あたりを見渡せば、視界に飛び込んでくる無数のパンプキン・ヘッド。ここら一帯の雰囲気は、すっかりハロウィン一色になり、誰も彼もがその様子を楽しんでいた。  
私もその様子を楽しんでいる者の一人で、既に私のポケットの中は、近所を巡って分けてもらったお菓子であふれかえっている。  
プッシュホンを押し、家の人が出てくるまでの間は、胸が高鳴るのを感じる。みんなこの日のために用意しておいた仮装を披露しようと、それぞれ趣向を凝らした格好をしているからだ。  
だが、私と一部の者に限っては、仮装はしていなかった。なんていったって、私は悪魔なのだ。ハロウィンは、元々は悪霊祓いの風習だ。  
キリストだとか、元々ハロウィンをやっていた宗教などについては、詳しくは知らないが、  
悪魔である私はその悪霊にカテゴライズされる存在のはずだし、そんな私がわざわざ仮装をして悪霊に扮する必要は無いのである。  
もっとも、中には仮装を楽しんでいる悪魔もいる。特に向かいの古そうな家に住んでいる悪魔のおじさんがしていたゾンビの仮装は、あまりの迫力に悲鳴を上げてしまうくらいだった。  
驚く私を見て、いつも通りガッハッハと愉快そうに笑う姿に、私はどれだけの安堵を覚えたかわからない。  
他にも、隣に住んでる天使のおねえさんがしているヴァンパイアのコスプレは、クオリティも高くてちょっと色っぽかったし、  
ちょっと北へ歩いたところに住んでいる人間さんの仮装は、思わず本物の悪魔と見間違えるほどだった。  
 私の彼氏である天使――アングレーの家へと歩みを進める私の足は弾んでいた。お菓子をもらうことだけが目的なのではない。  
彼の家にあがりこみ、楽しくおしゃべりしながら、私が集めてきたお菓子を食べることも目的なのだ。  
彼の家のプッシュホンを鳴らした私は、これで何度目になるかわからないあの言葉を、マイクに向かって合言葉のように言い放つ。  
 
「トリック・オア・トリート♪」  
「あぁ、その声はエリか。待ってろすぐ出るから」  
 
 少しして、ドアから姿を現したアングレーの姿に、私は吹きだしてしまった。  
頭にかぶっているのは、この前私と買い物に行った時にハロウィンが近いからという理由で彼が適当にチョイスした、先の曲がったとんがり魔女帽。  
ものぐさなアングレーのことだ。ぼさぼさな頭をとかさないまま、仮装ついでに帽子で隠してしまおうとも考えているのだろう。  
元々可愛い顔立ちをしている上に、切るのが面倒だからと伸びきった髪を後ろで束ねているせいで、女の子のように見えてしまう。  
彼は単に魔法使いの仮装をしているつもりなのだろうが、奇しくも彼のものぐささ等の要素がその仮装を魔女らしいものに仕上げ、  
その上にそれが似合っていると思わせてしまうのだ。私はこみあがる笑いを抑えることができなかった。  
彼の白の翼は黒い魔女帽や黒服には合わない気もしたが……。  
 
「な、なに人の顔みて笑ってるんだよ? 失礼だろっ」  
「だ、だって。魔女の格好がすごく似合ってるんだもん。そういう趣味だったの?」  
「なっ、魔女じゃなくて魔法使いだ!」  
「え〜? でもどこからどう見ても魔女にしか見えないわよ?」  
「な、なんだと〜?! まあいいや。玄関で立ち話もなんだし、あがれよ」  
「は〜い。お邪魔しまーす」  
 
 あっさりと怒りの矛を収めた彼の後について、私は家の中へ進んでいく。  
束ねられた彼の髪が歩にあわせて揺れるたびに、やっぱり彼は女の子みたいだと思ってしまう。  
廊下は片付いているが、いくつかの部屋は所持者のだらしなさを示すかのように、おもちゃ箱をひっくり返したような有様を見せていた。  
彼との同棲を考えるのはまだ早いかもしれないけど、この様子では私の未来は、散らかし癖のある彼に悩まされ、片付けに追われるものになってしまう。  
これからは私も片付け癖をつけて、彼にも後で注意をしようと決心する私をよそに、彼は口を開く。  
 
「本当は僕のほうからお前んちに遊びに行く予定だったんだよ。そっちから来てくれるなんてな」  
「そうだったの? こんな可愛い魔女っ子が悪戯しにきたりしたら、どんな悪戯されてもいいと思っちゃうかも〜」  
「だ、だから魔女じゃないってば。怒るよ?」  
「そんな可愛い顔で怒っても、怖くもなんともないわよ?」  
「う……ひ、人が気にしてることを!」  
 
 顔を朱に染め、羞恥を露にする彼の反応はなんというか庇護欲をそそる。  
彼をついからかってしまう私も悪いが、そうやって可愛い顔をますます可愛いものに変えてしまう彼も悪い。  
彼は本気で怒っているわけではないし、どこかまんざらでもなさそうな雰囲気も感じるが、  
やっぱり男の子としては可愛いよりかっこいいと言われるほうが嬉しいのだろう。  
 
