俺は不動産屋をやっている。  
身体を壊した親父から受け継いだもんで、そんな大した物でもない。  
いわゆる『町の不動産屋さん』というやつだ。  
従業員は俺一人。繁忙期なんぞなく、むしろ暇つぶしの手段に困る。  
 
昔はそこまで暇じゃなかったんだが、状況が変わったのは四年前の大地震以降だ。  
その地震で、この一帯の地盤の緩さが露呈してしまった。  
地割れに、建物の傾き。それらをマスコミが世間に暴露した結果が、この閑古鳥。  
今まともに借り手があるのは、せいぜい駅前の物件ぐらいか。  
 
ただ、不良物件は不良物件で、それなりの使い様がある。  
例えば地元業者の倉庫代わりに貸し出すとか、  
あるいは変わった所で、AVの撮影現場にする事もある。  
この辺りには古くから『樋嶋興業』という地元ヤクザが組を構えていて、  
昭和の早い時期からポルノ映画を撮っていた。  
今ではかなり組織も衰退しているものの、相変わらず派生組織がAV撮影を行うケースは多い。  
奴らはとにかく撮影場所として安い物件を探しているのだから、  
うちのように融通の利きやすい地元不動産屋の不良物件は、まさに打ってつけだろう。  
 
俺はここに目をつけ、いち早く樋嶋興業の子会社向けに宣伝を始めた。  
都会ならばいざ知らず、片田舎では警察よりもヤクザに恩を売っておいた方が日常生活で利が多い。  
また、そうして恩を売った見返りを期待してもいた。  
例えば、撮影したAVの目線・モザイク処理無しのマスター版を貰ったり、  
あるいは撮影現場そのものに同席したり、だ。  
 
恥ずかしい話だが、俺は当時、いい年をしてろくに恋愛経験もない童貞だった。  
この辺りにはラブホテルこそ多いが、風俗店はほとんど無く、  
性欲処理のオカズといえばビデオ屋で買う時期遅れのAVぐらいのものだ。  
その俺にとって、真新しいAVの撮影現場をナマで見る事は、長らくの夢だった。  
 
結果として、俺の提案は大いに喜ばれ、見返りの件についても快諾された。  
それどころか、事務所所属の女優ではなく、なおかつ女優自身が合意した場合に限りだが、  
撮影後に女優と『する』ことさえ認められた。  
こうして俺は、生まれて初めて、目の前で女がセックスする場面を観たのだった。  
けれども、せっかく認められた実際に俺自身が『する』事はなかった。  
 
現場に同行するまでは今日こそは、と思うんだが、実際に他の人間もいる中で『する』のは勇気がいる。  
また選り好みに過ぎるかもしれないが、俺が立ち会う時の女優のレベルもそこまで高いとは思えなかった。  
どうせ童貞を捨てるなら、妥協せず自分がこれぞと思う相手にしたい。  
そんな変なプライドが邪魔をして、なかなか機会を得られずにいた。  
 
今日もまた、一件の撮影予定がある。  
事前に貰った資料によれば、今回の女優は18歳とかなり若い。  
俺は若干の期待をしながら物件に向かった。  
線路脇の三階建て、畳敷きの6畳間を基本とした2DKだ。  
壁が薄く、電車の音が煩いという理由で人気が無く、現在は六部屋すべてが空室となっている。  
 
現場にはすでに長谷というスキンヘッドの監督が来ていて、三脚やレフ板の設置指示を出していた。  
SM作品を得意とし、マニアックな物を作らせれば業界屈指と噂される男だ。  
 
「や、これは。今回もお世話になります」  
 
長谷監督は俺に気づくと強面の髭面を一変させ、左手を差し出した。  
利き手が右なのにわざわざ左握手なのは、右手には三本しか指が無いためだ。  
俺に対しては物腰の柔らかなお茶目親父、という風だが、若い頃には大分無茶をやったらしい。  
 
「今回はSMですからね、また色々と汚してしまうかもしれませんが……」  
「構いませんよ。撮影用として割り切ってしまいますので」  
 
苦笑する長谷監督に、俺は笑いながら答えた。  
どの道もう手遅れだ。精液やら愛液というものは案外綺麗に取れないので、  
よく見れば畳のあちこちに白い粉のようなものがこびりついてしまっている。  
今さら住居用にする事はできない。  
 
そうこうするうちに、他の撮影スタッフも到着する。  
まずは男優とおぼしき男が三人。  
いずれも初めて見る顔だ。ありふれた、その辺りで新聞でも読んでいそうな親父。  
ガタイはそこそこで、腹も出ていないわけではない、という程度。  
ヤクザだといわれれば、否定も肯定もできない容貌だ。  
ただ少なくとも、柄の良さそうな人間ではない。  
 
「オウ、こちらこのマンション貸して下さってる方だ。挨拶しろ」  
 
長谷監督が俺を指して言う。  
三人は気だるげな瞳でこちらを見つめ、首だけを少し下げる。  
まぁ、これも初めての体験ではない。こういうタイプで、礼儀正しい方が少ない。  
男の後ろから姿を現したのは、トレンチコート姿の初老の男性。  
こちらはよく見る顔で、縄師の守沼先生だ。  
コートの下には撮影用の甚平を着込んでおり、着替える手間を省いている。  
さらに女優のメイクを担当する女。いかにも現場系の、美人系だがやや男らしい女性だ。  
これら数人が加わり、物件の中はにわかに込み合ってくる。  
カメラ越しにはゆったりして見える撮影現場も、舞台裏には所狭しと人が密集している。  
これが現場に立ち会って初めて知った事の一つだ。  
 
