彼女――ミュウ=アタラクシアは意外と優秀だった。それはそれでよい。陰口を言われる心配はないのだから。  
彼女本人もこの仕事を楽しんでいるらしい。  
「………と言うのが今日の日程です。……聞いてます?」  
「ん?うん、ああ……」  
「……電撃、要りますか?」  
「それは、もう二度と勘弁して欲しいな」  
前に後ろから抱きしめようとしたら、背中の藍色の紋章が光って電撃をくらった事を思いだした。  
(勇気だして抱きついたんだがなぁ……)  
どうも、自分は本気の相手に対しては奥手になってしまうようだとシアは思っていた。  
自分は王なのだし、いつもの様に無理矢理押し倒してもいいのだが、女を抱くとタカが外れやすい自分 
の性格を考えると気が進まなかった。  
(ヴェル曰く、普段、理性的に動いて、色々溜め込んでるからじゃねーの?とかだったか)  
もしミュウを抱いて、嫌われたら…と思うとそんなことは出来ない。義母の二の舞は嫌だった。  
体が欲しい訳じゃない。いや、要らないといえば嘘になるが、心が欲しかった。  
「なぁ…ミュウ」  
「何です?陛下?」  
外出様のマントを用意していたミュウが、コバルトブルーの瞳を向けて答える。  
「陛下はやめてくれないか?私の名前ではないし、君にはシアと名乗ったのだから」  
「そんな事言われても、困りましたね……分かりました、二人だけのときならシア様と呼ばせていただきます」  
「そう言ってくれるミュウは好きだな」  
そう言いつつ、シアは細かな刺繍が加えられたマントを受け取る。  
「ところで、何です?」  
ミュウは首をかしげた。ブラウンの髪がふわりと舞う。  
「ん?いや……そうだな…ミュウはアップルパイが得意とか言ってたな。今日の政務が終わったら、食 
べてみたいなって思ってさ」  
何とか口実を思いついたシアだったが、その姿な何となく情けないなと思って自嘲した。  
「?わかりました。でも、お城で作ったのより美味しいとは思えませんよ?」  
シアの笑いの意味は判らなかったが、ミュウは笑顔で答えてくれた。  
「ミュウの作るものだ。美味しいさ」  
椅子から立ち上がり、朝廷に赴くシアの足取りは心なし軽いように見えた。  
 
 
「あの……どうです?」  
夜になって政務が終わった後、ミュウは約束どうりアップルパイを作って持ってきてくれた。  
「ん、美味しいよ。立ってないで一緒に食べればもっと美味しいだろうね」  
「あ、はい」  
ミュウはシアの向かいに座るとパイを上品に食べた。  
「髪、束ねたんだ」  
ミュウはセミロングより少し短い様な髪型で、そんな長さ束ねると、ちょこんとしたしっぽが出来ていた。  
「え、あ、はい。料理するときは。昔長かったので癖で」  
(首のライン……きれいだ)  
「あの……やっぱり口に合いませんか?」  
「え?いや、そんなことは無い」  
ミュウを見ていたなどとは言えず曖昧に返すシア。ワイングラスを傾ける。  
「あの……一つよろしいですか?」  
「何だ」  
「どうして私の故郷を攻めたのですか?」  
故郷、そう言ってくれたのは嬉しかったが、この様な場でそんなことを訪ねるミュウにシアは嫌だと思った。  
「……私がしていなくて、父上がしたことが外征だ」  
「は?」  
ミュウをグラス越しに見る。  
「……同じ事をしてみても、やはり父上に勝てないという事が判っただけだったがな」  
シアは自嘲する。まるで自身の言ったことがたわいのない話であるかのように。  
「人を…町を…あなたはなんだと思ってるんですかっ!!」  
ミュウの怒りの反応は普通の感性のものだ。  
「ミュウだから本当の事を話したんだ。他にも色々理由があるけれども、僕の中じゃそれが一番大きい」  
シアはどこか寂しそうな目で、淡々と話す。  
「嘘だと言って下さい、シア様。私は…そんな人を愛せません……」  
絞り出すように、俯き呟くミュウ。  
 