「別に気にすることないでしょ? 顔が可愛いのもあなたの魅力の一つだしねー」  
 
 彼の顔の赤みが増し、羞恥だけでなく幸福感も同時に露になる。  
彼は、こうやってストレートに「好き」だとか「魅力」だとか言われるのに弱いのだ。  
純粋故に、怒るに怒れなくなって複雑な顔をする彼に、私の心が刺激され、彼がもっと愛しくなってしまう。  
 
「なぁーに照れてるのよ」  
「て、照れてなんかないやい。魅力があるって言ってくれたのは嬉しかったけども……」  
「照れてるところも、すっごく可愛いわよ? 大好き」  
「か、可愛いって言うなってば〜っ!」  
 
 そうこう会話をしている内に、居間へと辿り着いた私たちは、同時に席に着く。  
私が集めたお菓子をテーブルに並べ、彼とのおやつタイムが始まる。  
 
「ほら、見て。みんなこんなにお菓子をくれたのよ。大事に食べましょ」  
「え、お前が僕んちに来たんだから、僕がお菓子を出すべきなんじゃないの?」  
「そうかもしれないけど、二人で食べたほうがきっとおいしいわよ」  
「そうだな……。ありがと。ところで、なんでお前はなんのコスプレもしてないわけ?」  
 
 彼が私の格好に疑問を投げかけた。いつも通りの黒服に身を包んだ私の格好は、確かになんの仮装もしていないように見える。  
 
「私は悪魔なんだし、別に仮装なんかしなくてもいいでしょ?」  
「そうかー? エリのコスプレ姿もちょっと見たかったな。何着ても可愛いと思うんだけど」  
 
 お菓子を口に運びながら、彼が何気なく口にしたお菓子よりも甘い言葉に、ドキッとしてしまう。  
 
「あ、アングレーのほうがずっと可愛いと思うな」  
「な、なんだと〜?!」  
 
 ついつい照れ隠しで彼をからかってしまう私に、彼が軽くだが怒りを向ける。  
せっかく話題が変わったのに、また可愛いだのなんだのといった話題にされては彼がかわいそうだ。  
 
「で、でも、アングレーが私の仮装を期待してたとは知らなかったなー。来年は何か着ようかしら」  
「そーだなー。ドラゴンの女の子とかいいんじゃない? 翼生えてるんだし」  
 
 確かに、竜娘なんかもコウモリみたいな翼が生えてるし、私が扮するのには適しているかもしれない。  
 
「あぁ、そうだ。そのクッキーにはこれをかけたほうがおいしいと思うよ」  
「え? あぁ、ありがと」  
 
 私が口に運ぼうとしていたクッキーに、彼が得体の知れない桃色の粉をふりかけた。  
匂いをかいで見ると、甘くて頭がくらくらするような香りがする。口にすると、舌の上をとろけるような甘味が駆け回った。  
 
「あっ……! これ、すっごくおいしいかも。ありがと、アングレー」  
「な、おいしいだろ? 実はそれ、女の子をもっと可愛くしちゃう成分が入ってるんだぜ」  
「どんな成分よそれは〜? まぁ、アングレーより可愛い女の子なんてそうそういないと思うけどね」  
「こ、このっ……! ところで、エリがコスプレしてないってことは、コスプレしてる僕がエリに悪戯する側なんだよな。  
そうやって僕をからかうなら、僕もエリに悪戯してあげるよ」  
 
 席を立ったかと思うと、彼は素早く私の後ろに回りこんだ。そして椅子の背もたれ越しに後ろから抱きつき、細い両腕を私の体の前にまわす。  
 
「えっ? ま、待って。何する気?」  
「何って……こうするのさ」  
 
 そう言ったかと思った直後、彼は私の服の中に手を突っ込んだ。  
無防備な背後から襲われ、大好きな彼に体を触られるという状況に少なからず私も興奮を覚えていたが、  
素直に受け入れることはできない。私は極めて敏感な体質なのだ。  
彼に体を触られるとどうしても声が出てしまうし、それもだがやっぱり体を触られるのは恥ずかしい。  
 
「お前ってさ、ここ弱いよな」  
「ふぇ……そ、そこは駄目。もう可愛いとか言わないから許して」  
「どうしよっかなー。お前もそんな嫌じゃなさそうだし、やってあげよっか」  
 
 彼が私の体の中でも特に敏感な部分に手を這わせ、今にも責め始めようとしている。  
私は彼をからかう立場から一転し、一気に大ピンチへと陥ってしまったのだ。  
身を捩って逃れようとするが、彼はやっぱり男。ちょっと身を捩ったくらいではその腕から逃れることは不可能だった。  
 