「えりかは?」  
「今移動中。そろそろ着くって」  
 
長谷監督の問いに、メイクの女が携帯を見ながら短く答える。  
見た目通りのさばさばした風で、AVに出ればそこそこ人気が出るだろうと思えた。  
もっとも、あまり男の下で腰を振るタイプに見えないが。  
男優二人は、窓辺で気だるげに煙草をふかしていた。  
どろりとした待ちの空気がしばし流れた後、一台の車の音が近づいてくる。  
その瞬間、男達がにわかに精気を漲らせた。  
女優の到着でここまで空気が変わるパターンも珍しい。という事は、もしやかなりの上玉なのか。  
俺はにわかに期待しながら、ドアに視線を向けた。  
そして、扉が開く。  
 
「すみません、遅くなりました!」  
 
姿を現したのは、セーラー姿の少女だ。  
この辺りの学生ではないだろう。まずスカートの長さが違う。  
膝下までが圧倒的に多い地元の子に比べ、こっちは膝上までで折られて太腿が見えている。  
また、半袖のセーラー服というのもこの辺りでは珍しい。  
ただいずれにせよ、制服姿だ。  
撮影用に用意された制服という可能性もある。  
ただ俺には、それがどうしても彼女の着慣れたものにしか見えない。  
はっきりとは言い難いが、一時的に着ているだけというものとは、雰囲気が違うからだ。  
 
顔もかなり童顔だ。  
AVに出る娘とは到底思えないほど、ステレオな真面目タイプ。  
頭頂部付近に光の輪ができるほど艶々の黒髪は、肩甲骨の辺りまで伸びていて、前髪は『ぱっつん』に切り揃えられている。  
やや垂れ気味な瞳はよく澄んでいて、鼻筋は通っているものの鼻自体はごく小さい。  
口もあまり大きく開ける事のなさそうな慎ましいものだ。  
セーラー服のタイに緩みは無く、スカートも皺は無く、靴下は学則通りの白いハイソックス、革靴にも汚れは無し。  
学生鞄の代わりに布の手提げを持っており、それには手製と思しきウサギのアプリコットが縫い付けられている。  
いつの時代も学年に数人はいる、真面目中の真面目。  
今AVの撮影現場に現れたのは、そのような“女優”、だった。  
 
「ええと……18、なんです……よね?」  
 
俺は不安になり、長谷監督に再度確かめる。  
彼は髭を撫でながら不敵に笑っていた。  
 
「…………18ですよ。なに、いずれにせよ迷惑は掛けません。絶対にね」  
 
奇妙な沈黙を置いてから、彼は告げる。  
その後ろでは、件の女優が黒髪を風に遊ばせながら、メイクの女と談笑していた。  
 
しばし二人のやり取りを見ていると、メイク係の女性が鞄からあるものを取り出した。  
薄いピンク色をした、イチジク型の容器。  
マニアックなビデオで何度か目にした事がある俺は、それが排泄を促すための浣腸だと知っていた。  
 
「さ、えりか。まずは自分で綺麗にしよ」  
 
メイクの女は姉のような口調で告げ、女優の小さな手にそれを手渡す。  
少女は一瞬の間を置いて頷き、壁に片手を付いたままスカートを捲り上げた。  
白いショーツが露わになる。  
女の下着を見たことは今までに何度もあったが、今度の女優は顔もいいし、太腿をすらっとして魅力的だ。  
その衝撃は、正直かなり大きかった。  
少女の細い指は、自らそのショーツをずり下げ、剥き卵のような桜色の尻肉を覗かせる。  
そしてその尻肉の間に、浣腸の先を押し込んだ。  
細い指が容器を摘み、へこませる。はっきり見えはしないが、間違いなく薬液が腸内に入っている。  
あの華奢な美少女の腸内に。  
 
薬液を注ぎ終えると、容器は尻穴から抜き出された。  
その際に垣間見えた女優の尻穴は、菊の花を思わせる可憐な窄まりに過ぎない。  
おそらくは未使用か、それに近いだろう。  
 
「うん、じゃちょっと我慢しよっか」  
 
少女から容器を受け取ったメイク役の女性は、女優の手を握って顔を覗き込む。  
薬液の効果が充分に出るまで、そうして留まらせるつもりのようだ。  
 
「ん……、なんかもう、ちょっとだけ……」  
「だめだめ、まだ出しちゃ意味無いから。ちょっとお話しようよ」  
 
女二人がそうして見つめ合う様を、他のスタッフ達も口元をにやけさせて見守る。  
あの愛らしい女優は、当然と言えるが、かなり多くの人間の心を掴んでいるようだった。  
 
「あの子、なんでAVに?」  
 
浣腸の効果を見守る間に、俺は長谷監督に訊ねた。  
心のどこかに、あんな清楚そうな子が望んで出演するはずがない、借金か何かかという先入観があったんだろう。  
長谷監督はそれを見透かしたように、小さく笑った。  
 
