端をコロコロと転がされても隠さなかった胸を両手で庇う。  
「あれ、おかしいな。大人は平気だったのに…」  
「う〜ん、もう一回、今度はゆっくりやってみたら?」  
宮子の目が大きく見開かれ、怯えたように眉根を寄せる。  
 
「ほら、お姉さん。いつまで隠してんの?」  
宮子は数瞬躊躇う。しかし、胸を庇っていた手を離し、またお腹の前に戻す。  
その目は不安そうに揺れ、涙を浮かべ、手はギュッと握り締められている。  
「お姉ちゃん…僕もういいよ……ごめんね、お姉ちゃん」  
弱弱しく眉根を寄せ、微かに身体を震わせる宮子。それはとても可愛らしく見えた。  
けれど、やはり大樹にはいつもの姉のほうが、ずっと良かったのだ。  
 
「何だそりゃ…そんなんじゃ大人になれねえぞ」  
「まあ、いいんじゃない?それでいいなら。じゃあ、続きしようか」  
「え…も、もう十分でしょ!?…む、胸だって…見たし……息とかで…いじめたし…」  
宮子はほっとして胸を隠したのも束の間、男の子に言葉に身体を抱きしめて強張らせる。  
「当たり前だろ。一番大事なところが残ってるじゃん」  
「そうだな〜…胸はタオルで隠してもいいよ。でさ、こんな感じで…」  
 
宮子はバスタオルを身体にしっかりと巻いて、大樹達の前に立つ。  
バスタオルだけでなく、手でもしっかりとそこを覆っているためみっともない格好になっているが、肝心なところは見せてはいない。  
「なかなか良い感じだな。じゃあ、足開いてよ」  
「ね、ねえ、まだするの?…少し体がぶつかっただけなんだから、もう許してくれても…」  
「これが済んだら許してあげるよ。それとも、ここで止める?」  
男の子の一人がわざとらしく拳を固める。  
「わ、わかったから……み、見せるだけだからね…」  
宮子の足が肩幅ほどまで開かれていく。  
僅かに内股気味に、そして緩慢な動作が宮子の心情を物語る。  
肩幅まで開かれた足、太股は完全に晒され、けれど、大事なところはしっかりと手とタオルに守られている。  
「うん。じゃあ、そのタオル両手で持ち上げてよ。あ、急いじゃダメだよ。ゆっくりと、ね」  
『両手』『ゆっくり』が強調され、宮子に残された数少ない自由が奪われ、  
片手で隠しながらという選択も、勢いに任せて一気に上げる選択も許されない。  
宮子は両手でタオルの裾を掴み、ほんの僅かに上げる。  
チラと男の子達を見ると、にやけた笑顔で宮子の手を、その向こうが見えるのを今か今かと待つ。  
その隣では大樹も、たまに宮子の顔を見ながらも宮子の手を凝視し、宮子の行動を待ちわびている。。  
(いや……男の子達も…大樹も……見てるのに……ほんとに……上げなきゃ…見せなきゃ、ダメなの?……)  
宮子がいつまでも躊躇っていると、男の子の一人がまた見せ付けるように拳を固めた。  
無理矢理に覚悟を決め、宮子の手がゆっくりと上がり始めた。  
 
しっかりと巻かれたバスタオルはさながらミニのワンピースのように映り。  
その裾がゆっくりとたくし上げられていく。  
スカートを自ら捲るように、宮子の手がゆっくりと上がっていく。  
また、この場に居る者は、宮子自身も、大樹達も、中がどうなっているかを知っている。  
宮子は中に何も覆うものが無いことを、捲ったら見えてしまうことを知りながら、それでも捲らなければならない。  
そこを風がフワリと撫でる。  
座った男の子達には、きっと見えている。  
それでも宮子はゆっくりと裾を持ち上げる。  
 
「へえ、何もないね。一本スジがあるだけなんだ」  
「知ってるか?大人は毛がボーボーなんだぞ」  
「そ、そういえば…お母さんも……」  
宮子の顔も身体も急激に赤く染まっていく。  
感想は見られていることを、見せていることをはっきりと意識させ、体全体が燃え上がるように熱くなる。  
「も、もういいでしょ?……もう十分見たよね?……下ろして、良いよね?」  
宮子はそれでも律儀に裾をたくし上げたまま、男の子達に下ろす許可を願う。  
「……それじゃあね、いいって言うまで目瞑って、動かないでいてよ。たぶん一分くらい。それで終わり」  
男の子は何かをたくらんでいるかのようにニヤニヤと笑っている。  
「……触んないよね?……し、信じてるからね…」  
不審に思いながらも宮子が目を瞑ると、男の子達は感想を言い始める。  
「プニプニしてて柔らかそう」だとか「おしっこはどこから出るんだ?」とか、中には後ろのほうから「お尻の方はどうかな〜」なんてのもあった。  
 
