「兄貴、見損なった」  
「………」  
トントンと書類を揃えながら、シアはヴェルの抗議を流していた。  
「ちゃんと聞けよっ!!」  
ドンッ!とヴェルが机を叩くと、その音は部屋中に広がった。  
「ミュウちゃんの事、本気だったんじゃないのかよ!」  
母親譲りの金髪が、獅子の鬣の様になって、ヴェルの怒りを表してるかのようだ。  
「………」  
「兄貴ッ!!惚れた女を追わずに三日間も…そんな薄っぺらい紙の方が大切かっ!?」  
「………」  
思わずシアの胸ぐらを掴んだヴェルの手を払いのけて、シアは言う。  
「ただの紙じゃない。…例えば、これが無ければ先程洪水にあった村を救済することができない」  
目の前の紙を指さし、シアは続ける。  
「そうなれば、何十人の人が死ぬ?それだけじゃ無い。この村は綿花の栽培地でもある。土壌もやられた。放っておけば被害は広がる」  
「それも……今の兄貴が言うと薄っぺらいんだよ」  
(近くの者を愛せない者は王たる資格は無い)  
ふと、父の最後の言葉が蘇る。だが、それだけだ。  
「………」  
「…………ミュウちゃんは、トゥルースの街にいるぞ」  
ヴェルはボソッと呟いた。帰り際に、近くのゴミ箱を蹴っていった。  
「………」  
ふっと机を見ると、花瓶に生けてある花が元気を無くしていた。  
ミュウが水を取り替えてたものだった。シアは花瓶を持ち、水を取り替えに行った。  
このままだと花が可哀想だから、と嘘をつきながら。  
花が元気になるかシアには判らない。世話をしていたミュウならわかるだろう。いや、城にいる使用人に聞けば知っている人もいるか。  
花は……蘭の花の一種だった。花言葉は“清い愛”そんな風にミュウは得意げに話していた。  
「……元気に…なるよな」  
シアは部屋を出ていた。気が付くと馬厩舎にいた。次にすることは分かっている。  
 
「へ、陛下!!」  
馬丁の者は恐れおののいている。当然だ。宮仕えといっても、遠くからでしか見たことのない国王が目の前にいる。  
「風雲再起を出してくれ」  
最も速い馬の名前を挙げた。  
貴族のたしなみで、幼少より馬術の訓練を受けて来た。人並み以上の才があるわけではないが、恵まれた環境で習ったのだから努力はしてきた。乗りこなす自信はある。  
それに風雲再起は速いだけでなく、賢い馬だった。  
「お、お身体の方は……」  
「ここまで歩いてきて、痛みを感じなかった。大丈夫だ。心配してくれて嬉しいよ」  
「めっ滅相もございません!で、出過ぎたマネを……」  
恐縮する馬丁を見ていると、腹の傷の真相は絶対に闇に葬り去らなくてはと思った。  
 
城門の前には兵隊が並んでいた。  
「宰相……」  
近衛兵を束ねる男の職を呼ぶ。  
父の代からの、実直で有能な男だった。髪の毛が白髪になっても、人の性質とは変わらないものらしい。  
「なりませぬぞ、陛下。たかだか女一人……」  
「私にとって、ミュウは“たかだか”な存在ではない」  
父の代から……シアは苦手だった。彼が、良い人物であればあるほど。  
「陛下が自ら出られる事ではございませぬ」  
背筋をピンと伸ばし、老宰相は続ける。  
「そうであろう。その通りだ。だが、人は理では動かぬ」  
そこまで言って、シアは一息ついた。  
「私がいかなくては…私が行って、彼女に伝えなければならない思いがある」  
風雲再起が後ずさりをし、助走の距離をとる。  
「陛下っ!」  
「私はシア=グァンヒートだっ!!」  
――飛べ!風雲再起っ!!  
 