「……旦那。今日び、ビデオにでる娘に必ずしも不幸な事情があると思っちゃいけません。  
 そりゃ、中には借金の肩にクソを食わされるアイドルもいるし、貧乏人の売春だって珍しい話じゃない。  
 ただ中には、育ちがよくていかにも真面目そうな清純派が、ドロドロのエロ妄想してるってパターンも結構あるんですよ。  
 昔と違って、今は誰でも簡単にそういった情報を手に入れられますからね。  
 “あれ”は……そういうタイプですよ。  
 面接したとき、言ってました。自分には密かにファンクラブが出来てて、ネットで探せば色んなエロ妄想が描かれてる。  
 最初は興味本位で見てたものが、段々とそれをオカズにする事が止められなくなって、とうとう実体験をしたくなったって。  
 まぁ、注目されて当然です、あの子は。誰の目にも解りやすいダイヤの原石ですから」  
 
その言葉が進む中で、えりかと呼ばれた女優は何度も腰を浮かせていた。  
メイクの女が腕時計に視線をやりつつ、少女の指を握り締めてその場に留める。  
 
「お願いっ、もう、もぉううっ……!!」  
 
駄々をこねるような声色で女優が腰を浮かせたところで、メイクの女はようやく手を離した。  
女優は床を叩くようにして立ち上がり、身体を左に傾けながら、スカートの後ろを片手で押さえてトイレに向かう。  
そして焦った様子で何度も取っ手から手を滑らせ、すばやく中に入ってスカートをずり下ろす。  
男優の一人が悪戯めいた笑みを見せながら、そのドアを再び開く。  
 
「あっ!?やめ……!!」  
 
女優の、形のいい眉を下げた、困り顔か苦笑か判別の付きづらい表情が覗く。  
そしてその直後、排泄の音が響いた。  
ぶうぅぅぅ、ぶび、ぶりゅりゅりゅっという破裂音の後、水に柔らかいものが落ちる音が続く。  
何とも聞き慣れた音だ。  
あれほどに慎ましい顔つきをした、白く細い太腿をスカートで必死に隠す可憐な娘でも、あの音とは。  
 
「…………もう、ほんとに見ちゃ……だめ」  
 
女優はかろうじて聴き取れるようなか細い声で告げ、今度こそ扉を閉めて鍵をかける。  
より一層激しい破裂音と、押し殺したような息み声が部屋に響いたのは、その直後の事だった。  
 
「事前に出してしまって大丈夫なんですか、SMの撮影なのに」  
 
俺が問うと、長谷監督はカメラマンに何か短く指示を飛ばしてからこちらを向く。  
 
「おや、案外お詳しい。まぁ、物事には順序があります。今回は、『身あり』では撮りませんよ。  
 彼女はアブノーマルに積極的ですから、将来的には滅茶苦茶やるでしょうけどね。  
 今回はそのコア女優の、生誕記念作といったところです」  
 
そう答える長谷監督は、アブノーマル作品の雄として、いつになく疼いているように見えた。  
 
※  
 
排泄が終わった後は、リビングでのメイクが始まる。  
とはいえ素を大事にする方針らしく、あまり物々しい化粧をしている風でもない。  
女優の肌に張りがあって艶やかなのは明らかなので、当然といえば当然だが。  
 
メイクが終わると、女優が服を脱ぐ。  
その瞬間には、場の男連中が見ていて面白いほどに身を乗り出していた。  
勿論、俺も人のことは言えないだろうが。  
 
はっきり言って、“えりか”というその女性の肉体は、俺の想像を超えていた。  
今まで何度かAVに立ち会ってきて、色々な女性の裸を目にしてきた。  
ぽっちゃりしたタイプもいれば、年の割にスレンダーなタイプもいた。  
ただそのいずれも、服を着ていたときの方がまだ魅力的に思えた。  
多少いい身体はあっても、たまに読むグラビア雑誌を彩るアイドルには遠く及ばないものばかり。  
けれども、露わになっていくえりかの肢体は、目にした瞬間に電流が走るかのようだった。  
 
体型はスレンダー型、AVのジャンル分けでは『ロリ系』とされる類かもしれない。  
手足がすらっと細く、胸はCカップあるかないか、シャツをたくし上げた時にうっすらとアバラが見える程度に細い。  
けれども同時になぜか、異様に柔らかそうに見える。  
恐らくは健康的な肌の質感のせいだろう。  
ボディラインそのものも、何とも言えずエロい。  
シャツを脱ぎ去った後、スカートに手をかけようと華奢な肩が動き、上腕にか細く筋肉が隆起した瞬間、俺は思わず射精感を覚えた。  
スカートが抜き取られ、ショーツとむちっとした太腿の合間に魅惑的なデルタが出来た瞬間、その感覚はいよいよ高まった。  
白いショーツが下ろされる瞬間など、彼女が片足を上げてショーツの片輪を抜き、また下ろしてもう片方を抜く、という一連の動きを、  
呼吸さえ忘れて食い入るように見てしまっていた。  
周りの男達も皆そうだ。  
 
生まれたままの姿になったえりかは、手を後ろで組み、膝を合わせ、片足の親指をもう片方で踏むようにして立っていた。  
恥じらいと自己顕示欲のない交ぜになったその立ち姿が、またどれだけ強烈に雄を刺激するものか。  
 
