「けっこう出たな……」  
 
 濡れた手首を眺めながら、彼がぼそりと漏らした。  
 
「だ、だって……気持ちよかったんだもん……」  
 
 認めよう。心を読みながらの彼との交わりは、何事にも代え難いほど気持ちいい。  
最初は如何に自分も恩恵を受ける形で願いをかなえるかということばかり考えていたが、もうそんなことを考える必要はない。  
あたしの大好物を凝縮して押し込んだような彼の心を読ませてもらえる。  
契約した相手を喜ばせられていると実感できる。そして何より……こんなにも気持ちよくしてもらえる。  
あたしは神様の創ったとおりに動き、神様が定めた悪魔として最高の幸せを手にしたのだ。  
もう彼に契約で縛り付けられていることなど苦に思えない。  
むしろ、あたしの幸せを約束されているようにすら感じる。  
彼はこの通り欲深だし、あたしが誘惑すれば容易に性交を許すだろう。  
契約を切って離れ離れにならない限り、あたしが幸せになることは絶対だ。  
 
「何でそんなニコニコしてるんだよ?」  
 
「だって……今のあなたは願いをかなえ放題なのよ? 願いをかなえる度に欲望をもらえると思ったら嬉しくなっちゃって……」  
 
「今も俺の性欲を読んでるだろ。まだ欲しいのか? この欲張りさんめ」  
 
 彼が何度でも願いをかなえられるという事実を思い出させ、幸福な感情を読み取る。  
 
「そりゃ欲しいわよ。あたしにとっては力の元なんだもん」  
 
「うーん。そういうもんなのか」  
 
(そうだ、契約でなんでも言うこと聞かせられるんだよな……できればそれっぽいプレイがしたいな)  
 
 あれだけあたしの体を好き放題したというのに、まだ彼はあたしの体を欲している。  
底なし沼のように深く、枯れることを知らない泉のように湧きあがる彼の欲望。  
今まで多くの人間の欲望に触れてきたけれど、やっぱり彼の性欲を読んでいる時が一番気持ちいい。  
 
(そうだな……俺の言うことに絶対逆らっちゃいけないプレイとかはどう?)  
 
「今がまさにその状況じゃない。今あなたが願いを言えば、何でも言うことを聞かせられるわよ」  
 
(それもそうか……うーん、何してあげようかな)  
 
「あ、あんましひどいことはしないでね?」  
 
 思考をめぐらせ始めた彼に釘を刺す。  
だが、彼の意識は既に新しいプレイの内容に向いていて、あたしの声はまともに届いていないようだった。   
 
「そうだ、大人のおもちゃっていうか……えっちに使えるものを思いつく限り出してよ。それが俺の3つ目の願いだ」  
 
「ん……了解よ」  
 
 思いつく限り……か。  
まず三点攻め用のローター、次にアナルバイブ、ローション、コンドーム。  
擽り用のブラシに、鞭、蝋燭、猿轡、拘束に使えそうなロープ。  
あたしが頭に思い浮かべたものが次々と形を持ち、実体化してゆく。  
大体こんなものか。これだけあれば十分だろう。  
 
「鞭か……。何? これで引っ叩いてほしいの?」  
 
「ま、待って待って! それは思いついたから出てきちゃっただけだから! ハードなSMとかあたしダメだからね?」  
 
「そっか……じゃぁこれはどかしておこう」  
 
 彼がSMグッズをベッドの隅に追いやった。  
やっぱり彼はあたしが本当にダメなプレイは避けてくれるのだ。  
 
「早速このローションを君の淫乱ボディにぬってあげようかな……」  
 
 彼が容器を手に取り、ひっくり返した。  
もう片方の手で垂れる液体を受け止め、頃合いを見計らって容器の蓋を閉める。  
 
「まずは俺を誘惑するこのいけないおっぱいからだな。よ〜くぬらないと……」  
 
「ん……あん……気持ちいいかも……」  
 
 何度も言うがあたしの胸は快感神経が張り巡らされ、かなり敏感なつくりになっているのだ。  
そんな神経の塊のような場所を触られて、気持ちよくならないはずがない。  
 
「んっ! あはぁん……乳首いいよぉ……もっと攻めて……」  
 
(本当に感じやすいんだなぁ……やっぱいい反応してくれると俺も嬉しいよ)  
 
 弱点の乳首を攻められ、あたしの胸の中で炎が燃え上がった。  
あたしの喘ぎ声で彼に引火し、彼の中でも興奮の炎が燃え上がる。  
 
「あぅん……乳首もいいけど……アソコも攻めてよぉ……」  
 
(ソコはまだ触ってやんない。全身にローションをぬったくって焦らしてからだ)  
 
 まず首、次に肩、その次に両腕、今度は腋の下、そしてお腹。あと翼。  
彼がゆっくりとローションを伸ばして、あたしの全身に満遍なくぬりこんでゆく。  
濡れた手で撫でるだけのなんでもない刺激なのに、すっかり火照ったあたしの体はそれにさえ反応してしまう。  
 
「んぁ……くぅ……ん……」  
 
(……もしかして感じてる?)  
 
「あ、あなたが尻尾弄るからよ〜」  
 
(尻尾弄っただけでこんなことになっちゃうのか……やっぱり君はえっちだ)  
 
「ところで君の肌ってけっこうすべすべしてるよね。普通あんな格好で外を歩いてたら肌に悪影響があるんじゃないの?」  
 
「あたしはこういう願いにもこたえられるようにできてるから……ほら、肌が荒れてたらえっちする相手ががっかりしちゃうでしょ? だから肌は丈夫なの」  
 
(ってことは君はえっちするために創られたのか。やっぱりえっちなんじゃないか)  
 
 上半身にローションをぬり終わった彼の両手が、あたしの左足の裏に伸びる。  
今度はぬるだけでなく、揉んだりツボを狙って押したりといった刺激も混ぜてくる。  
 
「ん……気持ちいいかも……」  
 
(神サマにマッサージとかやらされたことがあるからな。でも俺は素人だし、そんなに効果はないんじゃないかな)  
 
 土踏まずを親指で押し、揉む位置をだんだんと上へずらしてゆく。  
 
(確かこの辺だったよな……)  
 
 土踏まずの少し上あたりで上昇が止まり、彼の親指が何やらツボを探っているような動きを見せ始める。  
 
(お、あったあった。ここだな)  
 
「んぁ……あ、そこ気持ちいい……」  
 
「ここは湧泉って言ってな、疲労に効くツボなんだよ」  
 
 3秒くらいの間隔を開け、じっくりと、彼がゴリゴリとあたしのツボを親指の腹で刺激する。  
足の裏から全身に力が送られていくような感覚。  
プラシーボ効果もあるのだろうが、彼のマッサージはなかなか気持ちがいい。  
性感も刺激され、あたしの興奮が高まってゆく。  
 
(次はこっちだな……)  
 
 指や指の付け根も一通り揉んだ後、彼が反対側の足に手を伸ばした。  
今度も湧泉とその周辺を揉み、その後は指のマッサージに移る。  
 
「あ……足、けっこう感じるかも……」  
 
(足も弱いのか。とことんえっちなんだな君は)  
 
「うぅ……どれもこれもあなたが尻尾弄るからよ〜……」  
 
 あたしが咎めるような声を出すと、彼はますます興奮した。  
濃度の高い彼の興奮と、足へのマッサージ。2重の快感が、あたしに多大な幸福感をもたらす。  
そうやって優しく触られると、契約相手に大事にされているような気がして、嬉しくなってしまうのだ。  
 
(ところでこのローション……舐めたりしても大丈夫なやつなのか?)  
 
「自然のものしか使われてないから大丈夫……って、足舐めないでよ〜! は、恥ずかしいって……!」  
 
 足の裏を舌が這い回る感覚に、思わず否定の言葉を出してしまう。  
無論、嫌なわけではない。彼にはそれがお見通しなようで、攻め手を緩めることなくガンガン攻めてくる。  
 
「れろれろ……ん……君の足おいしい……」  
 
「な、何わけわかんないこと言ってるのよー?! 恥ずかしいからやめてぇ〜!」  
 
(本気で嫌がってるようには見えないけどなぁ……ほら、表情もちょっとうっとりしてるようだし)  
 
「んぁあっ……そんなこと……ないっ……!」  
 
(こうやって感じてるのを我慢してる表情も最高だよなぁ)  
 
 かかとも、土踏まずも、指と指の間までも念入りに舐められ、あたしの羞恥と興奮を同時に煽られる。  
唾液とローションが混ざり、あたしの足はすっかりベトベトだ。  
 
(そうだ、ふくらはぎから上もローションをぬってあげないと……)  
 
 あたしの足を舐めている間、彼はあたしの足に夢中になっていて、彼の両手はあたしに快感を与えようとせずに遊んでいた。  
だが、彼が気づいてしまった今、もうその状況とはオサラバだ。  
 ふくらはぎにローションを塗り、次に太股へ手を伸ばす。  
性器には決して触れずに、性器の周辺だけをじっくりと刺激してあたしを焦らす。  
 
「お願い、焦らさないで……。早くアソコ触ってよぉ……」  
 
「そうだ、背中側にもローションぬってあげないとな。ちょっとうつぶせになってよ」  
 
「え? そ、そんなぁ〜! これ以上焦らされたらあたしダメになっちゃう……! お願い、アソコ触って!」  
 
(やっぱり焦らされておねだりする表情もかわいいな……もっと意地悪してあげたくなる)  
 
