「鷹ー! 鷹ー!」
「はいはい、どうされましたか湊様」
「鷹が大事にしてる目つきの悪い白黒熊のぬいぐるみな」
「チベット原産パンダさん人形ですね。チベット原産! 俺もググりました」
「あれな、でっかくてなんか鷹に似てるからな」
「照れますね」
「私の枕にすることにした」
「ちょ」
「くれぬのか?」
「…湊様の抱き枕になるというのならパン太にとっても本望かと」
「いや、枕だから普通に頭の下に敷く」
「」
「頭の下に敷く」
「鷹ー! 鷹ー!」
「はいはい、どうされましたか湊様」
「ヨウツーのことだけどな」
「ヨウツー?」
「お前がパン太とか呼んでた枕のことだよ」
「改名してる」
「鷹の2号でようつー」
「英語使ってる」
「ヨウツー!」
「よ、ようつーがどうしたんです」
「毎日ちゃんと頭に敷いてるからな」
「あぁ」
「グリグリ押し付けてぺしゃんこにしてるからな」
「ひどい」
「安心するんだぞ」
「はい…」
「喜べよ」
「嬉しいです…」
「という鬼畜の所業をするような鬼子だったよお前の母さんは」
「恐ろしいです」
「父さんもだ」
「鷹ー! 鷹ー!」
「はいはい、どうされまし…」
「……」
「あ」
「驚いた…」
「今のは間違いだ、違う、その、昔話を凛にしていてだな…」
「どんな? 私のことを?」
「色々だ。詮索するな。それより何の用だ」
「うん、その、懐かしいものを見つけて。ほら」
「パン太!」
「ヨウツー!」
「黙れ!」
「えっ」
「返せ!」
「えっ」
「あのくまさんはお母さんが毎日抱き枕にしてたの」
「お父さんから取り上げたんですよね?」
「お父さんがお母さんを子供扱いばかりしてくるから、お父さんの代わりにこう、ぎゅーっと、ぎゅーっと」
「くまさん苦しそうです」
「お父さんだからいいのよ」
「恐ろしいです」
おしまい