「なあ、ちょっと、ちょっとだけでいいから、指でこう…開いてくれないかな?」  
「え!?…だって……そんな…」  
「俺達約束守ったろ?少しくらいいいだろ。な?」  
宮子はやはり目を瞑ったまま、指を添えて少しだけ横に引っ張ってみる。  
「うわ、ドピンクじゃん…」  
「大人とぜんぜん違うな…」  
「…おねえちゃん綺麗…」  
(み、見られてるんだ……それなのに…自分から、開いて…見せつけて……いや…なのに………声が嬉しそうで……私、も…少しだけ…)  
ただ一点にのみ視線を感じ、その一点を見せ付けるように自らの指で開く。  
身体はこれ以上ないくらい熱くなり、心臓はドクドクと早鐘を打ち続ける。  
恥ずかしいと感じるほどに、身体は疼き、ゾクゾクとした感覚が宮子の中を駆け巡っていく。  
「そうだな〜。ほんと綺麗なもんだな。たぶん自分で触るのも初めてなんじゃないか?」  
宮子は数瞬遅れてその声が誰のものかわからないことに気付き、急いで目を開ける。  
そこにはさっきお風呂で話していたお兄さんがいた。当然のように男の子達の隣で、宮子のそこを見つめながら。  
「…い…嘘……なん、で?……」  
「お姉さん、ダメだよ。いいって言うまで目開けちゃあ…罰として、そのままの格好で、あと一分ね!」  
「や……いやぁ…み、見ないで!見ないでよぉ……だって………ああ、いやいやぁ…」  
(やだ…やだよぉ………恥ずかしい………恥ずかしいのに……大樹も…あの子達も…あのお兄さんも見てるのに………それなのに……どうして…)  
羞恥に身体を震わせながらも、アソコを指で少しだけ開いたまま腰を振り少しでも視線から逃れようとしながらも、宮子は自らの指で晒し続けた。  
 
 
 
「お姉ちゃん。僕のせいで…ごめんね…」  
「ん〜?何かあったの〜?お母さん、気になるわ〜」  
「だ、大樹、そのことはもういいから…お母さんも…その…そう、秘密!二人だけの秘密だから!」  
「そうなの?お母さん、二人が仲良しで嬉しいけど、ちょっとだけ寂しいわ〜」  
(今日あったこと、お母さんに言ったら…なんて言うかな………倒れちゃったりして…)  
大樹は済まなそうに、宮子から少し離れて歩いている。その姿は少ししょんぼりとして見えた。  
(しょうがないなぁ…)  
宮子は大樹に寄り添い、そっと手を握る。  
「もういいって言ってるでしょ。だから、落ち込まないの!」  
「うん………お姉ちゃんの手、とってもあったかい…」  
大樹もしっかりと宮子の手を握り、宮子も強く握り返す。  
「大樹の手だって、とってもあったかいよ」  
暖かいその手は、宮子の心を癒していく。  
(そう…忘れちゃおう………すぐには無理でも……どうせ、もう行くことも…)  
宮子は大樹に寄り添い、肩を並べて歩く。  
「あれ、大樹、私達頭洗ってないよね?」  
「あっ…忘れちゃったね」  
「あら、それなら明日洗えばいいじゃない?お風呂、ちょっと時間かかりそうだし、お父さんこれから忙しくなるって言うし、明日も大樹のこと、お願いね〜」  
宮子の足が止まり、大樹も驚いた顔で母を見る。  
「え?……う、そ…」  
「……お姉ちゃん…やっぱり、嫌?」  
大樹が少し悲しそうな顔で、宮子の顔を覗き込む。  
(……やっぱり…私って大樹には甘いのかな?……)  
「ううん、ちょっと…ちょっぴり恥ずかしかったから……でも大丈夫だよ……明日も…一緒に入ろうね」  
 
 
 
終わり  
 

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