 もうこうなってしまっては彼の意地悪を止めることは不可能だ。  
最初に契約をした時も、彼は懇願するあたしに意地悪な願いを言ってきたし、  
えっちの時も、あたしが出す上辺だけの否定的な言葉に興奮していた。  
あたしがこれ以上おねだりしても、焦らしプレイをされるのは避けられないだろう。  
彼の意地悪に付き合うことも、一応あたしの喜びなのだ。  
焦らされるのが嫌なわけでもないし、今はさっきと違って余裕がある。  
あたしがとる行動は焦らしプレイを受け入れること1択だろう。  
 
「うぅ……じゃ、じゃぁ背中側にぬったらちゃんとアソコ触ってね? それ以上焦らすのはダメよ?」  
 
「オッケー。じゃ、うつぶせになってね」  
 
 彼があたしの後ろに回る。あたしがうつぶせになると、触角が彼の体から離れて欲望が途絶えてしまった。  
これはこれで何をされるのか読めない楽しさがある。  
あたしがちらりと後ろを見ると、彼はあたしの上にまたがり、ローションでぬれた手をあたしに伸ばしているところだった。  
 
「なぁ、全身が敏感になるってどんな感じなんだ? 体触っただけでも感じたりしちゃう?」  
 
「そうよ。だ、だからそうやって優しく撫でられたりすると……ぁっ……」  
 
「へぇ……肩の感度もなかなかだな。体も念入りに触ってあげないとな」  
 
 彼の手で全身を攻めてもらえる。そう思うだけで全身にゾクゾクと震えが走った。  
簡単な肩揉みに、骨の部分をゴリゴリ押すマッサージ。  
ローションで滑りのよくなったあたしの体に、彼の手が快感を刻み込んでゆく。  
 
「ん……いい気持ち……そんな感じでお願い……」  
 
「こんな感じか。オッケー」  
 
 ゆっくり、ゆっくりと攻める箇所を下の方に移してゆく。  
背中にも余すところなくローションをぬられ、次に翼を攻められる。  
彼はあたしの翼に興味をもったようで、翼への攻めは他の部位より執拗だ。  
 
「ふーん。コウモリの翼は腕が進化したものだってのはやっぱ本当なんだな。ほら、ここが肘だろ……」  
 
「あん……翼も気持ちいいよぉ……もっと触って……」  
 
「んで、ここが親指か。この鉤爪ってけっこうカッコイイよね」  
 
「そうやって指だったとこにそってマッサージされるのいいかも……もっとやって……」  
 
 元々は腕だった名残を強く残すあたしの翼。  
その中でも特に名残を視認しやすい部分を、彼の指がなぞってゆく。  
触られたところから熱がじわじわと広がり、あたしの興奮を煽る。  
その次は皮膜の部分にローションをぬり、手を滑らせる。  
 
「腕だったものが背中から生えてるのはおかしいよな。君を創った神は何を考えてるの? 君どこの宗教の子なの?」  
 
「まだ気づいてないの? あたしもあなたも同じ神様に創られたのよ?」  
 
「え? あぁ、君はうちの馬鹿なサマが創った悪魔だったのか。じゃぁおかしくて当然だな。納得」  
 
 確かに天使である彼にこんなことを言われちゃうあたしたちの神様はそんなにしっかりしてないのかもしれない。  
それでも、あたしにとっては尊敬の対象なのだ。神様への否定はあたしへの否定にも繋がるし、  
現に彼はあたしの体のつくりを否定している。いくら彼でも、そんなことを言われると少しムッとしてしまう。  
 
「その言い方はひどくない? ……そういうこと言うと神様に言いつけちゃうわよ?」  
 
「わ、悪かった! それはやめてくれ」  
 
 途端に彼の様子が変わる。振り向かなくても、彼がどんな表情をしているのかがありありとあたしの脳内に浮かび上がる。  
 
「ん……ちゃんと謝って、もっと気持ちよくしてくれるなら見逃してあげるわ」  
 
「ごめん。悪かった。謝るから神サマには黙ってて……」  
 
 彼が縋りつくようにあたしに謝ってくる。  
……ダメだ。あたしにたっぷり意地悪をしてきた彼とのギャップに、込みあがるクスクス笑いを抑えられない。  
 
「神の名のもとにお仕置きだとか言ってた割には、神様の名前を出されると弱いのね。まぁいいわ。今回は許してあげる」  
 
 あたしの言葉に彼が安堵のため息をついた。  
天使の彼が神様を否定して、悪魔のあたしが肯定するというのもおかしな構図だ。  
うちの神様は馬鹿だという彼の言い分も、ほんのちょっとぐらいなら理解できるかもしれない。  
そんな思考は、彼が不意に始めた足への愛撫で吹き飛んだ。  
再び快感があたしの脳内に満ち溢れ、溢れた分が喘ぎ声となってあたしの口から漏れ出る。  
 
「んぁ……はぁ……んっ……き、気持ちいい……」  
 
「全身が敏感になってるってのは本当なんだな……尻尾攻め、恐るべし」  
 
 さっきまでの必死で懇願してきた様子はどこへやら、彼はノリノリであたしの足にローションをぬったくる。  
ふくらはぎと太股の裏側を撫で回し、揉み、それからトントンと軽く手刀を叩き付けるマッサージも行う。  
愛撫する位置がだんだんと上に移っていき、太股の根元まで上り詰めたあたりで彼の手がお尻を揉み始める。  
胸よりもお尻を優先する男性は割りと少数派だろう。そんなわけで、あたしのお尻には胸ほど快感神経が張り巡らされてはいないようだ。  
ここであたしはとんでもないことに気づく。こんな風に彼に背を向けていては、弱点の尻尾が完全に無防備になるではないか。  
彼に尻尾を好き放題されてしまったら、どれほどの快感に襲われるのか……。  
しかし、彼はあたしの期待と不安を思い切り裏切った。尻尾ではなくお尻の穴の周辺を攻め始めたのだ。  
 
「あっ! お尻の穴はダメ! そこはばっちぃよぉ!」  
 
「じゃぁ穴を攻め終わった後に手を清潔にすればいいんだな? 石鹸だしてよ、石鹸」  
 
 彼の願いはえっちに使えるものを思いつく限り出すことだ。  
アナル攻めの後の手洗のために石鹸を出すというのは、えっちに使う内に入るのだろうか。  
しかし、あたしの脳内に浮かび上がった石鹸はすぐに実体化し、彼の手の上に落ちた。  
 
「願われたことしかかなえられないって言ってたけど、やっぱその基準ってけっこう緩いんだね。  
今俺はえっちに使うつもりで言ったけど、本当はえっちに使うものじゃないよなこれ」  
 
「神様が基準を緩く定めておいてくれたおかげよ。あたしと神様に感謝しなさいよね」  
 
「そうかぁ? 基準を決めるのがめんどくさいから適当にやってるだけなんじゃないの?」  
 
「それはそうかもしれないけど……色々かなえてあげてるのに、あなたは感謝が足りないわよ」  
 
「へぇ、そうかい?」  
 
 彼があたしの触角を掴んだ。  
触角から流れ込んでくるのは、偽りのない、というか偽りようがない彼の感謝の気持ち。  
家をくれたこと、家具までそろえてくれたこと、こうやってえっちしてくれていること、ちゃんと興奮するシチュエーションを演じてくれていること、  
あたしが契約してから彼にしてあげたこと全てに対する感謝が、あたしの脳内を塗りつぶしてゆく。  
 
「あぁん……そんなに感謝されたらあたし嬉しくなっちゃうよぉ……」  
 
「感謝されたぐらいでそんな大げさな……もしかして君ってけっこう単純?」  
 
「何よぉ……あたしにとって契約相手に喜んでもらえてると実感できることは、すっごく幸せなことなのよ?」  
 
「そういうもんなのか……えっちして喜んじゃうようにできてるなんて、やっぱり変態だな」  
 
「あっ! あんっ!」  
 
 彼があたしの尻尾を思い切り握り締めた。  
のぼり棒をのぼるような動きで、彼の手がどんどん尻尾の先っぽに迫っていく。  
 
「あぁぁん……尻尾気持ちいいよぉ……」  
 
「そんなかわいい声出されたら燃えちゃうじゃないか。やっぱりえっちだな君は」  
 
「ひゃうっ! あ、そうそう……そうやって羽根ブラシで先っぽ攻められるのいいのぉ……!」  
 
 濡れた羽根の感触が心地よい。ますます全身の性感帯が呼び覚まされ、敏感になってゆく。  
 
「感じてきたところで、そろそろお尻攻めちゃおっか」  
 
「! ま、まってぇ〜! そこは恥ずかしいよ〜!」  
 
 彼を煽る意図で言っているのか、本気で拒絶しているのか、あたしにもわからない。  
アナル攻めによって快感を与えられることに多少なりとも期待してしまって、自分でも判断がつかないのだ。  
いくらなんでもお尻の穴を攻められるのは恥ずかしい、ということだけははっきりとわかっていた。  
 
