【英雄に侍る者】  
 
 
 
今、大陸では吟遊詩人が酒場で必ずといっていいほどに謡う者がいた。  
流浪の英雄≠ニ呼ばれる若者の歌である。  
彼は、帝国によって国を滅ぼされた亡国の王子だと言われている。  
数年前に彼は、血の滲む努力と苦難を乗り越え、激闘の末に母国を解放した。  
そこまでならばよくある英雄譚であろう。  
だが、彼は弟に国王の座を譲ると、弱者のために戦うために、  
仲間と共に旅へと出立したのである。  
それ以来、大陸では彼の起こした数々の奇跡が聞こえるようになる。  
帝国に苦しめられていた国を解放へ導き、  
民を苦しめていた邪竜を倒し、  
悪しき魔術師の陰謀を阻止した、と。  
その名声からは、彼の人物像は想像するに難くない。  
清廉潔白にして、正義感ある勇者のそれである。  
事実、彼に救われたある国の姫君は、彼に求婚までしたという。  
最近では彼に関する書籍まで発売され、  
各国で写本が出回るようになっている。  
 
……その写本をベッドで読みながら、彼女はケラケラと笑った。  
 
「きゃあっはっはっはっ! 見なよルイーク、あんたこんなにかっちょよく書かれてるよ?」  
「やめろよジュラ、こっ恥ずかしい」  
 
少年の声が聞こえ、彼女は背中にのし掛かってくる若い人間の身体に吐息を漏らした。  
 
「あん! もう、本読んでる時くらい落ち着きなさいよ」  
「ジュラのそんな姿見てたら辛抱たまらんくなった」  
 
少年は全裸だった。  
締まっているが、まだ幼さを残した顔つきをしている。  
金色の長髪を背中で束ね、円らな藍色の瞳を持ったその容姿は、  
初見ではもしかしたら少女と見紛うこともあるかもしれない。  
美しい王族の家系と、育ちの良さがそこに現れているようにジュラには見えた。  
が、それは彼女だから感じることで、今この状況を誰かが見たら、  
冒険者気取りのガキと売春婦が朝っぱらから安宿で盛っているようにしか見えないだろう。  
白い少年の肌と対称的な、小麦色の肌が、若い雄の挿入に波打つ。  
 
「あっ! あんっ! いい! 朝からこんなに元気なんて」  
「んっ! はぁ! くっ! ジュラ、ジュラ!」  
 
少年は若さに任せて激しく腰を振っている。  
バックから突かれるジュラと呼ばれた女も、それに声を上げてよがった。  
 
ジュラは少年よりも一回り背の高い美女だった。  
見た目でいえば、20代前半から半ばにかけてくらいだろうか。  
褐色の肌と、豊かな金髪、そして男ならば誰もがよだれを垂らしそうなほどに大きく、  
そして整った乳房を持っている。  
顔も妖しさが感じられるほどに整っており、  
そこは少年と比べても何ら遜色ない美少年と美女の二人といえた。  
だが、今の二人は、理性など感じられない獣の交尾のような男女の交わりに夢中だ。  
少年が腰を形の良いジュラの尻に打ち付けると、安宿のベッドが悲鳴を上げるように軋んだ。  
ジュラも、薄い壁越しに周囲に自分達の情事が筒抜けであることなどお構いなしに快楽の声を上げる。  
 
「ああああ!」  
「うっ!」  
 
やがて、少年が朝の挨拶とばかりに彼女の中に若い精を射精した。  
ドクドクと大量の精液が彼女の膣内を満たす。  
同時に達した彼女の膣肉は、少年の放つ濃厚な精液を貪欲に子宮内に搾り取ろうと脈動する。  
射精後の敏感なペニスが、その膣肉の動きに更なる快楽を受け取った。  
二人は折り重なり、荒い息を整える。  
 
「やっぱジュラの中、最高……」  
「もう……ルイーク! 中出しするなら言ってよね!」  
 
ジュラは少年の熱い子種を大量に腹の中に受け入れてしまったことに不安そうな顔をした。  
快感の後の軽い後悔だった。  
ルイークと呼ばれた少年も、ちょっとばつが悪そうな顔をする。  
 