「うわっ!!」  
老体の宰相を馬で蹴散らすのは気が引けたが、シアは今までの中で一番の強い衝動によって動いている。  
「……ぐぅぅ…陛下……」  
あっという間に小さくなるシアを確認しながら、宰相は呻いた。  
「やれやれ、全く躊躇しないなんて酷い人だ」  
倒れた老宰相に手を貸す人物が言った。  
「……いやいや、陛下は知も、性質も優れておられたが、“暴”とも言える行動力に欠けておられた。が、儂はどうやら引退しても良さそうじゃ」  
白髪の髭をしごきながら、老宰相はその人物に笑いかけた。  
「そりゃ良かった。ま、俺はこれから面白くなりそうだから先回りするけどね」  
「出歯亀も程々にな」  
「あいよ、爺ちゃん!」  
 
シアは、その足を止めていた。  
(天が存在するとしたら、随分私に冷たいのだな)  
「義母上……」  
風雲再起は、首を低く項垂れている。  
「……幸せになりなさい、シア」  
ティナは、しっかりとした声でシアに言った。  
「……ぁ…ぅ」  
その言葉は非道く重たかった。  
「似るものね。けれど、あなたはシアね。父さまとは違うでしょう?」  
ティナは、イシェルの事を“父さま”と言った。  
「ずっと……好きでした。ティナ様」  
シアはティナを“義母”と言わなかった。  
「まだ暫く、“グァンヒート”として生きるわ」  
「暫く……」  
暫くとはどれくらいであろうか?“人間”のシアには判らないことだった。  
 
「ミュウは…私と同じ時を生きます」  
「逃げられなければ、ね」  
酷いことを言う。  
「私の事は……」  
「イシェル=グァンヒートを唯愛する“女”として、許しません」  
シアはゆっくりと、風雲再起の腹を蹴った。  
「……そうでしょう」  
もう一度、風雲再起の腹を強く蹴る。  
風雲再起が起こした風が、ティナの長い髪をなびかせたのをシアは見た。  
 
街は入り組んでいて、土地勘の無いシアは少し戸惑った。  
幾つかの教会や、思い当たる建物を当たっているうちに、シアを追う影は伸びきっていた。  
何度目かの教会。無粋にも乱暴に扉を開けながら、その隙間からシアは、愛しい人を見つけた。  
「ミュウッ!!」  
その大きな声に、教会に集まった人が一斉にシアを向く。  
「えっ!?あ…シア!?」  
ツカツカと、一直線にミュウに向かった。  
シアは今、自分は怒ったような顔をしてるだろうと思った。緊張してるのだ。  
「帰ろう。嫌なら僕がココにいる」  
ミュウの、白い肌を黒いシスターの制服で包んだ手を、強引にも見える位に強くにぎり、シアは言った。  
「え!?あ…の」  
「僕は咎を持っている。義母の事が好きだった。無理矢理犯した」  
シアの告白に驚愕の色を見せるミュウ。  
「けれど、ミュウ!君が好きなんだ!欲しいんだ!」  
「おい!君、いいか……ぐぇっ!」  
「はーい!今面白いところだから邪魔しない」  
何か周りが騒がしいが、シアは気にも止めない。今はミュウだけを見てればいい。  
唯、その中に知ってる声があった気がしたが……  
当のミュウは、複雑な表情をしている。動揺が僅かに電気を生み、少し手が痺れた。  
(ミュウ!本当に君が…君だけが好きなんだ!)  
思いは言葉にしなくちゃ伝わらない。  
 