「ほら、指突っ込んじゃうぞー」  
 
「あっ、はぅんっ!」  
 
 彼の指がローションであたしの中を侵食してゆく。  
さっき肛門周辺を触られたこともあってか、それほどの嫌悪感はない。  
快感とも悪寒ともつかないゾクゾクする感覚が全身を走り抜け、あたしの身を震わせる。  
 
「お尻攻められて感じてるのか……救いようのない変態淫魔ちゃんだな。お仕置きだ」  
 
「は、恥ずかしいよぉ! お願いお尻は許して〜!」  
 
「そうだ、尻尾は全身の性感帯とつながってるんだっけ? お尻のツボもあるのかな〜」  
 
「だ、ダメダメやめてえぇぇ〜っ!!」  
 
 右手でお尻を攻めつつ、左手で尻尾の先っぽを攻める。  
敏感なところを同時に攻められ、お尻の快感も増大してしまう。  
 
「お尻のツボは……ここかな?」  
 
 彼の親指が、ハートの真ん中をとらえる。  
 
「ち、違っ……そこはお腹よぉ……」  
 
「じゃぁ、こっちかな?」  
 
 今度は親指を下にずらし、ハートの先っぽを攻める。  
 
「んひゃんっ! そ、そこはアソコのツボよぉ〜!」  
 
「う〜ん。じゃ、こっちはどうかな」  
 
 今度はハートの裏側を中指で刺激する。  
 
「違っ……そこは背中ぁ……」  
 
「ってことはハートのこっちの面が背中側の性感帯とつながってるのか。じゃぁお尻のツボはこのへんかな」  
 
 親指と薬指でハートを挟み、性器のツボとその逆面を同時に攻める。  
とうとう彼はお尻のツボを見つけ出してしまった!  
 
「んはぁんっ! だ、ダメ! そこはぁっ……!」  
 
「当たり、か。じゃぁこことお尻をいっしょに攻めてやるよ」  
 
「そんなっ……そんなのダメぇ〜! あぁあん!」  
 
 彼の指がお尻の穴を揉み解し、穿り回し、ローションをぬったくる。  
その間も絶え間なく二つのツボへの尻尾攻めは続き、ますます感度が上昇してしまう。  
 
「君って少しマゾっ気もあるよね。こうやって意地悪されると感じちゃうんだろ?」  
 
「ず、ずるいよぉ……尻尾まで攻められて感じないわけが……認めるけどさ」  
 
 焦らされて疼いていた性器が、ツボの刺激でますます疼く。  
陰核は充血し、陰唇はもちろんぱっくりと割れている。  
 
「あぁ……お願い……アソコも攻めてよぉ……」  
 
「ソコは背中側が終わってからって言っただろ? ほしけりゃ自分でしな」  
 
 彼が冷たい言い方をしてあたしを焦らす。  
これで興奮してしまうあたり、やっぱりあたしにはマゾっ気があるんだと思う。  
でも、焦らしで興奮できるかどうかと、長時間焦らされて我慢できるかどうかは別問題なのだ。  
 
「そんなぁ……この意地悪ぅ……!」  
 
 我慢できずに、腰を動かして性器をベッドに擦りつける。  
だが、ベッドによる刺激ではあたしの心が満たされることはない。  
彼に、彼の手で、あたしの一番恥ずかしいトコロを犯して欲しいのだ。  
それでも彼は意地悪くあたしのお尻と尻尾だけを攻め続け、アソコには触れようとしない。  
 
「触ってもらえないからって床オナニーか。惨めだな」  
 
「うぅ……お願い! もう許してよぉ……!」  
 
 彼が左手であたしの左半身を掴み、引き上げ、あたしの体を横向きにした。陰核が無防備になる。  
しかし、彼の左手があたしの性器に伸びることはなく、再び尻尾への愛撫を始める。  
極限まで焦らされ、すっかり濡れそぼったあたしの性器はもうこれ以上はないんじゃないかというくらい疼き、彼を求めている。  
性器から生じた熱があたしの理性を焼き切り、本能を燃え滾らせる。  
感度ばかり上がって、触ってはもらえないなんて状況は、媚薬をぬったくられて放置されるようなものだ。  
穿り回されるお尻の穴も、快感を脳に伝えてあたしに追い討ちをかける。  
 
「触ってくれると思ったのに! 何よ期待させといて〜!」  
 
「良かったな。この構図なら俺にバッチリ視姦されながらオナニーできるじゃないか」  
 
「そ、そんなこと恥ずかしくてできないよぉ〜! お願い! あなたに触って欲しいの!」  
 
 おねだりして彼を煽るが、彼は折れてはくれない。  
今は触りたいというストレートな性欲より、あたしを焦らしたいという意地悪な欲望のほうが上回っているのだろう。  
せめて心を読ませてくれればいいのに! そろそろ我慢が……!  
 
「でも、こうやって尻尾のここを触られると我慢できなくなっちゃうんだろ? そろそろ自分で触っちゃうころじゃないか?」  
 
「ひうぅっ! 尻尾グリグリしないで〜! も、もうダメぇ〜!」  
 
 あたしにしては我慢できたほうだと思う。  
だがとうとうあたしは彼の意地悪に、そして自分自身に屈してしまった。  
あたしの手が彼に触られるべきトコロに伸びてしまう。  
我慢の末の快感は一入だ。彼の手で触ってもらえればどんなに良かったか……!  
眼前での自慰を強いる彼の目が、やらしく、意地悪く細まる。  
 
「この意地悪! 意地悪ぅ! お願いだから触ってよぉ〜!」  
 
 自分で体の最も敏感な箇所に手を伸ばし、弄り回す。  
だが、自慰なんて疑似体験ではダメだ。彼に触ってもらえないと心のそこから気持ちよくなることなんてできない。  
お尻の穴と尻尾を攻められ、あたしの手で陰核を摘んでも、あたしの心が満ちることはない。  
ただひたすらに彼を求め、誘惑する。  
彼はあたしが性器を弄る様子をじっとりと見ていたが、やがて口を開いた。  
 
「そうだな……流石にかわいそうになってきたし、そろそろソコも攻めてやるよ」  
 
 あたしのお尻を弄る手の動きが止み、穴から引き抜かれた。  
さっき出した石鹸を泡立て、彼が自分の手を洗浄していく。  
 
「本当? 本当ね?! 早く早く! もうあたし待ちきれない!」  
 
「そう言わずに、もうちょっと待ってくれたっていいじゃないか」  
 
 彼の手の上を転がる石鹸は明らかに異様な量の泡を出している。  
必要以上に手洗いに時間を割き、あたしを焦らしているのだ。  
この期に及んで意地悪をする彼にはもう閉口だ。  
意地悪をするのなら、せめてその意地悪したいという欲求をあたしに読ませて欲しい。  
 
「ただし、アナルバイブのおまけつきだ。いいよな?」  
 
 彼が凹凸(おうとつ)のある淫らなおもちゃを手に取り、あたしに突きつける。  
 
「お、お尻は恥ずかしいってば!」  
 
「じゃぁ、攻めてやんない」  
 
 恥らうあたしに彼がさらなる意地悪を言う。  
散々焦らされたあたしには一番効果的な攻撃だ。  
 
「そ、そんなぁ! わかったわよ! もう好きにして!」  
 
「好きにしていいんだな? じゃ、君はイき地獄だ」  
 
「それでいいから! アソコ攻めてよぉ!」  
 
「そう慌てずに。まずはお尻のほうからだ」  
 
 仰向けにされ、足を広げられ、かなり恥ずかしい姿勢になったあたしのお尻の穴に、彼がおもちゃをゆっくりと挿入してゆく。  
おもちゃが腸壁に触れる快感に思わず身震いしてしまう。その上、振動まで加えられてしまうのかと思うと、ちょっと怖い。  
 
「スイッチ、オーン♪」  
 
「ひゃあぁんっ!」  
 
 おもちゃが優しくあたしの腸壁を抉り、刺激する。それだけであたしは絶頂を迎えてしまった。  
ただでさえ恥ずかしいのに、ひくつきながら蜜を噴出す淫らな花弁を彼が視線で突き刺し、ますます羞恥を煽るのだからたまらない。  
 
「あーあ、これだけでイっちゃったか。イき地獄はまだまだこれからなのに」  
 
 彼が今度は3点攻めローターを手に取り、あたしの乳首に押し付けた。  
勃起した乳首に吸い付き、おもちゃがうなりを上げる。  
少しだけ痛みを伴うやや強めの振動と、乳首を超速で攻めるハケの動きにあたしはすっかり参ってしまった。  
抵抗しようにも、やはり彼の翼で両腕を押さえられ、それはかなわない。  
 
「あはあぁんっ! ま、待って! これすごすぎぃ!! もうちょっと弱めにしてよー!」  
 
「ダメだ。こんないけないおっぱいにはしっかりとお仕置きをしてやらないとな」  
 
「んああああぁんっ! 許して! やっぱりイき地獄はダメえぇぇっ! あっ! ああああぁぁっ!」  
 
 おもちゃによる強すぎる快感によって、再び絶頂へ導かれる。  
それでも快楽の拷問は終わらない。おもちゃは無感情に自分たちの役割を遂行し続けている。  
 
「ダメだって? そっか。じゃぁクリ攻めは無しだ」  
 
「ダメじゃない! やっぱりダメじゃない! イき地獄でいいからクリいじめてえぇぇっ!」  
 
「そんなにお仕置きされたいのか。じゃぁこのクリちゃんもいじめてあげよう」  
 
 彼が陰核にもローターを押し付けた。  
彼の手とはかけ離れた物体が、乳首にしている愛撫と同じように、吸い付き、ハケで扱き、ブルブルと振動する。  
最も敏感なトコロを攻められ、あたしはまたまた絶頂に達してしまうが、  
あたしが欲しいのはおもちゃによる無表情で淡々とした攻めではなく、彼の手による優しい愛撫なのだ。  
 
