≪ヌール・マハル≫
「イシェル様っ!イシェル様っ!!」
「義母上……」
私は義母の小さな肩をおさえた。
「ティナ…そんなに泣くな。お前の可愛らしい顔が台無しだ…」
(父上……)
今まさに死が迫っている人間とは思えない,優しい声で父上は話した。
父は60を越えているが,病気になり,衰弱仕切っているというのに10は若く見えた。
「イシェル様っ!イシェル様っ!!」
そんな父に,義母はその,長く美しい金髪を振りかざして泣きじゃくった。
父と義母は確か6歳差だったか。何も知らない人が見れば驚くだろう。
しかし,耳を見れば納得するだろう。その長い金色の髪から覗く耳は鋭く尖っている
――そう,義母はエルフなのだ。
もっとも,父や義母の事を知らないとすれば,遠く東国の旅人か商人ぐらいだろう。
「ティナ…私が死しても,後を追うようなことはしてくれるなよ。お前は,長く生きるのだから…
新しい幸せを見つけるとよい。そして,時々は私の事を思い出してくれ」
「いやですっ!いやですっ!!…イシェル様ぁ……」
義母上の言葉は最後まで聞き取れなかった。その美しい顔を父上の胸に埋め泣いている。
そんな義母上を優しく抱き留めながら,父は私に語りかけた。
「シア…母や,弟達を頼むぞ。近くの者を愛せない者は王たる資格は無いのだからな」
「……はい」
父は優しい笑顔を私にくれた。私はその笑顔に,心がえぐられる思いだったのを私は一生恥じている。
「そうか…イシェル…」
玉座に座る男は寂しげに呟いた。
「宗主…」
跪きながら,シアは次の言葉を待った。
「イシェルがいなければ,この椅子に座れなかったろう……いや,そんなことはどうでもよい。
彼は…私の得難い友だった。それだけでよい」
「その言葉,父にとって何よりも,とむらいになりましょう」
「ティナ殿は…大丈夫であろうか?」
「義母は…一日の殆どを,父の霊前をとむらっております」
「そうか。それも仕方あるまい…。あの戦火の中で生きていた時は,このようなこと考えも出来なかっ
たな…」
その言葉は,シアに語るというよりは,一人で噛みしめているようだった。
今から数十年前,クルスアルト王家が治めるこの王国に争乱が起こった。
ラス=エルズハイン将軍が,主家を乗っ取ったのだった。後の史家によって彼は“反王”と呼ばれる。
だが,その時の王太子バトゥ=クルスアルトは,逃亡に成功。二年の雌伏を経て,反王打倒の兵を挙げ
た。
その後,足かけ五年に渡る戦いを繰り広げ,バトゥは国を取り戻した。
イシェル=グァンヒートは,バトゥの王太子時代からの側近で,神童の誉れ高かった。
バトゥの逃亡のさいに常に側におり,挙兵の後は参謀として軍事・政治両方に優れた手腕を発揮した。
乱平定後は功績第一とされ,宰相となり,さらに領地を割譲され,国を持つ事を許された。
そして,周辺のまつろわぬ小国を併呑し,大陸に安寧をもたらした。
ティナ=ランジークは元々大家にゆかりのあるエルフの村の少女で,乱が起こる前からバトゥやイシェ
ルとは親交があった。
彼女はそのころからイシェルに惚れていたのだが,早婚の時代なのでイシェルには妻がいた。
(けれど父上は政略結婚だからとはいえ,冷たくあしらうことも出来なかったのだろう)
シアは実の母と父の関係を,大人になってから,そう結論づけた。
乱の時,三歳だった。父は母の居る城を容赦なく攻めた。当然,母は殺された。そのことを人は“忠”
と褒め称えた。
(けど…父上は知っていただろう。冷たい人間と囁かれていた事を)
乱の後,父は姿を消した。
それを連れ戻したのは義母上だった。
その後,二人は婚姻の儀を結んだ。
「義母上…」
義母の部屋に入る。
父を思い,祈りを捧げている姿を見ると,礼式や墓などは死者の為ではなく,残された者への慰めとし
てあるのだと改めて思える。
「悲しみはわかります……少しお痩せになって?」
「シア…そうね,心配かけちゃってる。エイファの面倒もみないで」
エイファは3歳になる弟だ。むろん,義母と父の子である。
「時々…私のことを父と呼びます…」
「……そう」
あの,闊達な義母がここまで寂しそうなのだ。私は悲しむべきであるのに。それなのに,義母の憂いの
美しさに劣情を抱いている。
「君,何か暖かい飲み物を頼む」
たまたま通りかかった使用人に命令する。
よかった。あのまま劣情に任せようとしていた。
振り返ると義母は,また位牌の十字架に黙祷をしていた。
(義母上は,死して尚,父上のものかっ!)
悔しい,首を振る。
あの長く美しい髪を,ツンと尖った可愛らしい耳も,少女の様な幼さの残る顔も,抱いてしまえば砕け
てしまう様な華奢な体も!
(父上だけが自由に出来るのかっ!!)