「よーし、えりか。んじゃ、パケ写いくぞ!」  
 
長谷監督が野太い声を張り上げ、場を引き締める。  
先ほどまでにこやかに俺に語りかけていた人物とは別物の、厳しい表情が印象的だった。  
 
パケ写とは、AVのパッケージになる写真の事らしい。  
ほんの一枚の写真に過ぎないが、これには中々の時間が掛けられた。  
長谷監督と縄師の守沼先生が、幾度もポーズや背景について議論を交わす。  
最終的に姿見を背景に、頭上に手を組んだまま膝立ちで上目遣いになる事が決まってからも、  
腕の角度や股の開き具合に事細かな注文がなされ、えりかはその度にあられもない姿を衆目に晒した。  
挙句には乳首の勃ちが弱くインパクトに欠けるとして、メイクの女に乳首を屹立させるよう命じもした。  
授乳時のようにえりか自身が自分の乳房を摘み、メイクの女がそれを舐めしゃぶり、あるいは指で扱いて勃起させる。  
そこは撮影される訳でもないのに、シチュエーションや息遣い、反応など全てが官能的で、記録に残さない事が勿体無いほどだった。  
 
乳首がしっかりと勃ち上がった後、ようやくにしてストロボが焚かれる。  
乳首そのもののいやらしさも段違いな上に、えりかの表情も色っぽさが上がっている。  
時間こそ掛かったが、確かに最初とは別物のようにそそる絵面となっていた。  
 
パッケージを撮影した後、ついに撮影本番が始まる。  
えりかは一度脱ぎ捨てた制服を再び身に付け、畳の上に正座した状態で守沼先生の縄を受ける。  
乳房を上下から搾り出した上で、高手後手に。  
そうして縛られたえりかの前に、男優の一人が姿を歩み寄る。  
純真そのもののえりかの鼻先に、すでに半ば勃起している逸物をぶら下げて。  
それを目にした瞬間、俺は悔しい事に、その冴えない中年男を男優だと認めてしまった。  
ぶらりとした半ば勃ちにもかかわらず、すでに俺よりも立派だったからだ。  
浅黒く、幹に沿って薄っすらと血管が浮き、亀頭がやや膨らんでいる。  
その立派なものは、迷いなく縛り上げられたえりかの口へと近づけられた。  
しばしの逡巡の後、えりかの小さな唇が開いてそれを受け入れる。  
 
「……んっ、んっ……ん、ふぅん……んっ」  
 
六畳間にえりかの息遣いが響く。  
三台のカメラが映す中で、その犯罪的なフェラチオは淡々と進められた。  
男の毛深い手が艶やかな黒髪の中に潜り込み、ペースを自ら定めるように汚らしい腰へと引き付ける。  
 
「うう……イイ、えりか、イイぞ!もっと唾を絡ませてみろ!」  
 
男の逸物はにちゃ、にちゃっと音を立てながら可憐な口の中を蹂躙していく。  
時おり呼吸を整えさせるために逸物を吐き出させるが、その瞬間に逸物と口の間へ銀色の糸が繋がるのが、妙にいやらしい。  
繋がりの糸は、二つの距離が離れるに従って自重で千切れ、えりかの顎の下へと滴り落ちていく。  
 
「どうだ、美味いか?」  
「…………はい…………」  
 
男優の問いに、薄い唇を開いて答えるえりか。その陶然とした視線の先には、彼女自身の唾液でぬらぬらと濡れ光る逸物があった。  
それは口から抜き出されるたびに高度を増しており、実に心地良いのだと解る。  
そしてその逞しい逸物は、再び可憐な唇に沈み込んでいく。  
 
「ほら、目を開けてこっち見ろ」  
 
男優は慣れた様子でフェラチオを強いながら、目を閉じて奉仕するえりかに呼びかけた。  
それを受けてえりかは澄んだ瞳を大きく開き、子供さながらの表情で男優を見上げる。  
そしてそこからさらに十度ばかり口内を蹂躙した所で、男優が急に顔を顰めた。  
男なら誰でもわかる、射精前の瞬間だ。  
男優はえりかの髪を左手で掴んで上を向かせ、右手で唾液に塗れた怒張を扱き上げる。  
そして悟ったように目を閉じるえりかの顔に向けて、勢い良く精をぶちまけた。  
同じ男としてよく解る、溜めに溜めた爽快な射精だ。  
それはえりかの口内に留まらず、鼻梁といい頬といい目の下といい、整った顔全てを白く染め上げる。  
カメラの一台がそれをアップで捉えていた。中々に嗜虐心を満たす映像だろう。  
もっともその映像を見ただけでは、この部屋に充満する栗の花の匂いも、  
精を浴びるえりかの足指が興奮気味に蠢く様も、解りはしないだろうが。  
 
口内射精を経験した後、しばしの休憩が撮られる。  
こういう合間の空気を楽しめるのも、撮影に立ち会う人間の醍醐味だ。  
とはいえ、所詮俺は傍観者。やはり実際に撮影をしている人間とは、目に見えない壁がある。  
 