「そうだ!  
どうせ聞こえるなら、聞かせてやるさ!  
ミュウ!  
好きだァー! ミュウ! 愛しているんだ! ミュウァー!  
初めて会ったときから  
好きだったんだ!  
好きなんてもんじゃない!  
ミュウの事はもっと知りたいんだ!  
ミュウの事はみんな、ぜーんぶ知っておきたい!  
ミュウを抱き締めたいんだァ!  
潰しちゃうくらい抱き締めたーい!  
種族の壁は  
心の叫びでかき消してやる! ミュウッ! 好きだ!  
ミュウーーーっ! 愛しているんだよ!  
ぼくのこの心のうちの叫びを  
きいてくれー! ミュウさーん!  
側に置くようになってから、ミュウを知ってから、僕は君の虜になってしまったんだ!  
愛してるってこと! 好きだってこと! ぼくに振り向いて!  
ミュウが僕に振り向いてくれれば、ぼくはこんなに苦しまなくってすむんです。  
優しい君なら、ぼくの心のうちを知ってくれて、ぼくに応えてくれるでしょう  
ぼくは君をぼくのものにしたいんだ! その美しい心と美しいすべてを!  
誰が邪魔をしようとも奪ってみせる!  
恋敵がいるなら、今すぐ出てこい! 相手になってやる!  
でもミュウさんがぼくの愛に応えてくれれば戦いません  
ぼくはミュウを抱きしめるだけです! 君の心の奥底にまでキスをします!  
力一杯のキスをどこにもここにもしてみせます!  
キスだけじゃない! 心から君に尽くします! それが僕の喜びなんだから  
喜びを分かち合えるのなら、もっとふかいキスを、どこまでも、どこまでも、させてもらいます!  
ミュウ! 君がツンドラの中に素っ裸で出ろというのなら、やってもみせる! 」  
 
………………  
…………  
「はぁ、はぁ……だから…だからミュウっ!」  
ミュウの手を両腕で掴み、シアは迫る。ミュウは俯いて  
「…馬鹿。知ってるに…わざわざそんな、恥ずかしい……」  
耳まで真っ赤にして、ミュウが呟く。  
「だって…言わなきゃ……ミュウがいなくなるかもって…」  
「そんな訳……シアの事、私は何があったって……」  
ミュウは真っ赤にした顔で、シアをコバルトブルーの澄んだ瞳で見つめた。  
「だって、ミュウは僕に愛想を尽かして出てって……でも、僕はミュウが…ミュウに、側にいてくれなきゃ……」  
絞り出すそうに答えるシア。  
そんなシアに、意外な答えが返ってきた。  
「え?出ていったって?」  
「え?だって、寝言……」  
キョトンとして答えるミュウにシアは、事の始まりを確認する。  
「寝言?あの…私、父が見つかって、色々…あったから……その事を報告に…」  
(…はい?)  
「その事は、ヴェル様にお伝えしたのですが……」  
Now Lording...  
そういえば……  
さっき、聞いた声があったような……  
「……やべっ!」  
自分に対する殺気には敏感な、今回の黒幕は脱兎のごとく……  
「ヴェェルゥゥゥゥゥゥッッ!!!!」  
 
 
「ミュウ、ようやく一つになれるな」  
城に戻ったシアとミュウ。  
ミュウに覆い被さって、照れくさそうに笑いかけるシア。  
しかし、ミュウの意識は別に向いていた。  
「……あの…いいんですか(汗」  
“いいんですか”とは、今回の黒幕、自分より年上だが、血縁上は弟になる(予定)ハーフエルフの男  
――ヴェル=グァンヒート  
 
「おいコラァ!下ろせよぉ!イイじゃないかぁ、愛が深まったんだからっ!」  
 
「何のことだ?」  
完全無視を決めるは、今回の被害者、時計塔の針にヴェルを縛りつけた男  
――シア=グァンヒート  
 
「卑怯だぞっ!アレあげたら、許すって約束じゃないかぁぁ!!」  
 
「“アレ”って何のことです?」  
「その内解る」  
シアの笑いに、少し邪悪なモノを感じたが……  
 
「危ないだろぅがぁ!時計の針だよっ!?長身が来たら俺潰れちゃうじゃんか!ルパン三世かっーのっ!!」  
「あ゛〜もうっ!生きて帰ったら覚えてろ!本出してやる!本!ば・く・ろ・ぼ・ん・!!」  
「タイトルは『淫れた後宮・グァンヒート二世の屈折した性癖!義理の母と12歳の幼女にハァハァ!!』だからなっ!」  
 