「はひゃああぁぁあんっ! こ、この嘘吐き! ひうぅんっ! どっ、どうして手でやってくれないのよ〜!」  
 
「俺はさっきから攻めてあげるとしか言ってないぜ? 触ってあげるなんて言ったかなぁ?」  
 
「そんなぁ〜〜っ!! お願い! 手でやってよぉ〜っ!」  
 
「好きにしろって言ったのは君だろ? 好きにさせてもらうよ」  
 
「ひゃああああぁぁぁっ!! 尻尾ダメええぇぇぇっ!」  
 
 彼がまたあたしの尻尾に卑怯な不意打ちをしかける。  
第2の性器とも呼ばれるお尻の穴に、性器に次ぐ性感帯とも言われる両乳首。  
そして性器の中で一番敏感な部分である陰核。特に弱い性感帯が尻尾攻めによってさらに刺激され、おもちゃの効果が倍増する。  
 
「た、助けてえぇぇぇっ! もう許して! お願い! 気持ちよすぎてあたし壊れちゃうよぉおおぉっ!!!」  
 
「そんなこと言ってる割にはまだ余裕がありそうだな。尻尾を挿入してあげよう」  
 
 「ちょまっ……ああああんっ! もうやめてえぇぇっ!!!」  
 
 あたしの性器がズブズブと尻尾を飲み込んでいく。  
腔肉で挿入されたものを締め付ける快感と、挿入した尻尾を締め付けられて全方位から全てのツボを刺激される快感。  
前だけでなく後ろの不浄な穴も淫具によって塞がれ、弱点の乳首と陰核も同時に攻められる。  
神経を焼ききるような快感の電流と、思考を洗い流す快感の波が次々と襲い掛かり、あたしに息継ぎをする隙も与えない。  
容赦のない6点攻め連続絶頂にあたしの意識が遠のいていく……。  
 
「弱いところをいっぺんに弄られる気分はどうだ?」  
 
「ああああぁぁんっ!! も、もうやだー!! 気持ちよすぎて本当におかしくなっちゃうううぅぅっ!!!」  
 
(でも、こうやって触角掴まれると嬉しくなっちゃうんだろ?)  
 
 今まさに闇に堕ちようとしていた意識が、触角から送り込まれる彼の欲望によって呼び覚まされる。  
力の源を注ぎ込まれることで気絶するという退路も絶たれ、あたしは絶望を覚えた。  
だが、あたしの脳内に満ち、あたしを喘がせているのは間違いなく幸福感と快感だ。  
相手を絶望のどん底に叩き落し、同時に絶頂へ導く。  
この二つを同時に行える彼は、憎たらしいほどに、あたしにとって最高の契約相手だと容易に認定できるほどに、どこまでも器用だった。  
 
「ず、ずるいっ!! ずるいよぉ!! こんな嬉しくするなんて反則ううぅっ!!!」  
 
「嬉しいならいいじゃないか」  
 
「嬉しいけど違うの! 本当はあなたに触って欲しいのよぉぉっ!!」  
 
 全身を攻められ、欲望ももらえる。  
確かに嬉しい。嬉しいのだが、あたしが本当に望んでいるのは彼の手による優しい愛撫なのだ。  
プリンを食べたい時にチョコレートを押し付けられたような……  
なにか違うものを与えて誤魔化し、本当に欲しいものは与えてくれないという  
彼の意地悪な攻め方が、ますます彼を欲するあたしの心を煽る。  
 
「へぇ? じゃぁ触ってやれば文句ないんだな?」  
 
「ち、違っ……! 胸じゃなくてアソコ触ってよぉ〜!!」  
 
 彼の細い指があたしの敏感な乳房を締め付ける。  
さっきまでの6点攻めに加えて敏感な箇所を2箇所も攻められ、あたしはまた絶頂に達してしまった。  
触角から伝わってくる意地悪をしたいという欲望があたしに力を与え、ますます嬉しくなってしまう。  
彼に触ってもらえなくて、あたしはこんなにも焦れているのに、確かな幸福感があたしの脳内を満たしてゆく。  
嬉しいのに、嬉しくない。早く彼に触ってもらって、この複雑な感情をどうにかしたいのに……!  
 
「……そろそろ許してあげよっか?」  
 
「お願い! もう許して!! もうイき地獄はやめてえぇっ!!!」  
 
 彼がようやくあたしに救いの手を差し伸べた。  
終わりの見えないイき地獄に降りてきた1本の蜘蛛の糸。この機を逃すまいとあたしは全力でそれに縋りつく。  
 
「じゃぁ、許してやるよ」  
 
 徹底的にあたしの弱所をいじめていたおもちゃたちが、彼の手によって動きを止め、取り外されてゆく。  
尻尾も腔から引き抜かれ、あたしはほっと胸を撫で下ろす。  
彼の手があたしの触角から離れてしまったのは少し寂しいが、ひとまずはこれで一安心だ。  
 
「あぁ……良かった。あのまま続けられたら本当におかしくなっちゃうとこだったわよ」  
 
 涙とよだれと鼻水でグショグショになってしまった顔を拭いながら、あたしが言う。  
 
「うーん……悪い。流石にやりすぎたかな」  
 
「気持ちよかったし、たまにはああいうのもいいかも……。でも、今はあなたに優しく触って欲しいな……」  
 
 股を開き、彼の手を秘所に導く。  
機械とはまるっきり違う、暖かい手によるゆっくりとした優しい愛撫。もうすっかりあたしは彼の虜だ。  
 
「こんなトロトロにしちゃって……いけない悪魔だな」  
 
「だ、誰のせいよぉ……。あっ、あんっ!」  
 
 剥き出しの陰核を軽く摘まれ、快感と幸福な感情があたしの中で渦を巻く。  
まるであたしの思考全てを飲み込んでいくような激流に、思わず身を捩ってしまう。  
 
「胸もいっしょに弄ってあげよっか」  
 
 彼の両手があたしの胸に伸び、口はクンニを開始する。  
快感こそ機械によりイき地獄の時より控えめだけれど、あたしの胸を満たす幸福感は  
イき地獄の時とは比にならない。やっぱりあたしは彼に直接優しくしてもらうほうが、  
契約相手に体を貪られていると実感できて嬉しいのだ。  
 
「ああぁん……3点攻めいいよぉ……あっ! そうそう……そうやってクリと乳首いっしょにいじめられると気持ちいいの……っ!」  
 
 彼の下が優しく陰核を舐め上げ、両手はやや乱暴目に胸を揉みしだきながら、乳首を弄り回す。  
彼の欲望を読み取らせてもらえていないのが不満といえば不満だが、  
今のあたしは彼の愛撫をゆっくりと味わいたいのだ。  
このままでも十分に気持ちいいし、あたしは幸せだ。  
 
「ひうぅっ! く、クリ噛んじゃ……あっ! もうダメイっちゃううぅっ!!」  
 
 絶頂に導かれるのはこれで何度目だろうか。  
何度経験しても飽くことのない快感が、あたしの全身を走り回り、暴れまわる。  
しかもさっきまでのおもちゃ攻めとは違い、彼の愛撫によって得たものであるという満足感がある。  
 
「もうイったのか? やっぱり君って意地悪し甲斐もあるし、触り甲斐もあるな」  
 
「あら、そういうあなたのココももう暴発寸前じゃない? あたしが気持ちよくしてあげよっか?」  
 
 言うが早いかあたしはローションを手に取り、彼の下の服を脱がし、彼の最も大事な箇所にぬったくる。  
あたしが攻めに転じた途端、彼が体をびくっと震わせる。なかなかかわいい反応だ。  
そんな反応をされるとあたしの方も燃えてしまう。  
 
「う……あっ。や、やめてくれ。イっちゃう……」  
 
 彼の弱気な表情と声にゾクゾクするような興奮を覚える。  
意地悪をして、本当にやめてあげると彼はますます情けない表情になった。  
あたしに縋るような青い目からは、さっきまでの意地悪さは微塵も感じられなかった。  
 
「う……ずるいぞ」  
 
「焦らすのはあなたもしたことでしょ? それに、今イくよりコッチでイっちゃったほうが良くない?」  
 
 あたしが彼の棒にコンドームを装着してあげると、彼の棒はそれにさえ反応してびくびく震えた。  
 
「中出しはダメだけど……挿入なら許してあげるわよ?」  
 
「……そんな誘惑されて抗えるわけがないじゃないか」  
 
 あたしはすっかり彼の虜だが、彼もまたあたしの虜なのだ。  
そう実感すると、あたしの中でなにかメラメラと燃え上がるものがある。  
彼の言うとおり、あたしは彼を誘惑して喜ぶいけない悪魔なのかもしれない。  
 