縄を解かれたえりかは、キッチンへ進んで何度も口をゆすいでいた。  
そこへ先ほどの男優が近づき、先ほどのプレイの感想を尋ねる。  
すると小柄なえりかは彼を見上げ、白い歯を覗かせて微笑んだ。  
くさかった、などと冗談めかして言っているのが聴こえる。男優も楽しそうに笑っている。  
俺の立場では入れない輪だ。妙な寂しさがあった。  
その俺の心境など関係なく、しばしの休憩を終えて撮影は進む。  
 
次は中々にマニアックだった。  
えりかは再び縄で縛られ、後ろ手・海老反りの格好のまま天井から吊るされる。  
そして口を変わった形状の口枷で大きく開かされた。  
 
「ああ、あれね、スパイダーギャグっていうの。蜘蛛の足みたいでしょ?  
 無理矢理限界まで口開けさせられるから、やられる方は見た目以上に屈辱的なの。  
 何しろ口が全開だと舌が勝手に外に飛び出ちゃうし、涎とか唾なんて垂れ流しだしさ。  
 まぁあの子、意外とそういうヨゴレ役が好きみたいだけど」  
 
俺が質問を投げたメイクの女は、手持ち無沙汰だった事もあり、マイクに拾われない小声ではあるが丁寧に答えてくれた。  
一方のえりかはというと、宙吊りのまま開いた股の部分にかなり煩い電気マッサージ器を押し当てられ、  
鼻が上向くほど無理矢理に開かれた口の方では、男優達に舌を扱き出されていた。  
そしてその様子を、股の間、顔面の接写、そして全体像を捉える側面と三方向からカメラが捉えている。  
ビデオで見ると中々に凄い映像が撮れているだろうと予想できた。  
電気マッサージ器が唸るたびに、吊られた白いハイソックスと革靴の脚が縄を軋ませる。  
スカートは捲くれ上がり、白い腿と背中を露わにしている。  
そして舌を扱かれるえりかの瞳は、何か致命的な事が怒ったかのように緊迫感を秘めて見開かれていた。  
ただでさえ子供っぽく愛らしい横顔が、その真剣な瞳のせいで余計に嗜虐心を煽る。  
 
「えあっ、あらっ、ぁえてっ!!!」  
 
えりかの口から舌足らずな声が漏れる。  
男優達は口々に何かを罵りながらえりかの舌を口枷から引き出し、弄び続けた。  
真ん中から二つ折りにし、四隅を摘んで伸ばし、あるいは先端をひたすらに引き出して。  
そうされるうちに、えりかの舌を掴む指は唾液に塗れていく。  
太い指を透明な膜に包み込み、滴る唾液。  
それは一人が彼女の口の下に構えたコップに滴り、溜まっていく。  
その様子を克明に記録するカメラマン達も、興奮からか次第に口数が多くなっていった。  
 
「うひひ、こりゃあすげぇ!舌引っ張られて、限界までアクメ決まったイキ顔みたいになってやがる。  
 抜けんぞーこれ」  
 
顔を正面から接写する男が嬉しそうに言う。  
 
「パンツの方もだ、ほれ。うすーくシミが出来はじめてんじゃねえか。電マ責めがそんなにいいか!?」  
 
ショーツにマッサージ器を這わせ続ける男も便乗した。  
えりかは恥ずかしそうに身を捩じらせ、言葉にならない呻きを上げ続ける。  
やがて、長い舌責めの末にかなりの量の唾液がコップに溜まった時、男優が気味の悪い笑みを浮かべながらそれを飲み干した。  
 
「えあっ!?う、うぉ…………っ!?」  
 
恐怖に満ちたような瞳でそれを見上げるえりかの表情は、珠玉だった。  
その後の、がくりと項垂れたまま、焦点がどこにも合わない瞳を投げ出してからも。  
 
「あぁ、いい表情……。あの子いま、羞恥でイッたかも。何となーく解るのよね」  
 
メイク係の女が、そう小さく呟いた。  
 
そこからは、さらに本格的なSM調教が始まった。  
えりかはまず裸に剥かれ、胸を搾り出すように縄を打たれる。  
Cカップあるか怪しい程度だった乳房も、三重の麻縄で上下から搾り出されると、5本指でやっと包める程の大きさになる。  
今度はその乳房が責め立てられた。  
すでに少ししこり勃っている乳首を男優の指が転がし、つねり、捻り潰す。  
さらには洗濯バサミで挟み、その上から指で押し込む。  
 
「ふぐ、ううんんんっ……!!」  
 
えりかはつらそうに目を閉じ、眉を顰めて耐え忍んでいた。  
さっきの責めから連続のため、首筋から流れる汗が乳房や下腹の方にまで伝っていて妙にいやらしい。  
汗まみれで悶える身体を、強烈なフラッシュを背景に、陰影をつけて撮影する。  
それは妙に芸術的だった。  
さすが、SMビデオの巨匠とも言われる男。映像になった時の視覚的な刺激を、よく計算している。  
 
乳首が再び勃起するほどに責められた後は、縛られたままの格好で蝋燭が散らされた。  
舌を二本の割り箸で挟み込み、舌の上に蝋を垂らす。  
鼻の穴を散々に指で弄くり回しながら、元の舌の色が見えなくなるほどに。  
その後、身体を床に転がした状態で身体へも蝋を垂らしていく。  
 