「………」  
「…シア?」  
「……」  
シアは衣服を整え直すと、部屋を出ていった。  
 
「おぉっ!?兄貴!来てくれると思ってた!!俺は信じてたよー。兄貴はそんな心の狭い奴じゃないってさ!!」  
「って!なにこの液体?なぁ、助けてくれんじゃないの?げっ!コレって油ですか?ねぇ!!」  
「あの〜その蝋燭何?やめてよね、そういうの、ミュウちゃんとやればイイじゃない!!」  
「うわ〜兄貴って芸が細かいんだなぁ。長針に火を括りつけて……コレじゃ俺、潰れる上に燃え尽きちゃうっ!……って!オイッ!!」  
「後生だぁ〜あやまる!あやまるから助けてっ!マジヤバイって!お〜〜い!」  
 
「ミュウ、焦ることはないからな。“ゆっくり”しよう」  
再び戻ってきたシアはミュウにそう言った。笑顔で。  
「………」  
こうなったら、ヴェルの命は諦めよう。ミュウは思った。  
「シア……でも、前……」  
前回、ミュウは初めてに耐えきれず、二人は挫折した。  
それどころか、感情が高ぶって電撃を放ってしまった。  
今回も……仮に挿入に成功しても、痛かったり、その逆だったりして感情が高ぶったら、電撃を制御できるかどうか……  
「その点は、大丈夫」  
シアは自身ありげに――さっき見せた、少し邪悪な瞳を含めながら――笑った。  
そして、  
――ペタッ  
「へ?」  
ミュウは頭の角に、何かを貼られたのを感じた。  
途端――  
「ふぇぇぇ……」  
体中から力が抜ける。全く力が入らない。  
「こ、これ……」  
「東国の、ありがた〜〜いお札(ヴェル発)だ」  
ニヤニヤ、意地の悪い笑みをシアは見せる。  
「あぅぅ……」  
「少し、効きすぎたかもな……」  
そういいながら、ミュウを脱がしにかかる。  
その手つきが優しいのは嬉しいのだが、恥ずかしくても隠しようがない事が、ミュウの顔を昂揚させる。  
ミュウの綺麗な丸を描く胸が、滑らかにくびれた腰が、白い肌にブラウンの茂みが、すらりと伸びた足が、シアの前に顕わになる。  
 
「あ…あぁ……」  
その白い肌が、羞恥によってほんのり赤色を上書きされる。  
「シ、シア…あ、あんまり……」  
「見たいんだよ」  
機先を制すシア。  
「ミュウ、すっごく綺麗だろ?僕だけが、その美しさを知ってるんだ」  
そう、付け加えると、シアは胸に手を這わせた。  
「んぁっ……」  
「柔らかい……」  
シアはミュウの耳元に、近づくと囁いた。  
「ミュウってさ、自分の胸、どう思ってる?」  
「え?…あ、ふ、普通だと思いますケド……」  
体に力が入らない分、感覚が、感性が研ぎ澄まされているように思える。  
「そっか。……大きくなると、困る?」  
答えに困る質問をする。ミュウが戸惑っていると、シアは笑った。  
「ま、絶対そうなるよ。だってミュウの胸、こんなに柔らかくて、吸い付いてくるみたいで、いやらしいもんな」  
「はぁん……うぁ」  
紅く、そそり立った先端をこねるように嬲る。  
「いっ…うぁっ……はっ…くぅ……」  
強めの攻めに、ミュウは顔をしかめる。  
その顔に出来た眉間のしわも、シアには可愛いと感じる。  
「ミュウ……」  
「は……あむっ!?……んっ…あ……」  
シアはミュウの名前を呼ぶと、シアを向いたミュウの唇をあっという間に奪う。  
「…あ……ん…はぁ……」  
ミュウの口内は暖かく、シアの舌に絡められた舌は艶しい。  
ミュウは、芳しくない体を動かして、シアの首に手をまわした。  
「んっ……じゅるっ……」  
シアの唾液を吸うミュウ。瞳は潤み、だが、その潤みは苦しさでは無く、快楽を垣間見せるものだった。  
キスを止めて、気を抜いた瞬間を狙って、乳首を捻り上げた。  
ミュウの腰が浮き、ベットが軋む音が聞こえる。  
「はぁ…はぁ……シア…シア……」  
 