「ふふ。ほら、あなたの胸、すっごくドキドキしてるわよ? あたしに興奮してくれてるのね……嬉しい……」  
 
 彼を細い腕で抱きしめると、彼の鼓動があたしにも伝わってくる。  
彼が生きている証、そしてあたしに興奮している証であるそれをあたしの胸で感じ取る。  
 
「だ、抱きつくなよ恥ずかしい……」  
 
「でも、嫌じゃないでしょ?」  
 
 ちょっと困ったような表情をして恥ずかしがる彼の様子が、あたしに火をつける。  
あたしの割と大きな胸を彼に押し付けると、彼はますます困ったような顔になった。  
 
「嫌なわけないだろ……」  
 
 彼もあたしの背中に両手を回した。  
同時に翼であたしを優しく包み込み、翼で尻尾の先っぽを意地悪く刺激する。  
あたしに生えてるものとはまるっきり違う、羽根が生え揃った純白の大きな翼。  
ふわふわした羽根が先っぽを擽る度に、あたしの興奮が高まってゆく。  
 
「んあ……あんっ……」  
 
「隙ありだな」  
 
「っ?!」  
 
 喘ぎ声を漏らすために開いた口を彼の唇によって塞がれる。そのまま互いに舌を絡め、熱烈なディープキス。  
彼もあたしもディープキスの経験なんて無いけれども、下手くそなりに、精一杯お互いの口内を犯す。  
 
「ん……んっ……ふぅ……」  
 
 キスしている間も尻尾いじめは止まらない。その上、彼が両手であたしの胸を揉んでくるのだ。  
せめて舌で彼に逆襲をしようと、彼の口の中にあたしの舌を突っ込むが、彼の舌に押し返されてしまう。  
あたしの中に進入してきた彼の舌が、あたしの舌の付け根も、口蓋も、歯の一本一本までもを丁寧に舐め尽す。  
 
(へへ、けっこう感じてるな。やっぱり尻尾弱いんだな)  
 
 彼があたしの触角を掴み、自分の頭に押し当てる。今は心を読んでもいいということなのだろう。  
そういうわけなら、遠慮はいらない。もう一方の触角も彼に押し当て、甘美な欲望に舌鼓をうつ。  
 
(クリも弄ってあげよっか?)  
 
 あたしの最も弱い箇所を攻める。という彼の言葉にあたしの全身がびくりと反応する。  
 
(やっぱり君っていい反応するよね。本当に弄り甲斐があるよ)  
 
 あたしの触角を掴んでいた彼の右手が、あたしの下半身に伸びていく。  
逃れようと身を捩るが、彼の翼があたしを抱き寄せ、それを全力で阻む。  
抵抗もむなしく、あたしの最大の弱点に彼が攻め入るのを許してしまった。  
 
「ぷはっ! あぁ〜んっ! キスしてる時にクリいじるのはダメよぉ〜!」  
 
「でも、嫌じゃないだろ? ほら、こんなに濡れてる」  
 
「あ〜ん。ずるいよ〜!」  
 
 あたしの意思を無視して勝手に漏れる喘ぎ声のせいで、キスが中断されてしまう。  
それでも、彼のやわらかな翼に抱かれながら大事なところを弄られる構図はなかなか興奮するものがあるし、幸福感も得られる。  
 
「それっ、クリクリッ、クリクリ〜ッ」  
 
「あぁ〜ん! そんなにクリいじめちゃ……だ、ダメっ! イっちゃう〜っ!」  
 
 今まさに絶頂を迎えられる。と思ったところで彼が再び愛撫を止める。  
 
「……でも、ここでイくより君も俺のコレにイかされたほうがいいんじゃないか?」  
 
「焦らさないでよ〜! でも、それもいいかも……優しくお願いね。痛くしちゃイヤよ?」  
 
(拒否しないのか……。もうダメだ、我慢できない! 挿れてやる!)  
 
 彼が翼であたしを包み込んだまま、勢いよく押し倒したくなる性衝動と格闘しながら、ゆっくりとあたしをベッドに押し倒す。  
もちろん、尻尾の先っぽは意地悪く弄繰り回しながらだ。  
 
「ほ〜ら、こんなに濡れてる。挿入したら一発でイっちゃうんじゃないか?」  
 
「ど、どうかしら? あなたの早漏チンチンがイっちゃうほうが早いと思うけど?」  
 
 今のは大嘘だ。さっきイく寸前で焦らされたばかりなのに、尻尾も弄られ続けているのに、  
こんなにも欲望を注がれているのに、その上挿入までされたら我慢できるわけがない。  
 
(こんなボロボロなのに強がって見せるのがたまんないよなぁ……屈服させたくなっちゃう。やっぱりどうすれば俺が興奮するか完璧にわかってる)  
 
 あたしの反応に彼も大満足だ。あたしも彼も興奮しきり、彼は今にも性器であたしを貫きたいという衝動に押し負けそうになっている。  
舞台は完全に整った。あとは彼を煽って興奮をさらに高めれば完璧だろう。  
 
「あら、挿れないの? もしかしてあたしより先にイくのが悔しいから?」  
 
「じゃぁ挿入だけじゃなくてクリ攻めもプラスしてあげよっか? それでもまだ強がれる?」  
 
 彼が魅惑的な、それでいて恐ろしいことを口にする。  
挿入だけでも絶頂を迎えてしまいそうなのに、陰核まで弄られたりしたら……!  
 
「! そ、そんなのに……あたしが屈すると思うの? ぜ、絶対無理よ! 無理だから無駄なことはやめなさい!」  
 
「へぇ? じゃぁ試してみる?」  
 
「む、無駄よ無駄! 無駄だからやめて! ど、どうしてもって言うならやって見なさいよ! あたしの締め付けで返り討ちにしてあげるわよ!」  
 
(そうそう。こんな風に弱いトコ攻めようとするとびくびくしちゃうのもたまんないよな。もっと屈服させてやりたくなる)  
 
 彼の手が、あたしの陰核にゆっくりと伸びてゆく。  
焦らすような手の動きに悲鳴を上げたくなるが、ここはグッと我慢だ。  
挿入の直前まで強がって見せて、挿入の瞬間か直前に屈服したほうが彼の征服感を煽れるし、あたしも気持ちよくなれる。  
 
「や、やるなら……早くしてよぉ!」  
 
(うん。やっぱりこのいつ弱いトコを触られるかびくびくしてる表情もたまらないな。こんなに俺をいけない気分にするなんて、本当に君は最低な悪魔だね。最高だよ)  
 
「俺も我慢の限界だよ。そろそろトドメといこうか」  
 
「!! ま、待って待ってやっぱりクリはダメえぇ〜!!」  
 
(……! やっぱりさっきまで強がってた子が屈服しちゃうのは興奮するな……! 最高だよ君は)  
 
 指の腹で陰核を押しつぶしながら、彼のペニスがあたしを貫いた。  
尻尾への愛撫ですっかり濡れていたソコは、彼の平均よりやや小さい気がするサイズの棒を貪欲に飲み込んだ。  
尻尾を挿入したりして、慣らされていたのもあるだろう。一気に奥深くまで押し込まれ、肉棒が腔肉を思い切り打ち付ける。  
 
(こ、これが女の子の中か……すごい締め付けに今にもイきそうだ……)  
 
「あたしを感じさせたらもっと締め付けるわよ?! だ、だからクリはいじめないで〜っ!」  
 
「上等だ。ダラダラ長引くより短期戦のほうがいいだろ?」  
 
(は、早くイかせないと俺がイっちゃうよ……尻尾もクリもいじめてあげないと)  
 
「ひゃううっ!! だ、ダメダメ! 挿れながら尻尾とクリいじめるの禁止〜!」  
 
 あたしと同様に、彼も追い込まれている。  
だが、彼が感じている性的な快感も、触角からあたしの脳に伝わるのだ。  
彼の性感が伝わってきたところであたしが感じている性感には遠く及ばない。  
それでも、あたしがえっち対決で不利になる要素であることには変わりはないのだ。  
それに、遠く及ばないとは言っても、微弱な快感だとは言っていない。  
彼を感じさせると、あたしもそれが伝わって同じだけ感じてしまうのだ。  
 
「あああぁぁん! も、もうダメ! イっちゃ……あっ! ふああああああぁぁぁんっ!!」  
 
 何重もの快感に、あたしは再び彼に敗北してしまった。  
くぅっ……! こ、こうなれば死なばもろとも。あたしの締め付けで彼も道連れだ。  
 
「う……あああぁぁっ!」  
 
「ひゃああん!」  
 
 彼が絶頂を迎え、その絶頂の快感が伝わってあたしに追い討ちをかける。  
彼の下半身から熱いものが込み上げ、あたしの中にぶちまけられた。コンドームがなければ多分妊娠していただろう。  
そして、男性が絶頂を迎えた後に感じる虚無感と脱力感があたしと彼を襲う。  
う〜ん。男女両方の絶頂を味わえるあたしはけっこうお得なのかもしれない。  
 
「ま、負けちゃった……けど……あなたもいっぱい感じてくれたみたいね」  
 
「俺もギリギリだったよ。正直そんな勝った気はしないな」  
 
 彼が性器をゆっくりと引き抜き、コンドームを取り外し、パジャマのズボンを上げた。  
あたしは絶頂の余韻に浸りながら、心の底から満足した彼の感情をたっぷりと読み取る。  
 