「あっ、あつっ……い!!ああ、アッ……!!くあ、あっ…………!!」  
 
えりかは時に天を仰ぎ、時に頬を床へ擦り付けるようにしながら悶え続けていた。  
その雪のように白い肌を、赤い画鋲を打つような蝋の雫が汚していく。  
乳房を、腹部を、太ももを。  
男優はえりかをいやらしい瞳で見下ろしながらも、淡々と蝋燭を掲げて雫を垂らしていく。  
無言で瞳だけをギラつかせている様子が、かえって変態性を増している。  
 
「ふふふふ、可哀想……」  
 
メイクの女が小さく呟くのが聴こえた。  
男の節ばった手で身体を開かされながら、延々と蝋を垂らされる。  
その中でえりかは、次第に息が荒くなり、刻一刻と昂ぶっているのがはっきりと見て取れた。  
 
蝋が剥がされた後、赤らんだ肌をそのままに撮影は続く。  
次は、とうとう浣腸が施される事になった。  
乳房を搾り出す後ろ手縛りのまま、えりかの身体は天井から吊るされる。  
手首を頂点に、前屈みになる格好だ。  
そのえりかの後方に、水の入った洗面器が置かれる。  
さらに瓶に入った液体が水の中に溶かされた。  
 
「さぁ、尻突き出せ」  
 
男優が、薬液にガラス浣腸器を浸しながら命じる。  
えりかは膝を曲げ、剥き卵のような尻を男優に向けた。  
男優は浣腸器の空気を一度追い出し、改めてたっぷりと薬液を吸い上げてからえりかの尻穴へと宛がう。  
きゅうう、っという音で薬液が入り込んでいく。  
 
「んんっ……」  
 
えりかのちいさな呻きで、腸に注水を受けている事が実感できた。  
子供そのもののすらりとした脚の付け根、まだ淡い桜色の肛門に浣腸が施される。  
それは禁断の行為のように見えた。  
 
注射器の中身が全て注がれ、再び薬液に漬けられ、肛門へ。  
それが五度繰り返された。  
浣腸器が200ミリリットル入りのものだったとしても、合計1リットルだ。  
その五度目の注入が終わった所で、えりかが苦しさを訴えた。  
 
「…………も、もう、ダメ…………おなかいっぱい…………!!」  
 
その声で、浣腸は一旦止められる。  
そしてそこからは、必死に排泄を堪えるえりかを観察する形に変わった。  
 
曲げた膝を震わせ、すらりと細長いおさない脚を踏み変えながら耐えるえりか。  
 
「……もう、だしても…………いいですか」  
 
えりかが泣き出しそうな顔でカメラを見上げる。  
しかし男優達からの赦しは出ない。  
 
「ダメダメ、もっと我慢できるでしょ。いいって言う前に出したら折檻な」  
 
そう呼びかけて、えりかの苦しげな顔を一層歪めさせる。  
それは犯罪的ではあった。けれども同時に、俺にとってこの上なく倒錯的でもあった。  
 
やがて、とうとう瓦解の時が訪れる。  
 
「あ、あ、もっっ……だめ!!」  
 
歯を食いしばっての子供顔で必死に堪えていたえりかが、ついに口を開いた。  
左足の甲を踏みつけていた右足が半ば宙に浮き、指先からゆっくりと床に着地する。  
決壊はそれと同時だった。  
 
破裂音と共に、愛らしい尻穴から薬液があふれ出す。  
それは放射状に広がりながら、男優の差し出す洗面器の中に叩きつけられていく。  
カメラがその中身を接写していた。  
そのカメラの脇から覗いてみたが、汚れはない。あらかじめ本番前に出しておいたためだ。  
 
「いやあああああっっ!!!」  
 
大勢の前で排泄を晒しながら、えりかは絶叫していた。  
耳までが赤い。  
身に余る羞恥に踏みかえられる桜色の脚を、透明な薬液の雫がいくつも伝っていく。  
 
一度目の排泄が終わった後、男優の一人がえりかに近づいた。  
そしてまだ小さく口を開いたままの肛門に指をかける。  
 
「あ、うあっ!!は、はいって……る……!!」  
 
えりかの驚いたような声で、男優の指が肛門の中へ入り込んだのが解った。  
 
「良いと言う前に出したからな。おしおきだ」  
 
男優はにやけながらそう囁き、肛門を中指でいじくり回す。  
えりかは排泄の余韻で項垂れ、髪を逆さ吊りに遭った様に垂らしながら喘いでいた。  
 
しばしの指責めが施された後、続けて再び浣腸が施された。  
様々な色の浣腸をしては排泄させ、洗面器に色を添えていく。  
いかにも視覚に訴えるAVらしい手法だ。  
 
ミルク、コーヒー、酢酸、トマトジュース……様々な浣腸がなされる。  
時に片脚を持ち上げられたまま男優の腹に、時にはがに股を強要された状況で。  
屈辱的な体位を指定されながら、えりかは幾度にも渡って排泄を晒す。  
 