「ミュウ……駄目だ。ミュウのコト……めちゃめちゃにしたいっ!!」  
全く抵抗出来ないミュウに対して、加虐心が刺激される。  
シアの性質もあるが、得てして独裁者にありがちな傾向だった。  
「え?…あんんっ!!いっ痛いっ!」  
シアは捻り上げるレベルで無いほど、乳首を引っ張った。  
「やっやめ゛てぇぇぇっ!」  
「っ!!……あ、ごめん」  
ミュウの叫びはシアに届いたのだが、シアのドス黒い欲情は残ったままだ。  
「ゴメンな……ミュウ……」  
そう言って、赤く腫れあがった乳房を舐めまわす。  
「ひっ…あ…んっ……はぁ……」  
優しい舌使いに、ミュウは再び恍惚の声を上げるが……  
「…んあ……ふぁっ……ん……!!あうっ!!」  
快楽に身を委ねた瞬間に、シアは強く乳首を噛みだす。  
「いっいぎっ……はっ……」  
それが終わると、再び優しいシアに戻る。  
優しく、乳首をなぞり、舌で押し、吸いいたてる。  
ミュウをしっかり抱いている一方の腕と逆の手は、尻から腿にかけてさわさわと刺激を与えながら動く。  
後ろから前へ。しかし、肝心な部分には一切触れず、明らかに焦らされているのが分かった。  
「はぁ……ふ……な…ぁぅ……ひぎっ!!?」  
そして三度の暴撃。  
今度は、最も敏感な所を嬲られた。  
苦痛と快楽……交互に押し寄せるソレは、ミュウの意識を濁蜀した世界へと、導き初めていた。  
ただ判るのは、自分がシアの手で踊らされていること。  
シアが、そうすることで快楽を得ていること。  
そして……それでいてシアは、何よりもミュウのコトを愛していることだ。  
「ミュウ…ミュウ…可愛いミュウ。愛してるよ。愛してるから」  
「あっ…あっ…あっ……」  
シアの指先が、ミュウの中を掻き回し支配する。  
ミュウがうっすらと見た先には、暴虐なまでの“男”がいた。  
ただし、この男は、自分のことが、好きで好きで、愛してやまない、ミュウの唯一人の男だった。  
 
「あくぅ…はっ…あんっ……いいっ……もっと……」  
ミュウが“いい”と言ったのは、優しい行為では無かった。やや激しい、そういう嬲られる行為を欲した。  
「ミュウ!いやらしくなった!僕がした!」  
「あぁ…そう、シア……あんっ!……あなたが…ひゃっ!……」  
人はソレを“堕ちる”と言うかもしれない。  
けれど、例えそのように言われても、シアは自分一人だけを堕としはしないだろう。  
「はぁ……んくっ!あっ……あぁぁぁぁっ!!」  
ミュウは大きく肢体を反らして、快感の奔流に身を任せた。  
その身体を支えているのがシアだ。今、この場において、ミュウを支配している存在。  
それでいて、この男は安らげる場所として自分を欲してる。  
「ミュウ……」  
そうか……“本番”なんだ。  
あれだけ暴君だったシアに躊躇が見える。  
やはり、人の本質など曖昧きわまりないものだ。  
「シア……痛くして……忘れられないくらい……」  
「ミュ…ウ……」  
快感の奔流を引きずり、身体を震わせながら、ミュウは瞼を閉じる。  
美しいミュウが静かに、シアを待つ姿は、神聖なる生け贄を思わせた。  
シアはゆっくりとミュウの足を広げて、その濡れきった秘部を眺めた。  
そしてその間に、滑り込む。抵抗は無い(出来ないだけだが)  
「ミュウ……」  
「あ……」  
シアのいきり立ったモノの先端が、ミュウの入り口をこじあけた。  
肉体の暖かさと、外気に触れて冷え切った粘液の感覚が気持ちいい。  
「はぁ……ふ……」  
それによる興奮と、恐怖がミュウの睫を震わせた。  
「ふ……あぁ……」  
シアはミュウの中へと侵入した。  
一度達した後のミュウの中はドロドロしていて、それなのに強く締め付けてくる。  
そしてソレは動きを止める。なぜならソレの侵入を拒む壁が現れたからだ。  
 