「愛してくれるのか? ミュウ。僕を……」  
ミュウの呟きに、どこか気のない風に話していたシア強く反応する。  
ミュウの手の平を握ろうと伸ばしたシアの手が払われる。  
「やめてくださいっ!もう…出来ません。私の…私に優しくしてくれた人や、大切な思い出のある場所を、 
そんな風に…」  
「嘘でも納得のいく理由を聞きたかったのかい? 絶対の正義なんてどこにもないのに……」  
兵隊を動かすのに使われる言葉。世界中、あちこちで繰り返し、何度も叫ばれた言葉。  
ミュウの手を掴めなかった己の手を眺めてシアはさらに呟いた。  
「妻殺しだって正義なんだから……」  
「シア……」  
「偽政者なんてこんなものさ。でもね、僕は僕の国の人達を十分幸せにしてるだろう? だからさ、 
少しくらい僕の好きに使ってもいいよね?」  
強引にミュウの腕を掴み、引き寄せる。  
「僕は立派な人間だろう? 好きな人には嘘をつかないし、みんなの為だったら我慢だってするっ!」  
ミュウの顎を指で持ち上げる。生暖かい吐息がかかる。  
「だけど…誰も僕だけを認めてくれないんだよな」  
「んんっ!?」  
シアはミュウの唇をゆっくりと味わった。  
「ミュウは僕を愛してくれるんだろう? この国の王でも、英雄イシェルの子でもない、シアという 
人間を。だから僕の我が儘も許してくれるよね? 僕を甘えさせてくれるんだ」  
言いながらシアは驚いた。実に子供っぽい自分がいることに。  
自分が子供のまま大人になっていたという認識。賢しい理性で固めて、大人になったつもりでいたことを。  
「シア……シア=グァンヒート……」  
今度はミュウはシアを真っ直ぐ見つめた。  
そういう目をシアは知っていた。二人…。手に入れることの出来なかった二人。  
「っ!見るなっ!!」  
離れようとするシアを掴んだのは、細い、暖かい腕。  
「いいですよ。愛してあげます。けど、私の事も、ちゃんと愛してくださいね」  
「……ごめんなさい」  
言えなかった言葉と一緒に、シアは何か大きな付き物が取れた気分だった。  
 
 
「初めてのキスだったんですから、次は失礼の無いキスにしてくださいね」  
「今度はもっと優しくギュってしてくださいね」  
あれから、ミュウはそういうことを言う割に、それ以上の事はなかなかさせて貰えなかった。  
「王様たる者が“おあずけ”されてる〜♪」  
「何でそういうことが分かるんだ、お前は」  
ウシシシシ…と品のない笑いを立ててるヴェルにシアは呆れていた。  
フラリと城に帰って来たかと思えば、すぐにこういうことを嗅ぎつける。  
「わかるわかる。顔に書いてるとはよく言ったもんでさ」  
心底愉快そうに話すヴェルに、少しシアがムッとするのは致し方ない。  
「そういうときは、素直になって相手に迎えばいいんだよ、何事もさ」  
「そりゃあ……そうだな」  
時計を見たシアは午後の朝議の時間が近いと察して、王の顔つきに戻っていった。  
 
 
――夜。  
……というわけで、聞いてみた。  
もちろん、そう言うことを聞ける雰囲気には持っていったが。  
「なあ…ミュウ」  
「なんです?」  
シアの腕の中で、ミュウは愛する人の顔を見上げた。  
ニコニコと笑うミュウの笑顔は、純粋物120%だ。  
「う……いや、あのなあ……」  
がんばれ、シア。  
「ミュウと…したいなぁって」  
「何を?」  
間髪入れずにこれだ。手強いことこの上ない。  
「何って…その…」  
いい年をして、まごつくシアについにミュウは声を上げて笑ってしまった。  
 
ソファの柔らかさが、シアの体を通して、揺れを吸収する。  
同時にシアはミュウの重さを感じることは幸せだと思うのだ。  
「ははっ、わかってますって。私にお母さんになれっていうんですね?」  
「いや……まぁ、長い目でみれば」  
そういいつつ、今すぐそうはなって欲しくないとは思える。  
ミュウはいい母になるだろう。けど、今はミュウの一番も二番も独占したいのがシアの心境だからだ。  
「シア、私……」  
「ん?」  
「ご、ごめんね。いままで我慢させて…。でも、その…恐かったんだ」  
そう言い訳したミュウに、シアは自分が情けなくなる。そういうことを全く考えもしなかった。  
一方で、鼻をくすぐるミュウの匂いに、ミュウを抱く腕に力が入る。  
「ん……」  
思わずキスをしてしまう。ミュウの唇はしっとりと柔らかく、シアの唇に吸い付いてくるようだ。  
「んぁ……。もうっ!」  
「悪い」  
「……もしかして、このままなだれ込む気でいません? ちゃんとベットまで運んでくださいよ」  
顔を膨らませて抗議するミュウの愛らしさには、シアは反論できない。  
「惚れた者の弱みか。はいはい、いきますよ、お姫様」  
その言葉通り、お姫様だっこでミュウを運ぶ。  
ミュウも心なしか、この状況を楽しんでいる節がある。  
(まぁ、王様の恋人なんだから、本当にお姫様なんだよな)  
などと、どうでもいいことも頭に浮かんでしまう。  
「ご到着です、お姫様」  
そういって自分もベットの体を擦り込ませる。  
「あ〜あ、王子様がオオカミになっちゃった」  
(……口ではミュウに一生勝てないかも知れない)  
ヴェルと同じ運命か…。そう思うと笑うに笑えなかった。  
「シィィア、女性を放っておくのが、殿方の務めですか?」  
当然、シアのその様な考えなどミュウにわかるよしもなく、またもシアは怒られるのである。  
 