「おう、いいよいいよー、えりかちゃん!ブリブリいってるのが丸見えだ!  
 そのまま、もっと踏ん張って、いいぞ!!」  
 
男優やカメラマン、果ては長谷監督までがえりかを囲み、周り中から騒ぎ立てる。  
まるで何かの祭りで囃し立てるかのように。  
そこが何かの転機なのだという事が、現場にいる俺には肌で感じられた。  
場の熱は、撮影始めの頃に比べて格段に挙がっている。  
『縛られた美少女のあられもない排泄』という名場面を火種に、盛り上がっていっている。  
それを横目に、どこか弱ったような、しかし陶然としても見えるえりかの表情は、  
この時の俺にもよく理解できた。  
傍から見ているだけで呑まれるのだから、撮影の主役ともなれば殊更だろう。  
 
浣腸シーンを撮られたえりかは、その脚のミルクやコーヒーの雫が乾く間のないまま、  
すぐに次のシーンに入る。  
木の椅子に座らされ、大股を開くように脚を縛り付けられるその格好は、  
今までよりもさらに数段階恥ずかしかろうと思えた。  
 
えりかは清純で真面目というタイプの女の子だ。  
ファンクラブが出来ているという話にも納得できるほど、ルックスにも優れている。  
そんな子が大股を開き、性器をこちらに丸見えにさせているという状況は、かなり衝撃的だった。  
割れ目は実に鮮やかなピンク色だった。  
形は真っ直ぐな一本筋ではなく、真ん中が少し左によじれた形だが、それもまた生々しくていやらしい。  
ビデオではモザイクが掛かる場所であるだけに、それを直に見られる体験は実に貴重だ。  
 
そして秘裂の舌に息づく排泄の蕾は、こちらも薄い桜色をしていた。  
殆どの女性が褐色かせいぜい肌色である事が多いアナルだが、奇跡的に綺麗だ。  
さも慎ましそうなその蕾は今、男優によって舌で舐め回されていた。  
 
「んん、いいよ、美味しいよえりかちゃん」  
 
冴えない中年である男優は、えりかの肉感的な太腿に手を置き、犯罪的な顔を歪めてアナルをしゃぶり回す。  
えりかは肛門の皺が嘗め回されるたび、穴の中へ舌が入り込むたびに、小さく息を吐いて反応しているようだった。  
 
呆れるほど丁寧に舌責めが施され、肛門がぽっかりと口を開くほどになると、そこで道具が登場する。  
初めはごく細いアナルパール。  
その先端からたっぷりとローションを垂らしかけ、ゆっくりとえりかの肛門へと沈みこませる。  
 
「ふぁっ……!!っつ、冷たいっ…………!!」  
 
えりかはスレンダーな身体を震わせた。  
男優はその反応を愉しみながら、ゆっくりと奥までパールを押し込み、また一粒ずつゆっくりと抜き出す。  
その動きに合わせて、初々しい蕾も盛り上がり、窄まりを繰り返す。  
何人もの男とカメラに見守られながら、秘部を露わにし、肛門に淫具を抜き差しされる。  
それは一体、どのような気持ちになるものなのだろう。  
俺達は、それをえりかの顔色から想像するしかない。  
 
細いアナルパールが難なく出入りするようになると、一旦指責めに戻り、次いで先ほどよりやや太いアナルバイブが登場する。  
それはしばし括約筋に沿って遊んだ後に、幼い尻穴を掻き分けながら腸の内部へと入り込んでいく。  
自らの肛門へとやや太いバイブが入り込む。  
その瞬間を、えりかは澄んだ瞳を大きく見開いたまま凝視していた。  
受け入れ難いのか。いやむしろ、今まさに現実を脳内とリンクさせようとしているのか。  
清純な見た目の痴女は、肛辱に関心の全てを向けているようだった。  
 
肛門責めには、実に様々な道具が用いられた。  
大股開きの状態のえりかに用いられては、ローションと粘液に塗れて床へ置かれる道具類。  
その多彩さは、人間の開発欲の凄まじさを感じさせる。  
中には、そんなものまで入れるのかと唖然とするものもあった。  
スーパーボールや玉蒟蒻がそうだ。  
 
ローション塗れの状態で、一つ一つ、意外なほどあっさりと肛門にねじ込まれていく。  
一袋全てを呑み込ませた所で、開ききった肛門からそれらが覗く様をじっくりと撮影し、  
えりかが苦しみを訴えた時点で自らひり出させる。  
その情景には普通の排泄とはまったく違う、異様な何かがあった。  
スレンダーで愛らしいえりかが、とんでもないことをしている。その感覚が、俺の性感をくすぐった。  
 
慣れと共に少しずつ責め具の太さは増していき、最後には栄養剤の瓶ほどの太さがあるディルドーが入り込むほどになっていた。  
男優の指で拡げられた秘裂は、遠目でも解るほどに潤みきっている。  
極限での羞恥と、未知の快感ゆえだろう。  
そこまでになった時、ついに撮影は尻穴を使ったセックスへと移行する。  
 
後ろ手縛りのまま床に膝を突かされ、背後から男優が圧し掛かる。  
背中側へ不安げな視線を送るえりかに構わず、男優はその浅黒い手で柔尻を掴んだ。  
そして、延々とお預けを食って勃起しきった逸物を押し付ける。  
 