「分かるか?ミュウ?」  
その壁をそっと押しつける。  
「うぅ……あく……」  
苦しく、切なげに首をふる。一瞬、角が光るが、不発におわる。  
「あひっ!……あぐっ……うぅ……」  
ジリジリとその壁を押しつける。  
「はっ…はっ……」  
ミュウの息が上がる。  
身体が痛みをやわらげる為に、愛液を分泌させる。  
肉壁の動きが、小刻みに動き、シアを喜ばせる。  
「いっ…ぎ……あぅ……」  
シアは、何度も“娘”を抱いたことがある。  
城にいる女は、シアの物であるといっていい。  
鬱屈した思いの捌け口に女を選ぶのはよくあった。  
「はうっ……う゛ぅ……はっ……」  
後、ほんの少しミュウに近づけば、ミュウは一生に唯一度だけの痛みを感じることになるだろう。  
「シア……シア……」  
自分の名前を呼ぶミュウは、涙を流しながら、おぼつかない手でシアを求めた。  
「ミュウ……」  
ココにいるよ、とミュウの手を取ってやる。汗でミュウの手のひらはじっとりとしていた。  
――プツッ  
「ひっ…ぎゃあぁぁぁあああっ!痛いっっ!あぐぁっ!ひっ!いやっ!いやっ!…あぁっ!シアッ!シアァァァァアァッ!!」  
ツーと、愛液とは違った粘度を持つ液体が、シアのモノをつたいシーツに零れた。  
純白のシーツに、鮮やかな赤い果実が落ちた。  
「はぁふっ…はぁふっ……はぁっ…はぁっ……シア…シア……」  
やや尖った犬歯を鳴らしながら、ミュウは呻いた。  
「あっ……ひぐっ!」  
痛みに敏感になっているミュウの中を、シアは容赦なくえぐる。  
小動物のような哀憐を誘う表情は、シアを興奮させた。  
 
「痛いっ!……う、動かないで……おねが…いっい゛ぃぃっ!!」  
シアの探求は、ミュウの一番奥深くで終わる。  
「あぐっ……うぅ……壊れる……壊れちゃう……」  
「ミュウ…凄く……いい」  
根本から搾り立てられる快感に、シアは恍惚とする。  
結合部から滴った、薄赤の液体を掬い、ミュウの口に運ぶ。  
「あう……」  
ほんの少し鉄の味が、ミュウの口に広がった。  
「あうっ!ああっぁぁっぁっ!!」  
ミュウのきめ細かい肌を掴み、自分を軸に180°回転させる。  
体勢は騎乗位になった。  
重力が、ミュウに更に痛みを与えた。  
「はひっ!う…痛っ……」  
ミュウが、八の字に眉を顰める。  
「ミュウ、見えるか?僕とミュウが繋がってる」  
「あっ…あぁ……」  
言われたままに、自分の下腹部を見る。  
グロテスクであり、薄赤のグニャリとした液体が自分の神聖さを表してるようで、言葉にしがたい感情が浮かび上がってくる。  
「はぁ……あぁ……」  
身体に力が入らないミュウは、シアにもたれかかって来た。  
「うあ……あんっ……」  
さっと腰を揺らすだけで、ミュウは喘いでいる。  
肩で息をしながら、シアの舌を貪る。  
「あむっ……あんっ…はむ……ふぁぁ……」  
それに連動したように、ヒクヒクとうねりをあげて、ミュウの膣もシアのモノを貪っている。  
「あぁ……シア……」  
トロンとした目でシアを見つめる。  
シアの胸板に頬ずりをし、シアの乳首を舐めた。  
快楽と、時に見せる痛みの表情のデュエットは、刺激的だった。  
 