「んっ……」  
シアはミュウを抱き寄せる。  
「シア……」  
ミュウの体温をシアは感じる。同じようにミュウもシアの温もりを感じているだろう。  
それだけで満たされた気持ちになる。  
ミュウの瞼にキスをする。  
「ふぁ……」  
もっとミュウの声が聞きたくてキスを繰り返す。  
最初は軽く、優しいものだったものが、互いに強く求め合うようになっていく。  
シアはミュウの口に舌を入れ、歯茎を舐める。  
「ふぅん…むぁあ…」  
歯の形にデコボコした歯茎を丹念に舐め回す。  
「あぁんむ…ふぅ」  
シアは口の中にミュウの吐息を感じた。  
「はぁ…ふ……」  
二人が唇を話すと、間に白い糸が引き、ミュウの体に張り付いた。  
シアはミュウの唇に付いた唾液を舐め取ってやった。  
「あっ……」  
気に入ったらしく、惚けた表情を見せるミュウにシアの欲情はひどく高まっていく。  
「はむ…むふぅ……」  
今度はミュウから舌を絡めてくれる。首に回している腕に力を感じる。  
「むっふぁ……んんっ…あっ、はふぅ」  
二人の舌が口の中でピチャピチャと音を立て、それがさらに二人を高めていった。  
「はふぅぅぅ……んっ…あん」  
シアが唇を離すと、ミュウは唾液をダラダラと零しているのも構わずにさらに求めてきた。  
シアは唇の外に出てヒクヒクとしているミュウの舌を思いっきり吸い上げる。  
「ぅんんん〜ずずず……」  
部屋中にじゅじゅ…と唾が泡立つ音が響き、ミュウの頬が赤く高揚していく。  
「ふぅ〜〜っ、はっうう〜あんっ!」  
ミュウは弓なりになったあと、はぁはぁと息をつきシアにしなだれかかる。  
 
「ミュウ…愛してるよ」  
そう言ってミュウのだらりと垂れた舌を、自分の舌で押し戻し唾液をそそいだ。  
「ん…んんっ……んぁ……」  
ぼんやりとした目でミュウはシアの唾液を喉を鳴らして飲みこんでいく。  
「はぁ……」  
幸せそうに自身の唇を舌なめずりするその様は、男をかき立てるものだ。  
「シア……私だって愛してるんだから…んっ」  
そう言うとミュウはシアの唇も舐め取った。  
 
 
………と、ここまでは良かった。しかし……  
「ごめんなさい……」  
「いや、僕はミュウを大事にしたいからね。無理はよそうか?」  
「そんな、大丈夫です。私、我慢できますから、シアの好きな通りに……」  
男と女が裸でベットの中にいるのに、何もしていないというのはおかしな話だが、今のシアとミュウは 
そう言う状態なのだ。  
「好きな通りは、ちょっとな……」  
シアの脳裏に苦い思いでが蘇る。と、同時にミュウの前で別の女性を思い浮かべる事は、たとえどんな 
ことでも失礼だと思った。  
「痛くても…恐くても逃げませんから」  
「ん」  
シアはミュウの胸を愛撫しながら自身を桃色の秘境にあてがう。  
「んっ……」  
先端がその秘境を切り開こうとするも  
「やっ……」  
ミュウは体を反らしてしまう。頭で考えたことじゃない。体が反応してしまうのだ。  
「ミュウ……」  
「き、気にしないでください……」  
そうはいっても、その目尻に浮かぶ涙をみるとそうもいかない。  
 