「くぅっ……ふっ……」  
 
 彼が、そっと私の敏感な部分にその指先で触れた。そこは……そこは弱いのだ。  
翼と尻尾がびくびくっと反応し、私の口からも堪えきれない声が漏れてしまう。  
 
「ま、待って……も、もうからかったりしないから……お願い、そこは許して」  
「どうしようか。そう言ってお前が僕をからかったのは、これで何度目だったかな」  
「ひうぅっ! ま、待って! 今度のは本当に本当だから……許してっ!」  
「許してってのも的外れだなぁ……僕はからかわれた仕返しじゃなくて、悪戯したいと思ってるからエリに悪戯をしてるんだよ」  
「ふわあぁっ!! お願いっ! 本当にそこは駄目ぇっ!」  
 
 彼の手が私の敏感な弱点を撫で摩り、掴み、弄り回す。彼の手による蹂躙に、私はすっかり参ってしまった。  
 
「ふぅっ……くっ……んんっ……駄目……どうしても声が出ちゃう……恥ずかしいから許してぇ……」  
「我慢してないで、声出しちゃいなよ。きっと今より気持ちよくなれるよ」  
「だ、駄目ぇっ……それは恥ずかし……ひゃうっ?!」  
 
 さっきまでのはほんのお遊び。そう言い放つかのように、彼の手の動きが激しさを増した。  
確かに、意地を張ってないで声を出してしまったほうが楽になるかもしれない。  
だが、私のプライドがはしたなく大声を出すことを許さなかった。それでも、この攻撃はプライドだけでなんとかできるものではない。  
そして、私はそのプライドを守り抜く方法なんて持ち合わせてはいなかった。我慢してきたものが私の中で爆発し、弾け飛ぶ。  
 
「あああああははははっ!! お願い! そこ駄目っ!! お腹くすぐるのもうやめてーーっ!!!」  
 
 お腹は、私の最大の弱点だった。自分で触る分には問題ないのだが、彼に触られると途端に猛烈なくすぐったさが私を襲うのだ。  
両腕で抵抗しようとするのだが、器用に私の腋の下へもぐりこんだ彼の翼がそれを阻む。  
私は襲い来るくすぐったさに、ひたすら耐えることしかできなかった。  
 
「きゃはははっ! ま、待って! もう……あははははっ! もう駄目だから〜! ゆ、許しはははっ!!」  
「そんなに反応してくれるなんて嬉しいな。お礼に腋の下もくすぐってあげるね」  
「そ、そんなっ! そんなの駄目ー! あああははははっ!!」  
 
 腋の下にもぐりこんでいた翼が、前後に動き始めた。柔らかな羽毛が服越しに擦れ、私の弱点を怖いほど正確に刺激する。  
お腹に加えて腋の下まで責められ、もはやくすぐりに耐えることさえも不可能になった。  
私に許されたのは、耐え難いくすぐったさに悶え、笑い狂うことだけだ。  
 
「ゆ、ゆるっ……ゆるしはははっ!! まっ……降参! 降参するからぁ! もうやめひははははっ!!」  
 
 腋の下へのくすぐり攻撃が緩んだ……と思いきや、今度は彼の翼が強制的に私の両腕を押し上げて万歳のポーズをとらせ、  
両腕が私の黒服をめくり上げる。ゆっくりと焦らすように上がっていく服に、私はいつ下着が見えてしまうのか気が気ではなかった。  
 
「あぁっ……それ駄目……恥ずかしい……ブラが見えちゃうよ……」  
「お前は僕に恥ずかしいことを言ったんだし、こうされても文句は言えないよね」  
「うっ……それは……」  
 
 とうとう胸のすぐ下あたりまで服がのぼってきた。と思った瞬時に、彼は勢いよく私から服を剥ぎ取った!  
私の下着が露になってしまう。羞恥に顔を赤めるのと同時に、私は背後で彼が興奮を露にした気配を感じ取った。  
 
「きゃっ! み、見ちゃ駄目ー」  
「恥ずかしいの? でも、お前も僕に恥ずかしいことをしたんだぞ。嫌がられる筋合いはないな」  
「は、恥ずかしくてもアングレーに見られるのは嫌じゃないもん」  
「そうか。じゃぁこうされても嫌じゃないんだな?」  
「え? きゃぁっ!」  
 
 お次は下着のホッチを外し、私の上半身を完全に露出させた。更なる羞恥が私を襲う。  
鏡を見るまでもなく、私の顔が真っ赤になっているであろうことはわかった。  
 
「あうぅ……い、嫌じゃないけど恥ずかしいよ……ゆ、許して」  
「そーんな可愛い声出してさ、許してもらえると思う?」  
 
 アングレーの両手が、谷間を形成する私の双丘に伸びる。  
くすぐられた時と同じように私の両腕を万歳で固定され、抵抗ができない状態だ。  
この状況こそ大ピンチと呼ぶに相応しい。私の胸が高鳴っていくのを強く感じる。  
 
「なーんて、胸触ると思った? 嘘だよ」  
「えっ? あ、あはははっ! ま、待って! お腹こちょこちょしないでってばー!」  
 
 不意に期待していたのとは違う箇所を責められ、抑えきれない笑いの衝動が次々と私に襲い掛かってくる。  
私をその気にさせておいて、突き放すなんてひどい! 尻尾の先で彼の顔をぺしぺしと叩くが、それでも彼はくすぐりを止めてくれない。  
 