「ふふ……どうだった? 病み付きになっちゃうくらいの気持ちよさだったでしょ? お願いすれば毎日してあげるわよ?」  
 
「魅力的なお誘いだな。本当にいいのか? 毎日はちょっと俺のほうが辛いけど……」  
 
「もちろんよ。さっきも言ったとおりいっぱい欲望をくれれば寿命の代わりになるし、契約相手の願いにこたえるのはあたしにとって喜びなんだから」  
 
 ……でも、彼は一つ大事なことを忘れている。  
 
「黙ってたけど……あなた、2回目の契約をした時に「次の契約の内容を今回と全く同じものにしろ」ってお願いしなかったわよね」  
 
「……えっ?」  
 
「「もう一度契約しろ」としか言ってないじゃない。だから、あたしたちが次に結ぶ契約の内容は、あたしが自由に決めていいことになるんだけど……」  
 
 新しい契約書を書き始めたあたしを見て、彼の顔に焦りの表情が浮かぶ。  
あたしはこのまま彼をタダ働きさせる契約書を作ってしまうこともできるし、  
その気になれば彼を奴隷にすることだってできてしまう。でも……。  
 
「いっぱい気持ちよくしてくれたし……欲望もたくさんくれたから見逃してあげるわ。これが新しい契約書よ」  
 
「もうできたのか? すごい速筆だな……」  
 
 あたしの言葉に彼は安堵を覚えたようだったが、  
契約書を手に取る様子は少し恐る恐る、といった感じだった。  
 
 
 
「ただいま〜」  
 
 いつも通りの時間帯に、彼が帰宅した。今日の彼はどことなく活き活きとしている。何かいいことがあったに違いない。  
 
「おかえり〜。今日はどうだった?」  
 
 いつもなら彼に触角を押し当てて挨拶するのだが、こういう時の彼は大抵自分から良いニュースを話したがる。  
読むのはちょっとワンテンポ置いてからにしよう。  
 まぁ、彼にとってのいいニュースなんてのはほとんどが町で騒動が起きたから見回りが退屈じゃなかっただとかで、周りにとっては悪いニュースであったりするのだが。  
 
「あー、暇だからもうちょっと仕事くれって言ったらさ、神サマが仕事くれたんだよ。言ってみるもんだね」  
 
 普段から彼は神様についてなんだかんだ言ってるが、彼は天使だからか、神様に使ってもらえるとやっぱり嬉しいらしい。  
彼の喜びはあたしの喜びだ。早速触角を通して喜びを共有しよう。あたしが触角を彼に向かって伸ばすと、彼があたしの触角を掴んだ。  
 
「へ〜、どんなお仕事?」  
 
(神サマの肩もみとか、マッサージをやったんだよ今日は。こういう仕事のほうが、神サマの役に立ってるって実感しやすいし、見回りより嬉しいな)  
 
「普段から神様のことをぶつくさ言ってるくせに、本当は神様の役に立てると嬉しいんじゃない」  
 
(だって俺一応天使だし。神サマの役に立つと喜ぶ習性なんだよ。それに神サマは美人だしね。合法でベタベタ触れるのはけっこう嬉しいよ)  
 
 むむっ、あたしというものがありながら神様にも手を出したのか。神様に嫉妬するわけではないが、何か悔しい。  
 
「何よ〜? あたしに触るのは楽しくないって事?」  
 
「そ、そんなことないよ。神サマは美人だけど、君とは違う」  
 
 今のはちょっと彼をからかってみただけだ。あたしは心を読めるんだし、そんなことはわかりきっている。  
 それどころか、いつからか彼が心のどこかであたしに愛の感情を抱くようになっている事も、あたしは知っている。  
 彼はその感情が性欲か何かだと思っていて自覚がないようだったが、心を読めるあたしが言うのだから間違いはない。  
彼のことは彼以上にわかっているつもりだ。  
 そして、彼の愛は性欲以上に読んでいて嬉しいものだった。  
 別にあたしは愛の感情を読んで喜ぶように創られた悪魔ではない。  
だが、彼の感情を読んでいるうちに、あたしも彼のことが好きになってしまったようだ。  
今では彼の愛が欲望よりも美味なものに感じられ、読むだけであたしを幸せの絶頂へ導くのだ。  
 
「それに、神サマよりいい反応してくれるしね……」  
 
「はひぁっ?! し、尻尾はダメ〜っ!」  
 
 悪魔と契約して、これで何日目だったか。  
 あの契約書の中身は、少し文章が書き足されているだけで、元のものとほとんど変わらなかった。  
寿命ではなく欲望をよこすこと。  
えっちのときは手を抜かずにしっかり気持ちよくすること。  
アナルいじめとおもちゃ攻めはほどほどにすること。  
かなえられる願いの数は1回の契約につき10個。  
 最初と最後のもの以外は文頭に「できるだけ」と書かれており、俺を縛り付ける効力は無いに等しかった。  
 
 あれから幾度も体を重ねたが、尻尾を攻められた時の悪魔の反応はかなりそそるものがあるし、全く飽きが来ない。  
俺が週に何回も悪魔の尻尾を攻めてしまうのも、仕方がないことだろう。  
 
「は……あぅん……か、帰ってきて早々えっちだなんて〜……どれだけ欲張りなのよ〜!」  
 
 まぁ、流石に帰ってきていきなり尻尾を攻めるのは今日が初めてなのだが。  
 抵抗できないように俺の翼で悪魔の両腕を押さえつけ、尻尾への攻めを続ける。  
先端を羽ブラシで擽ってやると、今回もとびっきりの反応をしてくれた。  
 
「はひあぁぁっ! さ、先っぽはダメ! 先っぽ擽られるのは弱いんだってば〜っ!」  
 
 こうやって相手を翼で押さえつけながら弱点を攻めまくってやると、昨晩の苦い記憶が蘇る。  
昨晩のえっち対決では、悪魔の翼に両腕を押さえつけられ、抵抗できないまま弱いところを攻められてイかされてしまった。  
そして悪魔にえっちの主導権を取られた俺は悪魔に攻められるがままになり、結局俺が半ベソをかいて懇願するまで無理やり射精させられ続けたのだ。  
 そうだ、今日はその仕返しをしてやろう。  
 
「よし、今からえっち対決開始だ。君が先にイったら今日の主導権は俺のものだからな」  
 
「え? そ、そんな……これじゃあたし……ひゃうううぅぅっ!!」  
 
 翼で押さえつけたまま、悪魔の尻尾を一方的に擽ってやると、悪魔が可愛い声を上げた。  
 
「ひゃっ! だ、ダメ! ずるいよぉ〜!」  
 
「君が昨日やってくれたことじゃないか。たっぷりお返ししてあげるからな」  
 
「んああんっ!! も、もうズルしないから今回だけは許して〜!」  
 
「ダメだよ。君がイくまでやめてあげないからな」  
 
「そ、そんなぁ〜!」  
 
 尻尾は悪魔にとって最も重要な性感帯らしい。  
性感を感じる神経がいっぱい張り巡らされてて、しかもツボがいっぱいあって全身の性感帯とつながってるんだとか。  
そんなところを俺の羽根で執拗に擽られてはたまらないだろう。  
 
「もうアソコが濡れてきてるな……」  
 
「ひゃあっ! ソコはダメっ!」  
 
 服の上から割れ目をなぞると悪魔が可愛く喘ぐ。  
身を捩って快感から逃れようとする様子がなんともいじらしい。  
 
「きゃあぁんっ! そ、それダメ! それは禁止! 待って待って許してえぇぇっ!!」  
 
 尻尾の先端でクリトリスのあたりを突っついてやると、悪魔は悲鳴に近い嬌声を上げた。  
愛液が溢れ、悪魔の服に染みができる。もっとクリトリスをいじめてあげると、悪魔は涙目で俺に許しを請ってきた。  
 
「も、もうダメ! イっちゃう! 許してぇっ!」  
 
 何度も体を重ねて、悪魔が焦らしに弱いのはわかっている。だからあえてここで愛撫を止めてやる。  
 
「あぁっ……そんな……お願いやめないで……焦らさないでよ〜……」  
 
「イかせてほしくないんじゃなかったっけ?」  
 
「も、もう勝負はあたしの負けでいいから! お願いだからもう許してよ〜!」  
 
「どうしよっかな〜?」  
 
 意地悪を言ってやると、悪魔が涙目でこちらを睨んでくる。  
そうやってそそる表情をするからいけないんだ。もっと意地悪をしてあげたくなってしまう。  
 
「昨日ズルしたことも謝るから……ごめんなさい……もう許してよ〜!」  
 
「じゃ、イかせてあげる」  
 
 悪魔の服を脱がし、次に下着を脱がす。完全に無防備になって晒された性器に、尻尾を突っ込んでやる。  
 
「あっ……!」  
 
 右手で尻尾を掴み、そのまま激しくピストンを開始。左手でクリトリスも攻めてやる。  
悪魔はこの攻め方が好きだということも、こうされるととんでもなく感じてしまうことも経験で俺にはもうわかっているのだ。  
 