「無理矢理はな……」  
ミュウの涙を舐めとりながら、シアは口をつぐむ。  
無理矢理する事は出来た。……というより何度かそんな事をしてきた。  
そうして女性を征服する事は、男の小さな満足感をみたす。危険な思考ではあるが、シアはそういうこ 
とをする人間だった。  
そうして、心のバランスを取っていたのかもしれない。  
しかし、今は自分だけでなく、ミュウと共にのぼりつめたいと思える。だからそんなは出来ない。  
(でも、ミュウのこういう表情を見るとそそられちゃうんだよな……)  
「ごめんなさい。私……」  
「いいって。……何かこれ以上やったら感電死しそうだ」  
感情が高まると意志と関係なく放電が起こるというのもシアが諦めた理由の一つだったりもする訳だが。  
しかし、何度もやって駄目だったのだから、諦めるしかない。しかし、そんな風に謝れると困ってしまう。  
「それじゃあ……口…とか……」  
「口?」  
「い、いや何でもない」  
うっかり言ってしまったが、目を真っ赤にしたミュウに見つめられると罪悪感ばかり起こってくる。  
「わかりました」  
「へっ?」  
意外な答えが返って来た。  
「知ってるのか?」  
その答えはミュウの顔を見ればわかる。  
ちょっと意地悪しようと思ったが、やめた。ミュウが真剣なのと電撃の怖さゆえに。  
「それじゃあ……お願いできるかな」  
断ることもしづらい状況だ。それにやってもらえるに越したことはない。  
「………」  
ミュウは沈黙をしている。シアのモノの前で。  
「……やっぱり、無理は…」  
「やりますから!……うまく出来るかどうかわからないけど」  
「そういう事は心配しなくていい」  
笑ってやる事で、気持ちを軽くしてやる。  
 
「………………ちゅ」  
おそるおそる、と言った感じでミュウは口をつける。  
シアはミュウの髪を微笑みながら撫でてやる。  
「シア……んっ、んんもっ……はぁむ……」  
ちゅぽっ、ちゅっ、ちゅっ……と部屋に卑猥な音が響く。  
つたなくはあるが、ミュウの普段の清楚さが、今の気分を高めてくれる。  
「カリの裏の溝をほじくるようにしてごらん」  
「んっ……んっんっ、じゅる…」  
カリの意味が通じるか心配だったが、ミュウは察してくれたようだ。  
「はもっ……ん…ちゅ、んあ……」  
怒張して血管が浮き出た男根の、一番臭気を発する部分に、ミュウの小さな舌が這いずりまわる。  
「んっ…ぱっ……」  
「いやらしいな……」  
シアの言葉にミュウの理性が戻る。  
「あっ……」  
「ミュウ」  
催促するように、男根をシアは突き出す。  
「…………はぁむ…ちゅっ…ん……」  
仕方なくミュウは奉仕を再会する。  
少し涙目になってるのを見ると少し罪悪感を感じてしまう。  
「きもちいいよ……ミュウ。いやらしいミュウは僕だけのものだな……」  
「はぅ……ん…んぷ……」  
一旦口をミュウは離す。  
「んちゅ、くちゅ、ぐちゅ……」  
涎を溜めて、舌をモノの側面に塗りつける。  
その光景、特に涎でテラテラと光る桃色の舌はシアをさらにいきり立たせる。  
「はもっ……んっんっんっ……ちゅ…じゅっるる……んぁ……」  
裏筋から亀頭にかけて大きくストロークを繰り返す。  
「うっ…くぁ……」  
押し寄せる快感に思わず声が出る。  
 