「きゃーあはははっ!! ぎ、ギブアップ! もう無理よー!」  
「まだ余裕そうだね。腋も直にくすぐってあげるよ」  
「そ、それだけは駄目ーっ!」  
 
 剥き出しの腋に、再びくすぐったい感覚が大挙して押し寄せた。  
柔らかな羽根が擦れ、両手はお腹の肉を弄び、あらゆるくすぐり方で私の体を蹂躙する。  
その上、私が刺激に慣れてしまわないように、責める位置を少しずつずらしたり、緩急をつけたりしてくるのだ。  
彼にくすぐってもらうことは嫌いではなかったし、むしろスキンシップとして自分からくすぐってもらったこともあるが、  
やはり強いくすぐったさから逃げようと、私は反射的に抵抗をしてしまう。  
 
「ふひゃっ?! 胸こちょこちょするのも駄目ーっ!」  
 
 彼の両翼が私の前の膨らみを包み込んだ。翼から開放された両腕で翼をどかそうと試みるが、私の力ではびくともしない。  
胸の先端は、密かにくすぐりに弱い箇所なのだ。それでも腋ほど弱くは無いが、そんなところをくすぐられたら私は……!  
だが、無常にも彼の翼は私の抵抗を撥ね退けてくすぐりを開始する。  
 
「にゃふっ! ひ……きゃはははは! ご、ごめんなさーい!! もうからかったりしないから……はははっ! ゆ、許しひぇはははっ!!」  
 
 だ、駄目っ! お願いだから胸をくすぐるのはやめてほしい。  
恥ずかしい場所にくすぐったさと快感が同時に襲い掛かり、気が変になってしまいそうだ。   
 
「うーん……反省した?」  
「は、反省しましたっ!! ごめんなさいっ!! もうこちょこちょは許してえひゃはははははっ!!」  
「そうか。じゃあくすぐるのは許してあげるよ」  
 
 内心ほっとしたのも束の間。今度は両手が私お腹の脂肪をつかんでくるのだ。  
 
「あれ、前よりちょっと太った?」  
「は、恥ずかしいからやめて」  
「恥ずかしがるってことは、図星なのかな?」  
「ふ、太ってないわよ!」  
 
 断じて、私は前に比べて太ってなどいない。それでも、こうしてお腹の大きさを測られるのは恥ずかしかった。  
 
「お願い……やめてよう……」  
「じゃぁ、こっちのサイズを見てあげよっか?」  
 
 お腹責めをやめた彼の手が、お腹よりも上部にあるやわらかな脂肪へと伸びる。  
くすぐりに隠れた快感で、すっかりその気にさせられてしまった私には、もう抵抗しようだなんて気持ちは残っていない。私は黙って頷く。  
 
「すっごく気持ちよくしてあげるからね」  
 
 私の耳元で、彼が甘く優しい言葉を囁いた。脳へ直に響くかのような誘惑に、私は脳みそがとろけたようにメロメロになってしまう。  
 
「……でも、こういうことはベッドでするべきだよねぇ……」  
「ふえっ?」  
 
 まさか、ここまできて焦らされるとは思っていなかった。  
そんな私を無視して、彼は私から剥いだ服と下着をつかみ、ベッドへとかけてゆく。  
 
「あっ?! ま、待って! 服返してよー!」  
「寝室に着くまでに僕に追いつけなかったら、これは今日一日没収だからねー」  
「そ、そんなっ?! 待ってよ〜!」  
 
 とんでもないことを口走る彼の背中を、半裸で、前を隠しながら追いかける私。  
暖房がきいているおかげで半裸でも寒くは無いが、服が無ければ私は困ってしまう。  
冗談のつもりで言っているのだろうが、もし本当に一日中上半身裸を強いられたりしたら……。  
 二人分の足音が廊下に響くが、彼の足音の音源は、少しずつ私から遠ざかっていった。  
 
「はあっ……はあっ……」  
 
 息を切らしながら走る私を、寝室の入り口に立った彼が得意げに見つめる。  
 
「よーし、これでお前は今日一日裸だね」  
「ほ、本気なの?!」  
「トリック・オア・トリート」  
「はぁ? 唐突に何言って……」  
「ほら、悪戯してほしくなかったら、僕にお菓子をちょうだいよ。そしたら服を返したげる」  
「え……? お菓子ならさっきあげたじゃない」  
「そうじゃなくて、お前がまだ隠してるお菓子をちょうだい」  
「……??」  
「わっかんないかなぁ。ほら、そこにふわふわしてるマシュマロみたいのを隠してるじゃないか」  
 
 かなり遠まわしな言い方に困惑する私。そんな私がしっかりと両腕でガードしている箇所を指し、彼が言う。  
あぁ、そういうことなのかとそれで私はようやく彼の言うことを理解した。だが、羞恥が彼の言うことを受け入れる邪魔をする。  
彼と体を重ねるのはこれで2度や3度ではないが、それでもやはり恥ずかしいものは恥ずかしいのだ。  
 