「今、危ない日なのか?」  
「危ないから昨日も他の男つまみ食いしないで薬飲んでたんじゃないー……」  
 
そうは言うものの、ジュラは別段本気で怒っている様子ではなかった。  
が、ルイークは彼女の金髪の合間から覗いている耳に甘くキスをして囁いた。  
 
「ごめん」  
 
彼がキスをした彼女の耳は、笹の葉のように長い、人間の耳とは異なったものだった。  
ジュラは、ダークエルフだった。  
 
「ま、ダークエルフと人間はデキにくいっていうし、大丈夫でしょ。避妊の薬も飲んだし」  
 
ジュラはそう言うものの、ダークエルフ族秘伝の避妊薬は、効果が出るまで1日かかるから、  
昨日の夜飲んだのでは効果は微妙だった。  
相手がルイークでなければ絶対に中出しなど許さないところだった。  
 
「エルフがデキにくい身体なだけで、人間とすると人間並に当たっちゃうんじゃなかったっけ?」  
「そーかもねー……えい!」  
「わっぷ!?」  
 
彼女は身体を翻してルイークの上に馬乗りになった。  
ぺろり、とその赤く扇情的な唇を舌なめずりする。  
 
「じゃ、一回しちゃうも二回しちゃうも同じだから、もっぺんイっとこうか?」  
 
仰向けにされたルイークが、彼女の乳房を両手で揉みし抱いた。  
 
「いっとく!」  
 
・  
・・  
・・・  
 
 
昼前になって階段を下りて一階の酒場兼食堂に行くと、  
無愛想な元戦士といった風貌のマスターがじろりとルイークを睨んだ。  
 
「お盛んなのは結構なんだがね、  
今朝なんかは他の部屋の客どころか近所からも苦情が来たんで少々自重してくれんかね?」  
「わりいわりい! これで勘弁してくれよ」  
 
ルイークは懐から純度・信頼度共に大陸一番の金貨を一枚取り出して投げて寄越す。  
こんな安宿なら、一ヶ月飯付きで泊まってもおつりがくる額だ。  
二人がこの宿から叩き出されない理由だった。  
 
「ふん。で、飯は何にする?」  
「俺は肉料理。連れは野菜料理でなんか良いもんを」  
 
どっか、と椅子に座り、ルイークとジュラはブランチをとる。  
周囲には、お世辞にも柄が良いとは言い難い輩が何人かおり、  
二人に好奇の視線を這わせていた。  
 
「ケッ! 黒エルフが人間のガキくわえ込んでんのかよ」  
「今は大陸中で大変な時だってのに、親の顔がみてみてえもんだ」  
 
ジュラは涼しい顔をして、聞き流している。  
ルイークも、今までこういう時に事を荒立てて良いことがなかったのか、  
憮然として飯をかき込んでいた。  
 
「噂の流浪の英雄ルイークが見たら嘆くだろうよ」  
「ああ、全くだぜ」  
「あんな汚らわしい種族なんざとっとと根絶やしにしちまえばいいんだ」  
 
ガタ、とルイークが立ち上がった。  
ジュラは、咄嗟に声を上げる。  
 
「ね、ちょっと買い物付き合ってよ!」  
 
そう言ってルイークの片腕に自分の両腕を絡ませ、  
まるで愛人が主人に何かを貢がせるかのように宿の外へと連れ出して行った。  
 
 
◇  
 
 
ここは、反帝国同盟の中でも特に重要だと言われている国の首都だった。  
通りには人が溢れ、商人が活発に声をかけている。  
そんな雑踏を歩きながら、ジュラはルイークに言った。  
 
「もー、あたしはああいうの気にしてないっていつも言ってるでしょ?」  
「でも……」  
「でもじゃないー、せっかくダークエルフ同伴でも泊めてくれる宿なんだから、  
揉め事起こしてまた野宿生活に戻るのなんて嫌」  
 
そう言われてしまうと、正論であるがゆえに黙るしかない。  
ジュラは、中央広場の噴水の縁に座ると、一つため息をついた。  
 
「それにさー、人間の価値観でいうとあたしらの種族が汚い≠チてのは常識でしょ?」  
「俺はそんな風に思ってない」  
「ルイークがそう思っててもしょうがないの。一般論の話」  
 