「んあ……ふぁむ…ちゅる……あむむ……んもっ…ちゅっ……」  
ミュウのストロークが速くなる。  
シアは一瞬だけ、ミュウがシアが声をあげたのを見て、悪戯をしている子供の様に笑った。  
少し…悔しい。  
けれども、上目遣いにそういう顔をされると堪らなくなる。  
「んっ……ひぃや……ちゅっ…っぱ……あむ…ちゅっちゅっ……んあぁ……」  
「ミュウッ!!」  
思わず声を荒げる。ミュウも高まっている。  
最初は半分も入らなかったのに、その大半をくわえてくれている。  
その健気さが嬉しい。  
「んっ……んっンっ……」  
ミュウはその行為に没頭している。深く深く……愛する人を感じさせたかった。  
(あぁ……ミュウ、僕のモノをそうしてくれて……)  
「はもっ……ん…ん…んぷ…ちゅる……あむ……グサッ……」  
(あぁ、ミュウ、ミュウ!!…って、グサッ?)  
「…んぱっ……っ!?」  
……皆さん、おぼえているだろうか?ミュウの雷獣としての特徴、  
可愛らしい牙、雷撃を発生させる背中の紋章(入れ墨)、頭に付いた小さな角……ツノッ!?  
「お、おぉぅ……」  
流血。小さくても角は角、殺傷力抜群!  
「ひぃ、ひぃあ……」  
シアのモノをくわえたまま、ミュウは動転する。  
「ま、まて……落ち着けミュウ。こ、この状態での電撃は……」  
遅い。  
「ひっ、ひあぁぁぁ!」  
「!!うぎゃぁ○ξφ£※#窮t∴♀昭和:PM(~o~)ZZZνF91VGWX∀島這!!▲◆→ΛΘ…………  
 
 
 
 
 
プッ(´<_`  
 プッ(´<_`  
  プッ(´<_`  
「だぁぁぁぁぁぁぁ!お前達!言いたいことがあるなら言えっ!!」  
「………(///)」  
下半身に全治3ヶ月の傷を負った長兄を見舞いに来たヴェルを筆頭とする三人の弟達にシアは逆切れする。  
「……っ痛」  
「あぁ!シアッ……様」  
耳まで真っ赤にしたミュウ秘書官は、無理して傷に苦しむシアを甲斐甲斐しく介護する。 
原因が自分だけに通常の三倍くらい。  
「まぁまぁ……いい休みが取れたと思って、ゆっくりするんだな、兄貴」  
「ヴェルゥゥ……」  
ミュウに促されて、ベットに横になりながら、恨めしそうに弟の名前を呻るシア。  
「兄貴を頼みますね、ミュウ……姉さん?」  
「………(///)」  
「ヴェルゥ!貴様ぁ覚えておけっ!!」  
顔を真っ赤にして起こるシアと俯くミュウ。  
「忘れる、忘れる♪ お大事にぃ〜」  
そう言って三人は帰って……  
プッ(´<_`Ε|  
 プッ(´<_`E|  
  プッ(´<_`|  
「帰れっ!オマエらぁぁ!!」  
 
 
「……シア」  
「………シア」  
シアはまどろみの中にいた。  
(あぁ…これは夢か)  
そう、はっきりわかる世界。  
この夢が良いものであれ、悪夢であれ、目を覚ませばミュウが居てくれるに違いない。  
(誰が私を呼んでいる?……っ!?父…上……)  
まどろみが開けて、緑の溢れる静かな森があらわれる。陽光が眩しい。  
「懐かしいな……シア。昔、よく二人で釣りをした」  
気づけば、目の前に澄んだ小川が広がり、イシェルとシアは岩に腰掛けて釣り糸を垂らしていた。  
「シア……ティナは元気か?」  
「っ!!」  
シアは横に居る父の顔を見れない。  
「……ち、違うんです!父上、私は、僕は……」  
「お前は私の誇りだよ、シア」  
「ぼ、僕は…嫌がる義母上を無理矢理……」  
体中が震える。歯をカチカチとなる。  
「ずっと…義母上の事が好きで……本当に……」  
「シアは私の誇りだよ」  
「しかって下さいっ!おしかりになって下さいっ!!愚かな僕ぉ……」  
シアは頭を抱える。つらい…けれども、このまま目を覚ましたら、それは逃げだ。  
シアの頭を暖かで大きな手が包む。  
 
 
「……父……上……」  
シアは目を覚ました。カーテンからを朝焼けが照らしている。  
「……ふぅ。………っ!? ミュウ? ミュウ!?」  
シアはそこにいる筈の人を捜す。  
「っ痛」  
まだ痛みが残るが、立つことは出来る。  
(何か…ちょっとした用で部屋を空けているだけだ)  
思い当たる所へ足を運んで見たがミュウは居なかった。  
すれ違いになったかも…という願いも、空の部屋によって打ち砕かれる。  
― 寝言で“義母上”と呟いたのを聞いた女性が何人もいるんだがねぇ ―  
不意にヴェルの言葉が蘇る。  
「あ………」  
フラフラと窓に近づき、カーテンを開ける。  
朝靄の中に城が、街が、草原が、順々に広がっていた。  
「はっ……はっは……ふっ…くくくっ……」  
窓に着いた結露を人差し指でなぞりながら、シアは笑った。  
 
 
続く  

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