「はぁ……あきゅん!……ふぁんっ……ふぅ……んぁ……」  
背中の聖痕となぞるとくすぐったそうに、身をよじる。  
それは可愛らしい仕草で、やはり小動物のようだった。  
ミュウの中の雷獣の血がそうさせるのだろうか?  
(獣か……)  
そうかも知れない。  
こんなに従順なのも、動物の服従遺伝子の存在か、あるいは、本能に忠実だからか。  
「………」  
シアは何を思ったか、結合を解いた。  
「あ……ん……え?ぁ……」  
ミュウはいきなり快楽を奪われて、切なそうにシアを見る。  
彼女自身の純血で濡れた、猛々しい、獣のようなシアのモノを媚びたように見るのだ。  
「あ…ぅ……あぁ…シア……やぁ……続けてぇ……」  
素直に懇願するミュウ。  
「浅ましい牝犬みたいだな、ミュウ」  
「ぇ……」  
ミュウは初め、そういうシアの嬲りかと思った。  
けれども、それが心からのものであることに気が付く。  
「シ…ア……」  
ミュウは涙を流した。  
シアの寵愛を繋ぎ止めたい一心で、這いずり、シアのモノに頬づけ、媚びる。  
「………」  
「シア…やっ!…」  
ミュウの髪を掴み、顔を向けさせる。  
シアには、苦痛に歪んだミュウの顔が見えた。  
「僕を求めてるのか?」  
「何で……そんなこと…聞くの……」  
当然のことなのに……そんな声が、聞こえた気がした。  
「……悪かった」  
シアは自分に呆れた。いや、嫌悪したかもしれない。  
「怖がらなくていいの、シア。私はあなたを愛しています。その為なら、私はユダにだってなれる」  
ミュウの蒼い瞳に映っているのはシアだった。  
 
「ミュウ、四つん這いになれ。獣のように愛してやる」  
「シア……」  
言われた通りの格好をする。  
シアには、赤腫れて、汁を滴るミュウの秘部が求めるように広がるのを見た。  
「シア……」  
羞恥にうなされるミュウは、ベットに顔を埋めて、唯それだけを紡いだ。  
しかし、もぞもぞと悩ましげに腰を揺すって、シアを待ちわびているのが判った。  
シアは、ミュウの小さな小尻を鷲掴みにすると、少しの間その弾力を楽しんだ。  
「あ……ぁん…はぁ……」  
そして、親指に力を込めて、グッと左右に広げた。  
「あ…あふぅぅ……」  
「ミュウ、さっきは気づかなかったが、随分ビラビラが広がって……沢山飲み込みたいんだな」  
「あ…あぁ……」  
しっかりと狙いを定めて、一気に突き当てた。  
亀頭が、一気に子宮口を圧迫する。  
「あっひっ!……あぁぁ……」  
うわずった声を上げて、背を反らせるミュウ。  
その、途中青い聖痕がある背を優しく撫でた後、そのまま腰の上のくびれの最後で手を固定する。  
いわずものがな、  
「あっあっあっ…あぅっ…いっいいっ……あ…ぁぁ…はっ…」  
――獣のように  
そう、唯ミュウだけを求めて、強く、深く、シアは打ち続ける。  
「あんんっ…ああっ…あぁっ……シアッ!…いいっ…すきっ……シアァァァッ!!……」  
ミュウの膣が、シアのモノによって形が変わる。そう、感じる。  
不規則な凹凸が、暖かさと刺激を呼ぶ。  
「…あくっ…くぁ…あっあ…あぁあ…ふぁあぁ……」  
あの、美しい丸みを持った二つの乳房は、滑らかな動きで形を定期的に変えている。  
「…あは…あっ……ん…ああぁ…あっ…あっ…ぁぁっ……」  
ミュウの口からはだらしなく涎が垂れ、シーツには染みを作っている。  
激しくされて空気が足りないのか、犬の様に舌をつきだすさまの淫らさは、この上ない。  
 