「あの…太子?いえ,陛下?」
先ほど頼んだ飲み物を持ってきた使用人か。
「あの…こちらの紅茶は,心を安らげる効果がありますので…」
そう言ってお盆を差し出す。成る程,確かに私がいつも好んで飲んでいる紅茶とは別の紅茶がもう一つ
ある。
(よく気が利くものだ。名前は間違えたが,言われずとも二人分持ってきたし,気分に合わせたものに
した…)
「あ,あの……」
「ん?ああ…ありがとう,若いのに気が利くな」
「い,いえ……」
恐縮し,深々と頭を下げ,12,3歳くらいの少女は退室していった。
(でもこれも…父上の遺産なのだ)
「義母上,どうぞ,紅茶です」
「ん,ありがとう」
義母上は一口紅茶を口に含めると,ベットの近くの椅子に腰掛けテーブルに紅茶を置く。
「?どうしたの?ジッと見て?」
いつものように朗らかに話すが,その言葉の中に陰りがある。
「義母…上……」
「ん?」
もう一杯,こんどはグイッと紅茶を飲んでいる。
飲み干した後のテラテラと光る唇が艶しくて…私は……僕は……
「きゃっ!?」
両手を押さえて,義母上をベットに押さえ込む。
「は,はっ義母上……」
黄金色の長い髪が純白のシーツに広がる。
「じょ,冗談でしょ?」
「今まで,この様な質の悪い冗談,私がしましたか?」
「シアッ!!」
義母上が起きあがろうとする。
「ぐっ!?」
「痺れて動けないでしょう?」
「シアッ!」
「父上と共に戦場を駆けた義母上にまともに向かいあったて,勝てませんものね。その,か細く,美し
いお身体に一体何処にそんな力が眠ってるやら…」
襟首をずらして,白く,なめらかな肩を撫でる。
「恥を知りなさいっ,シアッ!!」
「はい…。私は最低です……」
一気に上着を脱がす。
「っ!?」
「耳まで赤くして,可愛いのですね……」
エルフは二次成長を終えた後,長らくその姿(つまりは15〜25位)を維持する。その時期だけ,時が(人間
からした,だが)ゆっくり流れるのだ。
「この様に眺める時がくるとは,思いも寄りませんでした」
「当たり前ですっ!この身体はイシェル様だけのものっ!!」
「知ってます。何度も見ました。愛し合っているところ……」
「なっ…」
惨めな話でしょう?おどろいているようですが。
「だから,ココが弱いってコトも…知ってます」
耳の裏側を舐める。尖った輪郭が気持ちいい。
「あっ……っ!?」
一瞬の快感を感じたことに驚く義母上。そんな絶望した顔しないで下さい。僕がいじめたくなるじゃな
いですか。
「………卑怯者」
そうです。その通りですよ。
「……あなたのその軟弱な心に,一生傷をつけてあげましょうっ!!」
えっ?
「くっ!!」
とっさに僕は義母上に口に指を入れる。その刹那,右手にじわりと痛みが広がった。
「舌を……そんなに父上が好きですか?」
「あなたは嫌いなのですか?」
「ヒッ!」
「あなたはっ……ムグッ!?」
そこら辺にあった布を丸めて義母上の口に詰める。
「はっ…はっ…」
迷うかっ!もう,ここまでしてしまったのだぞ!?
……それに,義母の…ティナ=グァンヒートの躯が目の前にあるのだっ!!
「……ずっと…欲しかったんだ…僕はぁっ!!」
「むぐぅっ!」
荒々しく義母上の胸を揉む。少し小ぶりの…でも,義母上に似合いの。
首から鎖骨にかけてキスをする。同時にスカートをショーツも脱がす。
触れるだけで,見なくてもわかる,美しい足。
撫でまわす。
「んんっ!?んぁ!!」
……あぁ,そういえば
「お尻,好きでしたよね?」
「ん゛ん゛っ!?」
小さく,やや筋肉質なお尻をすくい上げるようにして揉み砕く。
「義母上,涙流していますね?けど,羞恥心だけの涙じゃないでじょう?」
中指で秘所を掻き回す。暖かい…。肉壁が絡み付いて,どこまでも貪欲に指を貪ろうとする。
「こんなに濡れてますもんね。」
「む゛っむ゛ぁん〜」
「もう一本入れてあげます。それにコッチも」
人差し指も挿入し、二本の指を抜き差しして膣壁を擦り立る。同時に空いた方の手は,陰核をそっと弾
いた。
「ん゛っんぉぉ゛〜」
義母上の腰が浮く。指を抜き出し,テラテラとまとわりつく愛液の付いた指を,義母上の視界にかざす。
指と指の間に線が引かれる。
「む゛〜ぐぅ゛」
「それに,胸だってこんなに気持ちいいって,主張していますよ?」
隆起した頂点を甘噛みする。
「む゛ぁん〜ん゛〜」
「さっきは,乱暴に扱ってすみませんでしたね」
今度は唇で吸い上げ,舌で転がす。空いている方の胸に腕を伸ばす。
「んぅ゛ぅ」