「裸でお泊りするのと、お菓子を渡すかわりに悪戯をやめてもらうのと、どっちがいい?」  
「わかったわよ〜……。やるからには気持ちよくしてね?」  
 
 恥ずかしいが、無論彼との行為が嫌なわけではない。それどころか、彼との行為では感じているうちに恥ずかしさが快感へ変わっていくのが常であった。  
両胸のガードを解き、ふかふかのベッドに仰向けになると、彼の野獣のようにやらしい視線が私の胸を這い回った。  
 
「本当に美味しそうだね。食べちゃいたいよ」  
「食べてもいいから……約束は守ってね?」  
「大丈夫、後で服はちゃんと返すよ」  
 
 私が女性として人並みに成長している証を見せ、同時に私の健康状態を示すかのようなみずみずしさを放つそこを蹂躙しようと、彼の魔手が伸びる。  
それを拒むことなく受け入れた乳肉は、歓迎の意を表すように、彼の手が揉む以上の力で彼の指を押し返した。  
 
「い、いきなり胸から始めるのはマナー違反よー」  
「そうかな? 今日のお前には長い前戯は必要ないと思ったんだけど」  
「ちゃーんと愛撫してあげないと、女の子は気持ちよくならないわよ?  
でも、言われてみれば今日はちょっといつもより感じる気がするような……」  
 
 いつもなら、一通り全身を愛撫した後に生じるはずの、全身が焼けるように火照る感覚。  
それが、まだ少し胸を触れられただけの私に覆いかぶさるように、じわじわと広がりを見せているのだ。  
異様さを感じつつも、私の胸は間もなく私を襲うであろう快感に期待を寄せ、その鼓動を早めていた。  
強弱をつけ、乳腺と脂肪を交互に責め、私を焦らしつつも的確に性感帯を責める手の動きが、更に鼓動を加速させる。  
 
「さっき、エリのクッキーに僕が粉をかけたろ? 女の子が可愛くなる成分ってのは、実は……」  
「えっ? も、もしかしてあれって……」  
「うん。お前が察してる通り、あれは媚薬だったんだよ。そろそろ効いてきてるでしょ?」  
「ちょ、ちょっとそういう悪戯はひどいんじゃない? 先に言ってよー」  
「嫌なの? エリが嫌だって言うなら仕方ないね……」  
 
 彼の手がその動きを止めると、私の胸に襲い掛かっていた快感が嘘のように消えた。  
だが、じんじんと彼の愛撫を求めるような胸の疼きは残り、私の精神を削り取っていく。  
 
「私が我慢できなくなっちゃうの……わかってて薬入れたでしょ?」  
「正解。今まさにお前は焦らされて我慢できなくなっちゃってるとこだと思うけど、これも当たってるよね?」  
「大正解よ……。もう、私の胸をこんなにしてくれちゃって……!」  
「顔真っ赤にしちゃって……可愛い。女の子を可愛くする成分って言っても、嘘にはなんないね」  
 
 慌てて顔を逸らす私のことを、彼がクスクスと笑う。女の子みたいな顔をしているくせに、私の豊かな乳肉を貪る手の動きはまるで野獣のよう。  
雄の願望がくっきりと鮮明に浮かび上がった表情で見つめられると、私のほうも魅了されたようになってしまう。  
 
「エリ……このマシュマロ、すっごくおいしいよ」  
「い、やんっ……な、舐めないで〜」  
 
 私の乳肉の中でも一際敏感な、右胸の付け根のあたりを舌が這い回る。  
開いている右手は私の左の胸の付け根をくすぐり、左手は腋を揉む。  
巻き起こる快楽の嵐は私の理性を吹き飛ばし、雌の本能を剥き出しにさせた。  
 
「や、やんっ……駄目ってば……あぁっ……ば、ばかっ」  
「このマシュマロ、先っちょにグミみたいのがついてるなぁ? このグミも、僕にくれるよね?」  
「あぁっ……乳首はやめて……」  
「それじゃ、いっただきまーす」  
 
 彼の口が、天を突くかのように起き上がった桃色の突起に接近し、それを口に含む。  
 
「あっ、あぁっ……?!」  
 
 胸の先端を痺れるような快感が襲い、頭の中に雷が落ちる。意識を飲み込むような快感に抗おうとするが、  
とても堪えきれるものではなかった。薬によって敏感になってしまった私の体は、  
普段以上に強烈な快感を脳に叩き込み、理性を暴力といってもよいほどの快感によってたたき伏せたのだ。  
 
「んんんっ……! か、感じちゃう……やめてぇ……」  
 
 吸引し、舐めまわし、時には歯を立てる。その際も反対側の突起は彼の手によって弄ばれ、  
汗だくの腋も蹂躙を受けている。両手を遊ばせることなく、常に全力で私を感じさせようとかかってくるのだ。  
おまけに、私の体は彼の手によってある程度は既に開発されてしまっているのだ。  
私がこれで快感を感じない道理は無かったし、快感から逃れる方法も無かった。  
そして、翼の生え際のあたり――コウモリの腋にあたる部分も密かな性感帯だ。  
そこを揉まれると、人間の腋にあたる部分よりも感じてしまう。  
 