「あ…………!!」  
 
二つの腰が動いた瞬間、えりかの唇から声が漏れた。  
衝撃的な。そして、快感に狂うような。  
 
「くっ……すげぇ、いい締まりだ!!」  
 
男優は吼えるような声を上げながら、えりかの細い腰を自分の身体に引きつける。  
その度にパンパンと肉の打ち付けられる音がし、えりかの息遣いと重なり合う。  
モザイクの一切ないこの現場でなら、赤黒い逸物が間違いなく秘裂より上、尻たぶの間に入り込んでいるのが見える。  
肛門がまくれ上がり、押し込まれる動きが丸見えになる。  
 
「あっ、あっ、あ、あっ!!ああっ!!!」  
 
見た目通りの澄んだ声で喘ぐえりかの声は、前方に立った男が逸物を咥えさせた事で封じられた。  
すでに長らくの責めで涎に塗れていた桜色の唇からは、すぐにじゅぷじゅぷという水気のある音が立ち始める。  
まだ未成熟な細い身体が、中年親父二人に挟まれて無抵抗に揺れる。  
その映像は、ある種SMの本質を表すかのようだった。  
 
男優達はさすがにプロで、驚くほどの精力と容赦のなさでえりかを責め立てた。  
後背位に始まり、騎乗位、屈曲位、即位、背面座位と様々に体位を変え、ある時は肛門を、ある時は口を犯し抜いた。  
 
「ほら、もう一発出すぞ、ケツ引き締めて味わえよ!!」  
 
フィニッシュは全て中出しで、太い逸物が抜き出されるたび、肛門から白濁が流れ落ちるのが印象的だ。  
場には嗅ぎ慣れた精液の匂いに加え、独特の臓器の臭いが漂い始める。  
やや生臭さも感じる匂いだが、それがあのえりかの腸の匂いだと考えれば、場に立っているだけで勃起してしまう。  
本当にあの子がアナルを犯されているんだ、と否応なく納得させられる。  
 
何十度、アナルセックスが繰り返されただろう。  
最後に両足首を掴みながらの屈曲位で男優が射精に至り、尻穴から零れた精液がえりかの顔へと零れ落ちるシーンでカメラが止められる。  
撮影の終了だ。  
熱気に満ちていた場の空気が一気に弛緩していくのが解る。  
けれども俺だけは、それぞれが役目を終えて休息に入る中に加われずにいた。  
所詮は部外者だ。撮影の熱に加われなかったのと同じく、周りが冷めた今さらに滾っている。  
許されていながら、今まで一度も行った事のない、女優とのセックス。  
その強権を今、どうしようもなく使いたくて仕方がない。  
本気でえりかというSM女優に心奪われたのだろうか。  
 
えりかと話をしている長谷監督に近づくと、こちらを見た瞬間に俺の考えを察したようだ。  
えりかに何かを囁き、俺の方を手で指した。  
彼女は初め、やや不思議そうな顔をしていたが、やがてゆっくりとこちらに歩み寄る。  
 
「今日は、有難うございました」  
 
礼儀正しく頭を下げた彼女が再び顔を上げたとき、その顔は世の中の常を知る女のそれだった。  
彼女は処世術を披露するかのごとく、静かに俺の足元に跪き、俺のベルトに手をかけた。  
 
じゅぷ、じゅぷっと音がしている。  
生まれて初めて、女からフェラチオという行為を受けた。  
それは思っていた以上に心地良いものだった。  
男優達が何分にも渡って堪えていた事が信じられないほどに。  
刻一刻と逸物の大きさが増し、それにつれて咥えるえりかの顔も変わる。  
その愛くるしい顔を手で包み込み、腰へ押し付けたまま射精を迎えるのも魅力的だ。  
けれども俺は、いよいよはちきれんばかりになった逸物をえりかの口から抜き出す。  
 
「し、尻を向けて」  
 
緊張の余りどもりながら、目の前の女優に命じる。  
そして白い剥き卵のような尻肉がこちらを向いたとき、そこにそっと手を触れた。  
暖かい。  
絹のようなしっとりとした肌触りが、手に吸い付いてくる。  
俺はそれに感動しながらも、熱を持った分身をその極上の谷間へと押し付けた。  
休職中の男優や監督達が、半笑いで眺めているのを視界の端に捉えつつ。  
 
あれほど酷使された直後であるにもかかわらず、えりかの肛門は抵抗を示した。  
ゴムを被せられるような感触が先端から纏わりつき、挿入するごとに根元へと通り抜けていく。  
本当に、きつい。  
そのきつさが、紛れもなく女の肛門に、これほど愛くるしい女性の排泄の穴に挿入しているという実感をくれる。  
半ばほどが入ってから後はスムーズで、俺のものは根元まで残らずえりかの中へと入り込んだ。  
その至福の感覚に、思わず射精の感覚が走る。  
そこで一呼吸。  
暴発の予兆が収まってから、ゆっくりと怒張を引き抜くと、締め付けの輪が再び幹を上がっていく。  
 
「……んひっ…………!!」  
 
えりかが歯を噛み合せたまま、小さく呻くのが聴こえた。  
上品な顔のままで、なんて魅力的な顔をしているんだろう。  
何度も何度も尻穴で昂ぶらされて、すっかり上り詰めているんだろうか。  
なら、俺のでもっとよくしてやる。出回るビデオには残されない、あられもない姿を晒させてやる。  
 
俺は愛らしい女優の腰を掴みながら、初めての女の肉の感触を手の中に感じながら、ゆっくりと腰を遣い始めた。  
 
 
                
                              終  
 

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