小さな乳房を手の平で覆うように包み込む。柔らかな乳房は,手に吸い付いてくるとすら感じる。
「でも……」
優しく撫で回していた手が,いきなり態度を変える。鷲掴みにされ,乳房はその形を大きく変える。
「む゛んんっ!?」
「少し,こうなされた方が好きなんでしょう?」
「む゛っ…んん…」
惚けた様な顔を見せ始める義母上。
「その顔が見たかったんです」
耳元で囁いた。キス付きで。
(そう,その顔を,欲しかったんだ)
少年時代に見た,淡い恋心だった筈の物を一瞬でかき消した,どんな偉大な魔術師でも使えない,妖の術。
谷間から臍までを舌でなぞる。
「ん゛んっ…」
やがてそれは秘密の花園へと辿り着く。しかし,それが終わりではない。
溢れ出した愛液を丹念に舌ですくう。それは内股にまで行われる。しかし,その舌は決して陰唇より先
に進もうとはしない。
「気持ちよくしてほしいですか?」
簡単な問いかけをする。
「………」
一瞬の逡巡の後,義母上は力無くうなだれた。今の僕の目はどんなに曇っているだろう。
「痺れ薬もそろそろ解けてくる頃です」
それだけで察したか,義母上は自らゆっくりと足を開いた。
「可愛い声,聞かせて下さいね」
口に詰めていた布を取ってあげる。
「……っあ…あむっ!?……んんっ…」
同時にキスをする。舌を絡め,唾液を貪り,義母上の口内を征服する。
「じゃ,いきます」
入り口に軽く物を当てる。粘液と愛液で十分に濡れそぼっている媚肉。僕を拒んでいる筈が……ないっ!
「ああっ…!ん…」
肉棒を秘所へと押し進める。
「気持ちいい……暖かくって…柔らかくって…愛していますティナ=グァンヒート…」
「ふああっ…!ああん…熱い…熱いよぉ…」
だらしなく口を開き,唾液を垂れ流す義母の顔に,シアの肉棒はさらに存在を強調する。
「…くっ…くぅ…ああっ…ん!ふああああ!」
激しく腰を打ち付ける。溢れ出る愛液がシーツに染みをつくる。
「あっあっ……」
気づけば義母上は自分で自分の胸を揉みしだいていた。
「欲しいなら欲しいと言って下さいよ……」
しなやかな手をどけて,乳房を,先端を刺激する。
「ちっ…違っ…んんっ!?」
いきなり先端を強く捻る。肉棒が締め付けられるのを感じる。
「あ……んっ…むぐ…」
抗議など必要ない。唇を奪い,示す。
逃がさないように頭をおさえ,艶やかな髪を撫でる。
「ちゅ…ふむ…れろ…ふぁ…」
(求めてきた?)
頬に柔らかな手を感じる。僕の頭を押さえている手も俄然,力が入る。もちろん求め合う舌も。
「ん,んぁ…はぁむ…ふぁぁ…」
どちらからともなく唇と舌を離すと,二人の唾液が混ざり合って、二人の唇を透明な糸が繋いでいた。
義母上の媚肉は絞り取るように、肉棒をかつてないほどに締め付けている。
僕は快楽を貪るように,義母上を打ち付けた。二人の耳を結合部から生まれるグチュグチュという、卑猥
な音が犯していった。
「あっあっ…くぅっ…ぁ…んあっふぁああぁ!!」
もっと深く,もっと深く,秘肉の締め付けが,僕の欲望が,義母上の最奥部へといざなう。
「やっ…あぁ…駄目ッ駄目ッ……うんっ…あぁ!!」
激しい締め付けが,肉棒を襲う。白い快感に身を委ね,義母上に一番奥に打ち込むっ。
「……くっ!」
「ひゃぁ…んんっあっ……あああぁあぁぁぁああ!!」
義母上が最高の嬌声をあげ,仰け反る。義母上の秘肉が僕の精を貪欲に貪り,膣内をどろりとした熱い
液体で満たさせていった。
「はぁ…はぁ…」
糸の切れた操り人形のように力を失って崩れ落ちた義母上の吐息が心地よく響く。
しかし,その充実感は愚かなものだったということを,私は義母の口から聞いてしまったのだ。
「はぁ…はぁ………イシェル様……」
あれから私は,義母上の笑顔を失ってしまった。
何の感情も持たない目で私を見る事は,どんなに鋭利な刃で身を引き裂かれることよりも辛い。
「陛下,少しお休みになった方が……」
私の付き人の少女が,そう声をかける。
「いいんだ,政務をしていたほうが休めるんだ」
(休める?違う,考えなくてすむ,逃げれるんだ,義母上からも,父上からも……)
「しかし……」
「食い下がるな……こちらに来なさい,休みを取ってあげますから」
「………」
顔を俯かせて真っ赤にしている少女を抱きとめる。
(いや…政務を執っていると,義母上からは逃れられても。父上からは…やはり……)
「あんっ!」
苛立ちがシアの少女の胸をまさぐる力を強くした。
To be continued ...