「このグミもおいしいね。ありがとうエリ」  
「ああんっ! そ、そこばっかりぃ……感じるとこなのに……あっきゃあぁっ!! 噛まないでーっ!」  
「おいしいよ。エリのおっぱい。もっと気持ちよくさせてあげる」  
「はうぅんっ……! か、噛みながら……あうんっ! つねらないで〜っ!」  
 
 尖りに尖った突起を襲う彼の責めは執拗で、責められる度にそこは硬度と感度を増してしまう。  
快感の嵐によって私の秘密の場所はとうに決壊し、いやらしい体液で自身を湿らせている。  
 
「そうだ。のどがかわいたなぁ?」  
 
 それを見透かすかのように彼が言い、私の下半身にその魔手が伸びる。  
 
「ここに……飲み物を隠してるね? もらってもいいよね」  
「そ、そこは駄目っ!」  
「安心して。一滴残らずラブジュースを飲んであげるから」  
「や、やめて〜っ!」  
 
 彼が右腕で強引に私の腰を持ち上げ、左手でズボンを下ろしてゆく。  
露になったのは、湿り気を多量に帯びた私の下着。いよいよ最も大事な箇所を犯されるのかと思うと、興奮が止まらない。  
ズボンを突き破ろうとするかのように膨れ上がった彼の欲棒も、その身をさらに勢いづけたようだった。  
 
「あ、アングレーってば。お願い、そこはやめて。ね? そ、そこだけは……」  
「やめないよ。エリが僕を恥ずかしがらせたんだから、エリにも恥ずかしい目にあってもらわないと」  
 
 火の点いた彼が行為をやめてくれるはずはなかったし、本気でやめてもらうつもりも無い。  
だが、強すぎる羞恥が私に黙っていることを許さないのだ。私の口だけの拒絶を跳ね除け、彼が下着に手をかけた。  
 
「お、お願いっ! もう可愛いなんて言わないからぁ……こちょこちょしてもいいわ。だからそこはやめて〜!」  
「くすぐりプレイがいいの? そんならまんこ舐めながらくすぐってあげる」  
「そ、それはもっと駄目〜っ!」  
 
 口では嫌がる私を無視し、私の下着を彼がずり下ろす!  
 
「きゃーっ!! み、見ないで〜っ!!」  
 
 遂に露になってしまった私の最も大事な部分。そこを容赦無く突き刺す彼のやらしい視線。  
その状況に私も少なからず覚えた興奮により、分泌される体液の量がさらに増した。  
卑猥な匂いを放ち、急かすようにその媚肉を蠢かせ、私の急所の全てが意に反して彼を誘惑する。  
 
「だーいすきなエリのまんこだもの。いっぱい見てあげる」  
「も、もう駄目っ! 許してよ〜!」  
「許さないよ。さ、エリの大好きなクンニとくすぐりプレイをしようか」  
「や、やめて〜っ!」  
 
 私の急所を、ぬめぬめとした暖かいものが這い回る。  
 
「ひゃあんっ!」  
 
 急所への責めは執拗だった。割れ目を横切るように舐めたかと思うと、次は割れ目をなぞるように舐め、さらにその次は秘粒周辺まで舌を持っていき、焦らす。  
その度にぬちゃぬちゃと猥雑な水音が巻き起こり、私と彼の興奮を同時に刺激するのだ。そして、同時に行われるのは両手によるくすぐり責めだった。  
おへその下辺りを撫でたり、下乳をくすぐったり、脇を揉んだりと、私の急所に行われている責めに負けず劣らずそれは多芸で、  
私を追い込み、理性という皮を剥いで私を野獣のようにしてしまう。  
 
「あ、アングレーっ……音立てないで! やんっ! 駄目っ! 舐めないでっ! こちょこちょも駄目っ!」  
 
 私の急所全体を彼が舐め上げ、一滴も逃すまいと分泌される粘液の全てを貪りつくす。  
恥ずかしいはずなのに、その羞恥さえもが快感に変化し、私の心も徐々に侵略してゆく。  
そして両手による責めによって生じたくすぐったい感覚は、私の全身に広がりを見せていた。  
込み上げる笑いの衝動をなんとか抑えても、全身に震えが走り、大人しくしていることを許さない。  
そして私が身を震わすたびに、私のいやらしい双丘がぷるぷると揺れるのだ。  
 
「いやあっ! そこは駄目っ!」  
 
 揺れる双丘の頂点に、灼熱と電撃を混ぜ合わせたような快感が走った。同時に、秘粒に襲い掛かる生暖かい感触。  
私の3大弱点をとらえた彼の目が満足気に細まった。  
 
「や、やだっ! お願い、それだけはしないで。それされるとおかしくなっちゃう……! ああああぁっ! やめてぇぇっ!!!」  
 
 私の反抗する言葉が合図だったかのように、その責めは苛烈さを増大させてゆく。  
双丘の頂点は快感の暴風雨に見舞われ、燃えるような快楽が荒れ狂っている。  
 
「ふぁんっ! ち、乳首が……あぁっ! 乳首こしこしってしないでっ! だ、駄目〜っ!!!」  
 
 同時に、秘粒を襲撃する快楽責めもその激しさを極めた。さっきよりもずっと多量に放出される愛液を吸い尽くそうと、  
彼の口が秘粒に吸い付き、私の理性が壊れてしまうほどの快感を送り込んでくるのだ。  
 