「ああああぁぁっ! そ、それしゅごすぎぃ! い、イっちゃう! イっちゃう! ふああぁぁぁぁぁんっ!!」  
 
 悪魔が限界を迎え、一際多くの愛液が溢れ、潮が放たれた。  
びくびくと痙攣し、絶頂の余韻に浸る悪魔の触角を掴み、大好きな欲望を頭に流し込んでやる。  
 
「なぁ、今どんな気分だ?」  
 
 俺は天使だ。神サマに仕える存在で、一応は神サマの役に立つことに幸せをを感じるようにできている。  
だが、俺がこうして悪魔を抱き、感じている幸せは神サマにプログラムされたものではないはずだ。  
性欲は神サマにプログラムされたものだろうが、俺はそれを悪魔に向けるように創られたわけではない。  
俺は自分で自分の幸せと呼べるものを見つけ出し、手に入れたのだ。こうやって天使と交わる喜びを覚えた悪魔も、それは同じのはずだ。  
 
「あたしも最高に幸せよ。あなたと同じ気分」  
 
 心底満足したような表情で、悪魔が返した。  
同時に俺の心によくわからない熱いものが燃え上がる。この前からずっとこうだ。なんだろうこの気持ちは。  
 
「今もたまに人間と契約してるみたいだけどさ、どう? 俺より契約してて嬉しい人間っている?」  
 
「いない……かな。もちろん嬉しいけど、今は人間との契約は淡々とすませちゃうし、あなたとの契約ほどは嬉しくないわね。あんっ! 尻尾いじめないで!」  
 
 尻尾を軽くこしょこしょと擽ってやると、またまた悪魔はいい反応を返した。  
性器から愛液がさらに滴り落ち、尻尾はぐねぐねと身をくねらせて俺から逃れようとする。  
その様子を見るとまたしても俺の中で性欲とは少し違う何かが燃え上がる。俺はどうしてしまったんだろう。  
 
「でもさ、君は今まで人間との契約がメインだったわけだろ? 天使と契約するほうが嬉しく感じるように神サマに創られたわけじゃないよな」  
 
「あん……そうだけど……ひぁっ……嬉しいんだから仕方ないじゃない」  
 
「へぇ……俺みたいな意地悪で欲張りなやつと契約したほうが嬉しいんだ?」  
 
「あぁんっ! た、確かにあなたは意地悪で欲張りだけどぉ……ひゃんっ! し、尻尾いじめないでってばぁ!」  
 
 尻尾攻めをちょっと激しくすると、悪魔はすぐに感じてしまう。  
これだから俺は悪魔を攻めるのをやめられないんだ。  
でも、ちょっと前から俺は性欲だけじゃなく何か別の感情で動いている気がする。  
俺の中でごうごうと燃え滾っているこれは何なのだろう。  
 
「ばかぁ……そうやって……んっ! いつもあたしの弱いところばっかいじめるんだからぁ……! んああんっ!」  
 
「で、「確かにあなたは意地悪で欲張りだけど」の続きは?」  
 
「ばーか! 教えてあげないわよーだ! あっ! クリ触っちゃダメっ!」  
 
 クリトリスを優しく摘んであげると、悪魔の背中が反り返り、全身がびくっと震える。  
 
「へぇ……じゃぁ今日は白状するまで君を感じさせまくってあげようか?」  
 
「やって見なさいよ! ふあんっ! いっぱい気持ちよくしないと白状なんてしないわよ? あぁっ、クリはいじめないでってば〜!」  
 
「そういうこと言われると燃えちゃうね。いっぱい感じさせてあげる」  
 
 そうだ。こうやって悪魔はいつも俺を煽るようなことを言ってくれる。  
欲望を得るためでもあるんだろうが、こうやって俺を誘惑してくれるのは嬉しい。  
だがこの欲望も俺の中で燃えているものとは違う。  
 
「でも、俺まだ風呂入ってないんだよな。外行った格好でやるのは不潔だろ? 風呂入ってくるよ」  
 
「え……ここまでしといてまた焦らすの?」  
 
 悪魔がちょっと目を潤ませて俺を見る。  
そんなこと言ったって仕方がないだろう。もちろん意地悪をする意図もあって俺はこう言っているのだが。  
 
「だって、このままじゃ汚いじゃないか。それとも風呂でする?」  
 
「それもいいかも……じゃ、お風呂いきましょ? あたしが洗ってあげる」  
 
 言うが早いか悪魔が立ち上がり、俺を風呂場へ引っ張る。  
 
「じゃ、俺は君の尻尾を洗ってあげる」  
 
「あはぁっ……?! こ、このえっち!」  
 
 俺が悪魔の尻尾を掴み、撫で摩ると悪魔の全身から力が抜ける。  
壁に手を当て、立っているのもやっとのようだ。  
 
「あぁ……またイっちゃいそう……お触りはお風呂まで待ってよ〜……!」  
 
「じゃ、お風呂までは触らないでおいてあげる」  
 
「や、やっぱりダメ! イく寸前なのに焦らさないでぇ……!」  
 
「いや、どっちだよ」  
 
 そんな会話を続けている内に、風呂場へとたどり着く。  
ちゃっちゃと服を脱ぎ、ついでに悪魔の服も俺が脱がせて風呂場に入る。  
 
「じ、焦らさないでイかせてよぉ……」  
 
「ダメだ。俺が手を洗ってからじゃないとな」  
 
 おねだりする悪魔の様子を楽しみながら、必要以上に石鹸を泡立てて時間を稼ぐ。  
泡立て続けていると、とうとう悪魔に限界が来た。  
 
「も、もう我慢できないよぉ……さっきのこと白状するからさ、早くイかせてぇ……」  
 
「そうだった。なんて言おうとしてたの?」  
 
「あなたは確かに意地悪だけど……あなたの心を読んでたらあたしもなんだか段々あなたのことが……」  
 
「俺の心がどうしたの?」  
 
「あなたは自覚がないみたいだけど……読んでるとあたしのことが好きだっていっぱい伝わってくるんだもん……読んでるうちにあたしも……」  
 
 俺の中で、数式の思いもよらない解を見つけたような、その感覚を数十倍にしたようなものが弾けた。  
やっとわかった。前から俺の中で燃え上がっているのは、悪魔が好きだという気持ちだったのだ。  
確かに、一緒に暮らしていて、体も重ね合わせたりしていたら特別な感情を抱いても不思議ではない。  
それ以外にも……俺を惹きつけるものを悪魔は持っていたのかもしれない。  
 
「あたしも……あなたのことが好きになっちゃった……みたいな?」  
 
 途端に俺の中で燃えていたものが激しさを増す。  
悪魔が俺のことを好きになった……その単純な事実を受け止めるだけで、俺の胸が高鳴り、全身が熱くなる。  
もう疑いようがない。俺も、悪魔のことが好きになってしまったのだ。  
 泡を洗い流し、悪魔の尻尾に右手を伸ばす。  
 
「ふあぁぁっ! さ、先っぽダメ……感じちゃ……あっ!」  
 
 開いている左手で触角を掴み、好きだという正直な気持ちを悪魔に流し込む。  
 
「あぁっ……自覚してくれたのね……嬉しい……あたしもあなたのことが……ふああんっ!」  
 
 尻尾への愛撫を激しくし、しゃべりを中断させてやる。俺の意地悪にも、悪魔は喜んでしまうのだ。  
最初は俺の欲情を煽るだけでしかなかった姿も、今ではたまらなく愛しい。  
 
「あなたのことが……だ、だいす……あんっ! クリいじめちゃ……!」  
 
 言い切る前に悪魔の足を広げさせ、尻尾の先端をでクリトリスを突っついてやる。。  
 
「ふあっ……あ、あたしにも……あああぁんっ! い、言わせてよぉ〜! あっ! あなたばっかりずるい!」  
 
 悪魔が言えないでいる間も、俺の好きだという気持ちは悪魔に注がれ続けている。  
悪魔のほうも好きだと言いたくてたまらないのに、俺がそれを邪魔するのだ。  
流石にちょっとかわいそうになったので、しゃべれるように攻め手を少し緩めてやる。  
もちろんこれには焦らして意地悪をする意図もある。  
 
「あ、あなたのことが大好きになっちゃったの! 大好き! 大好きなの!」  
 
 悪魔の声が風呂場にガンガン響き渡った。同時に俺の中の愛も激しさを増し、燃え上がる。  
 
「そっか……俺もだよ。愛してる」  
 
 言うなりそのまま悪魔のクリトリスにキスをする。  
そのまま吸い付き、両乳首も手で攻めてあげる。  
 
「ああああぁぁっ! さ、3点攻めはダメ〜! あたしそれされるのもすごく弱いのよ〜!」  
 
 勃起しきって充血したクリトリスを吸引しつつ、舌で舐める攻撃も追加。  
こちこちの乳首も痛みを感じない程度に強く抓ってやる。  
 
「きゃああぁぁっ! だ、ダメよっ! そんなに激しくっ……! ふあああああああぁぁぁっ! もうダメっ!イっちゃううぅぅ!」  
 
 とびきり弱い3箇所を攻められ、もう悪魔は限界が近い。  
悪魔が俺の与える快感に悶え狂う姿も、俺の目には愛しく写るのだった。  
 
「い、イっちゃうよ〜! あなたのこと大好き! 大好きいいいぃぃぃぃぃっ!!!」  
 
 俺への愛を叫びながら、悪魔は昇天した。声が風呂場に反響し、まるで何十人もの悪魔が俺への愛を叫んでいるようだった。  
体を少し痙攣させながらも、俺が欲望を注ぎ込んでいるおかげか悪魔はまだ元気そうだ。  
ちょっとだらしなく涎をたらしながらも、悪魔の赤い目は愛しい人の姿をしっかり捕らえて離さない。  
 