「あぁ…くるっ…いや…いいっ……シア……シアァ!……」  
悶え、髪を振りまわし、意味のない呂律を繰り返す。  
「かっ……ミュウッ……僕の……うぅ……」  
それはシアも同じで、そこには唯、互いを求める男と女、雄と雌がいた。  
「あっふっ……あ…あ……もうっ!もうっ!……ああぁっ!」  
膣が、キュッと締まりを増す。  
それすらモノともせず、出し入れを繰り返すシアのモノも、逆らいがたい本能の快感の熱を感じ取っている。  
「ミュウッ!いくぞっ!お前もっ……」  
「あぁっ!…シア!飛んじゃうっ!私っ!……いいっ!…ああっ……」  
シアの体を満たす精が、収縮し、ゾクゾクとした得も知れない悦楽をともなって、吐き出される。  
「あっ!あああっ!ぁああああぁぁぁあぁぁっっっ!……」  
ミュウは、それを全て受け止める。あまりに強大すぎるその感覚は、ミュウの意識を白き霞に追いやるのだ。  
「はぁ…はぁ…ミュウ……」  
全身に疲労を覚えながら、シアはミュウの温もりを求めた。  
「あ、あぁぁぁ……熱い…シア……満たされて……ぁふぅぅ……」  
幸福に満たされて、二人は微睡みの中に溶けていった。  
 
 
「んっ……」  
シアは、心地よい倦怠と共に目を覚ました。  
「ミュウ……」  
イの一番に視界に入ったのは、愛する人の顔。  
「ん…寝顔見られた」  
少しのキスの後、ちょっと悔しそうに言ってみた。  
放出する側が、体力的に不利なのだから仕方なくはあるが。  
「まさか、あの後スグか?」  
女性より先にくたばるのは、男の沽券に関わるが……  
「私もよく……おかげで、パリパリ…」  
それなら、マダよしとしよう。  
「ところで、何か…忘れてるような……」  
「うん。何だっけ?」  
………  
「「ヴェル!!」」  
二人は顔を見合わせる。  
「……ま、ほっといても大丈夫だろう」  
そう言って、ミュウを抱き寄せるシアだったが、  
「少し、可哀想な……」  
「アイツのせいで、恥ずかしい告白を……」  
「うん、まぁ……でも、嬉しかったですよ?」  
思い出して、顔を赤らめながらミュウは上目遣いにシアを見た。  
それが可愛くて……  
「わかった。もう一回ヤってから、助けにいこう……」  
「きゃっ!」  
シアはミュウを押し倒した。  
 
 
 
しかしこの後シアは、ミュウの身体と一緒に、御札の効果が切れて、三度目の電撃を味わったのだった。  
 
「!!うぎゃぁ○ξφ£※#窮t∴♀昭和:PM(~o~)ZZZνF91VGWX∀島這!!▲◆→ΛΘ…………  
 

                                             ||  
                                           /⌒⌒^'、  
                                           ( ノ|ノ)从)  
甘いな、兄貴。そんな美味しいモノを、たった一回で渡すと思ったのか?ヽ ̄フ ̄ノ  
                                           ミ≡≡≡j  
                                           ミ≡≡≡j  
                                           ミ≡≡≡j  
                                            (/(/  
  後に……                                     ||  
 
       丶     r'⌒⌒^'、  
        ヽ\\ヽ(m#νy'ソ/m)//  ←シア  
        \ (m ヽ(#゚ー゚ノ/m)/  
         丶\(m\  m)//  
          (m\(m (m m)/  
             ( (m /ノハλ)  
          ミヘ丿 ∩#∀゚;||l  
           (ヽ_ノゝ __ノ      ←ヴェル  
           
         ――兄弟喧嘩勃発――                        FIN  
 
 

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