「そ、そんなっ……クリトリス吸っちゃ駄目っ! あんっ! あんっ! や、やめっ……ほんとにっ……! くあぁぁぁんっ!!」  
 
 流石、何度も体を重ねているだけあって、私がどうすれば感じるのか把握しつくしている。  
恐怖を覚えるほどの快感に悶えつつも、期待を寄せる私に彼が更なる追い討ちをかける。  
既にその硬度を最大まで上昇させた双丘の頂点をつねるのと同時に、同じく硬化しきった秘粒を甘噛みしたのだ。  
 
「にゃひゃああああぁぁぁっ!! か、カミカミしないでっ! あぁっ! き、気持ちいいよおっ!! もう駄目ぇぇっ!! おかしくなるっ!!」  
 
 弱点という弱点を責められ、私はすでに絶頂のすぐ手前まで上り詰めていた。  
だが、今私を襲っているのは快感の初期微動に過ぎず、本当の快感と呼べるものはこの後に襲い掛かってくるのだ。  
私は、全身がそれを受け入れる準備をしているのを、ひしひしと感じ取っていた。  
 
「あああぁっ!! か、体が熱いよっ!! もう駄目! イくっ! イっちゃうっ!!」  
 
 よがり狂う私にトドメを刺そうと、彼はいつも私を絶頂へ導く時と同じ責め方をした。  
一度間を置いた後、せーので同時に先端2箇所と秘粒と責めるのだ。  
今までの快感全てを束ね、凝縮したような私の許容量を遥かに超える快感が吹き荒れた。  
 
「あああああああぁぁぁぁっ!!!」  
 
 眼前で弾ける火花に、ブラックアウトしていく視界。視界に映った彼の顔に愛しいものを感じると、私は目を閉じた。  
いつも私は昇天する時に、一瞬意識を失ったようになってしまうのだ。  
だが、今回の彼はそれで責めを緩めることはしなかった。私を強制的に四つんばいにさせ、耳元で甘い言葉を囁く。  
 
「もっと、気持ちよくしてあげる」  
 
 脳を直に揺さぶるような言葉に、私はノック・アウトされてしまった。昇天して放心状態になった私に、こんな誘惑をするなんて卑怯だ。  
そそり立つ自身の雄を出し、四つんばいになった私の背後に回る彼。私の中の雌が膨れ上がり、それが私の急所から漏れ出すのを感じる。  
 
「僕のうまい棒を、喰らえっ!」  
 
 彼のふざけた言い回しに噴出しそうになるのをこらえながらも、私の雌で彼の雄を受容する。  
私が思っているよりずっとあっさりと、彼のうまい棒は私の奥へ、奥へと侵入していく。  
その際も、うまい棒は私が気持ちよく感じる箇所を刺激し続けるのだ。  
快感と同時に襲い掛かる力が抜けるような快感に対抗しつつも、私はそれを受け入れていた。  
 
「やあっ……はあんっ……あぁ……中で……アングレーのがっ……どんどんおっきくなってるよう……」  
「どうだ、僕の棒は? うまいだろ?」  
「お、おいしいよぉ……あんっ! じ、Gスポットに擦れてっ……すごいことになってるぅ……!」  
 
 膣壁の、明らかに他に比べ隆起があり、感触も違う部分。そこを、うまい棒が執拗に責めるのだ。  
これだけでも私は体がとろけてしまうほどの快感を感じているというのに、彼が私の体の前に手を回し、秘粒を探り当てる。  
 
「やっ……! そ、そこもいっしょに責められたら……!」  
「僕が中でイくまでに、エリのことを2回ぐらいはイかしてあげるよ」  
「や、やめてぇぇぇっ!!」  
 
 火が点いた彼の手は止まらなかった。Gスポットと同時に、秘粒にも責めを開始する。  
 
「いひゃあああああぁぁっ!!!」  
 
 刺激に反応し、硬くなったGスポットと、勃起しきった秘粒。  
どちらが最も敏感な場所なのか人によって意見が分かれるが、私は今その双方を大好きな彼に責められているのだ。  
それで感じない理由は皆無であったし、それによって中の締りが良くなり、私のほうから彼にGスポットを押し付けてしまう形になるのも、必然と言えた。  
 
「ひゃあああっ!! く、クリトリスは勘弁……っ!! あぁ、駄目ぇ! またイくうぅぅっ!!」  
 
 私が達した途端、中の締りが更に良くなり、肉壁が押し付けられて私が受ける快感が増大してしまう。  
そしてその瞬間、彼のうまい棒は私の最奥部に到達してしまった!  
 