ジュラは苦笑する。  
こうして話している間にも、通り行く人々はジュラの褐色の肌とそのエルフ耳を見て不快そうだったり、  
明らかな侮蔑の視線を投げかけて来る者が多い。  
彼女の、良く言えば盗賊風、悪く言えば売春婦のように露出の大きな服装にも原因があるようだ。  
 
「人間の女で乙女って言われてるのは、処女で恋人や夫だけと交わらない人のことだけど、  
ダークエルフにそんな女まずいないしね」  
 
それが種族としての文化なのである。  
ダークエルフ族はエルフ族同様に長命な種族だ。  
ところが、エルフ族とはその宗教観や、家族文化・恋愛文化が著しく異なる。  
人間に神秘的な存在として受け入れられているエルフ族と違い、  
ダークエルフが忌み嫌われる理由はそこにあった。  
ダークエルフの女は、人間の価値観で言えば基本的に淫乱で淫売である。  
ダークエルフ族が女性上位社会だったことなどに起因するらしいが、  
ダークエルフ女性にとって、交わった男の数はただの自慢に過ぎない。  
人間の価値観でいう貞淑さや清らかさとは無縁なのである。  
そのせいか、人間とダークエルフのつがいで成功した話というのはあまり聞かなかった。  
 
「ルイークは、あたしのこと色々と理解してくれてるからいいけど」  
「古い付き合いだからな」  
 
ルイークは笑う。  
その無邪気な笑みが、ジュラは好きだった。  
人間の価値観でいう貞淑さはないかもしれないが、  
人である以上、特定の誰かへの深い愛情は自然なものである。  
 
「ジュラ……」  
 
二人はそっとキスをする。  
が、深く求めるルイークを、ジュラは止める。  
 
「だめだって、人が見てるんだから」  
 
それは羞恥心という意味ではなく、揉め事の元になりそうだからという意味だった。  
ルイークは、それが不満だった。  
 
「ジュラに文句言う奴がいたら、俺、ぶっ飛ばすから」  
 
ルイークは本気だったし、今までも事実そうだった。  
だからこそ、彼の愛が本物なのだとジュラも信じている。  
だが同時に、最近はまた違った感情も彼女は抱いていた。  
ルイークの、英雄として多くの人々を救ってきた彼のためを思えば、  
自分は間違いなく邪魔な存在であること。  
ジュラは、この関係がいつか終わるという確信を抱いていた。  
有史以来、エルフを伴侶とした英雄は数多いが、ダークエルフを伴侶に持った英雄はいない。  
彼は今まで、一国の姫君からの求婚まで断って自分と共にいる道を選んでくれた。  
だから、その愛情だけでも、もう十分なのだ。  
いや、彼のことだ。  
こちらから終わらせなければならないのかもしれない。  
ジュラは珍しく、陰鬱な気持ちになった。  
と、  
 
「おや、ルイーク殿ではございませんか?」  
「ガスキン聖騎士団長?」  
 
見ると、立派な甲冑を着込んで毛並みの良い馬に跨った一団が、ルイークを見つけて声をかけてきた。  
 
「演習の帰りですか?」  
「ええ。帝国との決戦も近づいておりますからな。騎士達も、ルイーク殿と戦えるのを誇りとしておりますぞ」  
 
中年の騎士団長は、いかにも騎士らしい無骨ながら人の良い笑みを見せる。  
ルイークとジュラがこの街にいるのは、帝国への反攻作戦に参加するためだった。  
民衆の味方であり、規格外な強さを持つルイークがいれば、戦局はこちらに有利なことは間違いない。  
騎士団長の部下の若い騎士達が、ルイークの姿に歓声を上げた。  
彼が腰に提げている魔剣の存在感は、騎士であればすぐに分かる。  
 
「……ん?」  
 
騎士団長が、ルイークの横にいる女に気づく。  
そして、あからさまに不愉快そうな顔をした。  
ジュラは、普段は受け流すところだが、今は虫の居所が悪かった。  
それに、考えていたこともある。  
胸が痛むが、少し感情的になった。  
 