「あぅ……こんな顔見ないでよ……」  
 
 恥らった悪魔が顔を隠してしまう。それでも目だけは俺を見つめたままだ。  
 
「それだけ感じてくれたってことじゃないか。それに、俺におもちゃ攻めされた時のほうがすごい顔してたし」  
 
「でもあなたにこんな顔見せたくないよ〜」  
 
「俺はそれで君の事を嫌いになったりはしないよ。そうだ、もっとすごい顔させたげよっか? コンドーム出してよ。「お願い」だ」  
 
「ま、まだイったばかりなのに〜! 勘弁して〜!」  
 
 そう言いながらも、悪魔は俺の願いに応えてコンドームを出して、親切にも俺に装着してくれた。  
悪魔のやわらかい指が俺の棒に触れ、ちょっと俺もびくびく感じてしまう。  
 
「あ、あと10秒だけ待って……そしたら挿れてもいいから……」  
 
 ぜぇぜぇと呼吸を整え、悪魔が俺に待ったをする。  
このまま攻めるのはちょっとかわいそうだし、待っておいてあげよう。  
 10秒ほど経ってから、悪魔の股を広げて挿入の体勢に持っていく。  
悪魔の後ろに俺の翼を回し、尻尾を翼で挟み込む。  
そのまま翼を動かして尻尾を弄ってやると、悪魔の体が跳ねた。  
 
「あっ……! 尻尾……尻尾気持ちいい……ふぁんっ!」  
 
 そのまま悪魔の胸を揉みしだき、下には俺の棒をゆっくりと挿し込む。  
あっさりと悪魔は俺の棒を受け入れ、完全に飲み込んだ。肉が俺の棒にぎゅっと絡みつく。  
 
「ああん……そんなにいっぺんにいじめるなんて反則よ〜!」  
 
 尻尾を俺の翼で擦り、乳首は羽ブラシで擽ってやり、下には棒で刺激を加えてやる。  
悪魔の好きな攻めのオンパレードだ。こうされると悪魔はたまらなく気持ちいいらしい。  
ちょっと攻めを激しくしてやると、悪魔の喘ぎ声も締め付けも激しさを増した。  
 
「あああぁぁんっ! そ、そうやってあたしの弱点ばっかり……ぃっ! あ! 中はダメ! お願いそんなに激しく動かないでええぇぇぇっ!!!」  
 
「激しくしてないよ。優しくしてるじゃないか」  
 
「あああんっ! か、感じすぎちゃう……からぁっ! あぁっ! 中だけはいじめないでえぇぇっ!!」  
 
 ゆっくり腰を動かしながら棒を最奥に打ちつけ、中を抉ってやる。  
俺を飲み込んだ悪魔の下はきつく締まり、貪欲にも俺の棒を捕まえて放さない。  
 今でも風呂に入るときに尻尾に触れてしまってオナニーを始めてしまうことはあるみたいだし、  
悪魔の膣は俺が数日間をおいてから交わっても、開発された直後の状態を保っているのだろう。  
 そして、その開発された秘所が受ける快感を尻尾への愛撫でますます増やしてしまうのだ。  
たまに快感で変になってしまうのではないかと心配になるが、幸い悪魔はまだ元気がありあまってるようだ。  
 
「俺のこと、好きか?」  
 
「だ、だから言ってるでしょ! 大好きだってばぁ……」  
 
 顔を真っ赤にしながら気持ちを告白する悪魔に俺の理性は壊れた。  
熱く燃え上がる愛の命じるまま、触角を掴み、俺の気持ちも伝えながら唇を奪う。  
 
「んむっ?! ん……」  
 
 俺の唇を受け入れ、悪魔も俺にキスで応える。  
俺が悪魔の口蓋や歯の一本一本までをも犯し、次に悪魔の舌が俺の中に侵入してくる。  
くちゅくちゅという淫らな水音が風呂場に響き渡る。  
 
「んっ! んん……っ!」  
 
 俺が尻尾を翼で激しく扱いてやると、悪魔の舌の動きが止まった。  
感じてしまってキスどころではないようだ。  
 次は触角から手を放して羽ブラシで両胸も攻めてやる。  
 
「んぅっ……! んんんんーっ!」  
 
 悪魔が咎めるような目で俺を見てくるが、ここでやめてやる俺ではない。  
むしろ、ここでガンガン攻めてやれるだけの欲深さが無ければ悪魔のパートナー失格だ。  
 この体勢ではちょっと窮屈だが、クリトリスにも手を伸ばし、摘んでみる。  
 
「んああんっ! ば、ばか! キスしながらクリいじめるのはダメだってばぁっ!」  
 
 反抗する上の口とは裏腹に、下の口の締まりは良くなる。  
 俺の下半身から熱いものが沸きあがってくるのを感じる。  
そろそろこちらも限界だ。腰が勝手に動き出し、棒が悪魔の最奥を刺激する。  
 
「ふあぁっ! あっ! ああんっ! も、もうダメ〜!」  
 
 俺の限界が近いことを察し、悪魔が触角を押し当ててくる。  
伝わってくる甘美な欲望にすっかりご満悦のようだ。  
つられて俺も嬉しくなってしまう。そして、この嬉しい感情も悪魔には伝わっているのだ。  
俺の嬉しい感情で、悪魔もますます嬉しくなってくれる。  
そう思うと、更に嬉しい感情が沸いてくる。悪魔を愛しいと思う気持ちも、同時に強くなっていく。  
 
「う……おっ……ごめん。もう無理。激しくするぞ」  
 
 流石にピストンしながらクリトリスを弄るのはこの姿勢では厳しい。  
手は胸のほうにうつし、乳攻めとピストンを開始する。  
 
「あっ! あぁっ! だ、ダメっ! ダメえぇぇっ!! あたしもイっちゃうっ!」  
 
 涙と涎で顔をグショグショにしながら悪魔が上辺だけの拒絶の声を出す。  
顔には肉欲が強く表れ、俺の体と愛を欲している。  
 膣壁が全方位から俺の棒を押さえつけ、射精を促す。  
その度に俺は繋がっていることを意識し、快感と征服感を増大させてしまう。  
そして、この快感も征服感も悪魔に読まれ、悪魔はそれにより快感を得るのだ。  
 
「うあ……だ、ダメだもう出ちゃう!」  
 
「い、いっしょにイきましょ……?」  
 
「じゃあ……いっしょにイこうか……?」  
 
「あぁ……お願い……気持ちよくしてっ!」  
 
 強すぎる快感に耐えられなくなったのか、悪魔が俺の背中に手を回し、しがみついてくる。  
俺の頭も会館に支配され、もう気持ちよくなることと、悪魔を愛することしか考えることができない。  
本能のままに腰を打ちつけ、悪魔に俺の怒張を叩き込む。  
 
「んあああああぁぁっ! い、イっちゃう! 大好き! 大好きいいいぃぃぃっ!!!」  
 
「お……れもだよ……あぁっ! で、出るっ!!」  
 
「「ああああああぁぁぁっ!!!」」  
 
 絶頂と同時に、悪魔を愛しく思う気持ちと性感が膨れ上がり、弾けた。風呂場に俺たちの声が反響する。  
乳首も、尻尾も、中も攻められ、俺が射精する快感も触角から伝えられ、  
悪魔はもう気持ちよくてたまらないというような表情で悶絶している。  
俺のほうも、ついさっき自覚した感情が脳内を駆け巡り、まともな思考ができない状態だ。  
 少し間をおいて、頭がさめてきた俺が棒を引き抜こうとすると、悪魔はそれを拒んだ。  
 
「ま、待って……もうちょっとこうしていたいの……いいでしょ?」  
 
 あぁ、いいよ。  
俺は心の中でそう呟き、悪魔に応える。  
 俺のほうも悪魔の背中に手を回し、繋がったままお互いに抱き合うような格好になると、  
悪魔は満面の笑みをこぼした。  
悪魔の笑顔は何度も見てきたが、これほど満足気で、愛しく感じてしまう表情は初めてだ。  
 
「君のことが好きだよ」  
 
 言葉と心の両方で、悪魔に俺の気持ちを伝える。  
 
「あたしも……大好きよ」  
 
 そのままどちらからともなく唇を重ね合わせる。  
互いの体液が絡み合い、水温をたてる。お互いにキスはうまくないかもしれない。  
だが、二人の愛をぶつけあうことができれば、それでも構わなかった。  
上と下の両方の口で繋がり、無言で愛を語り合う。  
激しい性交よりもこちらのほうがずっと甘く、胸が幸福感で満たされていく。  
 
「好きだよ……本当に」  
 
「あたしも本当に……大好きよ」  
 
 燃え上がった愛の炎が落ち着きかけていた情欲の炎に燃え移るのにそれほど時間はかからなかった。  
結局、夜遅くまで風呂場に響く喘ぎ声が止むことはなかったとさ。  
 
 

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