「ここが一番奥かな。たくさん突いてあげる」  
「んああんっ!! お、奥とGスポットとクリトリスいっぺんにいじめるのやめてぇぇっ!!」  
 
 うまい棒が最奥部をズンズンと突く度に、子宮へと振動が伝わり、全身の官能が呼び覚まされる。  
快感に泣き叫ぶ私の顔は既に涙と鼻水と唾液で滅茶苦茶だ。彼が私の表情を確認できないバックから犯していることに、少し感謝してしまう。  
 
「や、やめっ……もう無理っ! お願い! 早くイってぇ……!」  
「僕も、そろそろ限界かな……!」  
 
 今の彼の言葉に、どれだけの安堵を覚えただろう。この快楽地獄も、とうとう終わりが見えてきたのだ。  
無論、苦しかったり、痛かったりするわけではない。だが、快感も過ぎれば毒と同じなのだ。  
私の中で暴れまわる過量の快感に、私の体も悲鳴を上げている。ほどほどにしないと疲れが明日以降に響いてしまう。  
 最奥部を突く彼の棒は、確かに限界が近いようで、その身を最大限に膨張させながら、どくどくと脈打っている。  
しかし、私がもう一度限界を迎えるほうが、彼の限界よりも早かった。  
 
「ああああぁぁぁっ!!!」  
 
 肉欲を貪るうまい棒が、またしても私を天まで導いた。全身を貫くかのような快感が走りぬけ、余韻が全身を痙攣させる。  
そして私を幾度と無く昇天させた彼の棒にも、とうとう限界が訪れたようだった。  
 
「うっ……で、出るっ……!」  
 
 引き抜かれた棒から、私の背中へと白濁の粘液が撒き散らされた。私の黒い翼にも、白のねばねばが絡みつく。  
今だ。ベッドのシーツは既に二人の体液で汚れきっているんだし、これ以上汚しても今更怒られはしないだろう。  
私の顔から流れ出した体液を、ゴシゴシとベッドに押し付け、きれいになった顔で彼のほうへ振り向く。  
 
「も、もう……アングレーってば、いつも私が泣いちゃうくらい感じさせてくるんだから……」  
「ごめんね。触ってると喘いでるエリが可愛くなってくるから……つい、ね」  
「なっ……か、可愛いだなんて……もう! からかった私も悪かったけどさ、これからは黙って媚薬入れたりとかしないでね?」  
「……ってことはことわって、了承を得てからなら入れてもいいんだ?」  
「ま、まぁ……そういうこともあるかもしれないし……そのぶんにはいいんじゃない? とにかく、あんな悪戯はもうしないって約束してよ」  
「わかったよ。もうしない」  
 
 私はまだ体が熱くてへとへとなのに、彼の返答は妙に落ち着いていた。  
所謂賢者タイムと言って、男性がその棒から子孫をぶちまけた後に、心が落ち着くのは知っていたが、  
こうして見ると私にはやはり興奮していた時とのギャップが不思議に思えてしまうのだ。  
 
「でも……アングレーの方から久しぶりに誘ってくれたのは嬉しかったな。今度私の方から誘ったら、またえっちしてくれる?」  
「そ、そりゃもちろん……エリがしたいって言うなら……」  
 
 さっきまで乗り気で私を犯していたのが嘘のように、彼が顔を真っ赤にしてもじもじと態度を小さくする。  
その様子を見ていると、やはり私の中にある感情が込み上げてきてしまうのだった。  
 
「顔真っ赤にしてるとこも……やっぱり可愛い!」  
「あぁっ?! ま、また可愛いって言った!」  
「あっ! ご、ごめんなさい! ついうっかり……」  
「さっきもうしないって言ったばっかりなのに……今日という今日は許さないぞ。泣くまで犯してやるっ!」  
「えぇ?! ま、待って! これ以上されたら私疲れちゃう!」  
「大丈夫だよ。さっきの薬にはえっちしてもそんなに疲れなくなる成分も入ってるから」  
「だからどんな成分よそれは〜?! あぁっ、待って! 許して〜!」  
 
 私は感じすぎて疲労が蓄積されることを心配していたが、あくまでそれは心配に留まり、言われてみればそれほど疲労がたまっていない感じがした。  
これ以上気持ちよくされてしまったら、私はどうなってしまうのだろう。そんな心配を踏みにじるかのように、彼は私を押し倒し、双丘にその魔手を迫らせる。  
 
「エリがお菓子をくれたお礼に、お菓子より甘ーい悪戯をしてあげるね」  
「あぁ……そんな……もう許して。ね? 謝るから〜」  
「あれ? このグミ、さっきと同じくらい硬くなってきてるね」  
「いやっはぁんっ! ち、乳首駄目〜!」  
 
 甘い刺激が、双丘の頂点を走った。それにより、再び呼び覚まされる私の官能。  
それからまた二人で激しく交わって、それこそお菓子より甘い言葉を囁かれたりするのだけれど、  
快感に支配された私の頭にはもやがかかったようになり、彼に何をされているのかもよくわからず、  
ただ単に彼と幸福で気持ちいいことをしているという事しか理解はできなかった。  
結局、次の日には二人ともえっちし疲れてアングレーの家で寝たきりだったとさ。  
 

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