「ルイーク。あたし、ちょっと白けたからさ、適当に男漁ってくるから」  
「え?」  
 
ルイークが突然の彼女の言葉に驚く。  
別に、ジュラが自分以外の男をひっかけに行くのは珍しいことではない。  
だが、こういうややこしい場面でそんなことを言い出すような思慮の浅い女ではなかったはずだ。  
案の定、騎士達が怒りの声を上げた。  
 
「ルイーク様になんという言葉遣いだ!」  
「汚れた種族め!」  
 
ジュラも、そんな騎士達をせせら笑って挑発する。  
 
「人間の男なんて掃いて捨てるほどいんだから、一本だけ楽しむなんてもったいないでしょ?」  
 
そして、ルイークを一瞥して言い放つ。  
 
「彼だって、許してくれてるんだから」  
「な、何と!?」  
 
騎士団長が驚きの声を上げた。  
が、ルイークは焦らなかった。  
 
「ああ、そうだよ。彼女はダークエルフだからね、それが普通なんだ」  
 
それを受け入れた上で、彼女を愛している。  
そう言ったつもりだった。  
だが、ジュラの背中を見送った後で、騎士団長は忠告するように言った。  
 
「ルイーク様。おやめになった方がよろしいですぞ。ダークエルフを連れているだけで士気が下がりますゆえ」  
「戦闘中は彼女は斥候に出ていることが多いから陣の近くにはいない。心配しなくていい」  
「それ以外にも、せっかく英雄として名を馳せたというのに、あんな汚れた者がお側では面目が立ちませぬ。  
私の知り合いに神官戦士の女がおりますゆえ、そういった者を近くに置いては?」  
 
ルイークはうんざりした気持ちで首を横に振る。  
 
「ご忠告感謝しますよ。ガスキン団長」  
 
そう言って、彼は逃げるようにジュラとは反対方向の雑踏へ消えて行った。  
 
 
◇  
 
 
ジュラはその日、少し荒れていた。  
彼女はダークエルフ女として、男と交わるのに抵抗はないが、だからといって誰でも良いわけではない。  
基本、それなりに吟味した男を引っかけるのだが、  
今回に限っては、適当に自分にギラついた視線を投げかけて来る男を引っかけた。  
しかも、宿さえ取らずに路地裏で事に及ぶ。  
 
「……ん」  
「おおぉ……へ、へへ、ダークエルフの女とやるなんて初めてだぜ」  
 
壁に手をついた立ちバックで彼女を貫いた体格の良い男は、  
彼女の名器に酔いしれた。  
 
「いーからもっと早く腰振ってよ」  
 
ジュラの膣内は性交に至って熱く濡れそぼっていたが、  
心の方はいまいちだった。  
やはり、悩み事がある時はいまいちのれない。  
そもそも、悩みを紛らわすために適当にヤっているのだが、  
それが達成できていないのでは意味がなかった。  
 
「おうおう、噂通りに淫乱な種族だなぁ、おら!」  
「あっ ああん!」  
 
男は傭兵らしかった。  
傍らに、鎧と剣、旅用の荷物を置いてある。  
逞しい身体にはあちこち戦いの傷跡が残っている。  
強き男を好むダークエルフ女としては、まあ及第点な雄だ。  
挿入されたペニスもなかなかのモノで、彼女の膣肉は浅ましく喜んでくわえ込んでいる。  
 
「くぅー、今日はツイてるかもなぁ。そこいらの人気娼婦が裸足で逃げ出す身体だぜアンタ」  
「あっ ああっ あはぁっ 激しいっ んぁあっ」  
 
男は力任せに彼女を突き上げる。  
二人が交わる音が、人気のない路地裏にパンパンと響いている。  
そして、結合部からは彼女の淫液が溢れ、  
人間の雄の生殖器と絡まってグチュグチュと卑猥な音を出していた。  
男はゆさゆさと揺れる彼女の二つの膨らみを思う存分に揉みし抱く。  
 
「た、たまらねえぜ! ダークエルフ女はよぉ!」  
「あひぃ! そんな揉まないでぇ!」  
「何言ってやがる、こんな乳首固くしといてよお」  
 
男はコリコリとその薄桃色の突起を指先でいじる。  
ビクン、と彼女がそれに反応して身体を波打たせる。  
同時に、膣壁がうねり、男のものを締め付けた。  
 
「いやぁ! もうダメ、いっちゃうぅ!」  
「うおおお! お、俺もだぁ! な、中に出すぞ!」  
 
男の声と、膣内で射精に向けて怒張するペニスに、ジュラはハッとする。  
 
「な、中はだめ!? そ、外に! 口で受けてあげるからぁ!」  
「へへへ! こんなに締め付けてきといてそりゃないぜ! お前だってその方が気持ちいいだろ?」  
「ちょ、本気でダメなんだってば! 今日危ない日なんだから!」  
「そんなもん知るかよ! おめえの方から誘ってきてお預けはなしだろうが! おらぁ! 受け止めろ!」  
 
男はダークエルフが非力であることを知っているかのように、  
その強い腕力で彼女の腰をがっしりと逃がさないようにする。  
己の欲求を満たすためだけに、腰を振り、やがて絶頂が近づく。  
彼女は予想外の展開に焦る。  
 
「イヤァー! やめてぇ! お願い抜いてぇ!」  
「げへへ! 無駄なんだよぉ! おおお! で、出る!」  
 
男は征服欲に酔い、女の悲鳴に更なる興奮を得た。  
そして……  
 
「いやぁんダメだったらぁ! もー……」  
 
彼女はキレたのだった。  
 
「やめろって言ってんでしょうがぁ!!」  
 
彼女はダークエルフ族の中でも屈指と称される魔法の使い手だった。  
男は、ダークエルフが非力なのは知っていても、  
人間とは比較にならないほどの魔力を内に秘めているのは知らなかったようだ。  
ジュラが怒りと共に魔力を解放し、衝撃波が男を派手に吹き飛ばした。  
 
「ぐぎゃぁああ!?」  
 
向かいの壁に叩きつけられ、傭兵の男は崩れ落ちる。  
そして、不様に下半身を丸出しにしたまま、  
 
どぴゅ!  
 
快楽のない射精を地面にまき散らしたのだった。  
そして、彼女はツカツカと息の絶え絶えの男に歩み寄る。  
 
踵の鋭い黒い革製のロングブーツで、男の半立ちのペニスを踏みつける。  
 
「ぎゃああああ!?」  
「ふざけた真似してくれたじゃないの?」  
 
そして、男の首根を掴み、凄みを効かせる。  
 
「あんたダークエルフ舐めてんじゃないの……?」  
 
彼女の赤い瞳に、蛇に睨まれたカエルのように、男は縮み上がった。  
 
「このまま、タマまで潰しちゃおっかなぁ?」  
「ひ、ひいいいい!?」  
「気が変わらない内に失せな!」  
「う、うわあああ!?」  
 
ジュラが言うと、男は荷物さえそのままに、腰をぬかして逃げていく。  
一人残された彼女は、大きくため息をついて壁に背中を預けた。  
 
「最悪……」  
 
こんなダメな交わりは久しぶりなくらいだ。  
何に対してか分からない脱力感に彼女は苛まれる。  
 
「あ、そういえばあたしイってないじゃん!?」  
 
男の方はあれでもイケているんだから、これほど不公平なことはない。  
 
「ああもう!」  
 
彼女は男の残して行った鎧を腹いせに蹴飛ばす。  
と、その時だった。  
 
「誰?」  
 
気配を感じ、振り返る。路地裏の奥に、誰かいるようだ。  
 
「ご、ごごごごめんなさいぃ!」  
「こ、殺さないでぇ!」  
「盗み見ちゃってすいませぇん!」  
 
見ると、そこにはまだ子供の面影さえある少年達が3人、ガタガタと震えていた。  
どうやら、地元の悪ガキ達らしい。  
着ているものは貧民街のものではなく、商人の子息といった感じなので、  
売春街に近いこの辺りを思春期の期待(つまるところ今のような情事に出会える期待)  
を胸に探検でもしていたのだろう。  
その証拠に、命乞いをしながらも、彼らの股間には立派なテントが建っていた。  
ジュラは呆気にとられる。  
そして、  
 
「くす……」  
 
と妖艶に笑う。  
その意味が分からず、少年達はあの傭兵の男を叩きだした恐ろしいダークエルフに恐怖し、  
今にもチビりそうになる。  
 
「ね、君達、こっちきなよ」  
 

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